カメ子 レ級   作:灯火011

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酒飲みのレ級、エリレの参戦により
ル級を次々と撃破していく艦娘達と、カメコ達。

彼女たちは、ついに、敵の親玉と対峙するようです。


128 そして宴会も海の華である。

敵の中心部へと吶喊するエリレと港湾棲姫を追って、カメコと金剛達艦娘も、速度を上げながら、海の上を往く。

 

そのさなか、航空戦はどうやら、飛行場姫と加賀の優勢で決着がついたようだ。

敵の攻撃機が、次々と、海の藻屑と消えていた。

 

「流石加賀と飛行場姫デース。」

 

金剛はその光景を感心しながら見つめていた。

高高度で行われる制空戦、そして、攻撃機の防護機銃を避けながらも、攻撃機を落としていく戦闘機の勇姿である。

 

「すげーよなぁ。姫様も加賀も、味方でよかった。」

 

金剛と合流したカメコも、その光景を見ながら、口を開いていた。

 

「それにしてもレ級ぅ。なんでヨッパは参戦したんデス?」

 

「知らねぇ。基本的に裏切るような奴らじゃねーんだけどな。・・・まぁ、おそらくは、さっきのル級の砲撃で、肴か酒か、はたまた気にってる備品でもぶっこわされたんじゃねーかな。」

 

カメコは苦笑いを浮かべていた。エリレ達は基本的には、忠実な深海棲艦である。だが、酒が絡むとソンナことは関係なくなるのだ。

苦笑いを浮かべるレ級を見ながら、金剛は溜息をつく。

そして、目線をエリレに向けながら、苦笑を浮かべながら口を開いた。

 

「なんだか、私の中の深海棲艦のイメージが完全に砕け散りマーシた。自由ですね本当に。」

 

「いや、金剛。おかしいのは私達と、私達の先を行く奴らだけだから。深海棲艦は、金剛達艦娘の敵だから、ね?」

 

「ムゥ。深海棲艦の貴女が言うと、説得力があるような、ないような・・・。」

 

「ま、金剛。エリレと港湾棲姫様のコンビは近距離戦においては心強いから。だってほら、港湾棲姫は私達戦艦とか飛行場じゃなく、海と陸を束ねる存在だし。能力はたけーんだ。・・・酒が絡むとメンドクサイけど。」

 

「そうなのデースねぇ・・・。それじゃあ、とりあえずこの場は甘えマース。武蔵。エリレと港湾棲姫の援護をしていきマショウ。」

 

「・・・応。心得た。それにしても金剛よ、お前も適応が速いな。私は未だに飲み込めんぞ。」

 

「カメコとかエリレとかと交流してマースから。非常識はなれたものデースよ。」

 

金剛はそう言うと、武蔵に苦笑を向ける。そして、エリレの後を最大戦速で追従していくのであった。

 

「それに、心強いのは本当デース。」

 

そしてそのさなか、エリレと港湾棲姫は、次々と敵のル級を海底へと沈めていく。

 

港湾棲姫が首をもぎ、体をレ級が砲撃し。

かと思えば、レ級がわざと甘い攻撃を繰り出し、敵に受け止めさせた所に、港湾棲姫の全力の拳を突き刺したりと、容赦がない。

 

「・・・なるほどな。わかった。甘えよう。」

 

エリレ達を見て、武蔵も諦めたようである。

 

「ま、武蔵と金剛に菊月は、よっぱの援護を頼むわ。私はちょっと尻尾直してくる。」

 

「判ったデース。未だここは激戦区ですから、油断せずに気をつけてくださいネ?」

 

「あいよぉー。」

 

金剛とカメコは、一旦別れ、金剛達は港湾棲姫とエリレの援護に

カメコは、あぶくまへと踵を返す。

 

だが、この判断が、カメコの運命を、一つ決定づけたのだ。

 

 

あぶくまへと戻ろうとしたカメコは一つのピンチを迎えていた。

敵の親玉、港湾型の姫らしき艦と対峙していたのだ。

 

「コレハコレハ、飛行場姫ノトコロノ、レ級デハナイカ。」

 

どうやら相手の港湾型の姫は、カメコを知っているようである。そして、それに応えるように、カメコもゆっくりと口を開く。

 

「・・・なるほど、戦艦ル級をまとめていたのは、港湾水鬼様でしたか。」

 

「アァ、マトメルトハ少シチガウガナ。アレラハ全力デタタカイタガッテイタ。私ハソノセナカヲオシタダケダ。」

 

「ずいぶんとまぁ・・・めんどくさいことを。あなたは確か、インド洋の守備を任されていたのでは?」

 

「インドデハ全力デタタカエズニ逃ゲタノダ。ココヘタドリツイタトキ。奴ラガイタ。恨ミデハナク、後悔ノ念ニシズンダ彼ラガイタノダ。ソシテナニヨリ、ワタシガタタカイタカッタノダ。方向性ノ一致ダ。」

 

「なるほど。それでアツ島とキスカ島を攻撃したわけですか。」

 

カメコは言葉を発しながら、腰を落とす。

それを見た港湾水鬼も、同じように腰を落とした。

 

「・・・エェ。マサカ深海棲艦ガ相手ニナルトハオモッテイナカッタガナァ!サァ、カメコ!人間ヲスクイタケレバ私ヲシズメテミセロ!」

 

港湾水鬼は、一気に体を加速させる。合わせて、カメコも叫びながら全力で体を前へと加速させていった。

 

「いいねぇ!じゃあまずいっぱああつ!」

 

カメコは尻尾ではなく、しっぽを振った反動で、右足を港湾水鬼に叩きつけた。

だが、港湾水鬼は、びくともしない。それどころか、カメコの足を無造作に掴んだのだ。

 

「甘イワ。パワーダケナラ、ワタシノホウガアルノダ。カメコ。」

 

カメコの一撃を軽くいなし、海面へと叩きつける。そして、カメコの体を足で押さえつけた。

 

「ぐふッ・・・!?」

 

「・・・ソレニシテモコノシッポハ、ジャマダナ。」

 

港湾水鬼は、倒れ伏したカメコの体を足で押さえつけながら、その尻尾を、掴みあげた。そして、そのままカメコの尻尾を、千切ろうと力を加え始め、カメコの体からギチギチと嫌な音が立ち始める。

 

「ガアアアア!」

 

体を足で押えられているカメコは、身動きが取れないまま、叫んでいた。

そして、港湾水鬼は、カメコの尻尾を掴み直す。そして。

 

「フンッ!」

 

その一言と共に、カメコの尻尾を、カメコの体から引きちぎったのだ。

 

「------------!」

 

カメコは声に成らない叫び声を上げる。と同時に、尻尾と体から、おびただしい量の鮮血が流れ始めていた。そして、追い打ちをかけるように、港湾水鬼は、カメコの胴体を、その足で踏み潰そうと、片足を天高く持ち上げた。

 

「ッソオオイヤアア!」

 

その瞬間、エリレの尻尾が港湾水鬼を襲う。だが、港湾水鬼は手慣れた手つきでその尻尾を掴みとっていた。

 

「馬鹿ノヒトツオボエダナ。」

 

港湾水鬼はそう言うと、エリレを水面に叩きつけようとする。だが、そうは問屋が卸さない。港湾水鬼は知らないのだ。ここに、港湾の名を冠する、もう一人の化け物がいることを。

 

「アナタモ、ヒトノコトハイエナイワ。」

 

港湾水鬼は、足元から聞こえた声に、思わず顔を向けていた。

その目に写ったものは、海面下から拳を突き出し、勢い良く海面から飛び上がる、港湾棲姫の姿であった。

 

「ナ!?」

 

水鬼は驚愕の表情を浮かべ、拳を避けようとするも、時は既に遅し。

港湾棲姫の拳を、顎からまともに受けたのだ。

 

「ナイス港湾棲姫ィ!」

 

「レ級。カメコヲツレテ撤退。あぶくまニハ、バケツアルカラ。」

 

「アイヨォ!サーイクゾカメコォ!」

 

エリレはそう叫びながら、ぐったりとしているカメコを担ぎ、未だ倒れ伏す港湾水鬼の元から、撤退していった。

 

 

エリレは自身が担いだカメコを観察する。

 

顔や体に特に大きな損傷は、ない。

だが、その背中に生えていた尻尾も、ない。

 

更には尻尾は完全に千切られているためか、こうしている間にも

おびただしい量のカメコの血液がエリレの体を伝ってきていた。

 

(こりゃあかなり不味いなぁ。つーかこれ、尻尾復活すんのかな?)

 

エリレはそう考えながら、あぶくまへと速度を上げる。とその時、

見慣れた艦娘が一人、エリレへと近づいてきていた。

 

「・・・よっぱらいのレ級か?何をしているんだ?」

 

彼女は発射した魚雷を補給に、あぶくまへと帰還していた菊月だ。

丁度補給を終え、これから海戦へと出るというタイミングで、エリレと出会ったようである。

 

「オオ!チョウドイイトコロニ!菊月ツッタッケ?カメコノ治療ヲタノム!」

 

エリレはそう言うと、担いでいたカメコを、菊月へと渡す。

菊月はいきなりの行為に驚いたものの、カメコの状態を見て、その表情を固くさせていた。

 

「っ・・・これはひどいな。判った、すぐに医療班へカメコを渡す。

 よっぱらいのレ級。お前はどうするんだ?」

 

「港湾棲姫ガ港湾水鬼トタタカッテルカラ、援護ニイッテクル。サスガニ港湾棲姫ダケジャツラソウダシナ。」

 

エリレはそういうと、菊月の反応を待たずに、一気にその体を加速させていった。

 

「まったく、なんなんだあのよっぱらいのレ級は。忙しないな。

 いや、それよりも今はカメコの治療を急がねばな。」

 

菊月はその姿を見送りながら、体を反転させ、

一気に主機の出力を最大まで引き上げ、カメコをあぶくまへと運んでいった。

 

 

戦艦の治療。もとい、深海棲艦や艦娘の治療は、そこそこ簡単である。

通常であれば、ドックに入り、体を休めれば、時間に応じて装甲が回復する。

 

大破や轟沈寸前の場合は、必要な鋼材や燃料を溶けこませた高速修復材に浸かれば、

艤装、装甲もろともすべてが、回復するのである。

 

「・・・あんまり、芳しくはないですね。」

 

戦艦レ級フラッグシップ改、カメコを菊月から受け取った船医は、高速修復材に浸かり

傷を癒やすカメコを見ながら、呟いていた。

その隣には、横須賀鎮守府の提督も渋い顔をしながら立っていた。

 

「艦娘とは違うのですね。艦娘であれば、腕や足がちぎれ飛んだところで

 高速修復材に浸かれば修復されるというのに。」

 

「えぇ、私もそう思っていました。ですが、見てください。

 レ級さんの出血は綺麗に止まりました。傷跡もほとんどありません。

 ・・・ですが、千切られてしまった尻尾は、修復されませんでした。」

 

未だ気を失っているカメコ。その体にあるものは、いつものパーカー、ビキニだけである。

巨大な尾っぽと、その先に付いている砲塔や魚雷は、失われたままだ。

 

「果たしてこの姿で、戦闘能力があるのかは不明です。艦娘の場合は、轟沈、つまりは

 艤装が完全に破壊され、生体にまで被害が及んだ場合は、もう戦闘能力がなくなってしまいますから。」

 

船医はそういいながらも、高速修復材を足していく。

 

「えぇ、判っています。とはいえ、レ級は深海棲艦ですから。艦娘の状態が当てはまるとは限らないでしょう。」

 

それに、と提督は続ける。

 

「このレ級は尻尾を失ったぐらいで、どうこうする奴ではないですから。」

 

「・・・まぁ、そうですよね。むしろ、「これで大手を振って写真とれるー!」とか喜びそうで・・・。」

 

船医は呆れ顔でため息をついていた。

提督も船医に続き、苦笑を浮かべながら、未だドックで眠るカメコを見つめるのであった。

 




妄想捗りました。

尻尾がなくなったカメコさんの巻。

きっとこれからは、よりアクティブに写真をとるのかなぁと妄想しております。


とりあえず次でいったん〆の予定です。

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