ガーリーエアフォース PMCエースの機動   作:セルユニゾン

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明日は七夕ですね。と言う訳で縁日デート編です。


特殊作戦 縁日逢瀬

「うん? こんなご時世にやるのか?」

 

小松基地の掲示板に見慣れない色鮮やかなポスターを見つけたバトラが立ち止まる。

そのポスターには7月の6・7日に海沿いのビーチを丸々使った縁日と花火大会のお知らせだった。

「ザイの脅威が目の前にあるからこそやるんだろうさ」

「バーフォード中佐」

 

バトラに声を掛けたのはバーフォードで手にはシフト表らしき物を持っており、バトラは縁日と花火大会開催の2日間の内、2日目が午前勤務になっているのが気になり質問を飛ばす。

 

「なぁ。バーフォード中佐? 俺の勤務が2日目が完全なフリーについての説明を求めます」

「上官として命令する。アルタイル隊とアンタレス隊に所属するメンバーに対して日頃の感謝を込めて縁日に付き合え。まぁ、あれだ。3人とデートして来いって事だな」

「あ! 甚平は用意してありますから」

「ウィリアムのクソ野郎がぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

拒否する以前に既に外堀を埋められ、城郭にも侵入を許していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の縁日と花火大会だが、夕方の5時から始まり、夜の9時30分に終わるスケジュールだ。

しかも花火大会は9時から30分にかけて行われる。バーフォードから渡されたタイムスケジュールにはバトラ・詩鞍・詩苑・ベルクト、そして何時の間にやら増えたファントムの5人で花火大会を見る事が命令されており、デートに使える時間は5時から9時の4時間。つまり、240分の猶予を均等に分けて、バトラは詩鞍・詩苑・ベルクト・ファントムの4人と60分間のデートを4セットする事になる。

 

因みに今回のデート代だが全てがバーフォード持ちと言うバトラの決死とも言える交渉を果たす裏で誰がどの順番でバトラと縁日デートをするか4人の美女が仁義なき空戦をバーチャル世界で行っていたのをバトラは知らないまま、縁日の舞台へと歩いているのだが、その足取りは重かった。

 

「で? 最初は誰だ?」

砂浜にベニヤ板を置いて作られた縁日横丁とも言うべき場所の出入り口でバトラが独り言を喋りながら懐中時計を取り出して時刻を確認する。

横丁が解放されるのは5時なのだが、時計は16:55を指している。

顔を上げると誰かの影が目に入り、顔を向ける。

 

「最初はお前か」

 

視界に映ったのは何時もの南海の海を思わせる緑色の髪に美しいヘイゼル色の瞳を細め笑いかけるファントムだった。

 

「嫌そうですね。まあ、仕事をしたいと言っていた貴方らしいですが、今宵は仕事を忘れて欲しいです」

「遊ぶ時は名一杯遊ぶのが俺流だ」

 

そうですか。とファントムは頷くと腕を少し広げて袖を見やすくすると身体を左右に捻りながら膝を曲げて、バトラに浴衣を着た自分を見せ始める。

バトラは何をしているんだと首を傾げる問いかにもなと言える程に軽い怒りを滲ませる表情を浮かべる。

 

「何かしたか?」

「していないのが問題です。全く、女性が服を見せている時は褒めて欲しいんですよ」

ファントムの言葉にバトラが凄く驚いたと口を大きく開ける。

 

「ま……まさか、お前にそんな少女的な感性があったとは……」

「……殴りますよ?」

 

言うが早く、バトラは僅かながらに露出している脛の部分をそれなりの強さで蹴られる。

バトラは蹴られた所を摩りながらもファントムの浴衣に目を向ける。

「それで?」

 

エメラルドブルーの布をメインに海面を網目状に反射する光の様な白で大きめの六角形で埋め尽くし、その六角形の中には六角形と同じ白で同じ位の大きさの6枚の花弁を持つ花の様な模様が描かれている。

帯はシンプルに白一色の模様無しだが飾り紐に濃い緑を使ってアクセントを加えている。

「はえーよ……まぁ……でも……」

 

今までは清楚で美しい洋装が多かったファントムだが、今回の浴衣は上品で美しいと言える和装だった。

事実、遊びに着た女学生達には影でファントムの格好に着いてヒソヒソと称賛している。男子達にはファントムの上品な美しさはわからないらしく、一目見ると直ぐに視線を

 

「シンプルなデザインだが、上品な美しさがあるな。ファ……幽香には合ってるんじゃないか?」

 

ファントムと呼ぶと怪しまれる為にバトラは偽名である幽香と呼ぶ。

 

「ありがとうございます。バトラさんの服装も似合ってますよ」

 

バトラの甚平は那覇基地時代に貰った物で水中撮影されたジンベイザメの身体の模様をペイントした物。

ジンベイザメの体表と水中の独特な光の入り具合もしっかりとペイントされている事でシンプルではあるが何処かおしゃれな雰囲気を醸し出している。

腰にはシンプルに薄水色の帯に甚平と同じ布で作られた巾着をぶら下げて、財布代わりにしている。

 

「なんか恥ずかしいな。服装を褒められるのは……」

「そうですか? 解放された様ですし、行きましょうか?」

 

そう言ってファントムが一歩前に出て、肘が少し曲がる程度に手を差し出すがバトラは恥ずかしさからか手を取る事はせずにそそくさと前に出て縁日の会場へと入って行く。

 

「ほぉ……結構あるな」

 

バトラがファントムの横を歩きながらも横目で出店を薙ぐ様に見て行く。

出入り口付近という事もあるのか食べ歩きの出来る串物を1本単位で売っているお店が多い。

 

「私はこう言う所に来たのは初めてなんですが、何か楽しみ方と言うのはあるんですか?」

ファントムの質問にバトラは無いと首を振って見せる。お祭りと言うのは兎に角は楽しんだ者勝ちだ。

2人は様々な店を回ってはこれが食べたいと思った物をバーフォードの金で何も考えずに買って行く。

 

「奢って貰ってよかったんですか?」

 

そう言うファントムの手には縁日の顔とも言える綿飴や綿菓子と呼ばれる白い菓子が握られている。

「良いんだよ。こう言う時くらいは男に見栄を張らせろ」

 

ファントムはそうですかと頷くと手に持った綿飴をおちょぼ口で食べる。

 

「ん。ただの砂糖の筈なんですか美味しいですね。ボッタクリも良いところですが」

 

綿飴や綿菓子は専用の機械を使ってザラメを溶かし、それを糸状になる様に回転しながら放出。空気により冷えて糸状になった砂糖を割り箸や棒で巻き集めて作る菓子だ。

原材料がザラメと安く、1人前に使う原価は10円から20円程だが、ファントムの買った物は200円とボッタクリ商売に思えるが袋詰めされた物を吊るしている店だと300円程なのを考えると相場以下の価格だ。

 

「雰囲気があるからな。そう言うのもあるだろう」

 

だが、綿菓子や綿飴が縁日や祭りで美味いと思えるのはこう言ったお祭りごとで周りが心地良い騒がしさや祭り特有の空気があるからだろう。その雰囲気もお金で買っていると思えば高い買い物とは思えなくも無い。

 

「成る程……食べますか?」

 

そう言って軽く突き出すファントムにバトラが手を出そうとすると引っ込められる。

 

「手がベタつきますよ。砂糖なんですから、口で直接どうぞ」

今度は顔に突き出されるとバトラも観念したのか口で直接食べる。口に広がるのはフワフワとした食感の直ぐ後に来る砂糖の純粋な甘さだが、雰囲気とデートによくあるシェアによりそれ以上の味をバトラの舌に与える。

「ふふ」

 

バトラが食べた瞬間に今度はファントムが口に入れるがわざと指で回してバトラが齧った場所から齧る。

 

「あ」

バトラが間接キスだと気付くとファントムは今更気付いた所で遅いですよと言わんばかりの可愛いらしいドヤ顏を浮かべるが、バトラはそんな事は慣れているし気にしていないとドヤ顏を送るとファントムは不貞腐れた顔で歩く速度を速めると直ぐに綿飴を食べ切ってしまう。

 

途中で輪投げを行うがファントムの完璧なスローイングに対してバトラは手榴弾を投げる様な動作で輪っかを揺らさずに投げる不恰好な投げ方で景品の団扇を取って行く。

 

次に射的に来たのだがコルクを集めるのが面倒なのか着色料は色ずけされた水を使って行う射的だった。

屋根と景品の交換券の間に新聞紙が垂れ下がっており、水でふやかして落とすタイプだ。

 

これはファントムが普通にしては上手い射撃で1つを手に入れたが、バトラは新聞紙の向きを見て、10回の射撃に精密な射撃と新聞紙は縦先に弱いと言う性質を利用して4つ取る。

 

ファントムは緑色のサイリウムを貰い、バトラは青と赤、白と紫のサイリウムを貰う。

 

そうこうしている間に約束の60分は体感では意外にも早く済んでしまう。それはそれだけ2人の縁日が楽しい時間だった事の表している。

 

「それじゃあ、私は1人で回ってみます。では、花火の時間に」

「了解した。気を付けろよ?」

 

ファントムが手を振って人混みの中に消えて直ぐに人混みからもう1人のデート相手が出て来る。

 

「今度は……」

 

白や赤、橙色、薄桃色の菊と黄色い色の桜菊の葉がペイントされた黒い浴衣と言う上品な佇まいに白い網目模様の入った薄桃色の帯に飾り結びで結んだ水色の布が清涼感を出す服装に身を包んだ詩苑だった。

 

ファントムとは違うペイントで彩られた浴衣だが与える印象は清涼感のある上品さだ。

そんな浴衣をこれまたお嬢様の様な雰囲気を醸し出す詩苑が着ている為に浴衣の雑誌に載せられそうな程にマッチしている。

 

「何時ものとは違った雰囲気だな」

「洋装と和装ですから勿論ですよ。それよりもお兄様のお腹は大丈夫ですか?」

「綿菓子位しか食ってないからまだまだ入るぞ」

 

ファントムとのデートは雰囲気を感じ取ったり遊んだりを中心だった為にそれほど何か食べたと言う物は無い。

 

「あ、そうだ。これやるよ」

そう言って腕を出せとジェスチャーすると右腕にサイリウムを輪っか状にした物を取り付ける。

「えへへ、ありがとうございます。お兄様」

「そんなにくっつかれると歩き辛いぞ」

「いいじゃないですか」

 

2人が屋台と屋台の間を抜け出て縁日のメインストリートとも言える場所に出て行く。

6時から7時の部である詩苑の為に食べるとしたら焼きそばやお好み焼き、変わり種で広島焼きだろう。

目に映る屋台1つ1つを見て何を食べるか相談し合う。

屋台が多いと競争も激しいのか様々な違いを見せようと躍起になっている出店の店長達の姿が映る。

 

ファントムの時は常套手段である袋に頼らない代わりに価格を抑え、作りたてを出すと言う工夫がされていたが、焼きそばやお好み焼き、広島焼きとなると中の具材を変えていたりしている。

 

「此処は豚肉なんですね」

「3軒先はイカ……タコなんて変わり種まで」

 

色々と見て回った2人だが最終的に選んだのは塩と胡椒でシンプルな味付けをした塩焼きそばだった。

「意外です。お兄様が塩焼きそばが好きなんて。男性って味が濃いのが好きですよね?」

「ソースも好きだぞ? 今日は気分的に塩ってだけで。お前もこれで良かったのか?」

 

ベンチに座って同じプラスチックの容器に入った塩焼きそばを別々の箸でつつく。

塩焼きそばを選んだのはバトラだが、薄味で青海苔不使用の店を選んだのは詩苑だ。

 

「(濃い味付けよりは薄味派って言うのもありますが、お兄様の前で唇や歯に海苔なんてつけれません)」

 

あわよくばキスの雰囲気になった時に歯や唇に海苔が付いていたら多少なり雰囲気が萎えてしまう。

詩苑はもしもの時の為に食べる物を内心で吟味していた。

 

2人で特設のベンチで食べる2人を仲の良い兄妹を見るような目で周りの大人達は微笑ましく見ていき、高校生位の男子達は何か羨ましそうに見ては嫉妬や怒り、殺意を滲ませる様な目で睨みつけていく。女子は見た目の違い過ぎる故にイケメンの彼氏と縁日に来たお嬢様タイプの美少女に嫉妬や羨ましさを含んだ目線で一目見ると先に進んで行く。

 

「人が増えて来ましたね」

「はぐれない様に注意しながら行こうか」

 

近くにゴミ箱に容器を捨てたバトラが立ち上がると今度はヨーヨー掬いの出店に顔を出す。

 

「手頃なサイズでも狙うか」

 

甚平の袖を拭いながらそう漏らすと店の親父さんがバトラを煽る様に声を掛ける。

 

「男の子がそんな事を言っちゃいけねーぜ! 男なら大物狙いだろうよ!」

 

そう言って新しく作った特大ヨーヨーをプールに投入するとバトラバトラもそのヨーヨーを狙う。

「よっしゃー!」

 

1発で取ったバトラだがゲットの条件は自分でプールよりも高く上げて掴むか外に出すである。

バトラが持とうとした瞬間に別の子供が勢いよく上げた事で跳ねた水滴により手で掴む直前に釣り針が切れてプールへと落下した。

 

「あ」

「こ、今度は私がしますね」

 

子供達も空気を読んで全く動かないでくれたお陰か詩苑は難なくバトラが落としたヨーヨーを掬い上げる事に成功する。

 

何とも言えない雰囲気になった為にバトラは逃げる様に別の屋台で胡瓜の1本漬けを買ってかぶりつく。

 

「あれは残念でしたね」

「そうだな。食べるか?」

「あ、頂きます」

 

そして、齧った辺りで間接キスをした事に気付いて顔を真っ赤にした辺りでバトラの携帯からブザーが鳴り響く。どうやらタイムリミット5分前の様だった。

バトラは次の相手との場所に人混みを避けながら進むと丁度リミット1分前だった。

 

「それはやるよ。じゃあ、後で」

「はい、まひゃあひょで」

 

舌足らずで何処か上の空な詩苑を心配しつつも直ぐにファントムがフォローに回るのを見つけるとファントムがウィンクを送ってきた事に内心で戦慄を覚えるが、次に相手の為に合流地点へと向かった。




『スクリーンに4人の美少女の空戦が出力される』

自衛隊一同『これは飛びたくない』

って感じの空戦と言うかディスプレイに飛行機雲とミサイルの発射炎と曳光弾しか映らない様な空戦でした。

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