ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

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サブタイは銀の魂風にしてみた。

作戦17 試験・訓練って大抵の場合は実戦試験になるよねを開始する。


作戦17 試験・訓練って大抵の場合は実戦試験になるよね

「急に圏外になる……ですか?」

 

「そうなんだよ。昨日いきなりな」

 

「聞いた事がありませんね」

 

小松基地の食堂で飯を食べながら昨日のいきなり圏外案件について、片宮姉妹に聞いてみる事にした。

 

「ですが、携帯のアンテナ基地がやられたなんて聞いてませんよ?」

 

「だからおかしいんだよ」

 

「それって、お化け電波の事じゃないか?」

突然の声に振り向くと慧が軽食を手に席の真ん前にいた。

 

「まあ、座れよ」

 

席に進めると慧が一言言ってから座る。

 

「で? お化け電波って何だよ」

 

「さぁ? 俺も詳しくは知らないけど、都市伝説であの世からの通信とか、そうなってる間はお化けが出るとかどうとか?」

 

「はぁーー、よく聞くパターンだな」

 

そう言った事が好きな奴がMS社に居るから、ごくたまにそいつからこう言った話が仕入れられるが、テンプレとも言えるくらいに使い古された内容だった。

 

「あの世からの通信……お父様とお話ししたいですね……」

 

「あら? 詩鞍も?」

 

そういえば、2人は父親をエジプトで亡くして、ネバダ砂漠で拾ったんだっけ?

 

2人の言葉に慧も何かを思い出す様な顔を作る。

ここのメンバーは俺もだが、大切な存在を亡くしているんだな。

 

まあ、今はそれ程に悲観するような段階は抜けたとはいえ、気持ちのいいものじゃない。

「しかし……あの世からね……仲間とは繋がりたいが、殺してきた敵とは繋がりたくないね」

 

向こうもそれが分かってるとはいえ、中には金目当ての傭兵も居ただろう。動き的に未熟な奴も居たし、そういう奴から恨まれてそうだ。

 

「バトラもそうなのか?」

 

意外という顔で訊いて来る慧にある意味で俺が驚いた。

 

「いや、民間軍事会社に入っていれば、仲間と死に別れるなんて日常茶飯事だぞ? 俺も親しい奴、そうじゃ無い奴含めて数えきれないほど死に別れてる」

 

「やっぱり、会って話したいものか?」

 

その言葉に俺が水を一杯含んでから話す出し事にする。

 

「そりゃな……自分が不甲斐なければ生きていたかも知れない上官に生かせてやりたいと思った部下、俺が着いていれば死ななかったかも知れない上官が……俺をどう思っているのかは聞いてみたいよな」

 

そう話した瞬間に周りの空気が重く暗い物になる。

 

「まあ、そんな事ができる訳じゃ無いし、死者の想いなんて言葉は生者の押し付けに過ぎない訳だしね。それに思い出して悲しみにくれる段階はとうに過ぎてるから」

 

そう言って瞬間にベルクトとサーシャの顔が思い浮かんだ。

 

ああ、確かに悲しんだが、今は普通になっている。これはベルクトからの共感覚に過ぎない。

何かしらの感情からなんてあり得ない。

 

「まあ、いいだろう。飯食ったら今日も1日の仕事を頑張っていこうか!!」

「今日は貴様は休みですよ!!」

 

聞き慣れた声でそう言われた瞬間に目の前が真っ黒になり、目に凄まじい激痛……

 

「イダダッダダダダダッダ!! 目が! 目がぁーーーー!!」

 

椅子から素振り落ちて、床を転げまわる。

 

誰かはわからんがこいつ! 生姜を顔にぶつけやがった!!

 

「お前の飛行時間を計算したら、会社の規定をオーバーしていた。よって、お前は今日一日は休暇だ!」

 

バーフォードか!! こいつ、生姜を顔に叩きつければどうなるか知ってるはずだろうに!

 

「何してくれんだよ!」

 

「それは飛行時間と生姜、どっちだ?」

 

「生姜に決まってるだろ! アホンダラ!!」

 

とりあえず、この後に顔を洗ったが、痛みが引いたのはそれから30分後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーフォードの野郎……何も生姜を叩きつけなくても……」

 

山葵ならいいのかと言われても、俺は首を横に振り回す。

そもそもの話で、刺激の強い物質を目に入れば凄まじい激痛に襲われるのだから恨みごと勘弁願いたい。

 

「予期せぬ休暇だし、RF-4TB-AZJの方も整備するか」

 

ここ最近のスクランブルで整備がちゃんとできなかった方だし、仕方ないが、こう言う日に簡易点検で済ませている整備をちゃんとしておいてやりたい。

 

「おお! バトラ、今日は待機だったけ?」

 

「いや、突然の休暇だ。だからRF-4TB-AZJの方をな」

 

「成る程、ああ、昼飯は12時前に行くと面白いぞ」

 

何が? と訊く前に作業に戻ってしまった班長に訊きに行くのも失礼だし、面倒だからやめた。

 

(12時ね……)

 

面白いものが見れるなら大歓迎だ。昼飯は1時位を予定していたが、1時間早めるのも一興だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作業終了後の11時半に食堂に赴く事にした。

 

自販機が並ぶエリアを抜けて、食堂の中に入る。

 

「あ、いらっしゃいませ」

 

白い髪に白い肌、赤い瞳が目立つ少女、グリペンが白い調理着とエプロンを着て、労働に従事していた。

「……なぁにこれぇ〜?」

 

まあ、わかる。ウエイトレスのようなものだと言うのはわかる。わからないのはこれを勧めた奴の考えと脳細胞の出来だ。

 

ベルクトの様な美少女が給仕をしたら、士気も上がるだろう。だが、ベルクトって機密だった様な覚えがあるんだが、良いのか?

 

「なぁ。なんで、ベルクトがウェイトレスみたいな事をしてんるんだよ」

 

「うお!!」

 

慧がすぐ後ろに居た。視界を少し、下に向ければグリペンも一緒に居た。

 

「とりあえず、席に座ろうか。こんなところで突っ立てるのもなんだしな」

 

「席は窓際にどうぞ。食券は後で回収に行きますから」

 

とりあえず、窓際の席に三人で座る。

 

「Aセット3つですね。追加の注文はありますか?」

 

「注文は無いが、質問が。何故にここで労働してるんだ?」

 

ベルクトが肩をすぼめて語りだす。

 

「昨日の夜に八代通さんに整備の仕事を手伝いたいとお願いしたんですけど……」

 

そこで言葉を区切るか……オチが見えてきた。

 

「班長が偶然、居合わせていたみたいで、危なっかしいからやめてくれと言われて」

 

だと、思ったよ。

 

「で? 給仕と……八代通だな」

 

これは確定ですわ。こんな事を言い出すのは八代通かマイケル軍曹のどちらか、そして、ベルクトの状況説明だとそんな事を言い出せるタイミングにいたのは八代通のみ。

 

溜め息を吐くと視界を多く捉えらる様になって、あるものに気づく事ができた。

 

「あれはなんだ?」

 

Yシャツ姿の自衛官に一般人と思しき人たち。基地じゃ見慣れない組み合わせだ。

 

「広報課がやってるPR活動。民間の人を受け入れて、基地の仕事を紹介する。午前の部が11時から11時半でその後に体験喫食」

 

ははん。八代通はイベントとして、ベルクトに給仕をさせる。

 

民間には思い出の1ページとなり、ベルクトは欲求を満たせる。そして、このイベントに合わせるために12時前の指定。

なんて事はない事情だ。だが、1つだけ言いたいのは。

 

(小松空港の方で一悶着あったらしいじゃねーか! それを忘れたんじゃねーだろうな! 八代通!!)

 

叫びかけたところをなんとか抑える。

 

ベルクトは配膳台の前に戻っていてたが、その背中が酷く頼りなく見えた俺は自然と立ち上がり、背後から話しかけていた。

 

「なんか、無理矢理に動いてないか? 戦闘機パイロットとして、戦闘機があるのに戦えないなんて事がどれだけのものかわかるけど、戦えないのはお前の責任じゃないだろう?」

 

その言葉にベルクトが振り向き、儚げな微笑を見せる。

 

「バトラさんは優しいですね。でも、少し違うんです」

 

「違う? それは一体……」

 

「最初は戦えなくて焦っているんだと思っていたんです。ですが、武器は有っても、それを積める状態じゃないと聞かされた時にああ、じゃあ仕方ないと飛べなくても、戦えないと思って同時にほっとしてしまたんです」

 

「……」

 

「私、ザイと戦うのが怖いんです」

 

「それは「いえ、わかります」……」

 

俺の言葉を遮って、話し出すベルクトの表情は自嘲と嫌悪感で暗くなっている様に思えた。

 

「心のそこに本能的な恐怖があるんです。アニマなのに、兵器なのに戦闘を嫌がっている。敵を怖がっている。最低だと思っているでしょう? 1人でじっとしていると自己嫌悪で窒息してしまいそうになるんです。だから、遮二無二動いているんです。もどかしさや責任感なんて上等なものじゃありません」

 

「……ベルクト……それは正常だと思う。俺だって昔は怖かったさ。でもな、今は恐怖を感じる事なんて殆ど無い。危機的状況を何度もくぐり抜けてきたからな。だけど、それは……」

 

続けようとした所で通路から声が聞こえてきた。

時間的に考えるとイーグルとファントムの訓練が終わってしばらくした位だ。

となるとイーグルとファントムの2人だ。

 

どうやらファントムに負けたイーグルが食堂に行こうとするがファントムも同時に食堂に向かいイーグルがご機嫌斜めになっている。

 

そして、ファントムがイーグルの敗北でもう一度抉ってイーグルがキレるといういつも通りの光景だった。

 

「ファントム。イーグルをそんなに苛めるな面倒くさい事になるんだから」

 

そう言うとファントムが息を吐いて口を開いた。

 

「それもそうですね。本当に嫌われてしまったら悲しいですからね。今買われた食券の代金をお支払いしましょう。おいくらですか?」

 

その言葉にイーグルが信じられないという様な目になる。俺もそんな感じの目になっている。

謝罪だけならまだしもまさか、奢ると来たんだ。

 

「380円」

 

「わかりました。では……と、ああすみません。5000円札しかありませんから、お釣りを貰えますか?」

 

ん? 札は5枚見えるが全部、5000円札なのか?

 

「えっと……4620円だね」

 

両手で計算してお金を取り出しイーグル。良かった4桁の数字の計算ができたか。

 

ファントムが小銭の620円を財布に入れて、何かに気付いた。

 

「1000円札がありました。ええっと……細かいのがちょっと増えてしまったので両替して貰えません? 無理なら良いんですが」

 

「……別に良いよ。その位、ご馳走して貰うんだし」

 

「5000円札と1000円札、それに貴方が持っている4000円で10000円札に交換して貰えますか」

 

「えーーっと……5+1+4だから、10だから……はい、10000円」

 

ファントムがお金を受け取って、微笑む。

 

「これで、採算は完了。仲直りです」

 

「待ちやがれ!」

 

こいつの神経に脱帽だ。まさか、高級傭兵の俺の前で金関係の不正を行うんだ。

ここがMS社だが、ここでこれを見逃したらMS社の高級傭兵として名が廃る。

「イーグル。財布にいくら入ってた?」

 

「15000円だよ?……あれぇ? なんで10000円しか入ってないよ。お昼ご飯奢って貰ったのに、どうして?」

 

うん。予想通りだ。

 

「最初の4620円はファントムの出した5000円に対してのお釣りだから、それを含めて10000円の両替をしちゃ駄目なんだよ。ファントムが1000円を出した時はもう620円を受け取った後だったから、その1000円は受け取るだけで済ませるのが正解だ」

 

「……イーグル、また騙された!?」

 

イーグルの頭でも、理解できたか。

 

「ファントムもなんで、こんな事をしたんだよ」

 

「学習しないイーグルが悪いんです。貴方が居なければ、笑い話が1つ増えたんですけどね。4桁の計算もできないポンコツ演算機現るって」

 

「ムッキー!!」

 

掴みかかろうとするイーグルを抑えてる。

食事するところで取っ組み合いの喧嘩は不味い。

 

そんな空間にベルクトが入って来る。

 

「あなたは……例の亡命機ですね。なんですか? 見ず知らずのアニマでも不正を見過ごせないというところですか。ご立派な正義感ですが少々立場をわきまえられてはいかがでしょう。半端な理解で仲裁に入るのは危険な行為ですよ」

 

横目で確認すると後ろを向いたファントムでファントムの表情がわからないが、ベルクトが一歩前に進んだ。

 

ベルクトが入った事に意識を割いてしまった俺の拘束を抜けようとさらにバタつくイーグルを押さえつける攻防を展開し直す。

 

「お金がないなら私が出しますから!」

 

……。

 

食堂中が無言の空気に包まれる。

 

「ご、5000円くらい差し上げますから。そんな事で自分を汚さないで下さい。どれだけ貧しくても心だけは豊かに保っているべきなんです!」

 

「ま、貧しい!? 私が?」

 

「いくら必要なんですか? 10000円ですか? 20000円ですか? なんだったら、私から八代通さんに頼んでも」

 

笑いのダムが決壊した様に笑ってしまう。

 

ファントムはほんのおふざけのつもりだったが、ベルクトはなまじ本気の対応の所為で酷く喜劇的な光景になっていた。

 

「バトラさん……笑い過ぎです」

 

「すまん……プクク……耐えられない……フハハハハ」

 

ベルクトはキョトンとした表情で何がおかしいのか気付いていない。そんなところもサーシャに似ている。

 

失った時が戻ってきた様で嬉しくも、楽しい。だが、同時にベルクトはサーシャでは無いとわかっているのでそれが哀しくも、寂しい。

 

「まあまあ、おふざけも過ぎると一番惨めになるのは自分だとわかっただろ?」

 

笑いながら話すとファントムが鼻をを鳴らす。

 

「言ってて下さい!」

 

イーグルに押し付ける様に5000円札を渡す。

 

「それよりも、食事はいいんですか?」

 

グーーと腹の音が鳴った。男だから、恥ずかしくは無いが女性に聞かれると少し来るものがある。

 

「全く、ご一緒しませんか?」

 

それは良いなと言おうと思った瞬間にサイレンが鳴った。

 

ガイドの自衛隊員が見学の民間人に落ち着いてと声を上げる。

 

「全く、レディーとのランチ位はゆっくり、楽しくしたいだがな」

 

「あら、口が上手いですね。ですけど、何処に行こうとしてるんですか?」

 

「ハンガーだろ?」

 

「バーフォード中佐から言われてますが、貴方が飛ぼうとした時は殴ってでも止めろと言われてますので。休暇なのでしょう? それも会社の取り決めで休まなければならない。違いますか?」

 

畜生。バーフォード中佐め! 外堀を埋めてやがった!

 

ファントムが携帯端末をしまって、イーグルに向き合う。

 

「ベクター270と330で二個編隊確認されている様です。接続水域上で叩き落とします。一緒に出ますよ!」

 

「言われなくても!」

 

鼻息荒くイーグルが駆け出す。俺にファントムが柔らかい笑みを浮かべて向き直る。

 

「明日は私たちが休ませて貰いますから、今日はゆっくりと英気を養って下さい。疲労困憊で空に上がって撃墜されても困りますからね。では、ご機嫌よう」

 

コルセットスカートの裾を揺らせて去って行く。

 

そんな中でもベルクトは下唇を噛み、白く細い指がエプロンを掴む。

俺はどう声を掛けたら良いか分からなかった。ザイや戦闘機を落とし方を知っていても、悩みの落とし方は知らないのだ。

 

「わかりました。グリペン」

 

「わかった」

 

慧が食堂を出て行った。スクランブルの追加か。最近は多い。

 

そう思った瞬間に端末が震えた。

 

《すまない。自衛隊からの仕事だ。飛べる人間がお前しかいない》

 

バーフォードからの連絡だった。

 

 

 

 

 

「すまな……謝る必要は無いな」

 

こいつ……休みを問答無用で奪っておいてそれは無いだろう。いや、飛びたかったけども。

 

「自衛隊がSu-47の改修が完了した。試験飛行の護衛とエスコートをお前に依頼した。動けるのがお前しかいない」

 

Su-47に様々な部品が追加されている様には見えない。前進翼機はその構造上、主翼に武装が載せずらい。恐らく、胴体の格納式につけたのか。

 

「バトラのスホーイのパーツをあちこちに使った。ロシア製だし、同じスホーイ製だからバランスの問題は無いだろう」

 

戦力になるなら早急にしたいという事か。

 

「俺は構わないが、ベルクトはどうなんだ?」

 

飛ぶか飛ばないかは個人の意思だ。強要はできない。

「やれ……ます」

 

硬い表情でしかし、決意した者の目で宣告する。

 

「じゃあ、飛ぼう。気負うなよ。リラックスして行こう」

 

 

 

 

 

 

場所は日本海上空。

 

白く巨大な常識では考えられない形状の飛行機が青く巨大な常識的な形状の飛行機の後ろを追いかける様に飛んでいる。

 

<<こちらはMS社所属のカノープスだ。ALTAIR01、BARBIE05。調子はどうだ?>>

 

<<こちらはALTAIR01だ。本気の調子は良好。いつでも、どうぞ>>

 

<<BARBIE05です。機体に異常は確認できません>>

 

<<了解しました。今回のBARBIE05のオペレートを担当するマイケル・アリーナです。今回の試験は武装搭載状態での飛行試験と武装展開状態での飛行試験、並びに武装使用時の試験です>>

 

<<ALTAIR01担当オペレーターのグレアムです。今回の試験の方法の説明をさせていただきます。飛行試験はバトラを追い掛けるだけですが、武装使用試験はこちらが操作する。UAVを撃ち落とすだけなので簡単です>>

 

<<それよりも高く積み重ねた皿を運ぶ方がよっぽど難しいですよ>>

 

<<マイケル軍曹>>

 

<<はい。なんでしょう?>>

 

<<ここは敵の勢力圏近くだ。無駄話は程々に早く済ませよう>>

 

<<バトラの意見も正論だ。早い所、初めてしまおう。バトラは高度5000まで上昇>>

 

<<ヴォルコ>>

 

バーフォードの言葉を受けて、バトラの機体が上昇する。

 

<<続いて、BARBIE05も上昇して下さい>>

 

<<りょ、了解です>>

 

ベルクトの機体もマイケルの言葉通りにバトラの後を追う様に上昇する。

 

<<異常は無いか?>>

 

<<大丈夫です。機体も私も特には>>

 

<<貴機の機体にはSu-47の以外の機体のパーツが組み込まれている。通常機やAZJ機なら問題無いだろうがドーター機はそうはいかないらしい。ほんの些細な事でもあったら、隠さずに報告してくれ。バトラは高度3000まで急降下。ベルクトも後を追って急降下だ>>

 

バトラの機体を追って、ベルクトも急降下する。高度3000で、バトラがベルクトを2番機の位置に来る様に機体位置を調整する。

 

<<ベルクト。調子はどうだ? 慣れないGに気分に変化はあるか?>>

 

<<ありがとうございます、バトラさん。大丈夫です>>

 

<<機体にも問題無いな。それでは武装展開状態で同様の軌道を行ってくれ。それが終わったら、機動試験だ>>

 

武装をウェポンベイから取り出した状態で上昇と降下を行い、武装をしまった状態で左右の旋回にスプリントSにシャンデル、ハイジーヨーヨーを行う。

武装を出した状態でも同様の機動を行う。

 

<<試験を武装使用試験へ移行する。前方を飛ぶUAVをミサイルで撃墜するんだ>>

 

<<了解です>>

 

前方を飛ぶUAVに接近して、ロックオンする。

 

<<FOX2>>

 

Su-47の腹からミサイルが白い尾を引きながら飛んでいく。

 

そして、UAVにミサイルが命中する。

 

<<ナイスキル。次です>>

 

次のUAVが現れる。

 

<<今回のUAVは機動力が強化されている。QAAMを使え>>

 

<<わかりました>>

 

<<BARBIE05が兵装切り替え>>

 

胴体のウェポンベイからQAAMが出てくる。

 

<<BARBIE05、目標をロック>>

 

<<FOX2>>

 

QAAMが発射されて、UAVを撃墜した。

 

<<3機のUAVを出現させたが、撃墜するのは真ん中の機体だ>>

 

<<了解しました>>

 

3機のUAVの真ん中のみをロックオンして、撃墜した。

それ程、動く的では無いので簡単に終わった。

 

<<良し、必要なデータは手に入ったそれでは帰投する>>

 

<<バーフォード! 左だ!>>

 

<<どうした。ALTAIR01……これは……9時の方向より未確認機の接近を確認した<<バーフォード中佐! これを!!>>なんだと……>>

 

バーフォードの息を飲んだ音が通信機から届いた。

 

<<EPCMを確認した。ザイだ。自衛隊との契約に従いこれを撃墜する。ALTAIR01はこれを迎撃せよ>>

 

<<ヴィルコ>>

 

バトラが転身して、正面からかち合う軌道を飛ぶ。

 

<<あの、私はどうすれば……>>

 

<<貴機はまだ、飛行訓練を行っていない。飛べるだけの新兵だ。自衛用にマスターアームをオンにして小松に帰投せよ>>

 

<<ALTAIR01がエンゲージと同時に1機を撃墜! 続いて、2機を撃墜! 凄い>>

 

マイケルの言葉にベルクトはバトラの消えた方向を見つめながら、恐怖と悔しさに唇を噛む事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少々、遡る。

 

<<FOX2>>

 

前方から迫る機体は5機。

1対5なら多い様に思えるがM型ザイならば、バトラが苦戦するような相手では無い。

 

<<インガンレンジ、ファイア>>

 

20mmの機銃掃射2秒をした直後にヨーをして、30mmの掃射を1秒加えて2機を撃墜する。

 

<<ナイスキル>>

 

グレアムの言葉に内心でガッツポーズをしつつ、残りの1機にロックオンしてミサイルを発射し撃墜するも、ザイは一直線にカノープスとベルクトの方に向かう。

 

「なんだこいつは……俺は眼中になしか?」

 

最後の1機をミサイルで撃墜した。

 

その直後に接近警告が鳴り響き、急降下を行う。

バトラの上空を1機のザイが飛んで行った。

 

「レーダーに反応せずにセンサーに反応!? ステルスか!? それにあの速度! すぐに追いつくぞ!」

 

<<どうしたバトラ。機体の高度が著しく下がったぞ>>

 

<<バーフォード! 新型だ! ステルス搭載の直線番長だ!>>

 

告げた瞬間には増槽を投棄して、アフターバーナー全開で追撃に入った。

 

<<なんだと! クッソ! こちらのレーダーにも映らないのか!>>

<<BARBIE05は周辺の警戒を厳にして下さい! あなたの目だけが頼りです!>>

 

マイケルが注意を勧告した瞬間にはザイは射程にベルクトを収めていた。

 

(クソ! 速すぎて、ロックオンできない!)

 

バトラの電子機器は自機の速さにロックオンが乱れていた。

 

<<BARBIE05! ブレイク!>>

 

ベルクトが慌てた様に旋回するも、ザイは機銃を発射した後だった。

 

ベルクトが目を閉じたまま操縦桿を倒すが、間に合わないというのはベルクト本人がわかっていた。

 

だが、一向に衝撃の痛みも来なかった為に目を開けると青い色の戦闘機が黒煙を吐きながら、目の前を横切っていた。

 

<<バトラさん!>>

 

ベルクトが叫けぶが通信機からは応答が来なかった。

 

そして、ベルクトとバトラの上をミサイルに追いかけながら通りすぎるザイが2機の横で爆弾した。

 

バトラがベルクトの盾になる直前にミサイルを投下し、ミサイルの追尾機能を使って追尾させていたのが命中したのだ。

<<……ザーー……ト……か>>

 

途切れと雑音が混ざる通信がベルクトに届いた。だが、ベルクトはそれがバトラのものだとすぐに感付いて、通信機に声を送る。

 

<<私は無事です。でも……バトラさんが……>>

 

<<ザーーザーー……た……こ……み……くがザーー……お釈迦>>

 

<<送信機能に障害ありだな。その損傷では右翼が完全に動かないが他に問題は無いな>>

 

<<ザーーザーーザーー>>

 

雑音しか聞こえなくなった通信機。

 

<<まあ、主翼はもげていないから問題無いだろう>>

 

その後はフラつく機体を制御して、無事に小松に帰り着いたが暫くの間はF-4での飛行は不可能なレベルの損傷だった。




最後の戦闘じゃなくて、前半と中盤の日常が難しかった。

日常系が書ける人は尊敬するわ。

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