マイ「艦これ」「みほ2ん」(第2部)   作:しろっこ

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軍用車で囮(おとり)になって、敵戦車を岸壁に引き寄せる日向。そして島風の連装砲が火を吹いた。


第25話<島風と反撃>(改2)

 

「囮(おとり)」が好きだな、日向。

 

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マイ「艦これ」「みほ2ん」

 第25話 <島風と反撃>(改2)

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 岸壁の左右からのキャタピラの音が、かなり近づいて来た。

日向と思われる軍用車は狭い岸壁で盛んに回避運動をしているようだ。

 

「勢い余って車ごと岸壁から海に落ちないか?」

何だか、そっちが心配になってきた。

 

「境水道は潮の流れが速いからな。普通の船でも油断すると危ない」

私は何気なく呟いた。

 

「そうっぽい?」

興味深そうに夕立が聞いてくる。

 

「ああ。だからココで海に落ちると一週間くらい上がって来ないんだ」

「何が?」

彼女は不思議そうな表情をする。

 

「人間の遺体」

「えぇ? 怖いぃ」

目を丸くしているな。

 

「あ……でも艦娘は車ごと海に落ちても、まったく問題ないか」

私は苦笑した。

 

口を尖らせる夕立。

「私ぃ、やだよ水死なんて」

 

私は改めて彼女を見た。

「艦娘が自分から落ちたぐらいで溺れるかよ」

 

「あ、それもそうっぽい!」

……疲れるな。

 

 そのうちヒューンと言う滑空音。着弾地点が私たちが隠れている路地の周りにも集中し始めた。

 

 バリン、バシッっという破壊音が聞こえ、地面がビリビリと振動する。

 

「日向の心配より、こっちが、まずいんじゃないか?」

私は目覚めない寛代を気にしながら周りを見回した。

 

「司令ぇ、怖いっぽい!」

夕立がしがみついてくる。やめろっ! 寛代が潰れる。

 

「おい、お前も軍人だろ? しっかりせんか!」

私が嗜(たしな)めると彼女はハッとしたような顔をした。

 

「島風ちゃん?」

「はぁ?」

一瞬、夕立が何を言っているのか理解出来なかった。

 

「あ、無線か?」

そう悟った次の瞬間だった。

 

少し遠くからダーン、ドーン! ……という砲撃音に着弾音。そして陸地側からは爆発音が入り乱れ始めた。

「これは流れが変わったな」

 

直ぐに私は彼女に言った。

「状況を確認!」

 

「ぽい!」

夕立は弾かれたように立ち上がると路地から外を窺(うかが)っている。

 

「えっと、島風ちゃんが近くの海まで来たっぽい……あと連装砲ちゃんも」

呆れた。

 

「おい、報告に『ぽい』はないだろう?」

「えへ」

リボンの付いた頭に手をやる彼女。

 

「だが島風が来たことは確かだな」

……そうか、あいつなら足が速いから。

 

「取り急ぎ撤収艦隊よりも先に地上掃討のため島風を派遣したか」

さっきの通信は、その暗号だったか。

 

「なるほど」

それをいち早く悟った日向は意図的に敵の地上部隊を岸壁に引きずり出すべく奔走したわけだ。

 

「『囮(おとり)』が好きだな日向……だが疾走する姿が似合っているのは、お前らしい」

私は納得するように呟いた。

 

夕立が報告する。

「司令、島風ちゃんが無線で叫びながら戦車を砲撃中っぽい」

 

……この『ぽい』にも慣れてきた。

 

「駆逐艦一隻といえども艦砲射撃は威力が大きい」

私は言った。

 

「島風は連装砲がいるからな。旧市街に敵の戦車が数台いるとしても境水道で逃げ回る島風たちを戦車から狙い撃ちするのは至難の業だ。その結果は明らかだな」

 

夕立が聞く。

「それも秘書艦さんの立案?」

 

「多分な。相変わらず祥高さんは切れ味が鋭い」

そう言いながら、私は疑念が湧いた。

 

まさかとは思うが、今回の墓参に私を強く押した理由って、敵をおびき出す為?

 

「……いや、疑うのは止めておこう」

 私は頭を振った。

 

……仮に秘書艦には何らかの作戦の意図があったとしても結果的に寛代は私を庇って犠牲になり夕立も負傷した。祥高さんだって気持ち的には苦しいだろう。

 

 ズドン、ズトンと爆破音が続き岸壁には硝煙の匂いと黒煙が立ち上り始めた。明らかに流れ弾は目標以外の市街地にも幾つも落ちてるようだな。

 

「やれやれ、空軍基地に続いて今度は民間の港湾施設を破壊しまくりか」

美保鎮守府は過激だという評判が立ちそうだ。

 

「ぽいぃ」

夕立も苦笑している。

 

「まあ敵襲だ。公的な『お咎(とが)め』はないだろう」

「そうっぽい?」

やや驚いたように聞いてくる夕立。

 

「……ああ。陸軍や空軍が太刀打ち出来なかった相手だ。結果的には大目に見てくれるだろう」

ただ地元の境港市民に対しては心が痛んだ。

 

「しかし敵は地上部隊だけだろうか?」

 もう少し情報が欲しい。日向たちが2、3機ほど墜としたとはいえ、まだ追加で敵機が来襲する可能性は十分にあり得る。

 

 やがて私たちの路地の向こう側に軍用車が停まる音がして誰かが近づいて来た

 

「日向か」

案の定、路地の入口に日向が顔を出した。彼女は一旦立ち止まって敬礼をした。

 

「日向、帰還致しましたので報告します……(ハアハア)軍用車を隠蔽する際に暗号電文を受信……」

彼女はポタポタと落ちるほどの汗をかいていて肩で息をしている。

 

「直ぐに島風が先に到着すると悟って……(ハアハア)」

 艦娘とはいえ兵士が目の前でハアハア言いながら報告を受けるのは初めてだ。

相手が日向となれば、なおさら貴重だ。こうやって喘ぐ日向には滅多にお目にかかれない。

 

……ちょっと惜しい気もしたが私は彼女の報告を制した。

「そこまでで良いよ日向。状況は分かった」

 

「きょ、恐縮です(ハアハア)」

日向は敬礼した。今もなお汗がポタポタと落ちている。

 

1)深海棲艦を刀で伸した後に、

2)軍用車を駆って、旧市街を囮になって、

3)複数の戦車から逃げ回ったんだ。

 

「もう武勲賞モノだ。倒れるなよ」

私は彼女に言った。

 

夕立も言う。

「本当に日向は武人だよねぇ」

 

「いや……」

他の艦娘なら恥ずかしがるところだが今の彼女は、それどころではない。

 

肩で息をしながら、それでも時おり耳を傾けて索敵を継続している。

 

思わず私は言った。

「ちょっと休憩しないか?」

 

「いえ、ここから脱出を完了するまでは気が休まりません」

この子は本当に真面目を絵に描いたような艦娘だ。まあ、そこが日向らしいところだ。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。

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