ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

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遅くなったな。空戦描写が入ると遅くなり易いんだ。
日常話はネタが出にくい故に遅くなる。

バトラ「嘘言うな!遅れた理由の5割が4巻読んだからだろ!」

そんなわけ無いよ(メソラシー

これも全部、Suー47アニマが、健気で働き者でアルビノの組み合わせなのが悪いんだ!健気で働き者でアルビノの組み合わせなのが!(大事な事なので二回言いました。

バトラ「二回も言うな!」

そんな理由で遅れました。

作戦7 集結!そして……を開始する!


作戦7 集結!そして……

「詩苑か詩鞍は居るかな?」

 

誰に話すと言う訳でも無く、喋りながら食堂に入る。

 

「居た居た」

 

見慣れてるのも有るが、二人とも、上物の漆塗り容器の様な綺麗で光沢のある黒髪は小松基地の中では、二人しか見ない。

 

女性自衛隊員が二人の髪や肌、顔の作りを羨まし言っているのを良く聞くほどだ。

 

「二人とも、ちょっと良いか?って朝食中かなら後で出直そう」

 

「「お兄様のお話であれば何時でも構いません!!」」

 

同時にこちらに顔を向ける二人。

 

二人とも、大きくて、可愛いらしい目は黒曜石でできているのではと思うほどに綺麗な黒色をしていて、肌もきめ細かく、百合の花の様に白い。纏う雰囲気も鈴蘭の様にお淑やかなだ。

 

会った頃から思っていたが、言葉遣いや雰囲気と朝早いとはいえしっかりと身嗜みが整えている辺りに俺と会うまでは何処かの良家の出身ではないかと思ってしまう。

 

(何で、こんな所に居るんだろうな?)

 

畳の部屋で琴や生花をやっている方が似合っていそうな華奢な白い手は何かの因果か黒い操縦桿を握っている。

 

体に付ける匂いも、何かの花の匂いの香水を付けると容易く想像できるが、何故か彼女達には花の香水よりも硝煙の匂いが付く。

 

「あの……私たちの顔に何かございますか?」

 

おっと、今は関係ないことだな。

 

「ただの考え事だ。回りくどく言うと思ったんだが、面倒だから単刀直入に言うぞ」

 

「「はい」」

 

「今日の昼にバーフォード中佐達が小松に来る」

 

 

 

 

 

というのが朝の一幕だ。今は着陸した空中管制機のタラップの近くで搭乗員が降りるのを片宮姉妹と待っている。

 

白い扉が開き、青を中心に白い色が付いた海洋迷彩の様なカラーリングの軍服に身を包んだ男が降りてくる。

 

「バーフォード中佐。長旅、お疲れ様です」

 

敬礼しながら喋る。

 

「そう畏るな。お前と俺の仲だ」

 

「一応の形式上はやっておかないといけないので」

 

「レオ「こっちでは、バトラで」そうですね。お久しぶりです」

 

「お久しぶりです。グレアム軍曹」

 

グレアム軍曹と腕相撲をするかの様に握手する。

 

グレアム軍曹は俺の担当オペレーターだ。まだ自分が四番機を務めていた頃からの付き合いだ。

 

俺の方が階級は上だが、年上なので出来るだけ敬語を使うが数秒でお互いに無くなる。

 

「久しぶりね。詩苑」

 

「はい、お久しぶりです。サラさん」

 

その後に降りてきたのはサラ軍曹で詩苑の担当オペレーターを買って出た人だ。

 

「詩鞍も久しぶりね。元気にしてた」

 

「はい、この通りです。京香さん」

 

その後ろから降りてきたのは京香軍曹だ。詩鞍の担当オペレーターに自分から買って出た人だ。

 

「皆、久しぶりだ」

 

「マイケル軍曹も久しぶりですね」

 

マイケル軍曹は現在、担当のオペレーターがいない為にバーフォード中佐の補佐・空中管制機のレーダー手を兼任している。

 

「所で、件のメールだが、マイケル軍曹のメールだろ?」

 

「わかりますか?」

 

「バーフォード中佐の様に要点を押さえているが、そうする理由が書いてない所があったからな。女性陣のメールは纏まりは有るが長くなる。そこから消去法で考えるとマイケル軍曹のメールだ」

 

「ははは、このM43飛行中隊は俺が居た今までのどの隊よりも個性豊かだがらな」

 

楽しそうに笑うバーフォード中佐につられて全員が笑う。

 

「何で、小松に?大規模作戦でもあるんですか?」

 

MS社の規則だと、空中管制機が来るのは長期作戦や大規模作戦の時などでそれ以外は基本的に出てこない。

 

「本社の連中も小松防衛戦の所為で、重い腰を上げたんだろう。MS社のエース部隊であるM43中隊を失うわけにいかないと言う訳で俺たち管制官が来たんだ」

 

「成る程」

 

空中管制機がいれば、戦場全体の情報を常にチェックして渡してくれるし、攻撃に集中すると後ろが疎かになる事も多い。そんな時に後ろの敵機を警告してくれる空中管制官の存在はありがたい。

 

「日本で何時、大規模作戦が発令されるかわからないからな。それに備えての事だ」

 

テ〜テ〜テ〜テ テテン〜テレレテテン

 

携帯から『戦場の中』が流れる。

 

「失礼」

 

バーフォード中佐に断りを入れてから取る。

 

<<はい。誰です?>>

 

<<アルタイル 隊の全員は技本の執務棟、ブリーフィングルームに十五分後までに集合せよってハルカが>>

 

<<グリペン……まずは自分の名前を言ってから喋れよ。まあ、了解した>>

 

携帯を切る。

 

「すいません。雇い主の方から召集が」

 

「そうか、俺たちも技本のブリーフィングルームに行く事になっている。案内を頼めるか?」

 

「俺もブリーフィングルームに行くので、エスコートはさせて頂きます」

 

敬礼しながら、話す。

 

「おい!詩苑!詩鞍!ブリーフィングルームに行くぞ!」

 

「「はい!」」

 

M43飛行中隊の主要メンバーでブリーフィングルームに移動を開始する。

 

 

 

 

 

「遅いぞ慧君。戦闘機パイロットなら少なくとも三分前に着いておけ」

 

慧君が着いたのは指定された時間の直前だった。時間通りに来ているので人としては問題無いだろうが、戦闘機パイロットならもう少し時間にシビアでいて欲しい。

 

「すみません。遠出してて……」

 

「まあ、怒ってるわけじゃ無いし、最低限の時間通りに来たから責めるつもりでも無かったんだがな。そう思ったなら謝ろう」

 

「あくまでも、時間通りじゃなくて、時間より早く来た方が良いぞという話だ」

 

バーフォード中佐の援護のおかげで慧君の雰囲気が軽くなる。

 

「あ、はい。って……誰ですか?」

 

遅いよ!気づくの遅いよ!

 

「そこは自己紹介の時間があるから、その時に纏めてやらせてもらう」

 

「は、はぁ……」

 

とりあえず、納得してくれた。

 

「よし、全員集まっているな」

 

ドアが開く音と一緒に中年太りした醜男が入ってきた。

 

「さて、本題に入る前に自己紹介をお願いしたい」

 

入ってきた人物は八代通だった。

 

八代通が言い終わると後ろのメンバーに視線を向ける。

 

「うむ。私はMS社M42飛行中隊司令のフレドリック・バーフォード中佐だ。空では空中管制機【カノープス】に搭乗して部隊全体の指揮をしている」

 

「バーフォード中佐の補佐をしている。マイケル・アリーナだ。階級は軍曹でバーフォード中佐と同じく空中管制機【カノープス】の搭乗員だ」

 

「私はグレアム・ハートリーです。階級は軍曹です。空中管制機【カノープス】からアルタイル01のオペレートをしています」

 

「サラ・アンデション軍曹です。アルタイル03 詩苑の担当オペレーターです。空中管制機【カノープス】の搭乗員をしています」

 

「アルタイル04 詩鞍のオペレートを担当しています。羽沢京香です。階級は軍曹で空中管制機【カノープス】の搭乗員です」

 

「他に聞きたい事があれば各自でやってくれ。本題に入るぞ」

 

八代通が真剣な顔つきになる。

 

「本日〇六三〇東シナ海南西部の防空識別圏にザイが侵入した。那覇基地所属の自衛隊・嘉手納の米軍機がスクランブルしたものの双方に被害が大きく撃退に至っていない」

 

「八代通室長。その後のザイの状況を教えて頂きたい」

 

バーフォード中佐が状況把握の為の質問を出す。

 

「その後の残存勢力は石垣島北方百五十キロ上空を周回中に一部が近隣の無人島に落下した事が観測機から報告が入っている」

 

「で、その後に面倒事か?」

 

「そうだ。これ、何だと思う」

 

一枚のスライドを見せる。

 

至って普通の無人島が映った空撮写真だが、拡大された場所には似つかわしくないものがあった。

 

ザイの虹色に近い色をした正六角形の柱を光の糸で繋いだ物体。こんな物が幾何学模様を描いていた。

 

「墜落したザイの破片とか?漏れ出した燃料とか?」

「何かのレーダーサイトですか?」

「地理的に港でしょうか?」

 

慧君・詩苑・詩鞍の順で答える。

 

「そんな物ならどれ程良かったか」

 

八代通の発言を聞き、もう一度よく見る。

 

山頂にあるのはレーダーサイトか?岩肌に空いた大きな六角形の穴。そして、光の糸を有線通信のケーブルだと仮定すれば。

 

「「「「「「FOB」」」」」」

 

「MS社メンバーの言う通りだ。これはFOBだ」

 

「「「FO………何ですか?」」」

 

「詩苑、詩鞍……お前ら……」

 

慧君ならまだしも、お前ら二人が疑問符を出すな。

 

「FOBはForward Operating Baseの略語よ」

 

「ForwardOperatingBaseは簡単に言うと前線基地よ」

 

「「「ぜ、前線基地!?」」」

 

サラ軍曹の言葉には疑問符を浮かべていた三人だが、京香軍曹の言葉には驚きを隠せない様子の三人。

 

「彼奴らにそんな知性が」

 

不思議がる慧君だが、何ら不思議がる事じゃない。

 

「鳴谷さん。ザイにも燃料切れという概念があるなら、可能な限り前線に近い場所に基地を作るたがる筈です。何もタクラマカン砂漠からここまでずっと、飛びっぱなしな訳がありません」

 

「こんなザイの町の様な物が中国に幾つも有るって言うんですか!?」

 

マイケル軍曹の言葉に驚く慧君にバーフォード中佐が苦笑しながら喋る。

 

「FOBの建て方は月面基地に近い方法だろう。発電機や通信機器、観測設備を月や火星に打ち込んだ後にプログラムが作動して展開・稼働させるだろう?それを地上で大規模に行っているんだ」

 

「ん、ん?どういう事ですか?」

 

バーフォードの言葉に理解が追いついていない様子だ。

 

それを感じ取ったのかグレアム軍曹が口を挟む。

 

「簡単に言うと地面に突入して搭載物を下す輸送機型ですね。これが基地設備を構築する為に無人島に突っ込んで、搭載物を展開して基地を構築中という訳です」

 

「な、成る程」

 

「となると、上空の機体は直掩機だな」

 

慧君の理解が追いついた所で俺が攻略の為の話に持って行く。

 

「かなりの数ですね。基地の構築が終わるまで我々を寄せ付けないつもりだと」

 

ファントムは頭の周りが早いな。

 

「もっと、増えるかもな。このシェルターだが、恐らく滑走路兼用だ。格納庫から直接、離陸してくる。こっちが攻略に乗り出したら、迎撃機が腐る程出てくる」

 

「そう考えて然るべきだろう」

 

八代通が何とも言えない表情をする。

 

多分、言いたい事が全部言われたのだろう。

 

「構築が終わるとどうなるの?基地ができると悪い事になる?」

 

ストレートな質問をするのはグリペンだ。

 

「良いか悪いかで言えば、最悪だな」

 

スライドが変わり、何本もの等高線を思わせるラインが重ねられた地図が出された。

 

俺はこれが防衛線だと即座に理解できた。

 

「この第一列島線、これが極東における対ザイの防衛ラインだ」

 

重ねられた線の一本、沖縄・台湾・フィリピンを結ぶ線がハイライトされる。

 

「ここが維持できているおかげで太平洋の海路・空路は守られている。少し広いが【我らの海(マーレ・ノストウルム)】というやつだな。西側がザイに圧迫されても、東側の援護で持ちこたえられる。陣地の縦深性が維持されている訳だ。しかし、これが破られると」

 

スライドが変わる。

 

「大陸からザイが押し寄せてくる」

 

言われなくともわかる。日本が物理的に孤立して、後は滅びを待つだけになるだろう。

 

「そして奴らが今回、押し寄せた場所はここだ」

 

そして、スライドが変わり、東シナ海の小島を映す。

 

「丁度、台湾と沖縄の中間点、第一列島線の直上。ここが継続的に押さえれるという事は太平洋の防衛ラインが崩されているのと同意義だ。どう控えめに見ても壊滅的状況だな」

 

「で、基地ができる前に独飛で潰す。独飛の設立に無茶した以上、独飛は結果が欲しい訳だ」

 

「ああ、連中がお誂え向きの事態を作ってくれたんだ。独飛の実力を示す最高の時だ。連中には感謝しないとな」

 

「ああ、俺も奴らのお陰で明日の飯が食えるんだ。感謝の印にミサイルと爆弾をプレゼントしなきゃな」

 

「「ふふふふふふふふふ」」

 

慧君が訳がわからないものを見ている様な顔をしているが気にしない。

 

「イーグル達が行って、蹴散らして来れば良いんだよね?」

 

あ、うん。此奴は馬鹿だ馬鹿だ思ってたけど違った。此奴は単純なだけだ。敵を見つけた、潰す、以上という感じにだ。

 

まあ、F-15は制空戦闘機として生まれたのだ。彼女がF-15の意思の具現化されたものであるならば、何ら不思議なことじゃない。

 

「そんな単純な問題じゃありませんよ」

「拠点破壊はそう単純じゃないんだよ」

 

ファントムと被った。

 

「私たちは戦闘機であり、爆撃機ではありません。精一杯の爆装をした所で地上に投射できる火力は微々たるものです。とてもこの島全体を無力化するなどできません。それに爆装のみ、空対装備無しで多数の直掩機が上空を飛ぶ中での出撃など、はっきり言うと自殺行為です」

 

ファントムの言葉に紫苑が手を上げて意見を出す。

 

「要所だけ潰すって、いう作戦はダメですか?」

 

「私たち姉妹の機体はA-10です。対地なら得意中の得意です」

 

詩苑の意見に詩鞍が多少ある胸を張って話す。

 

「要所だけを潰すのは良いかもしれんが、圧倒的に人手が足りない。A-10は確かに対地作戦においては無類の強さを誇るが足が遅いから、攻撃までの護衛が四機じゃ、とても足りない。せめて後、五か六機は欲しい」

 

防御力・攻撃力に飛んだA-10だが、速力が無いのが弱点だ。

 

「直ぐにその数のAJZ戦闘機を用意するのは無理だ」

 

バーフォード中佐が俺の意見が無理な事だと話す。

 

「誰も、基地破壊を航空機で行うと言ってないだろう」

 

「「「「「「え!?」」」」」」

 

MS社の片宮姉妹以外の全員が何を言っているんだ此奴はと言いたげな表情を向ける。

 

「いや、こっちが何を言っているんだって言いたいんだがな」

 

「すみません。IUPF(多国籍治安維持軍)の頃の習慣でつい」

 

「どんな習慣!?」

 

「え?敵が異様に航空戦力が充実していて、陸上戦力が案山子になる事が多かった位だから、航空戦力が多く使われた位だが?」

 

「いえ、陸上戦力も使いましたよ。あくまで航空戦力が無いと成功しない作戦ばかりだっただけです」

 

慧君の言葉にグレアムと一緒に答える。

 

「まあ、今回は自衛隊は一二式誘導弾改、米軍は第七艦隊残存艦のトマホーク巡航ミサイルを百発単位のミサイル飽和攻撃で基地を破壊する。一目標に平均五発、計五十トンの炸薬が九十秒以内に降り注ぐ。アウトレンジ攻撃だ」

 

眼鏡の奥の双眸が獰猛な輝きを放つ。

 

(マジか……)

 

防衛線の真上に前線基地を建てる敵も敵だが、小さな島に百発単位の巡航ミサイルを撃ち込む味方も味方だった。

 

(まあ、状況を考えれば普通か?)

 

視線をスライドに戻す。

 

ここが敵に抑えられ続ければ首元にナイフを突き付けられ続けるのと同じ状況だ。

 

守る国がある人間は敵を駆逐する為ならば、投入可能な戦力は全て投入して駆逐する。例え、世界地図を書き直さなければならなくなってもだ。守るべき国がある人間達の獰猛さを再認識させられた。

 

「だが、EPCM対策はどうなっている?衛星誘導が効かないそうだが?」

 

「そこはドーターの出番だ。中間誘導からはドーターが引き継ぎ各目標に導く」

 

「AJZ戦闘機では、引き継ぎは不可能ですか?」

 

詩鞍が挙手して質問する。

 

「可能だ。お前達のAJZ戦闘機がEPCMを無力できている間は可能だが、今回は確実にミサイルを誘導したい以上は新しい波長のEPCMを受けると一瞬でも影響を受けるAJZ戦闘機には任せられない」

 

「わかりました」

 

詩鞍が悔しそうな表情で顔を伏せる。

 

多分、制空型のザイしか居ない状況下のこの作戦では自分達は唯のお荷物だと思ったからこその進言だったのかも知れんな。

 

「詩鞍と詩苑はファントムの直掩をしてくれ、この作戦ではファントムの突入と護衛が重要になる」

 

「勿論だが、他の二機とMS社の諸君には、ファントムの直掩をお願いしたい。ファントムには偵察ポッドを交換してデータ・リンク機能向上させるが、今回の作戦で誘導するミサイルの数が数だ。警戒が疎かになるだろうから、他の二機は勿論だが、MS社の諸君にもファントムの直掩をお願いしたい」

 

「確かにそうですが、この方達に私の背中を預けろという事ですか?」

「それが直掩というものだろう」

 

顎に手を当てて考えるが此奴は間違いなく。

 

「お断りします」

 

こう言う。

 

 

 

 

 

 

「あり得ませんわ!」

「あり得ませんよ!」

 

「「私達の護衛じゃ命が幾つあっても足りないなんて、何様のつもりですか!」」

 

詩苑と詩鞍からの怒声が通信機から聞こえた。

 

「落ち着けよ。これから先にいつか護衛で雇われた時にそんな事を言われるのはザラだぞ」

 

実際にトルコ山岳部を抜ける旅客機の護衛の際に護衛対象からそんな事を言われた事をパイロットスーツのジッパーを上げながら、思い出す。

 

ブリーフィングが長引いた所為か慌ただしい出撃準備だ。

 

「守ってやると思うからそうなるんだ。守らせて頂くと思えばそうでも無いだろう?」

 

 

「お兄様は優し過ぎます」

 

「俺は優しくは無いよ。甘いがな」

 

「一体、どう「お前は早く乗れ!」ええーー」

 

小走りで会話していた俺たちの前で梯子に片足を乗せたまま乗り込もうとしないイーグルに整備員達が困ってそうだったので、ケツを蹴り上げて乗り込もせる。

 

「いたーい!」

 

あれこれ言われる前にキャノピーを閉めてやる。

 

通信は飛び上がる直後まで開かないでいてやろう。

 

「お先に」

 

片宮姉妹よりも近くに駐機されていたので、一足早く乗り込む。

 

Gスーツの吸気ホースを接続して、ちゃんと接続されているかも確認した。燃料も問題なし。コントロールチェックも問題なしのサインを貰って、車輪止め(チョーク)が外される。

 

その頃にはもう、ドーターは全機発進済みだった。

 

自衛隊員の誘導にしたがいスロットルを開いて、前進して誘導が終わると誘導してくれた自衛隊員が敬礼を送ってくれたので、敬礼で返す。

 

<<敬礼して送って下さるんですね>>

 

詩苑から通信が入った。

 

<<自衛隊は俺が無名の頃にも世話になったがその時からだぞ>>

<<アメリカ軍では一部の人からしかされませんでしたから新鮮ですね>>

 

詩鞍が通信に割り込む。

 

<<ALTAIR01、コンタクト・デパーチャー>>

 

<<ALTAIR01、クリアード・フォー・テイクオフ>>

 

スロットルを加速させて、空へと飛び立った。

 

暫くするとALTAIR03と04も上がってくる。

 

<<アルタイル隊聞こえるか?こちらは空中管制機【カノープス】のバーフォードだ。アルタイル隊、聞こえるか?>>

 

狙ったかのように通信が入った。

 

<<こちらALTAIR01、感度良好だ>>

 

<<ALTAIR03、感度良好です>>

<<ALTAIR04も感度良好です>>

 

<<ファントムの態度に怒りを覚えていると思うが、空に上がった以上は忘れろ。墜とされるぞ>>

 

<<<<<<ラジャー>>>>>>

 

<<さて、作戦は地上で話した通りだが、状況が芳しく無い。先程、ザイが追加の物資コンテナを投下したらしい。おそらく、構築速度を上げるためだろう>>

 

此方の動きが読まれていたのか?

 

<<だが、やる事は変わらない。自衛隊機は室戸岬沖会場で空中給油を受けた後に作戦空域に向かうらしい。此方も室戸岬沖で空中給油を受けて、その時に自衛隊と合流してくれ>>

 

<<ラジャー。自衛隊機の現在位置は?>>

 

<<はい。自衛隊機は室戸岬沖に進入した所です>>

 

<<これなら、空中給油中に合流できるはずだ>>

 

その後、暫くすると空中給油機の姿を捉えた。

 

ファントムの給油が入る。

 

<<ファントムが最後か?>>

 

一般通信で通信を入れる。

 

<<ええ、遅かったですね>>

 

<<武装の載せ替えに手間取ったらしい>>

 

今回の武装は数々の教訓を生かして、機首下部のアクティブミサイル誘導装置を外して20mm機関銃を搭載して、RAAM(中距離空対空ミサイル)QAAM(高機動ミサイル)を十一発ずつの搭載だ。

 

RAAMは接近してくる敵機を撃破する為、QAAMは接近戦の時に敵機を確実に墜とす為だ。

 

距離は空中給油を受けるので増槽は置いて来た。

 

<<ALTAIR01から給油してくれ>>

 

<<ラジャー>>

 

給油を受けている間にファントムへ暗号回線を繋ぐ。

 

<<ファントム、少し良いか?>>

 

<<貴方も暗号回線で通信ですか>>

 

呆れた様な声が聞こえる。

 

<<BARBIE01のレーダー/火器管制員の性格から考えると日本を守る為に〜とか言ったんだろう?だが、違う>>

 

<<じゃあ、なんですか?>>

 

<<この作戦の現場指揮官はBARBIE03のお前だ。貴機の判断が作戦の成功、失敗はそうだが、命を背負っているのと同意義だ>>

 

<<ええ、それで>>

 

<<信じろと言った所で無駄だろう。だが、助け合って欲しい。以上だ>>

 

<<信じろと助け合いの違いが良くわかりませんね>>

 

<<それは貴機次第だ>>

 

暗号回線を切る。

 

給油が終わったので空中給油機から離れる。

 

その後は誰からの通信も入らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

暫く、飛行をしているとカノープスから通信が入る。

 

<<此方、バーフォード。アルタイル隊、もう直ぐ、作戦空域だ。各機、戦闘準備>>

 

マスターアームをONにする。

 

<<ザイの迎撃機が接近してます>>

 

マイケル軍曹の通信が入る。

 

<<詩苑!詩鞍!ファントムの直掩を頼む!>>

 

イーグルとグリペンの前に躍り出て、デルタ編隊の一番機の位置を飛ぶ。

 

<<俺たちは護衛の第一防衛ラインだ。接近してくるザイにプレッシャーを与えて、接近を諦めさせるのと、それでも接近してくる奴は墜とすんだ。ただし、深追いはするなよ>>

 

<<了解>>

<<ラジャー>>

 

二機から了解の合図が入る。

 

<<EPCMレベルが上昇しています。ガスト25…26…27まだ、上がります。29…30!AJZシステムの起動を!>>

 

AJZシステムが起動すると、藍色の装甲版がキャノピーを覆う。

 

<<死ぬなよ>>

 

一般回線にバトラが呟くと機体が加速する。

 

<<前方より、ザイが接近しています。機体識別はN型です>>

 

前方からエッジが深く、人が乗れる程厚い刀身のカウボーイナイフに後退翼を付けたザイが二機、接近する。

 

<<ALTAIR01、エンゲージ>>

 

バトラがエンゲージ(交戦開始)を宣言する。

 

<<イン・ガン・レンジ、ファイア>>

 

機関銃攻撃を宣言。

 

一秒に満たない時間での20mm機銃の射撃を止めると同時に左バンクして、ザイの機関銃弾を回避。

 

一番機の位置に付いたザイは、ナイフで言うエッジの部分から黒煙が吹き、横に大きく向き、後続の二番機と衝突してガラス片となり、海に沈む。

 

<<ALTAIR01、敵機を二機撃墜>>

<<流石です!ALTAIR01!>>

 

敵機を撃墜して直ぐにグレアムが賞賛をバトラに送る。

 

<<サンキュー。N型はナイフで言うエッジの部分に弾を当てれば、少ない弾で墜とせるぞ>>

 

<<ラジャー>>

 

グリペンが返答する。

 

<<無理に狙う必要はないぞ>>

<<ALTAIR01、新手です。数はM型が八です>>

 

マイケルが新手の接近を報告する。

 

デルタ編隊で接近するザイが八機がRF-4TP-AZJのレーダーが捉える。

 

ザイをレーダーが捉えた途端にザイが四つのロッテに分かれ、接近する。

 

<<ALTAIR03、04に告ぐ。ザイが接近する可能性がある。注意を>>

 

通信を終えるとザイが視界に映る。

 

M字の主翼が特徴的なザイだ。

 

<<イーグルとグリペンは一機でロッテはやれるか?>>

 

<<できる>>

<<よゆー>>

 

<<じゃあ、頼む>>

 

一番前のロッテに狙いを定める。

 

<<FOX2!>>

 

RAAMを一発放ち、上昇する。

 

M型のザイが追いかける様に上昇を開始するが、二番機の位置にいたザイがミサイルを喰らい、墜ちて行く。

 

<<敵機の撃墜を確認しました>>

 

一番機のザイはRF-4TP-AZJを追って上昇するが、RF-4TP-AZJは嘲笑う様にザイの下に旋回して、水平飛行する。

 

それを追ってザイも左旋回するが、RF-4TP-AZJはダイブブレーキを開いて、急降下を開始する。

 

ザイも追いかけて急降下を開始する。

 

<<イーグル!後ろのザイを墜とせ!>>

 

F-15Jの後ろに回り込もうとしていたザイに機関銃を1秒撃ちながら、バトラが叫ぶ。

 

<<りょーかい>>

 

F-15Jの前方と後方で爆発が起きたと同時にF-15Jがトリムアップ。

 

RF-4TP-AZJの後ろを追っていたザイに機関銃を一秒撃ち、撃墜する。

 

<<ナイスキル!>>

<<イーグルもバトラもやるな!>>

 

バトラとマイケルがイーグルを褒める。

 

<<ALTAIR03、敵機撃墜>>

<<ALTAIR04、敵機を撃墜>>

その後すぐに詩苑と詩鞍が敵機を撃墜した事をサラと京香が報告する。

 

<<ちょっと!何してんの!>>

 

イーグルの叫びを通信機が吐き出す。

 

<<上>>

 

ファントムの言葉に上を向くバトラ。

 

「ん?」

 

バトラが太陽から黒い点が近づいてくるのを見つける。

 

<<03、04!上空から十機!>>

<<詩苑!上空から敵機です!>>

<<詩鞍!上空から来てます!>>

 

カノープスのオペレーターの声が響く。

 

ザイが十機、RF-4EJから少し離れた位置を飛ぶ黒と白のA-10に殺到する。

 

<<<<ブレイク!>>>>

<<FOX2!FOX2!>>

 

RAAMを同時ロックオン可能な限界数の四機に発射して、QAAMをLOAL(発射後ロックオン)で二発発射。

 

LOALはで発射されたQAAMは母機(RFー4TP)の誘導で飛び、母機が1500メートル以内にザイを収めるとミサイル自身がザイを追う。

 

RAAMが四発全て命中した後に少し間を置いて、QAAMが二発命中する。

 

その後は残りの四機もグリペンとイーグルの働きで撃墜された。

 

<<残り何発だ?>>

 

<<BARBIE01、対空ミサイル5発と機関砲弾>>

 

<<イーグルは6発で、機銃はまだ余裕あるよ>>

 

<<此方は、20mmを消費したが、30mmはマックスで、ミサイルはRAAMが五発とQAAMは九発だ>>

 

<<こっちは機関砲しか使ってないです>>

<<こっちもミサイルはフルです。どうして奇襲が?>>

 

<<相手が電波封止をしていれば警告は出ませんよ。此方のレーダーは上まで届きませんし、太陽を背にされたら発見も困難ですよ>>

 

ファントムには余裕がある様に感じるバトラがレーダーでファントムのRF-4EJの位置を探る。

 

(離れ過ぎだろ!)

 

戦闘域から出た所を旋回していた。

 

<<敵大規模編隊が接近!>>

<<あー、もう!また!>>

 

イーグルが文句を言いつつ、機首を敵編隊に向ける。

 

ザイも編隊を維持したまま接敵する。

 

<<何でも良いから早く来てよ!ミサイルが無くなっちゃう!>>

 

三本の白い茎の先に三つの炎の花が咲かせながら、イーグルが叫ぶ。

 

<<自分の身を守るのに精一杯の様ですが?この上に私の護衛ができるんですか?>>

<<できるかどうかじゃなくて、やってるんだから!さっさとーー<<BARBIE02被弾!>>

 

山吹色のF-15Jの主翼から煙を吐いているが、至近弾だったおかげか飛行に支障はない様だ。

 

<<更に新手。接敵まで三十秒!>>

 

<<は!やっこさんは俺らを本気で殺したいらしな!>>

 

<<お兄様はやらせません!>>

 

<<ALTAIR03、任務を忘れるな。護衛機体は同じ、ファントムでもBARBIE03だ>>

 

<<…………>>

 

<<が、此奴はまずいな。ここにまだ、十五機に後詰めが五十機か>>

 

(先に来た新手が俺とイーグルが五機は墜としたから、二十機に後詰め五十に最初の十機合わせて、八十か。下手な空母よりあるな)

 

<<地上からミサイルが発射された。注意しろ>>

 

バトラが機数から規模を計算しているとカノープスから通信が入る。

 

ミサイルは戦闘機部隊と同高度に達すると爆発し光のリングを作り出す。

 

爆風に巻き込まれた機体が洗濯機に入れられた服の様に揉まれる。

 

<<ALTAIR01!無事か!>>

 

バーフォードが叫ぶ。

 

<<右の主翼が損傷しているが、戦闘に支障なし>>

 

<<他の機体はどうだ?>>

 

<<ALTAIR03と04はBARBIE03の近くだったので無事です>>

 

マイケルが詩苑と詩鞍について報告し、バトラはグリペンとイーグルを見つけて報告する。

 

<<BARBIE01、02共に損傷が確認できる。だが、飛行に問題は無さそうだな>>

 

<<それは良かった>>

 

<<バーフォード。あれは何だ?>>

 

<<地対空クラスター弾と言うべきものだろうな>>

 

<<なんだ。唯の面制圧兵器か。じゃあ、問題無いか>>

 

<<被害高度は此方で報告しますので、退避をお願いします。腐っても、クラスター弾です。燃料気化弾頭よりは被害範囲は狭い筈ですから、簡単です>>

 

敵機をQAAMで撃墜するバトラ。

 

<<地対空クラスターミサイルを確認……嘘だろ……>>

 

<<どうした、マイケル軍曹>>

 

<<五発同時です!被害範囲をHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)に表示します>>

 

<<真っ赤じゃねーか!?>>

 

HUDのほぼ全てが真っ赤だった。

 

<<被害高度は1000から2000です>>

 

急降下で被害高度から逃れるRFー4TP。

 

高度1000を切った途端に光のリングが三つ出来上がる。

 

<<無理ですね。撤退しましょう>>

 

ファントムが落ち着いた声で話す。

 

<<賛成だ。あのミサイルをどうにかしないと無理だな>>

 

<<冗談でしょ!?ここまで来て!?>>

 

<<残弾が尽きる前に撤退すべき>>

<<弾が無くなったら、逃げれませんよ>>

 

<<ファントムさん、私のミサイルが十二発残ってます。これを誘導して、お兄様の撤退ルート上の敵機に当てれますか?>>

 

<<可能ですね>>

 

<<全機、残りのミサイルを撤退ルート上の敵機に集中しろ!撤退だ。作戦を練り直す>>

 

残った全ミサイルが撤退ルート上の敵機を焼き尽くしたと同時に撤退ルートに雪崩れ込み、撤退する。

 

これがM43飛行中隊と航空自衛隊の初の敗北だった。




諸君、私はSuー47が好きだ。
諸君、私はベルクトが好きだ。
諸君、私はベルクトのアニマが大好きだ。

あの前進翼が好きだ。
あのカナードが好きだ。
あの独特な形状が好きだ。
あのラスボス臭が好きだ。
あの美しさが好きだ。
浪漫が溢れてるのが好きだ。
アニマが健気なのが好きだ。
アニマが働き者なのが好きだ。
アニマがアルビノなのが好きだ。

そんなベルクトが1巻で退場した時はそれは泣く程に悲しかった。

諸君、私はベルクトの救済を、救済を望んでいる。
諸君、私の小説を読む読者の諸君。
君達は一体、何を望んでいる?

ベルクトの救済を望むか?
ベルクトが空を飛ぶ事を望むか?
その武装の限りを尽くし、この小説のザイを墜とす、エースの様な活躍を望むか?

バトラ「茶番に300文字近くも使うな。纏めるとベルクトちゃん救い隊でも作りたいから、隊員求むってところだろ?」

簡単に言うとそうです。

バトラ「と言う訳でベルクトに救済を考えている馬鹿の戯言だ」

こんな方法どう?とかあればお願いします。

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