マイ「艦これ」「みほ2ん」(第2部)   作:しろっこ

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司令は自力で応急処置をする夕立を見ながら、ある疑問を投げかけるのだった。


第23話<損傷と静寂>(改2)

「分からないっぽい」

 

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マイ「艦これ」「みほ2ん」

 第23話 <損傷と静寂>

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 日向が出て行った後の路地は静寂だった。暗い道路や壁と明るい青空のコントラストが妙に綺麗だ。

 

 ここは、かなり港に近い。狭い生活道路だが人通りは、ほとんど無い。たまに野良猫が通り過ぎる程度。

 

 そこに倒れている者2名……寛代と深海棲艦(大井・仮)、それに夕立と私だ。

 

既に空襲警報は止まっていた。だが解除の放送もないので町はまだ静まり返っている。今のところ敵がここへ来る様子も無い。

 

 私は寛代の容態が安定しているのを確認しながら夕立に問い掛けた。

「そういえば夕立の報告を聞いていなかったな」

 

「ぽい?」

 彼女は救護セットを、何処からか持ち出していた。さすがというか……

いや、むしろ兵士だからな。こういう事態に備えて常備しているのだろう。

 

「夕立、商店街を出た後の、お前たちの交戦はどうだった? ……もし腕が痛むなら後でも良いぞ」

 彼女は少し焦げた自分の服の袖……撃たれた腕の部分をハサミで切断している。白く細い腕が赤く滲んで……なるほど艦娘も人間と同じ赤い血が流れているようだ。

 

 彼女は口を開いた。

「ううん大丈夫っぽい……あれから直ぐに待ち伏せしていた敵機と交戦して一機は直ぐに撃墜したっぽい」

 

 説明しながら夕立は包帯の一端を歯でくわえて器用にクルクルと巻き始めた。上手に応急処置をするものだ。一見チャラチャラしているようでも、やるべき事はこなす。そこは本物の兵士だ。

 

「もういっひ(一機)は、ほっほ(ちょっと)てほほったへほ(手こずったけど)」

「……何言っているか分からん」

 

彼女は口から包帯を外した。

「えっと……いったんビルに隠れて、こちらから待ち伏せして後ろから攻撃して撃墜」

「何のことだ?」

 

「だから……別の一機が大変だったけど墜ちたッぽい」

夕立は包帯を巻き終わった。

 

「それは結局、撃墜したって事だな?」

「そうっぽい」

やっぱり彼女の口調は慣れないな。私はため息をついた。

 

夕立は補足する。

「あの機銃の弾(タマ)は、さっきの戦車ので全部なくなったっぽい」

 

彼女の目が急にキラキラしてきた。

「もうタマがギリギリでトドメ刺すまでに切れたらどうしようかって思ったからラッキーだったっぽい」

 

要領を得たような得ないような報告だが……まあ良い。

「そうか、ご苦労」

 

 夕立は壁に寄り添ってしゃがみこんだ。空を見上げると「ほう」っと一息つく。

 

私は慌てた。

「膝を立てるなっ」

 

「ぽい?」

パン○が見えるぞ。

 

 しかし腕の痛みは良いのかな? 私は、ふと疑問をぶつけてみたくなった。

「なあ、夕立……」

 

「ぽ?」

自分の応急手当が終わったら急に、いつもの夕立スタイルに戻ってる。相変わらず瞳が大きいな。

 

「お前たち艦娘が戦闘中に被弾とかすると身体は、どうなるんだ?」

「……」

 

私は寛代を見下ろした。

「今みたいに血が流れたりするのは、よく見るが」

 

 そういえば寛代は胸を撃たれたはずなのに、あまり流血していない。呼吸も安定してきたようだ。

 

私は顔を上げて続けた。

「艦娘ってのは多少、直撃弾を受けたとしても人間のように直ぐ、やられるわけではないのか?」

 

夕立は少し驚いたような顔をした。それから急に、こっちを指差して嬉しそうに笑う。

「わぁ、司令って何も知らないっぽい」

「悪かったな」

 

私も本気では怒っていない。こういう状況だと、夕立の屈託の無い笑顔はホッとするから。

 

「うーんと」

やっと考える仕草をする。

 

「……やっぱり、分からないっぽい」

彼女は舌を出して笑った。

 

「分からないって……おい! お前自身が体験していることなんだぞ!」

怒るというより脱力した。

 

「ダメ?」

「いや……良い」

もう、これ以上質問する気力も失せた。天然少女には敵(かな)わない。

 

 だが夕立の台詞に私はふと、あの深海棲艦の言葉を思い出していた。

『ワカラナイナ』

 

「分からない……か」

 私は、その台詞を反復した。艦娘という存在自体、現在の人間にも説明できていない。

 

 そもそも、この戦争だって分からない事だらけだ。駆逐艦である夕立が、そんなに詳しいことを知らなくても当然だろう。

 

 抱っこしている寛代をみて私は秘書艦を連想した。

「やっぱり彼女に聞かないとダメなんだろうな」

 

「ぽい?」

夕立が首を傾げる。

 

「いや、こっちのことだ」

 伸びている深海棲艦は、まだ動かないが……なんとなく寛代と同じように息はしている気配だ。

 

 敵とはいえ連中もやっぱり艦娘と同じような身体なんだろうか? 捕虜として連れ帰れば、いろいろ分かるかもしれない。

 

 別に陸軍とは違うから拷問とか人体実験するわけではない。ただ、ちょっと後ろめたい気分にもなる。

 

「ヒマっぽい」

夕立も空を見上げて、ため息をついている。

 

 そのとき遠くから何かのエンジン音……

「軍用車の走行音だな」

 

私が言うと彼女も応える。

「あれは、日向?」

 

ちょっと胸騒ぎがした。

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。

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