カメ子 レ級   作:灯火011

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ゲームの2期が来ると聞いて
カメコさん、2年ぶりに頭の中でもぞもぞと動き始めました。


艦隊をこれくしょん!
艦隊これくしょん-艦これ-始まります!


「戦艦レ級」とは、深海棲艦と呼ばれる存在の中でも特に上位種に位置する艦種である。数多くの艦娘を沈め、提督を苦しめている最悪の敵と言って良い。

 なにせ、開幕の航空戦から始まり砲雷撃戦を熟した挙句に、魚雷戦にまで参加してくるのだ。しかも海域守護者並みの装甲を持っているため、なかなかこちらの攻撃は通らないという、全てにおいて高水準で纏まっている敵であった。

 

 そんな彼女、夏真っ盛り、8月15日の真っ青な海の上、遠くを見つめながら、一人でぽつーんと立っている。

 

 ただ、少々様子がおかしい。戦艦レ級にしては表情が穏やかであるし、偵察機を飛ばすわけでもなく、戦艦の最大の特徴である主砲すらもどうやら装備していないようだ。

 

 その代わりに、暁型の艦娘が装備する50口径12.7cm連装砲と61cm3連装魚雷発射管がアタッチメントされている艤装を背負っている。更に言えば尻尾もなく、見た目は青白い艦娘といったところだ。一見すると、それは果たしてレ級なのか、と疑問が浮かぶ姿だ。

 

「どうしたんだい、レ級。ぼけっとして」

 

 そんなレ級の隣には、本家本元の暁型である響が並んでいた。

 

「…いーや、なーんか」

「…?本当にどうしたんだい?カメラを忘れたから調子悪いのかい?」

「それはある」

 

 ポリポリとほほをかきながら苦笑いを浮かべるレ級。過去「カメラのレ級」として艦娘を撮影したいがために人類を関わり合いを持ち、自由奔放に海をかけたこの船は、現在は人類の味方として日々静かに海を守っている。

 

「カメラ一つ忘れただけで調子が悪くなるとはね」

「仕方ねぇだろ。私にとっては石油みたいなもんだし」

「ま、確かに。それに、レ級の写真で今まで周辺諸国の無理難題をどれだけ切って捨てられたかわからないしね」

「あははは。いやはや、なんのことやら」

「ほら、あの国の潜水艦娘とか、あの国のイージス艦娘…」

「響さーん、どこまで私のデータ抜いてんの!?」

「これでも情報省筆頭だよ。ま、レ級は自由にやってくれてればいいよ。使えるデータだけこちらで使うから」

「…油断も隙もネーナ」

「ま、仕方ないね。ほら」

 

 響はそういうと懐から一眼レフを取り出していた。キヤノンに比べれば小型だがしっかりした作りのソレを受け取ると、レ級は思わず呻く。

 

「ペンタックス…」

「不満かい?」

「不満といえば不満だぁな。海上戦闘の動きにペンタックスのオートフォーカスは間に合わないというか…なんかこう…」

「あはは、ま、今までがフラッグシップのカメラ使ってたんだから仕方ないさ。何、母港に戻れば部屋にあるんだ。それまでの我慢だよ」

「しゃーねーか。さてさて、と、ペンタックスは久しぶりだからなー」

 

 レ級は響から受け取ったカメラ、ペンタックスのK-S2を弄る。

 

「ま、とりあえず慣れてないからシャッター速度優先で行ってみるか。シャッターの感触は…うん、悪くないね」

 

 カシャリ、と音が鳴ると同時に、モニターには響の顔が映る。少々周辺がぼやけ、パープルフランジが出ているがそれは味というものだろう。

 

「ほー、なかなかいい写真を出すもんだ。…ええと、あー!これFAの43mmじゃねーか!」

「ふふ、気づいたかい?」

 

 FA43mmF1.9 Limited。レンズの設計自体はフィルムカメラ時代にまで遡る古いレンズではある。オートフォーカスは遅いし、最新のレンズに比べれば解像度は低い。が、写真を見てみればそんなモノは関係ないと思い知らされるレンズの至宝とも言える逸品。

 

「私もちょっとだけ一眼を齧ってみてね。好みがこのレンズだったのさ」

「ほー、良いところ行くねぇ響さんは!三姉妹は揃えてるんか?」

「いや、流石に使いこなせないと思って揃えてないよ。それにしても、このレンズは良い絵をだすのさ。データ入っているから見てみるといいよ」

 

 響は少しのドヤ顔をレ級に向けていた。

 

「ほう、響がそういうのならちょっと見てみるか」

 

 レ級は再生ボタンを一押しする。すると、今さっき撮れた響が映し出される。レ級はそれを気にせずに次の写真を見ようと送りボタンをそっと押した。

 

「…おおん!?」

 

 レ級は驚きの声を上げた。無理もない。なにせそこに写っていたのは、先ほどのぼけっとしていたレ級の姿だったからだ。

 

「ふふ、驚いたかい?よーく撮れてると思うのだけど」

「…撮れてるけれどこっぱずかしいもんだな」

「あはは、褒めるといいよ。それと、もっと見たいのなら母港に戻ってから声をかけて。私のレ級コレクションはハードディスクの中に無数に存在しているからね」

「え、何。もしかして響、こいつで私を撮りまくってるのか?」

 

「もちろん。レ級は自分を写真に残さなすぎだからね。かっこいい戦闘から、鬼のような顔、イージスの砲撃を受け止めた時のしたり顔とかいろいろ…売れ行きもいいし」

 

「あ?おい響、最後なんつった」

「さぁね、おかげで私はおいしいお酒をヨッパと飲めるのさ。さぁ、レ級、お遊びはここまでにして哨戒続けるよ」

「おいまて響!…つかヨッパも共犯かよ。…あーもー!私の写真で稼いでるなら私も後で呑ませてもらうぞ!」

 

「もちろんさ。だけど呑んだら共犯だからね、良いポーズをもっと要求するよ」

「はっははは!コミケで鍛えたポージングの腕を見せて進ぜようじゃないか」

 

 今日も海は平和である。


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