ル級を次々と撃破していく艦娘達と、カメコ達。
彼女たちは、ついに、敵の親玉と対峙するようです。
敵の中心部へと吶喊するエリレと港湾棲姫を追って、カメコと金剛達艦娘も、速度を上げながら、海の上を往く。
そのさなか、航空戦はどうやら、飛行場姫と加賀の優勢で決着がついたようだ。
敵の攻撃機が、次々と、海の藻屑と消えていた。
「流石加賀と飛行場姫デース。」
金剛はその光景を感心しながら見つめていた。
高高度で行われる制空戦、そして、攻撃機の防護機銃を避けながらも、攻撃機を落としていく戦闘機の勇姿である。
「すげーよなぁ。姫様も加賀も、味方でよかった。」
金剛と合流したカメコも、その光景を見ながら、口を開いていた。
「それにしてもレ級ぅ。なんでヨッパは参戦したんデス?」
「知らねぇ。基本的に裏切るような奴らじゃねーんだけどな。・・・まぁ、おそらくは、さっきのル級の砲撃で、肴か酒か、はたまた気にってる備品でもぶっこわされたんじゃねーかな。」
カメコは苦笑いを浮かべていた。エリレ達は基本的には、忠実な深海棲艦である。だが、酒が絡むとソンナことは関係なくなるのだ。
苦笑いを浮かべるレ級を見ながら、金剛は溜息をつく。
そして、目線をエリレに向けながら、苦笑を浮かべながら口を開いた。
「なんだか、私の中の深海棲艦のイメージが完全に砕け散りマーシた。自由ですね本当に。」
「いや、金剛。おかしいのは私達と、私達の先を行く奴らだけだから。深海棲艦は、金剛達艦娘の敵だから、ね?」
「ムゥ。深海棲艦の貴女が言うと、説得力があるような、ないような・・・。」
「ま、金剛。エリレと港湾棲姫様のコンビは近距離戦においては心強いから。だってほら、港湾棲姫は私達戦艦とか飛行場じゃなく、海と陸を束ねる存在だし。能力はたけーんだ。・・・酒が絡むとメンドクサイけど。」
「そうなのデースねぇ・・・。それじゃあ、とりあえずこの場は甘えマース。武蔵。エリレと港湾棲姫の援護をしていきマショウ。」
「・・・応。心得た。それにしても金剛よ、お前も適応が速いな。私は未だに飲み込めんぞ。」
「カメコとかエリレとかと交流してマースから。非常識はなれたものデースよ。」
金剛はそう言うと、武蔵に苦笑を向ける。そして、エリレの後を最大戦速で追従していくのであった。
「それに、心強いのは本当デース。」
そしてそのさなか、エリレと港湾棲姫は、次々と敵のル級を海底へと沈めていく。
港湾棲姫が首をもぎ、体をレ級が砲撃し。
かと思えば、レ級がわざと甘い攻撃を繰り出し、敵に受け止めさせた所に、港湾棲姫の全力の拳を突き刺したりと、容赦がない。
「・・・なるほどな。わかった。甘えよう。」
エリレ達を見て、武蔵も諦めたようである。
「ま、武蔵と金剛に菊月は、よっぱの援護を頼むわ。私はちょっと尻尾直してくる。」
「判ったデース。未だここは激戦区ですから、油断せずに気をつけてくださいネ?」
「あいよぉー。」
金剛とカメコは、一旦別れ、金剛達は港湾棲姫とエリレの援護に
カメコは、あぶくまへと踵を返す。
だが、この判断が、カメコの運命を、一つ決定づけたのだ。
◆
あぶくまへと戻ろうとしたカメコは一つのピンチを迎えていた。
敵の親玉、港湾型の姫らしき艦と対峙していたのだ。
「コレハコレハ、飛行場姫ノトコロノ、レ級デハナイカ。」
どうやら相手の港湾型の姫は、カメコを知っているようである。そして、それに応えるように、カメコもゆっくりと口を開く。
「・・・なるほど、戦艦ル級をまとめていたのは、港湾水鬼様でしたか。」
「アァ、マトメルトハ少シチガウガナ。アレラハ全力デタタカイタガッテイタ。私ハソノセナカヲオシタダケダ。」
「ずいぶんとまぁ・・・めんどくさいことを。あなたは確か、インド洋の守備を任されていたのでは?」
「インドデハ全力デタタカエズニ逃ゲタノダ。ココヘタドリツイタトキ。奴ラガイタ。恨ミデハナク、後悔ノ念ニシズンダ彼ラガイタノダ。ソシテナニヨリ、ワタシガタタカイタカッタノダ。方向性ノ一致ダ。」
「なるほど。それでアツ島とキスカ島を攻撃したわけですか。」
カメコは言葉を発しながら、腰を落とす。
それを見た港湾水鬼も、同じように腰を落とした。
「・・・エェ。マサカ深海棲艦ガ相手ニナルトハオモッテイナカッタガナァ!サァ、カメコ!人間ヲスクイタケレバ私ヲシズメテミセロ!」
港湾水鬼は、一気に体を加速させる。合わせて、カメコも叫びながら全力で体を前へと加速させていった。
「いいねぇ!じゃあまずいっぱああつ!」
カメコは尻尾ではなく、しっぽを振った反動で、右足を港湾水鬼に叩きつけた。
だが、港湾水鬼は、びくともしない。それどころか、カメコの足を無造作に掴んだのだ。
「甘イワ。パワーダケナラ、ワタシノホウガアルノダ。カメコ。」
カメコの一撃を軽くいなし、海面へと叩きつける。そして、カメコの体を足で押さえつけた。
「ぐふッ・・・!?」
「・・・ソレニシテモコノシッポハ、ジャマダナ。」
港湾水鬼は、倒れ伏したカメコの体を足で押さえつけながら、その尻尾を、掴みあげた。そして、そのままカメコの尻尾を、千切ろうと力を加え始め、カメコの体からギチギチと嫌な音が立ち始める。
「ガアアアア!」
体を足で押えられているカメコは、身動きが取れないまま、叫んでいた。
そして、港湾水鬼は、カメコの尻尾を掴み直す。そして。
「フンッ!」
その一言と共に、カメコの尻尾を、カメコの体から引きちぎったのだ。
「------------!」
カメコは声に成らない叫び声を上げる。と同時に、尻尾と体から、おびただしい量の鮮血が流れ始めていた。そして、追い打ちをかけるように、港湾水鬼は、カメコの胴体を、その足で踏み潰そうと、片足を天高く持ち上げた。
「ッソオオイヤアア!」
その瞬間、エリレの尻尾が港湾水鬼を襲う。だが、港湾水鬼は手慣れた手つきでその尻尾を掴みとっていた。
「馬鹿ノヒトツオボエダナ。」
港湾水鬼はそう言うと、エリレを水面に叩きつけようとする。だが、そうは問屋が卸さない。港湾水鬼は知らないのだ。ここに、港湾の名を冠する、もう一人の化け物がいることを。
「アナタモ、ヒトノコトハイエナイワ。」
港湾水鬼は、足元から聞こえた声に、思わず顔を向けていた。
その目に写ったものは、海面下から拳を突き出し、勢い良く海面から飛び上がる、港湾棲姫の姿であった。
「ナ!?」
水鬼は驚愕の表情を浮かべ、拳を避けようとするも、時は既に遅し。
港湾棲姫の拳を、顎からまともに受けたのだ。
「ナイス港湾棲姫ィ!」
「レ級。カメコヲツレテ撤退。あぶくまニハ、バケツアルカラ。」
「アイヨォ!サーイクゾカメコォ!」
エリレはそう叫びながら、ぐったりとしているカメコを担ぎ、未だ倒れ伏す港湾水鬼の元から、撤退していった。
◆
エリレは自身が担いだカメコを観察する。
顔や体に特に大きな損傷は、ない。
だが、その背中に生えていた尻尾も、ない。
更には尻尾は完全に千切られているためか、こうしている間にも
おびただしい量のカメコの血液がエリレの体を伝ってきていた。
(こりゃあかなり不味いなぁ。つーかこれ、尻尾復活すんのかな?)
エリレはそう考えながら、あぶくまへと速度を上げる。とその時、
見慣れた艦娘が一人、エリレへと近づいてきていた。
「・・・よっぱらいのレ級か?何をしているんだ?」
彼女は発射した魚雷を補給に、あぶくまへと帰還していた菊月だ。
丁度補給を終え、これから海戦へと出るというタイミングで、エリレと出会ったようである。
「オオ!チョウドイイトコロニ!菊月ツッタッケ?カメコノ治療ヲタノム!」
エリレはそう言うと、担いでいたカメコを、菊月へと渡す。
菊月はいきなりの行為に驚いたものの、カメコの状態を見て、その表情を固くさせていた。
「っ・・・これはひどいな。判った、すぐに医療班へカメコを渡す。
よっぱらいのレ級。お前はどうするんだ?」
「港湾棲姫ガ港湾水鬼トタタカッテルカラ、援護ニイッテクル。サスガニ港湾棲姫ダケジャツラソウダシナ。」
エリレはそういうと、菊月の反応を待たずに、一気にその体を加速させていった。
「まったく、なんなんだあのよっぱらいのレ級は。忙しないな。
いや、それよりも今はカメコの治療を急がねばな。」
菊月はその姿を見送りながら、体を反転させ、
一気に主機の出力を最大まで引き上げ、カメコをあぶくまへと運んでいった。
◆
戦艦の治療。もとい、深海棲艦や艦娘の治療は、そこそこ簡単である。
通常であれば、ドックに入り、体を休めれば、時間に応じて装甲が回復する。
大破や轟沈寸前の場合は、必要な鋼材や燃料を溶けこませた高速修復材に浸かれば、
艤装、装甲もろともすべてが、回復するのである。
「・・・あんまり、芳しくはないですね。」
戦艦レ級フラッグシップ改、カメコを菊月から受け取った船医は、高速修復材に浸かり
傷を癒やすカメコを見ながら、呟いていた。
その隣には、横須賀鎮守府の提督も渋い顔をしながら立っていた。
「艦娘とは違うのですね。艦娘であれば、腕や足がちぎれ飛んだところで
高速修復材に浸かれば修復されるというのに。」
「えぇ、私もそう思っていました。ですが、見てください。
レ級さんの出血は綺麗に止まりました。傷跡もほとんどありません。
・・・ですが、千切られてしまった尻尾は、修復されませんでした。」
未だ気を失っているカメコ。その体にあるものは、いつものパーカー、ビキニだけである。
巨大な尾っぽと、その先に付いている砲塔や魚雷は、失われたままだ。
「果たしてこの姿で、戦闘能力があるのかは不明です。艦娘の場合は、轟沈、つまりは
艤装が完全に破壊され、生体にまで被害が及んだ場合は、もう戦闘能力がなくなってしまいますから。」
船医はそういいながらも、高速修復材を足していく。
「えぇ、判っています。とはいえ、レ級は深海棲艦ですから。艦娘の状態が当てはまるとは限らないでしょう。」
それに、と提督は続ける。
「このレ級は尻尾を失ったぐらいで、どうこうする奴ではないですから。」
「・・・まぁ、そうですよね。むしろ、「これで大手を振って写真とれるー!」とか喜びそうで・・・。」
船医は呆れ顔でため息をついていた。
提督も船医に続き、苦笑を浮かべながら、未だドックで眠るカメコを見つめるのであった。
妄想捗りました。
尻尾がなくなったカメコさんの巻。
きっとこれからは、よりアクティブに写真をとるのかなぁと妄想しております。
とりあえず次でいったん〆の予定です。