幻想RI!神主と化した先輩   作:桐竹一葉

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この度は更新が遅れてしまい、誠に申し訳御座いません。
一週間以内には一回更新を目指していたのですが……自分の薄弱な意思が恐ろしいです。
戦犯は某ダンボールステルスゲームです(ゲームに責任をなすりつける人間の屑


やさしい世界

異変とは一口に言っても、実際のその単語と、この幻想郷で使われる異変の意味合いは異なる。

『異変』とは、幻想郷内で度々発生する怪事件や怪現象などの騒動を指し、幻想郷規模の広範囲に渡る事件のうち発生時点で原因不明とされたものである、というのがこの世界の『異変』の定義なのだ。この異変だが、解決方法は至ってシンプルで、異変を起こした側と解決する側で決闘を行うだけである。だがその決闘というのが少々面倒な規定が有り、その決闘方法の名を『スペルカードルール』と言う。

 

規定の一つ目、『予め技の名前と、命名しておいた名前の意味を体現した技を幾つか考えておき、其々の技名を契約書形式で記した契約書を任意の枚数所持する』こと。

 

規定の二つ目、『対決の際には、決闘開始前に決闘内での使用回数を提示して、技を使う際には「カード宣言」をする』こと。

 

規定の三つ目、『体力が尽きるか、全ての技が相手に攻略された場合は敗北となる。仮にまだ可也の余力が残存していたとしても、予め用意した全ての技を攻略された場合は敗北を認める』こと。

 

規定の四つ目、『技などの美しさにも重きを置き、勝つ為だけの技(美しさを度外視した技や回避不可能の技がこれに当たる)は認められない。使用した場合は決闘放棄と見做し、問答無用で使用者の敗北とする』こと。

 

規定の五つ目、『此れが異変であった場合、異変の首謀者に敗れても、解決者側は何度でも挑戦が可能である。異変の首謀者は一度でも敗北すれば、潔く負けを認めて後腐れないよう異変を解決とする』こと。

 

その他細かな取り決めも有るにはあるが、この幻想郷で取り敢えず決闘をすると言うのなら、覚えておくべきはこの程度だろう。美しさを競うスポーツ感覚の戦いという性質故か、幻想郷の男達には余り受けの良いものではないが、霊夢達を始め魔理沙や紫もこのルールに則って戦っている。

このルールの設立には、妖怪と人間の関係、強者同士の真剣勝負による弊害など、真面目な事柄に起因するのだが、それを知る者は存外に少ない。

 

「あぁぁ、もう疲れた……何でよりによって夜に行くの?馬鹿なの?クッソ寒いんだけど?」

「RIMはもうちょいやる気出して、どうぞ。大体、朝は気分が進まないからって言ったのは何処の誰なんですかねぇ……後寒いのは い つ も の 脇巫女装束着てるからだと思うんですけど(自明の理」

「そうわよ(便乗)。博麗の巫女って言うのは強いって聞いてたけど、こんな怠け者みたいなのとは思わなかったわ」

 

兎にも角にも、そのようにして異変は解決される。そしてその異変の道中は、何も首謀者の元まで障害もなく一直線に辿り着けるわけではない。得てして首謀者までの道程には、解決者の行く手を阻む者が一定数存在するのだ。

 

首謀者と同じ理念を持ち、それを阻む解決者を排除する為に戦う者。

 

解決者に好奇心を抱き、特にこれと言った理由も無く解決者と戦う者。

 

解決者側が自分から吹っ掛け、偶々遭遇しただけだと言うのに戦わざるを得ない者。

 

訳は多種多様だが、異変道中はそうした決闘ーー俗称『弾幕ごっこ』を何故だか必ず起こり得るのだ。浩二は以前からこの幻想郷に住んでいただけあって、弾幕ごっこも経験済みなのだが、霊夢はこのルールに則った戦いは何だかんだで初となる。道中は面倒事だらけなのだろう、と覚悟して来たのだ。

 

 

 

「……あのさぁ。何で妖怪のあんたが、普通に浩二と話してんのよ?」

「そりゃあ、前からの顔見知りだもの。友人って訳でもないけど、知人程度の関係ではあるわ」

「そうだよ(便乗)。RMA(ルーミア)も俺の事は食う気もないみたいだし、なんか友好的」

「いや、友好的なんじゃないわ。ただクッソ汚い淫獣は見てて愉快だし、抑食べる気も起きないでしょう?」

「酷過ぎィ!」

 

 

だからこそ霊夢は、目の前で浩二と共に話し合う金髪の少女ーールーミアが、人食い妖怪でありながら彼と話すその光景に、頭を痛めていた。

 

「あのさぁ……異変って、道中で弾幕ごっこするもんじゃないの?」

「浩二がいるし、談話してた方が楽しいもの」

「俺を罵るだけの事は談話とは言わないんだよなぁ……」

 

ある意味予想していたよりも大変なのかもしれない。霊夢は額を押さえつつ、楽しげに会話を交わす二人の背中を眺めていた。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

赤い月が煌々と光輝を放ち、赤い霧に一面を覆われた夜空。夏の美しく瞬く星さえも見る事能わず、

赤い月光は霧と混じって届かない。正に、赤に染まった世界。流石に、この博麗神社の裏手に広がった森まで赤いという事はないが、上を仰ぎ見れば其処は完全なる赤の世界である。そんな森の中を、浩二はルーミアと談笑を繰り広げつつ、ある方向へと直進していた。その後ろへつく霊夢は色濃い疲弊を浮かべた面持ちでいると言うのに、前を歩く二人はお構いなしだが。

 

「ふぅん、異変の解決に行くんだぁ。でも、浩二ってそんなに強かったかしら?」

 

赤い目に、襟首の近くまでに切り揃えられた黄色の髪、それに左側頭部の赤いリボン。白いシャツに黒いベストのような物を羽織り、黒く長いスカートを履いている。そんな洋風の風貌をした小さな姿のルーミアは、人差し指で頬を突きつつその丸っこく幼気な顔を傾けた。整った容姿の彼女ならば、そんなあざといとさえ感じられる動作も様になるらしい。

 

「大丈夫だってヘーキヘーキ、いざとなればRIMに任せるからさ」

「情けないわねアンタ……」

 

何の躊躇いもなく下衆な発言をした浩二に、霊夢から冷たい眼差しが注がれる。しかしルーミアの方は、呆れつつも満更否定的な感情を抱いた様子ではない。

 

「まぁ、無茶して無意味に死ぬよりは余程マシよ。でも浩二が死ぬところって、何故か想像がつかないのよね。殺したと思っても生きてそう」

「あぁ確かに、此奴が只死ぬなんて考えられないわ……人里でも蜚蠊とか呼ばれてるくらいだし、生命力も高そうね」

「褒め言葉なのか罵りなのか、これもう分かんねぇな……」

 

一応初対面の筈の霊夢とルーミアだが、何故だかこうも息ピッタリに浩二へ口撃している。

勿論霊夢は人見知りという訳でもないし、ルーミアは基本誰とでもそれなりに話すことは出来る。

だがこうも初対面でありながら、旧知の仲が如き連携を取れるのは偏に、俗に言う浩二の『弄られキャラ』が役立っているのだろう。同じ口撃対象がいるからこそ、その対象を弄る事で初対面の相手ともある程度距離を縮められる。現に口撃する二人の表情は、異変解決の道中には似つかわしくない程に緊張感が無い。

 

「そう言えばアンタら知人同士って言ってたけど、いつから交流があったのよ」

「お、馴れ初めか?馴れ初めか?」

「言い方が可笑しいわよ蜚蠊。せめて切っ掛けでしょう?」

「センセンシャル…………って今蜚蠊って呼んだだろお前然りげ無くよお、なぁ!(倒置法」

 

浩二の言葉に露骨な不快感を示して罵るルーミアだったが、その後僅かな時間を置くと、歩きつつ空を見遣った。何かを懐かしんでいるようなその様子に、ぼやいていた浩二もつい戯れを止める。

 

 

 

「確かあれは、二十年くらい前だったかしーー」

「いや待て待て待て待て」

 

 

 

そうして少々落ち着いた雰囲気の中、淡々とした口調でルーミアが語り出したのを、霊夢は即座に反応して遮った。無粋な事をするものだ、とあの浩二にさえ呆れられた眼差しを送られ、ルーミアからは如何したのかという疑問を孕んだ眼差しを送られる。そんな屈辱による憤怒をどうにか抑圧して、霊夢は突っ込みに徹する事に決めた。

 

「二十年って、アンタらそんな前から交流有ったの?それってもう知人じゃないでしょ?」

「あのねぇ、人間にとってはそうかもしれないけど……私達人外(・・・・)にとっては、二十年なんて直ぐなの」

 

その言葉の意味を理解するのに、霊夢は数秒ながら時間を要してしまう。其処で、漸くそれが意味する事を理解した。

 

「俺は半分人間なんですが、それは……」

「あれ、そうだったかしら?てっきり蜚蠊と害獣のハイブリッドだと思ってたわ」

「あああああもうやだあああああああ!!!(号泣」

 

小学生のように泣き喚く浩二を他所に霊夢は、そういう事か、と納得する。

抑、浩二の種族は人間ではない。『半人半獣』という、少々特殊な種族なのだ。霊夢も幼少の頃に本人の口から少し聞いただけなので、それが如何なる特徴を持つのかなどは詳らかではない。

しかし今までの言動を鑑みるに、『或る妖獣と人間のハーフである事』、『満月の夜には獣と相手の特徴が色濃くなる事』、それ位ならば霊夢には分かる。そしてそういった人外の種族は、得てして長寿であり、浩二も例外ではない。

 

「いや、そうなると……一体浩二って何歳になるわけ?」

「さぁ?私も二十年ぽっちの付き合い出し、どれ位生きてるかなんて分からないわ。ああ、けどーー」

「けど?」

 

けど、などと妙な箇所で区切ったルーミアに、霊夢は無言でいる事でその先を促す。

するとルーミアは、何かを懐かしむかのように、突如目を細めて、赤い月夜の空を見遣った。

その瞬間、霊夢は思わず息を飲む。前方で啜り泣く浩二の声も、今だけは聞こえなかった。

まるで、周囲の音が唐突に消えたように。その時だけは、世界が他と隔絶されたかのように。

赤い月に照らされて空を仰ぎ見るその姿は、とても言動や容姿通りの少女とは思えない程に、霊夢でさえ美しいと思ってしまったのだ。宛ら、何者かに懸想し夢想する乙女が如く、ルーミアの姿は美麗だった。

 

「ーー長生きしてると思うわ。だって浩二ったら、凄く強いんだもの」

 

その言葉と共に、ルーミアが放っていたあの美しいと感じられるような雰囲気は、霧散したように消え失せる。霊夢は暫しの間、ルーミアに言葉を返すことができなかった。何も返す言葉が見当たらなかったわけではない。ただ、その姿に魅入っていただけだ。しかしそれが妙に恥ずかしく感じられて、霊夢は咳払いを一つしてそれを誤魔化す。

 

「あいつが凄く強いっていうのは、流石に過大評価じゃないの?」

 

霊夢はルーミアの言葉に首を傾げてそう言った。

確かに浩二の格闘技術や身体能力は、幻想郷でも最上位の実力者たる霊夢でも目を見張るものがある。手合わせの際に大幣の一撃を弾き飛ばした事もあれば、普通徒歩で往復四時間も掛かるような人里への道を、買い物込みでものの一時間で帰ってきた事もある。しかし、幾ら格闘に長けていようとも、この幻想郷でまで凄く強い、などとは呼べない。単純なパワーのみで凄く強いと言えるほど、この幻想郷のレベルは低くないのだ。通常妖怪などの人外は、長生きした者ほど強い力を持つ傾向が有る。しかし浩二の実力では、とてもではないがこの世界で最強に近しい存在『大妖怪』の面々には届くまい。

 

「そうかしら?若しかして貴女の基準って、弾幕ごっこだけの話?」

「……違うわよ。まぁ、遊びも加減も抜きの真剣勝負、とは考えてないけど。あいつ、弾幕ごっこじゃ全然駄目じゃない」

 

『弾幕ごっこ』ーー人間が生まれ持った『霊力』や妖怪が生まれ持った『妖力』などといった精神に大きく依存する身体エネルギー。それを、様々な形の砲弾として模り、相手に放ち合う遊びの決闘である。これこそがスペルカードルールの適用された上での戦い方となり、現状この世界の実力者たちは、勝負の際皆これに則り戦っているのだ。

弾幕ごっこという決闘方法の提起理由としては、実力者達が全力で争う事で他にまで害を及ぼしかねないから、などと言われている。しかし浩二は、そういった力の扱い方が余り得意ではないのだ。格闘術を身につけたのはそれが理由であると、霊夢は踏んでいる。

 

「確かに、弾幕が絡むと強いとは言えないわね。けど貴女も言った通り、遊びも加減も抜きの真剣勝負ーー殺し合いになれば、彼程強いのはあまりいないと思うわ」

 

先程の美しさなど何処へ行ったか、今度は水平線が如く平坦な胸を誇らしげに張って、ルーミアが宣った。可愛らしいと言えば勿論可愛らしいのだが、いかんせん先程との落差に霊夢は、別人ではないかとさえ思ってしまう。

 

「……何だか随分買い被るわね。それって実際に見た事あるの?」

「無いけど。只の勘よ」

 

おまけにこれだ。あれは若しかすれば、自分の目が可笑しくなっていただけかもしれない、と霊夢は勝手に結論付ける事にした。けっきょく抑、仮にルーミアの言う通り実際は途轍もなく強かったとして、それでも霊夢は今更浩二に対する考えを改めることなど出来るはずがなかった。

もう十年程の付き合いがある相手、その人物は今の今までただの半人半獣変態同性愛者だと認識していたというのに、今更それを変えるなど出来ようものか。そんな思い故に霊夢は、結局幼い妖怪の戯言か、と片付ける。

 

 

 

「久し振りね、浩二。こんな所で何してるのよ」

 

 

 

その時、浩二の更に前方から、高く幼い声が一同の耳に届いた。

その声に、肩を落とし項垂れていた浩二は慌てて面を上げ、ルーミアはその声の主に覚えがあるのか面倒臭そうに顔を歪めて、霊夢は聞き覚えのない声に、その声の元を凝視する。ふとその時霊夢は、話しているうちにいつの間にか森を抜けていた事に気付く。そして抜けた先、その眼前に広がっているのは、霧のかかった湖ーー通称『霧の湖』であった。白い霧に覆われて視界の覚束ない中、浩二はその声の主が誰であるか、暫く霧の中目を凝らす事で漸く理解したらしい。

 

「おうCLN(チルノ)、オッスオッス」

 

浩二から数歩程離れた場所にいたのは、背丈の小さな一人の少女だった。

薄い水色を呈したウェーブのがかったセミショートヘアに、後頭部には青いリボンを付けていて、その双眸は同じく青い。白いシャツの上から、スカートの縁に白いぎざ模様の施された青いワンピース

を着用。首元には赤いリボンが巻かれていて、足には水色のストラップシューズを履いている。

極め付けに、背後には六対の氷で出来ているであろう羽が浮いていた。しかもその氷の羽は、氷特有の透明感に、硬い質感まで感じられる。

 

ルーミアならばまだ日本人離れしている、で済む姿だが、チルノはよもや常人離れした容姿であった。と言うより、彼女もまた人間ではない。『妖精』という、人間と妖怪に次ぐ幻想郷の主要種族なのだ。

 

「はいはい。それで、一体何してるのよ?もうずっと来てなかったくせに」

「センセンシャル!ほら、あの空に掛かった赤い霧を出してる奴を懲らしめて、この異変を解決しようと思ってたんだよなぁ」

 

一部チルノの発言に引っ掛かる箇所があると感じた霊夢だったが、この際だから後で浩二から聞き出せばいいか、と一旦その違和感を置いておくことにする。チルノは久々の再会であるらしいのだが、どうもそんな状況とは裏腹に、彼女の顔は明るくない。寧ろ、浩二に一寸した恨みさえ覚えているようにも見える。

 

「ふぅん、異変をね……」

「そうだよ(肯定)。だからここは一旦、其処を通して欲しいなー……と言いつつ」

 

腕組みをして佇むチルノに、浩二は気色の悪い猫撫で声でそう言った。どうも今の彼は、いつものような饒舌で口達者な感じがしない。霊夢はその妙な様子を疑問に思い、ルーミアはチルノと浩二の二人を只々傍観しているだけだった。チルノの背丈は、余り背の高い方ではない浩二と比較しても際立って小さい。浩二は170cmなのだが、チルノはと言うと大凡140cm程度しかないのだ。

それだけの身長差がある、それなのに前に立つチルノを退けて行く事が、浩二には出来ずにいた。

 

「また遊びに行くって言って、もう十年経つのになー……久し振りに会ったと思ったら、ただ通っただけなんだー……ふーん……」

「せ、センセンシャル……」

 

その理由が、これである。霊夢は知るはずも無いが、浩二はどうやら十年前にチルノを相手に遊んだ事があるらしい。しかしまた遊びに行くと言っておきながら、浩二は結局十年間も遊びには行かなかった。人間の時間では可也の長さだが、彼女達妖精という長命の種とっては大した時間ではない。それに所詮は口約束、またの日がいつかなども決めてはいない曖昧なものだ。

 

それでも、異変の道中でさえ足を止めてそれに対応するのは、浩二なりの誠意なのだろう。

軽い口約束とは言え、約束は約束。愉悦に飢えた彼女を十年間放っておいたそのせめてもの償いとして、チルノの怒りを蔑ろにはせず、出来得る限り真摯な対応をせねばならない、と。

普段は軽薄で剽軽なお調子者だと言うのに、妙な所でしっかりしている。相変わらずの浩二を見て、ルーミアはふっと優しく微笑んだ。

 

「それの解決は後でいいじゃない」

「え、それは……(困惑)。こんなん(現状)じゃ商品(農作物)が生らねぇんだよ……」

「それに、この霧は常人には害になるから、人里がこれのせいで機能してないのよ。私たちも早めに終わらせたいし」

 

少なくとも十年も前から交流があったのか、という驚きを心の中に秘めつつ、浩二の言葉を付け足した。これは浩二の推測だが、一応霊夢は単独でも異変を解決するだけの実力は有るのだ。しかし霊夢は、勝率はなるべく高めておきたいと考えている。故に、此処で戦力を失うのは得策ではないと踏み、浩二を助けたのだ。しかし二人の説得にも、相変わらずチルノは腕を組んで、顔を顰めたままである。余程待ち侘びていたのか、彼女は異変の危険性や緊急性を説いても尚、浩二の前から立ち退きはしない。すると霊夢の隣で傍観を決め込んでいたルーミアが、徐に浩二の隣に移り、チルノと向き合う形となった。

 

「はぁ……仕方無い。私が代わりに遊んでいてあげるわ」

 

するとルーミアは溜息交じりに、如何にも参ったように疲弊を浮かべた顔でそう宣う。

内心どうすれば良いのかと悩んでいた浩二だが、まさかルーミアが自ら助け舟を出してくれるとは思わなかったらしい。それに驚きつつ、チルノとルーミアの様子を交互に一瞥している。

見るに、チルノもまた悩んでいるようだった。遊ぶ相手がいなかったのか、浩二との遊びを望んでいたのかは霊夢も考えていた所だが、浩二でなくともどうやら前者だったらしい。

とは言え悩んでいるという事は、それなりに浩二にも未練があるのだろう。浩二の何処が良いのか、と至極真面目に霊夢が考えていると、ルーミアは急にある方向を指差した。

 

 

 

「と言うか、遊びたいなら自分から行けばいいじゃない。浩二ならあそこに見える神社に住んでるから」

「ファッ!?オイRMAァ!?」

 

 

 

その指差す先は、今まで辿ってきた道の先、即ち博麗神社である。何故だか慌てる浩二を他所にチルノは、そうだったんだ、と言うかのように手を叩いた。それらを鑑みるに、どうやら浩二は、チルノに博麗神社に住んでいる事を教えていなかったらしい。何故言ってしまったのかとルーミアに詰め寄る浩二だったが、よもや遅かろう。チルノは、これで待つ事も無いと浮かれているのか、浩二に詰め寄られ何処吹く風で顔を背けるルーミアの手を取り、直ぐに森の中へと歩き出した。

 

 

 

「家も分かったし、今日は許してあげる。今度行くから、またねー」

「止めろぉ(建前)!止めろぉ(本音)!誰が神社に来ていいっつったオラァ!?」

 

 

 

一方的に話を付けて去りゆくチルノに、浩二は精一杯の抵抗をするが、それも無意味。

にこにこと気持ちの良い笑みを浮かべて、チルノは浩二の言葉に応える事なく去ってしまったのだから。結局再開は避けられない事を悟り、無駄な事であると浩二は肩を落とし、小さく溜息を漏らした。その傍、霊夢はふと、チルノに手を引かれ去って行くルーミアを見遣る。

 

「……笑ってる」

 

仕方無く。そう言っていたルーミアの顔は、その言葉とは裏腹に笑みを浮かべていた。

どうにか無表情で繕おうとしていても、口元が微かに歪んでいる事を霊夢は気付いたのだ。

本当は、ルーミアも遊びたかったのではなかろうか。軽い足取りで去って行く二人の背中を見送りながら、霊夢は漠然と、そんな事を考えていた。

 

 

 

 

 

「所で、何で神社に住んでる事を隠してたのよ」

「俺を氷像にするっていう遊びが好きみたいで、困るんだよぉ……(辟易」

「え、何それは……(困惑」




今回は少しばかり文字数が嵩んでしまいました。また割烹にもあります通り、一度消えてしまったものを大急ぎで書き直したものですので、些かおかしな文が見られるかと存じます。是非その際は御一報ください。

そして今回は、戦闘のない平和な異変道中です。大概異変といえば戦闘みたいな感じですけども、穏やかに平和的解決というルートも良いんじゃないでしょうか……妄想ですが。

それはそうと、ちょっと原作よりも大人びた雰囲気のRMAちゃん良いですよね(趣味全開
Sっ気のあるRMAちゃんに色々と弄ばれて言葉責めされたい(Mノンケ並みの感想

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