ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

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皆さま。お待たせしました。

キリが良いので投稿です。

戦闘シーンですが、単純だから速く描けるね。



作戦36 陸の戦場

バトラはスイートルームが集中する階に着くと同時に音を立てぬ様に走り出し、ファントム部屋に着くとバトラはベルクトから移動中に預かった部屋のカードキーを差し込み、鍵を開ける。

 

鍵が開いた扉を蹴開ける様に開けて、部屋の中に入ると同時に拳銃を抜きながら叫び、部屋に侵入者が居ないか視線を巡らせる中でバトラの耳が奥の部屋を発信源とする音を聞いた。

 

「奥か!」

 

奥の扉に身体の向きを変えながら、銃の持ち方を変える。

手の中で素早く銃を回して、合唱状の手で持てる様にした。【High】と呼ばれる持ち方だ。さらにその状態を維持したまま、身体を横に向けながら肘を曲げることで銃を目線の高さで保持する。【Extended】という構え方だ。

銃を構えたまま、奥の部屋へと通じる扉をタックルに近い体勢で開けて、中へと侵入する。

 

「ファントム! 無事か!」

 

バトラが銃を構えた先に緑髪の少女が居た。髪や肌から水滴を伝わらせながら今まさに浴室から出てきたのだ。白く艶やかな肩が、腰のラインが水滴を乗せながらもほんのりと上気していた。

 

視線が合う。

 

銃を【High】と【Extended】で構える少年と文字通り一糸纏わぬ水も滴るいい女もとい少女がなんとも言えない沈黙と水滴が床に落ちる音を聞きながら固まる。

 

「バトラさん」

 

沈黙を破ったのはファントムの氷の様に冷ややかな声だった。

 

「無事そうだな」

 

銃を目線の高さから胸の高さに来る様に動かしながらバトラが呟く。

 

「わざとやっていませんか?」

「直ぐに出るからごゆっくり」

 

速攻で扉の外に出たバトラは壁に寄り掛かると八代通が隣の部屋から出てきた。慧とグリペンも一緒だ。そして、一足遅れで荷物を持ったベルクトも来た。

 

「何をしている?」

「遺言考えてます」

「穏やかじゃ無いですね」

「と言うかと何が有った?」

 

八代通からの質問にバトラが答えると朝倉と慧が次いで口を開く。

 

「バトラが浴室に入った。まだ、ファントムが入ってる状態で」

「結果と目的が混合で聞こえか無い風に言うのやめてくれません」

 

グリペンの言葉にバトラが反論する。

 

「お前な。あいつはオススメしないぞ。ベットで平然と寝首を掻いて来るタイプだからな」

「そう言う話をご希望ですか?」

「グリペンやベルクト、片宮姉妹は兎も角としてそれともアレか? お前はいつ刺されるか分からないスリルをスパイスとして楽しみタイプか? まだ、イーグルの方があと腐れが無いぞ」

「そう言う話がご希望と見た。片宮姉妹だと必然的に3Pで死ねるし性じゃ無いです。ベルクトは一方的に乱れさせたいですね。グリペンはロリ過ぎる。イーグルのあの性格は罪悪感がヤヴァイ。ファントムはゆっくり、まったりやりたいですね」

「オブラートに包んで下さい!」

「そんな会話をすんな! ベルクト真っ赤だぞ!」

 

朝倉と慧の突っ込みを受けるバトラは勢い良く開かれた扉に壁とサンドイッチされる。

その時に声にならない悲鳴を挙げるが甲高い声過ぎて、誰も聞けなかった。

 

「これは私の憤りを解決する場だと思っていんですか? それとも男達の下賤な話を聞いて、さらに憤る場ですか? それとも忍耐と引き換えに怨恨の利息をつける場ですか?」

 

何時ものコルセットスカートとブラウスと言う清楚感の有る格好だ。

 

「取り敢えず、済まなかった。それと情状酌量の余地を見極める場だろうが……証人が死んだから無理だな」

「AED!!」

 

朝倉がバトラのバックパックからAEDを取り出して擦り付けて充電。押し付けると一瞬だけバトラが跳ね、何事も無かった様に立ち上がった。

 

「えっと……取り敢えずは情報共有だな」

 

バトラの口から親露派の動向と監視システムといったジュラーヴリクから授かった情報を話す。

 

「罠……という可能性は無いんですか?」

「その可能性は少ないと思っている」

 

ファントムの異議をバトラは速攻で否定する。

 

「何故、そう言えるんですか?」

「奴が戦闘機乗りだからさ」

 

バトラの返答にため息を漏らすファントム。

 

「具体性に欠けますね。そんなので、納得するとでも?」

「だろうな。結論から言えば、ジュラーヴリクの利害と親露派の利害が一致してないって所だな」

「どう言う事ですか?」

「わからないか?ジュラーヴリクは俺たちを空で殺したいが、親露派は事が大きくなる前に俺たちを排除したいから陸で殺そうとする。それに奴の性格上、陸の事を空に持ち込みたく無いし、持ち込んでほしく無いんだよ。これが原因で俺たちの戦力が少なくなって、負けた。少なくなったから自分達が勝てたとか考えたく無い。お互いに全力でやり合って勝ちたい奴だ。それに何時でも戦力を投入できる状態で奇襲をせずに警告して来る意味がわからないな」

 

バトラの最後の言葉を聞いて、ファントムが納得した。

 

「確かにこのタイミングで警告するのはこちらにしかメリットが無いですね」

「だろうな。そうじゃ無ければ、俺たちは今頃は銃口に囲まれていただろうな。と言う訳で朝倉書記官。脱出の手段は?」

「まさかと思うが、各個で交戦して脱出経路を確保せよ。なんて言わないだろうな」

 

バトラがそう言った瞬間に無線機に通信が入る。

 

<<バトラ!! 聞こえるか! ノゴン・ハスだ! ネオナチ気取りの民族主義のクソ団体が完全武装でお前らを迎えに行っている。かなりの数のマイクロバスに満載で向かっている。数台は抑えたが、何分自衛戦闘で使える火器がMP(マシンピストル)くらいだ。R.O.E(交戦規則)が適用されればマシなんだがな!>>

 

カルーレの声がAKとMPの発射音に混じりながら聞こえてくる。

 

今回は街中で自衛戦闘と言う事で強力な火器が使えないがR.O.Eが満たされれば充分な火器が使えるのだ。

「かなりの敵が接近している。直ぐに移動するぞ」

 

バトラがそう言いながら、窓を覗くとマイクバスの後部ドアから完全装備の兵士達が降りて行くのが見えた。

バトラは大きく舌打ちするとベルクトからバックパックと武器を引っ手繰る様に掴み、背負う。

 

「敵が直ぐそこまで来ている。直ぐに移動だ。朝倉さん」

「地下フロア経由で隣のビルの駐車場に全く大使館と関係の無いナンバーの車を予備で用意してあります。それでガチュールト辺りでモンゴル政府にコンタクトします。時間が経てば、此方が有利になる筈です」

「戦闘は避ければそうだな。ベルクト、薬室に弾丸を入れて、安全装置を入れておけ、そして何時でも外す覚悟をしろ」

 

そう言うと銃口がデカくなったMP5のコッキングレバーを動かして、薬室に弾丸を入れて、安全装置を掛ける。これで安全装置を外すだけで直ぐに撃てる状態だ。

「貨物搬送用のエレベーターを使いましょう。こっちです」

 

朝倉の誘導の元、バックヤードを通り、貨物搬送用のエレベーターへと向かう。

バトラは敵がいつ来ても交戦できる様に銃をグループの背後に向けながらバック歩きで行動する。

 

バトラが銃を構えながら貨物搬送用のエレベーターに乗ると朝倉はキーを差し込むコードを打ち込むとB1以外のランプが消えて、直通モードへと変わる。

 

ドアが開くとバトラが先に1人で降りて安全を確認する。

銃を様々な方角に向けるも何も無い事を確認すると近場の車を弾除けにしてから手を前から後ろに動かして『来い』と言う意味のハンドシグナルを送る。

 

それを見た残りのメンバーはファントムとベルクトのハンドシグナルの通訳を受けながら、バトラが指さした安全な場所に安全な人数で隠れる。

朝倉の指示する場所をバトラが素早く安全を確認しながら進む。バトラが安全を確認する間はベルクトがトカレフ(輸出仕様)を使って背後からの攻撃(バックアタック)を警戒する。

 

そうしながらも隣のビルに移動して、駐車場に入る。

コンクリート打ちっ放しの駐車場は静かで様々な車が止まっているが殆どが日本の車だった。

スロープの上からは光が漏れている。

 

「まだ、敵は来てない様だな」

「待って下さい」

 

ファントムの言葉を聞くと同時にバトラも何かを感じ取ったのか銃を片手で保持してハンド左手を握り耳の高さまで運ぶ『止まれ』のハンドサインだ。

 

「ファントムは目を細めながらコンクリートの奥を見据え、バトラはアイアンサイト越しにコンクリートの奥を睨み付ける。

 

「誰か居るな」

「誰か居ます」

 

お互いに確認する様な声音でバトラとファントムが呟くと車の陰から1人の女性が出てきた。

ブラウスの肩からは怪我をしているのか服が赤くなる程の出血と重りが付けられた様に片脚を引きずりながらバトラ達の前に現れる。

 

「な」

「え」

 

女性の顔を見た瞬間に慧とベルクトが驚きから声を上げる。

女性の顔の半分は無残にも腫れ上がりっていた。それを見た慧とベルクトは駆け寄ろうとする。

 

「行くな!」

 

八代通からの警告に慧とベルクトは足を止めて、『なぜ?』と聞くために振り返ると同時に八代通は凶相と言っていい程の表情を浮かべているのを見ると言葉を失った。

 

「撒き餌って奴だ。近付くなよ、殺されるぞ」

バトラの静かだけども何かを孕んだ声にバトラと慧がバトラの方を向こうとすると銃声が1発響くと女性は安堵の表情を浮かべたまま、床に沈んで行く。

女性が車の陰から銃により撃たれたのだ。

 

女性の死体が床に倒れた音を合図にしてか、暗がりから武装集団が現れると、バトラが同時に叫ぶ。

 

「ぼうっとするな! 動け! 逃げろ!」

八代通に引かれてつんのめりそうになりながらも柱の陰に困惑の表情を上げたまま隠れる。遅れてその柱にバトラに背中を押されたグリペンも入ってくる。

ベルクトはバトラと共に隣の柱へと隠れる。

 

「何故、殺されたんですか?」

 

ベルクトは嘘だと言ってくれと言う様な表情でバトラに聞く。

バトラは柱から顔を覗かせながら答える。

 

「拷問をされて、ここを吐かされた挙句の果てに俺たちを一網打尽にする為に傷付いた身体のまま引きずり出された。そして、俺たちが寄らなかったから用済みとして殺された。まあ、俺たちが寄っても俺たち諸共殺されるから結果は1人で死ぬかみんなで死ぬかの差だな」

「そんな……そんな淡々と答えないで下さい!」

 

ベルクトが怒りと哀しみに肩を震わせながら叫ぶ。

それをバトラは冷めた目で見つめる。

 

「陸地の戦場では独自の正義以外に価値は無い。陸地の戦場って奴は人間社会の本質が色濃く出る場所だ。道徳も倫理もそこに無い。ほぼ純粋なリアリズムが支配する。自分や仲間以外の命に価値は無く、捕虜は弾除けにして、子供に地雷原を歩かせる。そんな事が平然とやられ、許される世界だ。道徳や倫理、モラルなんて陸地の戦場では一切の必要は無い」

「そんな………」

 

バトラが柱から銃と顔を覗かせて引き金を引く。

3回程の小さな爆炎が闇を照らすと同時に1人の人間の灯火が消えた。

少し離れた柱からも炎が上がると1人の人間がもんどり打って、崩れ落ちる。そこにバトラが1発だけ銃弾を叩き込み、永遠に動けなくさせる。

 

朝倉が『後退』を身振り手振りで教えるとバトラはOKサインを送るとベルクトに八代通について行く様に伝える。

 

ベルクトは頷くと何故か動けないでいたグリペンの手を引いて、八代通を追いかける。

 

バトラは朝倉に頭の上に拳を持って行くサインを送り、柱に身体を隠しながら柱に身体を密着させて、体重を柱に預けて撃つ『依託射撃』で銃を撃つ。

朝倉に先に後退しろと身振り手振りで指示すると朝倉は1回だけ発砲するとジリジリと後退を始める。

バトラはここをカバーする為に残り、近付く敵から発砲する。今回は逃亡や脱出が目的の為に隠れている奴を無理して撃つ必要は無いからだ。

依託射撃と膝立ちで撃つ膝撃ちを多用しながら隙ができた瞬間に朝倉の位置までダッシュする事で追い付く。

 

そこまで統制されていないのかリロードタイミングが被る奴がいる事と弾切れまで撃ってからリロードする事。さらに銃の扱いに慣れきっていないのかリロードの速度もMS社や正規軍に比べると遅い為にできた方法だ。

バトラも弾が薬室に1発残っている状態で空の弾倉をリリースすると同時に弾が入った弾倉で弾き飛ばす。これはリロード前に弾倉を振ったり、叩いたりした方が良いと言われおり、弾倉を抜くのと新しい弾倉に衝撃や刺激を同時に与える為に行うバトラの行動だった。

 

弾倉がしっかりと入るのを身体に染み込ませた感覚で把握するとそのまま銃を構えて、引き金を絞る様にして動かし、弾を撃つ。

自動式の銃なので薬室に弾があればボルトを引かずとも発射できる。

 

バトラが射撃を開始すると同時に朝倉もジリジリと後退を始める。朝倉がある程度後退すると柱の奥からエンジン音が響き、レンジローバーが接近して来る。

後部ドアは開け放たれ、ファントムが半身を乗り出して叫ぶ。

 

「乗って下さい! 慧さん、朝倉書記官! バトラさんもです」

 

スピードを緩めたレンジローバーに慧と朝倉が飛び乗り、バトラも飛び乗るがベルクトとグリペンが乗っていない事に気付き、首を動かせば、銃声に少し覚えているのかバトラが退避するタイミングにバトラの半分の距離を動いていたとしか言えない位置に2人を見つける。

 

「クッソ!?」

 

バトラは素早くバックパックから瓶を取り出すとライターで瓶の口から垂れ下がっている布に火を付けて放り投げる。

瓶は縦に回転しながら放物線を描き、地面に落ちると一瞬で着火。辺りを火炎地獄へと変える。

それと同時にバトラは車から降りるとグリペンとベルクトの背中を押して車へと急がせる。

 

「!? 乗れ!」

 

首筋に蜘蛛が走る感覚を感じるとベルクトとグリペンを突き飛ばし、自分は柱の方へと転がり込む。

転がり込んだと同時にさっきまで3人のいた場所にグレネードが着弾する。

 

「クソ! グレネード兵かよ!」

 

別の通用口から同じ武装組織と思われる人間達が出てくる。火炎の目眩しも無い為に普通に撃ってくる。

さらに別のグレネードランチャーを持った武装兵がグレネードランチャーを構えているのをバトラは見つけ、叫んだ。

 

「先に行け! 後で会おう!」

 

それを聞き届けた八代通はベルクトとグリペンが乗ったのを確認すると急アクセルで車を走らせるのと紙袋が開け放たれていた後部ドアから車内に飛び込んで来たのは同時だった。

そしてそれがバトラが言っていたお守りである事をベルクトは瞬時に理解するとベルクトは後部ドアから飛び降りようとする。

「いけません!」

 

それをファントムが必死に押さえ込む。

 

離して下さい! バトラさんが!」

「貴方が行った所で足手纏いになるだけです! 貴方はバトラさんを死なせたいんですか! それとも一緒に死にたいんですか!」

 

それを聞いたベルクトは冷静になり外に視線を向けるとバトラがグレネードランチャーを持った兵士を発射の寸前に射殺するのが見えた。

 

「バトラさん!」

 

ベルクトの叫び声は車の排気音とグレネードの爆発に掻き消される。だが、爆死した他のグレネードランチャーを持った兵士のグレネードが屋根を撃ち、屋根の一部が倒壊する。

ベルクトが最後に見たバトラは崩れる屋根を背に火がついた瓶を通用口に向けて投げ、サムズアップを送るバトラだった。




次はバトラサイドとベルクトサイドで同時に書きたいな〜。でも、難しんだろうな。

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