マイ「艦これ」「みほ2ん」(第2部)   作:しろっこ

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花火大会は終わったが会場周辺は混雑していて直ぐに帰ることができない。
そんな中、司令たちは、ある意外な人物と出会った。


第67話<まつりごと>(改2)

 

「コノ子ガ、世話にナったな」

 

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マイ「艦これ」「みほ2ん」

 第67話 <まつりごと>(改2)

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 境水道では最後の大掛かりな仕掛け花火に点火され最高潮を迎えていた。立て看板のような大きな枠組に次々と花火が着火して次々と輝く。

 

「アレは何ですか?」

金剛の声に比叡が目を凝らす。

 

それは仕掛け花火の後に現れた電飾だった。

「えっと文字が『来年も会いましょう』……って書いてありますね」

 

「電飾……まるで観艦式みたいですね」

赤城さんが呟く。

 

「ああ……」

恐らくその情景を直ぐに連想したであろう青葉さんが相槌を打った。

 

 花火会場からは自然に拍手が湧き起こった。

この戦時下で堂々と騒げる唯一の楽しみでもある夏祭りだ。それが、もうこれで終わってしまうのか……と思うと会場全体にも安堵したような気だるい脱力感が広がっていく。

 

(もし今が有事で無いとしても花火大会の終わりは、こんな感じか)

私は、そんなことを考えていた。

 

境港の夜空にも薄っすらと硝煙が広がって独特の余韻を残していた。

 

(出来れば平和な世の中で、この香りを浴びたいものだな)

ふとそう思った私だった……そんな日が、いつかは来るのだろうか?

 

 見ると祭りの余韻に浸っているのは艦娘たちも同様らしい。

私の左右にいる山城さんも日向もボーっとしていた。

 

 日本の文化と思いのほか親和性の良い彼女たち。私たちが感じる「和の文化」は艦娘にとっても心地良いに違いない。

 

 そもそも彼女たちのお陰で我々人間は代理戦争のような状態で最前線から後方に下がることが出来たのだ。ただ世間一般には、そのことが、あまり認知されていない。

 

 軍部と政府の方針で艦娘たちが最前線に出ていることは何十年も伏せられ未だ最前線では人間が深海棲艦と戦っていると信じられている。

 

 いわゆる情報統制だ。

 

 海外との物流だけでなく、まともな通信手段すら分断されたことを逆手に取って、日本を中心として世界各国が情報まで制限している。敵が直接上陸作戦に出てこない妙な習性を利用しているのだ。

 

 それは為政者たちに取っては実に手軽な国家統制の方法と化していた。

結果的に、それが政治と科学の怠慢を生み軍事技術が先行する技術革新を遅らせていた。

 

 人類は本来ならば、もっと文明や科学技術が進化すべきだったのに、ここ数十年の戦いで文明の発展が停滞しているとも言われていた。

 

 もちろん軍部でも意見は割れている。事実を公表すべきだという派閥と、そうでない派閥だ。現状は既得権も大きいためか現状維持派が強い。

 

 私のような地方の下っ端指揮官では、どちらに組みするということは無い。中央では海軍自体だけでなく陸軍や空軍との軋轢もあるというが少なくともこの山陰では、そういった争いも無く平和そのものだ。

 

 この会場に居る艦娘たちも周りから海軍かどこかの軍人だろうと思われているに違いない。

 軍人は転属が多いから地方では周りと少し違った「香り」を感じさせる人が多いものだ。特に境港は港町だから、船乗りが多い。彼らと同じ雰囲気を艦娘たちも持っているのだ。

 

 だから境港市民から彼女たちは少々あか抜けた若い女性たちと、それを束ねる指揮官という構図にしか見えないだろう。

 

 ちょっと脱力した山城さんと日向から解放された私は周りを改めて観察する。

 

 艦娘たちは美保に来て伸び伸びとしている。そんな彼女たちを見ていると、この美保鎮守府には何らかの意図があって艦娘を意図的に寄せ編めているのではないか? ふとそんな思いにもなる。

 

 会場に祭りを締めくくる放送が流れ花火大会は無事に終わった。

 

 周りを見ると気の早い人は帰り始めている。ただ広場では、まだ盆踊りを続けるようだ。

 艦娘たちも一部に、まだ踊りたい面々もいるようだが……休暇は今日一日だ。そろそろ切り上げるべきだろう。

 

 私はコレ幸いと立ち上がって号令した。

「さあ、もう帰ろうか?」

 

 無意味な対立を続けていた二人の戦艦娘は我に返ったよう「ハッ」とした。

 対抗意識を燃やすこと自体は軍人としては決して悪いことではない。

でもさすがに、お互いがバツの悪そうな顔をしている……そんな姿を見ると、こいつらも可愛いものだな。

 

 山城さんに至っては今にも泣き出しそうな表情だ。そんなことなら最初っから張り合わなければ良いんだ。こういう単純なところは艦娘らしい。日向も居心地の悪そうな表情をしている。

 

 それでも彼女たちの顔を見ていると少々可哀想になったので声をかけた。

「二人とも、ありがとう。今日は楽しかったよ」

 

社交辞令だけど、その一言で場が和んだ。

(やれやれ)

 

でも山城さんは、余ほど恥ずかしかったのだろう。しばらく固まっている。

 

一方の日向は、最初は手のひらで顔を覆っていたが、直ぐに顔半分を覆った状態で聞いてきた。

「司令、念のため夜間偵察をさせていた銀河からの報告です」

 

「うむ」

……その不可思議な格好は止めて欲しいな。せっかくの美人が台無しなんだけど。

 

彼女は続ける。

「この境港駅周辺から海岸通りにかけて花火大会後の大渋滞が発生。トラックでの迎えも今からだと1時間以上かかります」

 

「そうか、少し時間があるか」

広場では、まだ盆踊りも延長しているようだし。仕方ない少し踊るかな……と思ったら青葉さんだ。

 

「全体で記念写真、撮りましょう!」

彼女がニコニコしてカメラを抱えて提案する。

 

私は良い顔をしている彼女に言った。

「それ採用だな」

 

 さっそく日向や祥高さんが声をかけてベンチを中心に皆で並び始める。

位置的には私と祥高さんが真ん中に並び、そこから大きい順……戦艦、空母、巡洋艦と並ぶ。夜祭りで浴衣だ。細かいことはあまり気にしないでサッと並んでおこう。

 

 そのとき五月雨が仲良くなったという子供の母親らしき人が迎えに来た。私は気にも止めなかったが北上がすごい勢いで私の袖を引っ張るので驚いた。

「司令ってば」

「……何だよ北上、腕がちぎれる」

 

そこまで言った私も振り返って絶句した。いや私だけではない。その場に居た艦娘たち全員が凍りついた。

 

「コノ子ガ、世話にナったな」

そう話しかけてきた「母親」らしき人物は……浴衣を着てはいるが深海棲艦(大井・仮)じゃないか!

 

 彼女は小さい子供を抱き上げると、そのまま立ち去ろうとしている。全員ただ呆気に取られるばかり。

 

だが私は敢えて彼女に声をかけた。

「ちょっと、待ってくれ」

 

ビクッとしたように立ち止まった彼女。何かを警戒するように、ゆっくりと振り返った。

「ナニカ?」

 

私は努めて明るく言った。

「安心しろ。お祭りだし今日は敢えてお前と争うつもりは無い。それに……その子もイイ子じゃないか?」

 

暗くて表情は判り辛いが彼女は少し警戒心が解けたように見えた。

 

「ソウダ。イイ子だろう」

よほど嬉しかったのだろうか? 意外に笑っているように感じた。

 

その雰囲気は普通の人間……いや艦娘とも何ら変わらないように見えるから不思議だ。

 

急に北上がカットイン。

「お前、大井っち……なのか?」

 

「……」

その言葉に一瞬、緊張が走った。彼女は黙っていた。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。


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