カメ子 レ級   作:灯火011

51 / 55
17話より分岐する。


----その裏で、提督達や艦娘
そしてレ級達も預かり知らぬ、一つの作戦が動き出す。

『19、8、58、401 行け』
『『『『諒解』』』』

ザブン、と音を少しだけ立て、潜航していく『海軍将校直属の潜水艦隊』。
海の中、鋭く光る8つの瞳には、闇夜に紛れる「戦艦レ級」の航跡が映っていた。


----あり得たもう一つの物語。


Re:

『海軍将校直属の潜水艦隊』。

19、8、58、401といった、イ号潜水艦で構成される潜水艦隊である。

その錬度は極めて高く、特に隠密行動には長けている。

そして、潜水艦隊は大本営から一つの命を受けていた。

 

≪戦艦レ級、及び飛行場姫の拠点を叩くため戦艦レ級の追尾および、拠点の位置を特定せよ。そして、特定後は攻撃をせずにすぐに帰還し、位置を報告せよ≫

 

命令通りに、イ号潜水艦達は闇夜に流れるレ級の航跡を追い続けていく。静かに、静かに。気配を殺す歴戦の潜水艦隊の追跡に全く気付かないまま戦艦レ級と、飛行場姫は、アイアンボトムサウンドにある自身の拠点へと戻っていくのであった。

 

その姿を、僅かに顔を海面に出し、確認した潜水艦隊はお互いに小声で口を開いていた。

 

「追尾成功なのね・・・。レ級の拠点と、飛行場姫の拠点は・・・過去に、激戦を繰り広げたアイアンボトムサウンドなのね。」

 

「そのようでち。早速戻って、大本営に伝えるでち。『レ級の拠点は過去大規模作戦が行われたアイアンボトムサウンド』で、いいでちね。」

 

 潜水艦隊はお互いにうなずくと、命令通り撤退しようと潜行したその瞬間である。

 

 

『おいオイ。人ン家に来てオイて挨拶も無いってのはヒデーんじゃねーの?』

 

『そうよ。ずっと後ろをつけてきておいて、何もなしはひどいんじゃない?』

 

 

 そんな声と共に、むんずと頭を掴まれ19,8,58,401は海上へとその身を引っ張り上げられていた。

 

「ほー?潜水艦ッテか?・・・ふむ」

 

 戦艦レ級はそういいながら、片手で掴んでいた401を海面へと落とす。そして同時に右脇のホルダーからカメラを取り出すと、早速とばかりにファインダーを覗き飛行場姫に頭を掴まれ、ぶらさげられている19と8の姿を撮影しはじめていた。

 

「ちょ・・ちょ!この姿を撮らないで!」

 

「ま、待つの!せ、せめて写真はもうちょっとちゃんと撮って!」

 

「・・・貴方達ソコは突っ込ムのね?レ級、そう言ってるケどどうしたい?」

 

「いや姫様、そノまま、そのママ。案外とこういうのも、イイかもしれない」

 

 カシャカシャカシャカシャと、無慈悲に響くシャッター音。嫌だ嫌だと暴れる19と8。それを海面に放置された状態で呆然と見つめる401。そして、レ級に頭を持たれぶら下げられたままの58はというと。

 

「・・・なんでちかこれは」

 

 呆れ顔でそう呟くのが精一杯であった。

 

 

レ級が横須賀基地を出た翌日、1230。

横須賀の艦娘が、昼休みを取っているころに横須賀基地の臨時大本営では、将校たちと58が会議を行っていた。

 

「彼女たちには・・・振り切られたでち・・・」

 

「そうか。ふむ・・・お前たちを持ってしても追尾できない能力を持っている。ということか」

 

「はいでち」

 

「よろしい。それにしてもよくアイアンボトム・サウンドまで追尾を行ってくれた。特別に明日と明後日は休暇を出す。以上だ」

 

「は、はいでち!感謝するでち!」

 

 58は本来であれば、彼女たちの拠点は「アイアンボトムサウンド」であると報告しなければいけない立場の艦娘である。だが、今回はそれが出来ない。

 

 なぜならば。

 

 

(こんな写真が出回ったら終わりでち・・・!)

 

 

 彼女・・・正確にはアイアンボトム・サウンドに向かった彼女たちの手元に残っているのは、スク水にエプロンを着せられ、女豹やらなんやら非れもない姿をしている写真である。しかも数十枚というレベルでお土産として持たされていた。

 

 経緯としてはこうである。

 

 戦艦レ級に見つかった彼女たちはそのまま基地へと連行されていた。そしてレ級の私室に連行という形で入った彼女たちは、戦艦レ級のいわれるがままに写真のモデルになっていたのだ。最初は乗り気でなかった彼女たちも、撮影されていくにつれて気分が乗ってしまい4人での決めポーズやちょっとセクシーなポーズなんかも自主的にやってしまったのである。

 

(・・・でも。悪くない写真でち・・・!・・・次は水中でかっこいい写真を・・・でも戦艦レ級って潜れるのでちかね・・・?じゃないでち!仕事、仕事でち!次も仕事でレ級の追跡を行うのでち!)

 

 そう思いながらも、彼女は自分の写った写真を見ながら少しだけ笑みを浮かべるのであった。

 

 戦艦レ級。その身体能力と深海棲艦の能力をフルに使い、写真を撮影する突き抜けた馬鹿者である。故に、彼女の周りには自然と人が集まるのかも、しれない。

 




蛇足です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。