カメ子 レ級   作:灯火011

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「戦艦レ級(カメコ)」

大火力をすべて捨て去り、その身体能力を艦娘撮影に全力で使う彼女。

今日の撮影はサイレントに行うようです。


6 第三回 怪我の巧妙

「戦艦レ級」

 

深海棲艦と呼ばれる存在の中でも特に上位種に位置する艦種である。

 

数多くの艦娘を沈め、提督を苦しめている最悪の敵と言って良い。

なにせ、開幕の航空戦、そのあとの魚雷、そして砲雷撃戦、対潜戦闘と

全てにおいて高水準に纏まっている深海棲艦だ。

 

そんな戦艦レ級と、艦娘達が本気で戦闘を繰り広げている海域がある。

 

 

南方海域の奥地にあるその場所は、大本営の戦力分析により

ほぼすべてがフラッグシップで構成され、

姫や最上位深海棲艦である、「戦艦レ級」が存在し

「深海棲艦の本拠地の一つ」とも言っていい場所であることが確認されている海域である。

 

それ故に、艦娘とそれを率いる提督は

「特殊攻略作戦」と呼ばれる作戦を大本営に打電し、

承認を受けて初めて足を踏み入れることが出来る。

 

今のところ許可を受けたことのある鎮守府は

横須賀、呉、佐世保、舞鶴の4か所のみである。

 

編成は空母を組み込んだ空母機動艦隊から、

戦艦と重巡、駆逐艦で構成された水上打撃部隊

潜水艦を主体とした雷撃部隊などなど、多岐に渡る。

そして今日も、一つの艦隊がその「地獄」とも言える海域に出撃していく。

 

天気は晴天。しかしながら、海は荒れていた。

 

「天気晴朗なれど波高し」

-----天気が良いので視界は良好射撃がし易い、

波は高くても訓練を積んでいるので艦が揺れても命中率は高い、勝利疑いなし---

 

勇気と希望を胸の内に秘める艦娘達は、少しでも深海棲艦の戦力を削ぎ、

人間と海の平和を得るために「特殊攻略作戦」に出撃していくのである。

 

 

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さて、そんな艦娘を、追いかける一つの影があった。

身を低くし、荒れている波間の間に身を潜めつつ艦娘に近づくその影。

 

ミラーレスの一眼カメラ、レンズは14-150ミリ(フルサイズ換算28-300ミリ)を片手に携え

パーカーとビキニだけを装備している妙な影である。

 

戦艦レ級(艤装修理中)である。

 

左手を先の実弾演習で潰され、体にも艤装にも大破判定の攻撃を貰ったレ級。

左手は軽く動くようになったものの、今現在でも、ダメージはしっかりと残っていた。

有体に言えば、体は中破判定、艤装に至っては未修理のままである。

 

今、この場に居るのは、タブレットに保管している写真を見るうちに気持ちが疼いてしまい、

傷も癒えぬまま艦娘の写真を撮りに来ているのためである。

 

 

「天気晴朗ナれどモ波高シ、って具合だナぁ。マ、見つかり難いからアリガたイけど。」

 

天気が良いので視界は良好観察と追尾がし易い、

波は高くても訓練を積んでいるので艦が揺れても写真は撮れる。

そして、うまいことその波に隠れながらの撮影もできる程度の錬度はある。

 

「最高のシチュエーション、疑いナし、ってナ!」

 

久しぶりの撮影に、人類の名言を勝手に改変するほど、

テンションが上がりきったレ級である。

ただ、いつものように突撃はしない。なにせ中破状態である。

波間に体を隠しながら、撮影の準備をしていく。

完全に動く右手でカメラを構え、動きにくい左手はレンズのズームリングに

そして、ファインダーを覗きながら荒海を進む艦娘達を捉えていく。

 

 

カシャシャシャシャシャシャシャシャシャ

 

ミラーレス一眼カメラの軽いシャッター音が周囲に響くと共に、

広角から望遠まで、あますところなく、艦娘の美しい姿が記録されていく。

 

6人の艦娘が、美しい隊列を組んで進軍していく様

艦載機を飛ばし、周囲警戒にあたる空母の凛とした表情

波しぶきを受けつつも、気を抜かずに進軍する戦艦の美しい姿。

 

カシャシャシャシャシャシャシャシャ

 

通信をするために、通信機に手を当てながら喋るその口元。

海風によってなびいた髪、ちらりと見えるうなじ

そして、時折互いに報告をするために近づき、会話を交わす艦娘達

 

負傷しているはずの左手を器用に操りながら、波間の隙間から確実に写真を撮っていく。

黒いパーカーを来て俊敏に、隠密に動く姿は傍から見るとゴキブリのようである。

 

(艦娘の日常風景ってノもオツだナぁ。いつもの砲撃シーンも捨て難いケど

 時々にはこういウ、戦闘以外ノ艦娘を撮影シてもいいのかモ)

 

シャッターを切りながら、レ級はそんなことを思っていた。

それもそうである。

なるべく近くで艦娘を撮影したいがために、いつもならば艦娘に突撃していくレ級。

そんなレ級に対して、当然、艦娘は迎撃を行い、撃退しようとする。

その時に撮影できるのは、以前の金剛や阿武隈の様な、戦闘中の写真である。

砲がこちらを向き、撃滅しようとする表情の艦娘も魅力的ではあるが・・・

 

(迫力ハつっこんで撮影した写真の方が上だケど・・・・

 こウいう、敵とマだ接触しテない写真もまた何とも言えない魅力がアるなァ)

 

日常回、ともいえるシチュエーションに、レ級は魅力を感じ始めていた。

もちろん、姿勢低く、隠れつつ、ファインダーを覗き、シャッターは切りながらだ。

 

(ウーん。次からこういう写真も狙って撮ってみようかなぁ・・・)

 

新たなシチュエーションを考えていたレ級。

ま、今考えても仕方ない、とりあえずは写真を撮るかと

艦娘に意識を集中した時に、遠くに赤いオーラの深海棲艦がいることに気づく。

 

(あァ、もうそロそろ、南方棲戦姫様の隷下の艦隊が出てくる海域だッタか)

 

良く目を凝らして見てみると、遠くには赤いオーラを纏った戦艦レ級(完全武装)の姿。

その周囲には、隷下のフラッグシップ艦隊が、艦娘を待ち構えていた。

艦娘もその姿を確認し、艦載機を飛ばし、主砲の照準を向けていく。

 

そして、思う存分艦娘の姿を写真に収めたレ級は、

カメラを格納庫に仕舞い、進路を拠点に向けていた。

 

(本当なラ戦闘風景を撮影したイ所だケど・・・アノ戦闘狂のレ級に、

「艦娘トノ戦闘ノ邪魔スルナ馬鹿ヤロウ!」とか言われそうだシ。) 

 

チラリ、と赤いオーラの戦艦レ級を見つつ、

レ級(カメコ)は戦闘に巻き込まれないように、そそくさと海域を後にするのであった。

 

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いつものように拠点に帰って来たレ級。

 

だが、そこにはいつもと違う事が一つだけあった。

上司である「飛行場姫」が般若の表情で立っていたのだ。

 

「モウシヒラキハ?」

 

仁王立ちで立っている般若の飛行場姫。

そう、このレ級、本来は完治までドックにいなければいけないところを

脱走してまで艦娘の写真を撮っていたのだ。

 

飛行場姫が激怒するのも仕方が無いことである。

 

そして、その正面で正座しながら反省しているレ級。

少し沈黙していたが、ぱっと顔を上げ、ニコッとした表情を飛行場姫に向け

 

「写真が撮りたかった。後悔はシていないヨ」

 

あっけらかんに言い放ったのである。

 

「ワカッタ。デハ・・・・ミナゾコニシズメ、コノ愚カ者ガ!」

 

飛行場姫は正座しているレ級の頭を掴み、強く床にたたきつける。

流石のレ級でも、飛行場姫の全力の一撃には耐えられず

レ級の頭部からは血が飛び散り、その体が動く様子は無い。

 

「フン、オマエノ怪我ガ完治スルマデ、私ノ拠点ノドッグデ拘束ダ

 無論、写真モカメラモ禁止ダ。タブレットモ取リ上ゲル」

 

そんなことをいいつつ、血まみれのレ級の頭を持ち、自身の拠点へと引きずっていく

 

(あァー・・・姫様の般若顔、写真ニ収めたかったなァ。

    デモ、写真禁止はヤりすギです姫様・・・のーふぉと、のーらいふ。)

 

レ級はそんなことを考えながら、ズルズルと、おとなしく引き摺られていくのであった。

 




妄想捗りました。

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