前置きはこの辺にしときます。
ファントムと信頼関係を築けたバトラ達は新たな戦力も加えて、遂に第二次海鳥島攻略戦を開始する。
失敗はもう許されない。日本の存亡が掛かった作戦が始まる。
作戦9 「第二次海鳥島攻略戦」を開始する。
「諸君。夜分遅くにすまない」
午後9時、バーフォードがブリーフィングルームに入るなり話した言葉だ。
集まったメンバーは、ドーターの
グリペンは火器管制の、慧は操縦の習熟訓練の為、欠席である。
「早速、次なるミッションの説明……の前に紹介したい奴がいる。バトラ」
「はい」
バトラが立ち上がり、机の後ろに立つ。
「知っている奴がいると思うが改めて自己紹介しておく。コールサインはANTARES02、TACネームは今まで通りバトラだ。何か聞きたい事は?」
「はい!」
イーグルが我先にと手を挙げる。
「なんで今まで名前を変えてたの?」
「三年前の戦争終結からM42飛行中隊の事を嗅ぎ回るマスコミから逃げる為だな。何処から手に入れたか知れないがアンタレス隊の蠍の絵の部分だけ出回ったんだ(姿をくらませたのは別の理由もあるけどな)」
「へぇ〜そうなんだ」
イーグルの質問が終わった瞬間に詩鞍が手を挙げる。
「はい。私達はどうなりますか?」
「二人は引き続きアルタイル隊メンバーとして行動をしてくれ」
詩鞍の質問にバーフォードが答える。
「他は無いな?」
そう聞くバトラだが、他に質問が上がる事はなかった。
「まあ、色々言ったが部隊名が変わる程度だ。マスコミに情報を渡さないでくれと言う以外は何時も通りだ」
バーフォードがバトラの紹介を締めくくり、本題に入る。
作戦説明の前にバトラの愛機は95パーセントの修復が完了して明日の作戦には間に合うそうだ。それでは、作戦説明を開始するぞ。マイケル軍曹頼む」
「了解しました、バーフォード中佐」
プロジェクターのカバーを外して、ホワイトボードに一枚のスライドが映る。
「見覚えがあると思う。これは
スライドに映っていたのはFOBを真上から撮った物だった。
「敵の機数は多く見積もって110機程度と考えているが、敵の防空設備………」
スライドが入れ替わり、ガラスで作られた大型ミサイルが映る。
「この地対空クラスター弾が厄介だ。1発当たりの散布領域は1000Mと狭いがこれを
写真が切り替わり、炸裂した時の写真とFOB全体の写真になる。
この写真はAJZ戦闘機の全天周モニター用のカメラの映像を使用したのだ憶測する。
「これは複数弾撃つ事で隙間を補っている。これの発射施設が最低でも5基ある」
FOB全体写真が拡大した物に変わり、FOBの各所に赤い丸が付く。
「この事態を受けた台湾が正規空軍と契約中のPMC部隊の投入を決定した。ここまでで質問がある奴はいるか?」
「バーフォード中佐。台湾の戦力の仕事は?」
バトラが真っ先に手を上げて答える。
「それは後で言うところだった。他には………「海上自衛隊は動くんですか?」それも台湾軍の仕事の時に話すつもりだった。他は無いか?………無い様だな」
バーフォード中佐が質問を締め切り、目を伏せる。こう言う時は何か嫌な事を言う時だと俺を含めて、古株の人は全員知っている。
「まずは台湾だが、台湾の戦力は直掩機を引き剥がす為の囮の様な物だ。ベルカ所属のインディゴ隊はこの部隊を本命に思わせる為の味付けだ」
その顔は苦虫を噛み潰したような顔だった。
バーフォード中佐は囮作戦の様に仲間を犠牲にする作戦を嫌う。
勿論、使わざるを得ない状況なら使うが必ず生還できる目処を作ってから行い、作戦に参加する者に謝る必要も無いのに必ず謝る。
だから、信用も信頼もして着いて行ける。このアンタレス隊を指揮できるのは世界中の何処を探してもバーフォード中佐だけだ。
「了解しました。日本の対応はどうですか?」
「海上自衛隊の派遣の話もあったが、台湾軍が動いた事と首都防衛の為の戦力として、ミサイル艇と護衛艦・護衛空母は佐世保、及び横須賀に集結中だ」
日本の経済と政治が東京に集中しているので東京防衛は絶対の生命線である。
「さて、私たちの目先の問題がこれだ」
スライドが件のクラスター弾の写真に変わる。
「ザイFOBの攻略はこの地対空クラスター弾の攻略が不可欠だ。設定高度まで凄まじい速度で飛ぶ為、発射後の撃墜は難しい。となれば、発射前に潰すしか無い。よって「「私達のA-10ですね?」」………と、言いたい所なんだが……」
FOBに赤丸のついた写真に変わる。
その赤丸が赤線で繋がれる。
「見ての通り、発射施設が離れ過ぎている。なので、A-10の速力では2発以上の打ち上げに対処出来なくなる。そこで我々はバトラの意見具申を受けて、ロシアにて改造を終えたM56飛行中隊【デネブ隊】に救援を要請。これが受理された」
「デネブ隊は動いてくれたか!」
椅子から立ち上がってしまう。デネブ隊なら発射施設破壊は難しいことじゃ無い。
「ああ、快く引き受けてくれた」
バーフォード中佐が頷きながら答える。その顔は自信に満ちていた。
「あの……デネブ隊ってどんな部隊なんですか?」
バーフォードとバトラの二人で話しを進めていると詩鞍が手を挙げ、控え目な声で質問する。
その質問に二人が「しまった」という顔になる。
「すまない。君はまだ、他の部隊については余り知らないんだったな」
バーフォードは帽子を被り直す。
バーフォードはこういった失敗をすると帽子を被り直す癖がある。
その癖を知っているバトラがバーフォードの行動を見てバトラが説明する
「俺たちMS社には爆撃を得意とする部隊が3つある。一つは俺たち【アルタイル隊】、もう一つが【ベガ隊】、そして最後に今回の【デネブ隊】だ」
「全部、夏の大三角形を形作る星座のα星ですね」
その言葉を聞いて詩鞍が率直な感想を漏らす。
「MS社所属の航空部隊は天体名を部隊名にする決まりがある」
暗に偶然では無いと言うところを伝える。
「へぇ〜」と納得する詩鞍にバーフォードが補足説明を入れる。
「まあ、爆撃を得意とする所も部隊内で護衛機も持っている点でも、夏の大三角と被ったのは偶然の産物だ。まあ、得意とする爆撃方法は違うがな」
「デネブ隊の爆撃は何なんですか?」
詩苑がバーフォードの最後の言葉に疑問を持ち質問する。
「水平爆撃だ。しかし、ただの水平爆撃じゃ無い」
「それは一体?」
バーフォードが指示を送り、スライドが白鳥座を背負う白鳥の絵に変わる。
その絵を指示棒で刺して、説明する。
「彼らの得意とする所は敵防空網に掻い潜る所と敵中枢への直接攻撃だ」
「私達はAー10の搭載力と誘導性に物を言わせた防空網の壊滅、もしくは破壊ですから確かに違いますね。でも、それだと普通では?」
最もらしい意見を言う詩苑にバーフォードが質問する。
「敵防空網の突破の方法を回避という観点で答えてみろ」
「簡単です。防空網のレーダーに掛からないように低空か高高度で接近する。です」
「模範解答だな。だが、彼らは言うならば防空網を速度任せに振り千切り、爆撃を行うんだ」
「「へ?」」
惚ける詩苑、詩鞍
「簡単に言うとミサイルを引き剥がす位の速度で飛んで爆弾を落とすからレーダーに映ろうが映らまいがミサイルが当たらない。だから防空網を突破して爆撃できる」
「シミュレーターで自分が撃ったミサイルを追い抜かして自分の撃ったミサイルに自分が追われるという謎現象が発生した位だ」
バーフォードの説明の後にバトラが説明を加え、どれ程の速度かをわかりやすく説明する。
「「「「………………………」」」」
バトラとバーフォードの説明を聞き、空いた口が塞がらない片宮姉妹とアニマペア。
「因みに16機の編隊な」
「それって、中隊と言って良いかも分からない数ですね」
「MS社は4機から16機は中隊規模で登録されるから問題無し」
バトラの言葉にファントムが突っ込み、バトラが何食わぬ顔で話す。
「衝撃を受けていると思うが、現実に戻って来てくれ」
バーフォードが手を叩き、全員を現実に戻す。
「尚、彼らは作戦当日まで小松基地にて待機、出撃するが彼らは作戦当日は別行動だ。だが、協働攻略作戦である事に変わりは無い。そこで我々はデネブ隊援護の為にアルタイル03と04のAー10に対地兵装と対空兵装を搭載して貰う予定だ」
「発射施設はデネブ隊の仕事でしたよね?なら、私達には対空兵装のみを施した方が良いのでは?」
バーフォードの言葉に聞き返す詩苑。
「速度で振り切る彼らだがある対空兵装には弱い。わかるか?ヒントは魔王を撃墜した武器だ」
「???」
頭をひねる詩鞍だが、答えが浮かば無い。
「わからんか、対空機銃と対空高射砲だ」
スライドに上記の二つらしき物が映る。
それもザイの兵器の特徴なのか七色に光っている。
「君達二人には危険な仕事だが、耐弾性能の高さを利用して確実に、素早くこの二つを無力化してくれ。この二つが5割を切ったらデネブ隊を突入させる。デネブ隊の突入後はファントムの直掩に入ってくれ」
「「了解しました」」
バーフォードがイーグルと目を合わせる。
「イーグルはグリペンと共にアルタイル03と04の援護をお願いしたい」
「うん、わかったよー」
バーフォードは頷き、バトラに目を合わせる。バトラもバーフォードに目を合わせる。
「クラスター弾発射施設を破壊後、ファントムは速やかに海鳥島上空に侵入。侵入後は巡航ミサイルの誘導に入ってくれ」
「了解しました」
ファントムが笑顔で答える。
「バトラはファントム突入前と突入後の直掩を頼む。君の得意とする制空戦闘では無いが我がMS社が誇るエースの一人だ。必ずやり遂げられると信じている」
「……………」
無言の敬礼を持って答える。
バーフォードも無言の敬礼で返す。
「尚、グリペン達には私から伝えておく。以上だ。明日の作戦に備えてくれ」
一斉に席から立ち上がり、敬礼する。
その敬礼から滲み出る物は人により様々だった。
(ん、あれは?)
シュミレーターでファントムと訓練を重ねているとグレアム軍曹から「
「聞いてい………あ、慧さん」
ファントムも慧君の姿を見つけた様だ。
「如何しました?」
「如何したのか?」
二人同時に同じ様な事を言って恥ずかしくなり、右斜め上を向く。
横目で確認した時、ファントムも同じなのか、俯き気味だった。
「あ、ああ………仲良いな」
突っ込まないでくれ。
「まあな。次の作戦はファントムとロッテを組む様な物だし」
「ええ、まあ。次の作戦では二機編隊を組む様な間ですしね」
また、二人同時に同じ事を言ってしまいまた恥ずかしくなって二人同時にそっぽを向く。
「そうか………二人は怖く無いのか?」
慧君が唐突に聞いてくる。
そのおかげか恥ずかしさが無くなった。
「慧君は飛ぶのが怖いのか?」
後部座席に乗って空戦に参加していたのだ。今更、怖くなると言う感情が理解出来ずに聞き返してしまう。
「飛ぶのが怖い訳じゃない。ただ………」
「ただ?」
顔を伏せる慧君。その姿は恥ずかがっている様にも見えるが覚悟が出来ていない様にも見えた。
「死ぬのが怖い。それ以上に俺の操縦でグリペンを死なせるんじゃないかと思って」
成る程。自分以上にグリペンを死なせるのが怖いか………それは心配だが、同時に裏切りでもある。それを気付かさせなければならない。
「慧君。グリペンは君に命を預けると言ったんだ。なら、預けられた人間としてしっかり返してやれ。それにデミトリ中佐の教えはそんな物だったのか?」
慧は凄まじい速度で首を振る。
「だろ?なら、今の自分に出来ることを正確に知り、そして実践すれば良い。無理なら救援を出せばいいしな」
「………サンキュー、気が楽になったよ」
その顔には確かな覚悟が確認できた。
「なら、あそこのレーダー・火器管制官とのお話は要らないか?」
そう言うと「あ!グリペン!」と言いながら近づいていった。
「それで良い。お前は一人で闘うじゃない。後ろの相棒と闘うんだ。一人で抱え込むなよ」
俺のこの呟きはきっと聞こえないだろうが、二人なら無意識に気付く筈だ。
「行ってしまいましたね。自分の疑問では無く、悩みが解決した途端に」
「だな」
ファントムが話し掛けてくる。
「それとさっきの発言には異様な程に実感がこもっている様に思いましたけども?」
中々に鋭いな。偵察機のアニマだからか?
「まあ、ファントムなら口を割らんだろう」
「言い振らす趣味は無いですよ?」
「嘘こけ!三沢で情報流してただろ!」とは言わない。彼女からはこの前の様な追い詰められた感じがなりを潜めているから大丈夫だと判断する。
「俺も後部座席に乗っていたんだよ。その時に実際に言われた事を言ってやっただけだよ」
『貴方に私の命を預けている。なら、必ず返すから私にも貴方の命を預けてくれない?』
複座の戦闘機に乗り合った以上は運命共同体。それこそが複座戦闘機乗り達の絆の強さなのだ。
「そうですか………」
ファントムが顎に手を当てながらこっちを見つめる。
女性に見つめられるのは苦手で俺は夏の夜空を見上げる。
(慧君の場合は………)
慧君の場合はザイと戦う覚悟はあっても墜とす覚悟は無かった。それが今回、急に必要になっただけでなく後ろに別の命を乗せていると自覚して、不安と恐怖に押し潰されかけた。
だが、彼は一人じゃない。その不安を拭い去ってくれる、恐怖と共に戦う相棒が彼にはいるのだ。
(俺もそれが出来たら、あの人を失わずに済んだじゃないだろうか?)
あの人と俺はお互いに優しい性格だった。いや、優し過ぎた。
お互いがお互いを心配し過ぎて、思い過ぎたが故に………
(あの人の悩みを…恐怖を…そして………)
心の悲鳴を聴けなかった。
「何か悲しい事でも思い出しましたか?」
ファントムが聞いてくる。
(こいつは…………)
前々から思っていたがファントムは人の内心を掴むのが上手い。
まあ、戦術偵察機らしく情報戦に強いのはらしいがな。
「まあ、思い出しただけさ。彼らを見ているとね」
視界を慧君とグリペンに向ける。
ファントムも二人を見る。
「その悲しみは私が拭えますか?」
二人を見ながら喋るファントム。
「僚機か長機、後部座席に乗ってか?」
「貴方のお好みの物で」
「無理だな」
同じ日本人でファントムライダー。容姿もファントムを黒髪にして、そのまま成長させた容姿だが………
(あの人とは決定的に違う所がある)
ファントムが全より一であるがあの人は全より十。M42飛行中隊を中心に考えていた。
そして、ファントムは俺の後ろ、後部座席に座りたい。しかし、俺が後部座席に座ったのだ。どっちみち、ファントムに代わりは務まらない。
「そうですか………でも、諦めませんよ?何時の日か貴方の後ろか前に着きます」
「背中に乗せるつもりは無いし、前に着いたら青い蠍の毒にやれて、後ろに着いたら青い蠍の呪いにやられるぞ」
「股がらせるのは問題無いですか?」
RFー4EJの方に乗れというわけですか?
「誤解を受けそうな言い方はやめろ」
『うふふ』と笑うファントムにこいつはこれからも似た様な事を言うだろうなと予感めいた物を感じる。
「では、何故に飛び続け様と?」
「蠍によって地上に縛られた英雄は蠍が消えてから空に昇る」
その言葉にファントムが首を捻る。
視線を夜空に戻す。
夏の夜空には未だに蠍が天を昇っていた。
周りにいつもより多くのエンジン音が響く。
東シナ海の平和を護る為に敵を討つべく。鋼鉄の鷲達が、猪が、亡霊が、先代の名を継ぐ者がその心臓を震わせる。
鋼鉄の鷲達の大部分を占める灰色の鷲は皆、先だった者が成そうとした事を成そうとする覚悟を纏っていた。
そんな鷲達の仕事は台湾空軍の間接援護と評して、二方面作戦に思わせる為に台湾空軍の逆側からFOBに接近する。
この作戦は協働攻略作戦が二つ重なるという作戦だった。
(まあ、IUPF時代にそんな事もあったけどな)
少し、昔を思い出す。
<<お先に>>
ファントムの通信で現実に戻ってくる。視線を動かすと、もう俺とファントムしか居なかった。
<<ああ、行ってくれ。俺は後で飛ぶ>>
ファントムが離陸した後で離陸する。
作戦空域に向けて、飛びながら編隊を作る。
<<帰ったら海水浴でもするか?>>
<<え?>>
慧君が無線が一定範囲に全て聞こえると知らずにグリペンと会話する。
<<それは良いですね>>
<<え!?>>
詩苑が会話に割り込むと驚く。肉声で話していたつもりなのだろう。
<<水着を持っていません>>
<<水着……ない>>
詩苑が通信を入れる。
<<買ってやるよ。好きなやつ>>
<<ビキニ?>>
慧が悪ノリで『サイズは?』と聞こうとした時、バトラが通信を入れる。
<<別にぜんr<<それ以上言ったら75mm、叩き込みますよ?>>冗談だからロックオンやめて>>
詩鞍がガチでロックオンしてた。
75mmなんて叩き込んだらパイロットは機体諸共バラバラになる。そんなことを思うバトラの背中は冷や汗で濡れていた。
<<レディに言うことじゃ無いですね>>
隣のファントムから通信が入る。
<<戦場に女も男もあるか?>>
<<そうですけど………せめて、紳士らしくしようとは思わないんですか?>>
<<じゃあ、1万やるから好きな奴を買って来い。で、当日見せろ>>
<<そこで付き合うと言わない辺りが紳士度が低いですよね>>
ファントムがなんか言ってるが無視だ。
<<楽しげな会話もここまでだ。デネブ隊が通信可能領域に入った。中継する>>
カノープスのバーフォード中佐からストップが入った。
<<俺はM56飛行中隊デネブ隊護衛班所属の班長のオディロン・テルミドールだ。コールサインはDENEB01だ。TACネームはデネブ01だ>>
渋い声が通信機から流れる。
<<私はM56飛行中隊デネブ隊爆撃班所属の班長でイヴェット・テルミドールよ。コールサインはDENEB09で、TACネームはデネブ09よ>>
澄んだ女性の声が通信機から再度、流れる。
<<他にも14人居るが時間の関係で省略させて貰う>>
カノープスが通信を入れて、暫くすると16機の編隊が背後に現れる。
その編隊の機体は巨大だった。
<<バトラ。あの機体は?>>
慧君からデネブ隊の機体を見て通信を繋げて来た。
<<あれは【Mig25 フォックスバット】だ。高高度迎撃機で【Fー15 イーグル】開発の基準になった機体だ>>
<<って事はかなりの高性能?>>
<<高高度飛行と速度性能はな>>
彼ら、彼女らの機体はかなりの魔改造してるので原型機ではの話だがな。中身の電子機器はMig31だし。
<<各機、作戦空域に入る。気を引き締めろ>>
≪了解≫
バーフォードの通信で全機が戦闘態勢に入る。
<<ザイの大編隊を捉えた。データリンクを開始する>>
この連合部隊の中で最高の索敵範囲を誇るRF-4TB-AZJがザイの大編隊を捉えた。光点の総数は………どう見積もっても110機を超えていた。
<<………計算間違えたか?>>
バーフォードが軽い現実逃避に入りかけたか所をオペレーター組がなんとか繋ぎ止める。
其の間の通信機はかなり混沌としていた。
<<どんな数で来ようと雑魚が集まった位で俺たちは墜とせない。だろ?>>
<<アートスの言う通りだぜ。バーフォード中佐よ>>
<<了解した。DENEB05、06>>
数の多さに一瞬驚くバーフォードだが、デネブ05のアートスの発言とデネブ06のクレイグの発言で納得する。
<<護衛班の各機に告ぐ、
敵編隊との距離が50キロを切りかける頃にデネブ01からデネブ08までに指示を送る。
≪了解≫
了解の言葉を合図にRー40Rミサイルが発射される。
彼らのMig25はMig31の兵装システムは可能な限り同一にされている為、Rー40Rを運用できる。
発射されたフェニックスの数は32発で、その全てが一直線にザイの群れに進む。
<<ANTARES02にミサイルの誘導権を与えろ>>
その通信が入って直ぐにAJZ戦闘機のデータリンクを介してRF-4TB-AZJのディスプレイに誘導権が譲渡されたことを示す文字が浮かぶ。
それと同時にRF-4TB-AZJの後部座席に載せられたコンピューターが最適な誘導位置を導き出す。
バトラはその場所にミサイルを誘導しようとする。
<<カノープス。ミサイル誘導に入る>>
こういった誘導能力の強化が図られたRF-4TB-AZJでも単座である以上はミサイル誘導中は操縦が疎かになる。
<<私がやりましょうか?>>
ファントムは人がやるより、アニマである自分がやった方が良いと思い通信を入れる。
<<ファントムは後で大量の巡行ミサイルを誘導するだろう、頭を休ませておけ>>
<<あら、お優しいですね。お任せします>>
バトラの気遣いに正直に甘えるファントム。あのDACTがなければこうはいかなかっただろう。
<<了解した。各機前に出て、ANTARES02を援護しろ>>
バーフォードの指示に従い、後ろにいた機体が前に出る。
誘導中で単調な飛行しか出来ないRF-4TB-AZJがロックオンされにくくする為である。
R-40RミサイルはRF-4TB-AZJの誘導に従い、ザイの編隊に突入する。
32発のミサイルはどれかがほったらかしにされる事なく誘導されているのにRF-4TB-AZJの誘導能力の高さとそのパイロットの技量の高さが伺える。
32発のミサイルはザイの編隊内に別れて侵入した。
<<弾着まで3…2…1…弾着!>>
グリアムの宣言と同時にRー40Rが共振すらも考えられた位置で爆ぜ、内部の燃料を一瞬で気化、爆発させてザイを焼き尽くすか、その揺れで機体を大きく揺さぶり味方同士でぶつかり合うザイも居れば、海面に叩きつけられ粉々になる機体もいた。
<<キャアアアアアーー!?>>
<<キャアアアアアアア!?>>
<<うわわわわわわ!?何!?>>
<<キャア!?何!?>>
<<なんですか、この揺れは!?>>
その爆発のエネルギーは大気を押し出し、離れた位置を飛んでいる筈の味方陣営にまで衝撃を伝えた。
デネブ隊とバトラは知っていたので高度を上げるか下げるか、旋回して距離を保つなりの対応をしていた。
<<………レクチャー忘れてた>>
バトラが零す。
<<バトラは後でお話が有るのでハンガー裏です>>
静かな声。しかし、その声には殺気が混ぜられている。
<<俺は絶対に行かないからね>>
OHANASIだろそれ?そう思いながらも俺はファントムの護衛位置に着く。
<<夜、部屋に忍び込みます>>
寝込みを襲うつもりか!?
<<バーフォード中佐!助けてくれ!>>
<<殺さなければ、好きにしてくれ>>
見捨てられたバトラは無言でファントムの後ろを飛ぶ。
<<しかし、一体何が?>>
先程の通信で落ち着きを取り戻した慧がこぼした言葉を拾った人物がいた。
<<あれは【インフェルノ】、R-40Rを燃料気化弾頭に改造した物よ>>
DENEB09が解説を入れる。
R-40Rは元々、自機より低い位置を飛ぶ敵機を撃墜する為に作られた長距離ミサイルだが、デネブ隊護衛班は純粋な長距離ミサイルとして運用している。
<<直掩機の消滅を確認!ALTAIR03と04は突入して下さい>>
アリーナが通信で指示を出し、その指示を貰った二匹の猪がダイブで速度を稼ぎながら、高度を落とす。
そして、対空機銃と対空高射砲を75mmガンポッドの射程距離に収める。
<<<<イン・ガン・レンジ・ファイア!!>>>>
肩と腹に来る銃声を出しながら如何なる敵をも滅する砲弾が天災となり災厄に降りかかる。
その天災が降りかかった災厄はなす術もなく粉砕され、その姿をガラス片に変える。
必死の抵抗を見せるがその抵抗は猪にことごとく回避されるか弾かれて終わる。
災厄もやられるばかりでなく、直掩機を出して抵抗しようとするが飛び上がる前に有翼獅子に破壊され、数少ない飛び上がった機体も片っ端から鷲の餌食となった。
その後の地面には猪が走り去った後の様に何も残っていなかった。
<<多過ぎますね。嫌な予感ですが、もしかしたら………>>
何かを計算したファントムが呟く。
<<嫌な予感は当たりやすいんだ。勘弁してくれよ>>
経験上、嫌な予感程だと当たりやすい物は無いと知っているバトラが苦言を漏らす。
<<バーフォード中佐!これを!>>
慌て気味のマイケルの声が通信機から聞こえて、バトラは『またかよ…』と頭を抱えた。
<<なんだと………台湾空軍及び第7艦隊がザイの大編隊に襲われている。台湾空軍のインディゴ隊が交戦しているが旗色は悪い。第7艦隊も航空自衛隊が援護に入ったが同様に旗色が悪い>>
ファントムの嫌な予感が的中した瞬間だった。
この報告を聞いた片宮姉妹は第7艦隊の方へと機首を向けようとする。
<<ALTAIR03、04任務に戻れ>>
バトラが冷たい声で任務に戻る様に告げる。
<<ですが!!>>
<<お願いします!!>>
一緒に仕事をして、最後は身を挺して打ち出してくれた第7艦隊を見捨てれる程、片宮姉妹の心は戦う者としては成熟して居なかった。
<<!?詩苑!離れて!クラスター弾の範囲に入ってるわよ!!>>
<<詩鞍!!クラスター弾の射程範囲よ!脱出しなさい!!>>
京香とサラが警告を出すが、時既に遅くクラスター弾の発射準備は終えていた。
<<クッソ!!>>
慧がJAS 39Dを操作してなんとかしようとするが距離が遠すぎた。
ザイはミサイルを発射しようとミサイルサイロのハッチを開ける。
≪|ATTACKING TARGETS /01 COVER ALTAIR TEAM《目標を攻撃する。01は引き続きアルタイル隊の援護に》≫
その瞬間に紫色の鷹がミサイルサイロの上空を飛び向けるとサイロが火山が噴火したかの様に爆発した。
≪
先程の攻撃は自衛隊の4機目のアニマ・ドーターの【F-2A バイパーゼロ】だった。
彼女の仕事はFOB襲撃組の付近を単独で飛行。低空でザイの防空網を掻い潜り、TGTを破壊し、援護することだった。
F-2は優秀な攻撃機だが、デネブ隊程の速力は無かった為にこの様な役回りとなった。
<<バイパー、貴機の救援に感謝する>>
≪
そんなメッセージを送り、バンクをしてから帰還していった。
<<バーフォード中佐。意見具申をよろしいかしら?>>
<<どうした、BARBIE03?>>
<<台湾空軍の救援にイーグルを、第7艦隊にデネブ隊を送れませんか?>>
<<確かに、距離的には妥当だな>>
バーフォードが納得仕掛けた頃、バトラが通信を入れる。
<<慧・グリペンも台湾の方に回せ、数が多過ぎるだろう>>
<<そうだな。よし、イー <<なんで、私があんたの命令を聞かなきゃ行けないのよ!!>>
どうも、バーフォードにと言うよりはファントムの提案だというところにご立腹のイーグルにどうあやそうかと頭を抱えるバーフォードにファントムが助け舟を出す。
<<味方に何かあった時はそうしろとお父様から言われてます。イーグルならザイを千切っては投げ、千切っては投げの大活躍は間違いなしだと、百倍の敵機を駆逐、圧倒しその勢いは中国大陸まで攻め込む程だとおっしゃてましたよ。悔しいですが同意見です>>
思い出す様にしかし、諭す様に話すファントムにイーグルは無言だった。恐らく、本当か疑っていると言う感じだろう。
<<そうだぜ。それにお前は最強戦闘機のFー15のJ型だろう?ザイの編隊の1つや2つ訳ない筈だ>>
<<ムッフー>>
バトラの通信でやる気を出したイーグルにバトラは内心で「チョロいぜ」と思ったが口には出さない。
<<任せてよ!大戦果を期待しててね!>>
<<行こうグリペン。あの人達に恩を返そう>>
<<うん>>
<<良し!BARBIE01と02は台湾空軍をDENEB01から04は第7艦隊の救援に回れ、05から08はANTARES02と協働して直掩機の撃滅だ。ALTAIR隊は今まで通り、敵の対空装備の撃破だ>>
バーフォードの指示が終わると各機が行動を開始する。
JAS39DとF-15は台湾空軍へ、白いMig25は4機でデルタ編隊を組み第7艦隊へ、残った4機のMig25はRF-4TB-AZJを先頭にデルタ編隊を組む。
<<さっきの嘘だろ?>>
バトラが秘匿通信で会話する。
<<勿論、嘘です>>
きっぱりと言い切るファントムに『良い性格してるよ』と思うバトラ。
<<BARBIE03の護衛任務を解除する。ANTARES02、戦闘機部隊の指揮官に着け>>
<<各機、敵陣地に突っ込む。突っ込んだ後は各機の勝手な銭勘定で動け>>
ただの自由行動の許可。体のいい指揮の放棄とも取れる命令だが………
<<わかりやすい命令で助かるぜ>>
<<俺たち算数しか出来ない馬鹿ばっかだからな>>
<<いひひ、稼がせて貰うぜ>>
<<先輩、困った時はいつでも救援要請を出して下さいね>>
仲間達には好評の様だった。
<<各機、被撃墜だけはするなよ。海の上でのイジェクトは悲惨だぞ>>
<<DENEB05了解>>
<<DENEB06ヴィルコ>>
<<DENEB07了解>>
<<DENEB08了解です>>
<<各機散開>>
編隊を解き、ロッテ二組と単機に分かれる。
RF-4TB-AZJの前に2機のN型ザイが迫る。
「さて、稼ぎますか………」
誰に聞かせる訳でも無く呟いたその言葉は災厄に青い蠍がその毒針と
<<ANTARES02>>
<<DENEB05>>
<<DENEB06>>
<<DENEB07>>
<<DENEB08>>
<<<<<<<<<<エンゲージ!>>>>>>>>>>
各機が同時にエンゲージを宣言する。
2機編隊のN型ザイが迫る。
ザイは片方が加速してヘッドオンへ持ち込み、もう片方が上昇しながら右に旋回して背後に回ろうとする。
その機動を見たバトラは迷わずヘッドオンを選択する。
理由としては旋回する機体を上昇して追い、ドックファイトで2機を長い時間拘束するよりも自分が得意とするヘッドオンで1機を素早く撃破する方が良いと考えたからだ。
バトラとN型ザイがガンの射程距離にお互いを捉え、2機同時に発射した。
発射して直ぐにRF-4TB-AZJは上昇する。その下をN型ザイが単調な直線機動で過ぎ去っていく。
RF-4TB-AZJは180度のクルピットを使い、背面飛行で真後ろに機首を向ける。
機首を向けた先には右旋回を終えかけたN型ザイの姿があった。
ザイは後ろを向いたRF-4TB-AZJを見て、即座に離脱を選択して、腹を見せながら左に急旋回をする。
「敵に腹を見せるのは悪手だぜ」
バトラをそれを見越して右ヨーを操作で左の急旋回で逃げようとするザイに機銃の銃口を向ける。
<<インガン・レンジ・ファイア>>
機銃発射の宣言後に忠実に亡霊が敵を死に誘う30mmの弾丸は吐き出す。
ザイはその弾丸をもろに受けて、粉々に粉砕される。
<<アンタレスが敵機を撃墜しました!>>
<<先を越されたか!?>>
<<やべーぜ、クレイグ!全部持って行かれるぞ>>
<<俺の明日の食費がーーーー!!>>
<<流石です!先輩。僕も負けられません!>>
グリアムの報告にデネブ隊の各機は個性豊かな通信で返す。
<<俺も負けられねーな。FOX2!>>
アートスも負けじと短距離ミサイルを発射する。
<<敵機の撃墜を確認>>
<<よっしゃー!>>
マイケルの報告に喜ぶアートスだが、その後ろにN型ザイが忍び寄る。
<<アートスさん!後ろ!>>
<<やっベ!>>
DENEB08のアンットニ(通称アット)が注意を促し、それを受けてアートスはスロットルを全開する。
その瞬間にアートスのMig25は最高速度マッハ2.5を記録するN型ザイが喰いつけない速度で飛翔する。
ガンファイトは不可能と判断して、苦し紛れにN型ザイはミサイルを放つがそのミサイルすらも置き去りにして直進するアートスのMig25。
<<クラスター弾の被害範囲に侵入しています!脱出をデネブ05!>>
<<その必要はねーぜ!!>>
マイケルが通信を入れるがもうその頃にはアートスは二つの被害範囲を飛び抜けた後だった。
<<インガンレンジ・ファイア>>
アートスを追っていたN型ザイを25mm弾で撃墜するクレイグ。
<<こちらはALTAIR03です。ポイントAからCの地対空兵器を破壊>>
<<ALTAIR04もポイントCからEの地対空兵器を破壊が終わりました>>
<<良し!DENEB09から16は突入!敵のミサイルサイロを破壊しろ!>>
<<了解です。行くわよみんな?>>
<<<<<<はい!>>>>>>
通信機から漏れたのは全て女性の声だった。
黒いMig25がマッハ3.0の速度でミサイルサイロに迫る。
ミサイルサイロのハッチが開き切る前に音速の3倍の速度で飛来し、黒い蝙蝠はそれぞれの目標に4発ずつ爆弾を投下する。
彼女らが投下した爆弾は通称【ディープ・スロート】と呼ばれる地中貫通爆弾【GBUー28 バンカーバスター】である。
この爆弾はレーザー方式で誘導される誘導式投下型爆弾であるが彼女ら機体は速すぎる故にレーザー誘導が出来ない為に純粋な投下型爆弾としては運用しているがその命中率は70パーセントと高い。
事実、彼女らが投下したバンカーバスターは4発全てがその地中に存在するザイのミサイルサイロに命中している。
粘土質の地表で30m、鉄筋コンクリートで6mの厚さを貫通し、地中に存在する敵を死に誘う為に造られたこの地中貫通爆弾を抑えきれる程の強固なミサイルハッチなど持っている訳も無く、その全てがミサイルサイロの内部で炸裂しミサイルサイロを中からバラバラに破壊する。
彼女らが恐れられている理由は制空権を確保していようと強力な地対空兵器で武装した強力な防空網があろうと対空機銃と対空高射砲がなければ、その速度で突破して粘土質の地面に30m以上の深さか、鉄筋コンクリートを厚さ6m以上で造った施設でなければ容赦無く破壊して、自軍勢力下へとマッハ3.0近い速度でピンポンダッシュを決めて行くからである。因みに彼女らは無慈悲な2度目も辞さない。
尚、F-2が落としたのはこの爆弾では無く、純粋な投下式大型爆弾で2発はハッチを破壊し、残りの2発がミサイルサイロ内部に侵入し炸裂したのである。
<<ではそろそろ始めます>>
ファントムが息を吸う。後ろを飛んでいた機体を先行させて、誘導位置に着く。
<<背中はお任せしてよろしいですか?>>
機体の下に吊るされた管制ポッドからアンテナが伸びて展開される。
<<当たり前だ>>
ファントムの援護位置に機体を持って行きながら答える。
<<そこは今から姫様の特等席だ。無遠慮に近づく無粋な輩は全部叩き墜としてやる。1機たりとも近づかせはしない>>
<<あら、格好いい。では、お願いしますね。私の騎士様>>
軽口を最後に会話が締めくくられる。
僅かな呼吸音の後に機体が緑に発光し、アンテナの先に光が灯る。
<<こちらカノープスのバーフォードだ。作戦開始の準備が整った。ドールハウスに作戦の開始を要請する>>
<<ドールハウス、ラジャー。作戦を開始する>>
巡航ミサイルが目標を破壊尽くすその瞬間までファントムを守りきるのがバトラの仕事だ。
バトラはミサイルのマスターアームをオンにする。
<<上空から敵機です。対処を>>
その通信を貰った途端に行動を開始する。
まずは機体をコブラで機首を上に向ける。
機体をロールしながら、位置変更をして最適な位置に機体を持って行く。
<<FOX2>>
最適な位置に着いた頃にはミサイルを発射。LOALで追尾させる。
ザイが爆炎の中に消える頃には失速させて背面から下に降下し、ある程度下がるとスロットルを開いてコントロールを復帰させる。
頭から落ちていく状況だった機体をピッチダウンで背面飛行しながら、下から迫るザイに中距離ミサイルを横腹からロックオンする。
<<FOX2>>
左翼から撃ち出されたミサイルは大きく右に進路をとり、ザイの横腹を貫く。
RF-4TB-AZJはロールをしながら右に旋回し、下から迫るザイと向き合う。
お互いに距離が近い為にガンファイトを選択すると思ったが、ガンファイト寸前の距離でミサイルを発射して加速中だったザイを的確に仕留める。
3機目ザイを墜とした頃に巡航ミサイルが飛来する。
その巡航ミサイルを迎撃しようとザイが転身をするがした機体からデネブ隊のMig25かA-10に撃墜される。
撃墜されなかった巡航ミサイルが次々と島に降りかかる。
まるで豪雨の様に降りかかる。
着弾した巡航ミサイルは内部に抱えた爆薬を爆発させてザイのFOBを破壊する。
先程の精密爆撃と違う、完全な殲滅の為の絨毯爆撃に対空能力の一切を奪われたFOBはなす術も無く破壊さてて行く様は正しく地獄絵図だった。
<<EPCMの低下を確認しました。これをFOBの完全破壊が原因と断定します。この後の観測機に引き継ぐので帰還して下さい>>
グリアム軍曹からの通信で小松に機首を向ける。
仕事を終えたファントムは隣を同高度で飛行する。
<<兄様。第7艦隊の方に行ってもよろしいでしょうか?>>
<<私からもお願いします>>
やはり、気になるのだろう。
<<燃料に余裕があるうちに戻って来い>>
その通信を聞くと『ありがとうございます』と言う通信を残し飛んで行く。
<<俺たちは台湾経由で欧州の方に飛びます>>
クレイグからの通信に『そうか』と返す。
<<また、生きていたら会いましょう>>
<<ああ、お互いに生きていたらな>>
その通信を最後にMig25は台湾へと飛んだ。
<<帰るか?ファントム>>
<<ええ、ここに残る理由が無いですし>>
<<ANTARES02、RTB>>
<<BARBIE03、RTB>>
2機の亡霊が並んで小松へと帰っていく。
ファントムの独り言は次話に載せます。
次回予告
第二次海鳥島攻略戦から一晩明けて日常に戻り始めた一行は慧が発案者の海水浴に行く事となった。
各機、次の作戦に移行してくれ。