カメ子 レ級   作:灯火011

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前回、深海棲艦から強襲を受けたカメコと金剛達
キス島攻略作戦部隊。

さそく、彼らは戦闘開始をするようです。

そして、第三戦力も、ついぞ戦闘に参加するようです。


・1万文字超えました。


127 砲火と喧嘩は海の華

砲撃ヲ行イ、ソシテ艦娘達ト戦ウ仲間ヲ見ナガラ、我々(戦艦ル級)ハ謡ウ。

 

--イノチ捧ゲテ出テキタ身故、死ヌル覚悟デ吶喊スレド---

 

ソウ、我々ハ全員死ヌ気デ北ノチデ戦イ、

ソシテ、文字通リ玉砕シテイッタ。

 

---武運拙ク討チ死ニセネバ、義理ニカラメタ恤兵真綿---

 

補給ガアレバ。弾薬ガアレバ。医薬品ガアレバ。

支援ガアレバ。・・・次々ニ想イガ浮カブ後悔ノ念。

ダガ、今更ソレヲ想ッテモ、仕方ガナイ。

 

---ソロリソロリト頚締メカカル---

 

マァ、ドドノツマリ、我々ハ意地穢イ、敗残兵ノ集マリダ。

我々ノ自己満足ノタメニ、生者ノ顔ニドロヲヌル。

最悪ノ存在ダ。ソウ、我々ハ結局。

 

---ドウセ---

 

過去ニ縛ラレ続ケテイル、ドウシヨウモナイ、死人ノ集マリナノダカラ。

だからこそ。今を生きる貴様らよ。我々を討ってくれ。我らの無念を晴らすのだ。

 

---生きては、()()()()、つもり---

 

 

そして、謡い終わった戦艦ル級達は、提督と慕う色白の女性へと、口を開き始める。

 

「ソレニシテモ。貴女モヨク我々ノタメニコノ場所ヲヨウイシテクレタナ。

 感謝ノ念ニタエナイ。」

 

「キニスルナ。私ガモトメルノハ、タノシイ、タノシイ、イクサダ。

 殺シタリ、殺サレタリスルノガ、楽シミデシカタガナイノダ。

 ダカラ、貴様ラモ思ウ存分、タノシムガイイ。」

 

「了解。提督。ソレニシテモ。今ノ艦トハ脆弱ナモノダ。

 我々ノホウゲキデ、炎上スルナドト・・・。」

 

「無理ヲイウナ。今ハ昔ノヨウニ、砲雷撃戦ナドハシナイ。

 殴リ合エル装甲ナドナイノダ。

 電探デ砲撃距離外カラ、遠隔誘導噴進弾ヲツカウノガ今ノ戦イダ。

 コノヨウナ接近戦ナド、想定シテイナイノダ。」

 

この提督と呼ばれた女性は、なぜか現代艦にも精通している。

詳しく話を聞くと、どうやら元々はスリランカ近くで活動をしていたらしいのだ。

そして、スリランカ沖に艦娘が攻めてきた時に、脱出し

日本の北方へと退避してきたらしい。

 

「ククク、ソレニシテモ。飛行場姫トカメラノレ級ガ艦娘側ニツイテイタトハ。

 ・・・最高ダ。ククク。サァ、生者ヨ。彼ラノ練度ハ極限ダ。

 70年、コノ北ノウミデ戰場ヲマッタ彼ラハ、ツヨイゾ。

 強大ナテキニ、貴様ラ、生者ハ、ドウタチムカウノダ。」

 

提督と呼ばれた白い女性型の深海棲艦は、にやりと口角を上げる。

その視線の先では、金剛と、先方の戦艦ル級が、砲雷撃戦を開始していた。

 

 

被弾したあぶくまから、立ち上る炎を背にしながら

金剛と武蔵は、戦艦ル級へと砲撃を繰り返していた。

 

「チィッ!ファック!

 あのル級、只者じゃナイデース!」

 

「すさまじい練度だな・・。」

 

金剛と武蔵がそう呟くのも仕方が無い。

戦艦ル級は、金剛と武蔵の弾丸を、盾のような砲塔を使いながら

直撃弾を全て、弾き飛ばしていたのだ。

 

ドゴン!ガイン!

ドゴン!ガギィン!

 

そして、金剛と武蔵が装填の瞬間になると

恐ろしいほどの精度で、戦艦ル級は砲撃を仕返してくるのだ。

 

「シット!」

 

金剛は避けようとするも、予測されていたように

弾丸は金剛の移動地点へと着弾する。

 

避けられない!そう判断した金剛は、

ガギン!という音とともに、弾丸を拳で弾き返す。

 

「ッ・・・・!」

 

だが、その代償として、すさまじい痛みとしびれが

金剛の腕を襲っていた。

 

(ファック!なんデースかあのル級!

 レ級の弾より、砲撃が重いデース・・・!)

 

明らかにカメコより重い弾丸。

あと数発は弾き飛ばせるであろうが、長期戦は無理だ。

 

金剛はそう判断を下すと、隣を往く武蔵へと指示を飛ばす。

 

「武蔵、正直に言うと、砲撃戦ではル級のほうが上デス。

 非常に悔しいデスが、このままだとジリ貧デース。

 なので、これから私はル級に接近戦をしかけマス。

 武蔵は、タイミングを合わせて砲撃をお願いしマス。」

 

「応。任された。

 すきあらば私もあれをぶん殴ろう。」

 

「頼みマース!じゃー、行きマースよー!

 主砲、副砲、ファイアー!」

 

「51cm連装砲、斉射!ル級の動きを封じる!」

 

金剛と武蔵は、同時に砲撃を行いながら、戦艦ル級へと肉薄していく。

足は金剛が一番早い。戦艦ル級は距離を取ろうと主機を全力にするも

金剛はぐいぐいと、戦艦ル級へと肉薄していく。

 

右へ、左へ、お互いに直撃弾を貰わないように、

ル級と金剛達は、お互いに偏差撃ちを繰り返しながら、徐々に徐々に、

その距離を縮めていく。

 

そして、ついに、金剛の、拳の間合いまで肉薄する。

と同時に、武蔵の51cm連装砲の着弾が、戦艦ル級のバランスを崩していた。

 

「っせい!」

 

金剛は、勢い良く、戦艦レ級フラッグシップ改と打ち合える、自身の右拳を、

渾身の力を振り絞って、戦艦ル級へと放った。

 

ガシィ!

 

そう、全力を、戦艦ル級へと放ったのだ。

 

「ハッ・・・ソンナモノカ。」

 

だが、その拳は戦艦ル級へとは届いていない。

なんと驚くことに、戦艦ル級は、砲塔を投げ捨て

金剛の右拳を、自身の右手で、簡単に受け止めていたのだ。

 

「なっ!?」

 

「残念ダヨ。艦娘ェ!」

 

ル級はそう言うと、左腕を唸らせ、寸分違わず金剛の顔を殴り飛ばした。

 

ガギンッ!

 

「ガッ!?」

 

金剛はなすすべもなく、その拳を受け入れる。

そして、顔から血を吹き出させながら、海面を転がっていった。

 

「なっ、金剛!?」

 

武蔵はそう叫ぶと、金剛をかばうようにル級へと肉薄する。

そして、両腕を開くとお互いに力比べをするように

手のひらをル級と合わせたのだ。

 

ガシイッ!ミシミシ・・・。

 

全速力で突っ込んだ武蔵の重量を、戦艦ル級は難なく受け止める。

そして、全力を込めてル級を押しつぶそうとする武蔵であったが

 

「ハッ!貴様モ!ソンナモノカ!」

 

ル級はそう言うと、武蔵の腕を、体ごと押し返し始めたのだ。

 

「なんだと・・・!くそっ!」

 

そう。日本最大の重量と、火力、そして馬力を持つ弩級戦艦、大和型。

その大和型の力を持ってしても、このル級は押しつぶせないのだ。

 

「武蔵ィ!そのママァ!」

 

と、その瞬間、金剛がル級の後方から、全力のケリを放とうと構えを取る。

だが、ル級は涼しい顔を浮かべると、武蔵を、軽く持ち上げながら、

そのまま後方の金剛へとぶん投げたのだ。

 

「ぐあっ・・!?」

 

「ファック!?出鱈目ェデース!」

 

飛んできた武蔵を受け止めながら、金剛は戦艦ル級を睨む。

 

「出鱈目カ。ソウカ!

 クハハ。ナラバキサマハコレカラドウスル。

 コノ出鱈目ヲ相手ニ、キサマハドウタタカウノダ!」

 

ル級は獰猛な笑みを浮かべながら、金剛に大音声で叫んでいた。

金剛は小さく舌打ちをする。正直言って手詰まりだ。

自身の砲撃、拳、すべてが通じない相手。

更には、馬力でも大和型以上。

 

(あれはなんデスか・・!本当に戦艦ル級なのデスか!?

 シット!何が艦娘の最高練度デースか・・・!

 何がレ級フラッグシップと戦える戦力デースか!

 まだまだ、私は至っていなかった!慢心が過ぎたデス・・・!)

 

金剛は目の前の敵を見ながら、内心で悪態をつくのが、精一杯であった。

 

 

金色のオーラを吹き出す戦艦レ級と、

にやにやと笑みを浮かべる戦艦ル級は、

お互いに正面を見据えながらも、海面に静かに立っていた。

 

「ホウ。私ノアイテハ我々トオナジモノカ。」

 

戦艦ル級は、カメコを見ながら、静かに口を開く。

 

「わるかったなぁ。艦娘じゃなくて。

 それにしてもいいのか?1対1じゃ、お前が不利だぞ?」

 

カメコもル級を見据えたまま、静かに言葉を返す。

 

「ハ、モンダイハナイ。ナニヨリ、私達ガノゾムノハ1対1デノ殺シアイダ。

 ・・・ナァ?キサマモ、ツワモノナノダロウ?

 コノサキニアル、アツ島カラ、生者ヲ回収シニイクノダロウ?」

 

「あぁ、そうだぜ?なんだ。深海棲艦として、

 裏切り者とでも罵倒するか?」

 

「ハッ・・・・!ソンナ無粋ナコトハイワヌ。

 全力デ我々トタタウノダロウ?

 ---ならば是非は問わぬ。

 ---私達と、全力で撃ちあってくれるのなら。

 ---私達の自己満足に付き合ってくれるのなら!」

 

戦艦ル級はそう言うと、砲塔をカメコへと向ける。

カメコはにやりと笑みを作ると、尻尾を上げ

砲塔を戦艦ル級へと向けた。

 

「くくく。そうか、いいぜ。やろう。

 自己満足、そう、自己満足!そうだ!自己満足だ!

 私だって自己満足で今ここにいる。

 もし、モシモ、キサマがそれを邪魔するならば!」

 

戦艦ル級と、戦艦レ級フラッグシップ改は、お互いに同時に海面を蹴る。

そして、大音声で、同時に、叫び合った。

 

「「キサマヲ水底ニシズメテヤロウ!」」

 

お互いの連装砲が、ほぼ同時に火を噴く。

ル級はカメコの弾丸を砲塔で弾き、至近弾で抑える。

 

そして、カメコも着弾の瞬間に、カメコはさも当然のように、

砲弾を掴み、ル級へと投げ返す。

 

ズガガン!

 

よもや自分の弾丸が投げ返されるとは思っていなかった戦艦ル級は、

自身の弾丸を、まともに顔面に受けてしまう。

だが、ル級の顔には全く傷がない。

 

「硬いねぇ!?」

 

「キサマモ。オモシロイコトヲヤルナ!」

 

そして、今の一撃で、お互いに砲撃戦では埒があかないと判断したのか

全速力でお互いに突撃をしていく。

 

「まず一発だ!オラァ!」

 

「クアッハ!気持チノイイ奴ダ!ソラァ!」

 

カメコとル級は、叫び合いながら、お互いに右拳を突き出していた。

 

ガゴン!ガキンッ!

 

質の違う2つの音が、周囲に響き渡る。

 

「ッハァ!イイ拳ダナァ!ダガ軽イ!」

 

そして、驚くべきことに、吹き飛ばされるカメコと、

仁王立ちで、口角を持ち上げながらも

鼻から少しだけ血を垂らす、戦艦ル級という

対称的な光景が広がっていた。

 

「つぅっ・・・!?」

 

ル級の拳を受けて吹き飛んでいたカメコだが

そこは流石のバランス感覚で、海面こそ転がらず

四肢を海面に突き立て、勢いを殺す。

 

(・・・強いな。これは拙いかも。

 金剛達は大丈夫かな。)

 

カメコはそう思いながら、上空を見る。

すると、そこには、敵の戦闘機に追い回され

撃墜されていく飛行場姫の艦載機と、加賀の烈風の姿があった。

 

(空もやべぇってか。つーか飛行場姫様の艦載機を撃墜させるとか、

 相当なもんだな。・・・チッ。港湾棲姫様とヨッパが

 参戦してくれたら、楽なんだけどなぁ。)

 

カメコは改めて戦艦ル級を直視する。

すると、気づけばゆっくりとこちらに歩いてきているではないか。

 

(ま、あいつらは下らないことのために、

 深海棲艦を裏切る奴らじゃないしな。うん。

 それはともかくとして・・・。戦艦ル級をどうにかしねーとな。)

 

ゆっくりと歩いてくるル級を視界の端に入れながら

カメコはゆっくと立ち上がりつつ、口を開く。

 

「てめぇ。ただの戦艦ル級じゃねーな?」

 

戦艦ル級は、カメコの言葉に歩みを止める。

そして、にやりと笑みを浮かべると、口を開いた。

 

「アァ。我々ノナマエハ戦艦ル級トイウノカ。

 ナニ、オナジモノダ。タダ、我々ハ自己満足ノタメニココニイル。」

 

「はっ、自分の名前すら判ってなかったのか。

 どんだけ出鱈目なんだよ。ったく。

 まぁいい。お前ら相手なら、私も久シブりに本気で、いケル。」

 

「・・・クハハ!イイゾイイゾ。

 イマノイッパツガ、本気ナラバ失望シテイタゾ。

 サァ、コイ。サァ、クルノダ!

 ワレワレハ、闘争ヲノゾンデイルノダ!」

 

「判ったゼ。私も最近ハ怠けテタからナァ!

 後悔スンナよ!イクゾオラァ!」

 

「コイヤァ!」

 

戦艦ル級と、カメコの拳が、改めて空中を交差する。

だが、その拳は当たることはない。

お互いに首をひねり、お互いの拳を避けたのだ。

 

と同時に、カメコは腕を振りきった反動を使いながら

体を回転させ、尻尾でル級を叩きつける。

 

「甘イワァ!」

 

ル級はそう叫ぶと、すさまじい速度で迫るカメコの尾っぽに

渾身の蹴りを繰り出していた。

 

そして、レ級の尻尾と、ル級の蹴りがあたった瞬間、

グシャリ・・・と、鈍い音が接触点からしたのである。

 

「ぎっ・・・!?」

 

叫ばなかったのは流石、カメコというところか。

一瞬の近距離の攻防戦の後、仕切りなおすように、

カメコと戦艦ル級は距離を取りながら、改めて対峙しあっていた。

 

戦艦ル級は変わらず獰猛な笑みを浮かべたまま、

四肢の全てに損傷なく、海面に立っていた。

 

(痛ぇ・・!?くっそ、なんだこのル級!)

 

ル級は眉間にシワをよせつつ、ル級をにらみつける。

戦艦レ級の尻尾の先端は、装甲板や砲塔があるため一番頑丈な部分である。

そんな頑丈な部分を、カメコは全力を持って戦艦ル急に叩きつけたのにも関わらず

戦艦ル級は蹴りの一発で、それを跳ね返すどころか、完全に壊してみせたのだ。

 

(攻撃が、通じねぇ・・・!クソッタレメ!)

 

カメコは悪態をつきながらも、尾っぽの状況を確認する。

尻尾の先端は物理的に潰され、尾っぽの先端の砲塔、魚雷発射管、対空砲が潰れてしまっていた。

 

更には装甲板もへしゃげ、鮮血が流れ続けている。

だが、未だに尾っぽは動く。尾っぽの先端の口は動く。

であれば、砲雷撃戦は封じられたが、

近距離ならば、まだなんとかなるかもしれない。

 

(あんまりやりたくなかったけど・・・喰うか?)

 

カメコはそう考えながら、自身の尾っぽの口を開く。

 

(いづっ・・!?)

 

大きく尾っぽの先の口を開けようとしたカメコに、激痛が襲いかかる。

どうやら、分厚い装甲が尾っぽに食い込み、動作を阻害しているようであった。

これは、尻尾で相手を喰うという行為さえ、難しい。

 

(こりゃー、割と積みかねぇ・・・?)

 

カメコはそう思いながらも、獰猛な笑みを絶やさない。

そして、今一度、叫びながらル級へと攻撃を仕掛けようとした時であった。

 

---ガガガン!---

 

と、巨大な鉄板の塊を叩いたような音が周囲に響き渡ったのだ。

 

戦闘をしていた全ての敵味方が、その音の方向を見る。

するとそこには、金剛とカメコが苦戦している戦艦ル級とは

別の戦艦ル級を捕食する「戦艦レ級エリート」がいた。

 

メシャリ、グシャリ、メシャリ。

--ギッ、ガッ、ウゴ、ギュフ・・・----

 

頭からエリレにかぶり付かれたル級は、

聞くに堪えない、うめき声を上げながら、その活動を停止させた。

 

「ハッ、旨くネーナー」

 

悪態をつきながら、エリレは格納庫から爆雷を一つ、取り出す。

 

「次。」

 

「応。」

 

気づけば、エリレから静かに爆雷を受け取る、港湾棲姫が、無傷で佇んでいた。

 

「・・・ナニッ!?我ラガ一瞬デヤラレタダト!?」

 

戦艦ル級達は、当然動揺する。裏切りに驚いたのかと思えば、そういうわけではない。

殺された相手が同種の深海棲艦ということについては、ル級達は、全く気にしては居ない。

 

だが、戦艦ル級の練度と耐久力は、金剛とカメコの格闘戦と耐えぬくあたり、並大抵ではない。

艦娘2人と戦おうが、エリート改の深海棲艦と戦おうが、彼らル級には、

戦う相手を簡単に足蹴に出来る自信があったのだ。

 

「ナンダ、ナンナノダアレハ!・・・サイコウデハナイカ!」

 

全ての戦艦ル級が、港湾棲姫と、エリレを見て口角を上げる。

 

---アレト戦えれば、我々ハキット・・・----

 

それはもちろん、金剛達やレ級と戦っていた戦艦ル級も例外ではない。

 

 

「ナンダ、ナンダキサマラ。

 アンナ隠シ種ヲモッテイタトハ!」

 

金剛・武蔵と戦っていたル級は、今が戰場ということを忘れ

興奮しながら叫ぶ。思う存分戦える。補給が万全の状態で

強大な敵と戦える。そんな気持ちが溢れ出ているようだ。

 

「クハハ、最高・・・グムッ!?」

 

だが、その隙の代償は大きかった。

大口を開けて叫んでいた、戦艦ル級の口内に

41cm連装砲と、51cm試製連装砲の砲身が突っ込まれていた。

 

「敵の眼前で・・・隙を見せるのは関心できまセーンよ?」

 

「眼前の敵を目の前に舌なめずりか。・・・海軍を、舐めるなよ?」

 

「・・・!」

 

獰猛な笑みを浮かべ、何かを言おうとする戦艦ル級。

だが、有無をいわさずに、金剛と武蔵は

主砲の引き金を引いた。

 

カチリ。

 

---ドゴォ!---

 

轟音と共に、戦艦ル級の頭は、文字通り木っ端微塵に吹き飛んだ。

格闘戦には耐えるル級の体ではあったが、どうやら、内部からの衝撃には弱いらしい。

 

頭部を無くし、力なく海底へと沈む戦艦ル級の亡骸を眺めながら

金剛と武蔵は、砲身を日本刀を降るように動かし

砲身についた戦艦ル級の肉片を吹き飛ばしていた。

 

「全く。酒のレ級は物好きデース。態々戦闘に参加しなくてもいいのに。」

 

「あぁ、あのレ級は物好きだな。カメコと大して変わらんとは。」

 

金剛と武蔵は、ちらりと、エリレと港湾棲姫を見る。

既に彼女らは、喰ったル級をそのままに、次の獲物へと足を進めていた。

 

「・・・さぁ、次デース。」

 

「応。アレに遅れをとるわけにはいかん。」

 

金剛と武蔵も、追従するように、次の戦艦ル級へと向かっていくのであった。

 

 

「クハハ!イイゾ、アレハイイゾ!」

 

カメコと戦っていた戦艦ル級も、例外なく

エリレと港湾棲姫を見ながら、獰猛な笑みを浮かべていた。

 

「ククク、ナァ、貴様。アレモお前の仲間か。

 ・・・あぁ・・・いい仲間を持ってるなぁ。

 玉砕せざる負えなかった、我々とは違う、いい仲間だ。」

 

「そりゃどーも。つーかお前、やっぱりアツ島の亡霊か。

 全く、通りでつえぇわけだよ。」

 

笑みを浮かべる戦艦ル級。

その下半身は、腰から下が完全に消え去っていた。

 

「ククク、強いと、言ってくれるのか。」

 

「あぁ、お前らは間違いなく強いね。

 全く、手間かけさせやがる。・・・なぁ、菊月?」

 

ル級を挟んだ反対側には、魚雷発射管が数本空になっている

駆逐艦の菊月が佇んでいた。

 

「あぁ、全くだ。レ級が接近戦で押されるなど

 冗談もいいところだぞ。ル級、貴様は強い。」

 

菊月は戦艦ル級に近づきながら、笑みを浮かべる。

 

「・・・あぁ、生者からも讃えられるとは。

 あぁ、あぁ。満足だ。私は満足だ。」

 

そういうと、戦艦ル級は、穏やかな笑みを浮かべ

海底へと、沈んでいった。

 

その姿を見守る、カメコと菊月であったが、

チラリと目配せをしつつ、主機を駆動させ

敵の本陣へと体を加速させる。

 

「菊月、援護助かった。正直勝てるか判らなかったわ。」

 

カメコは苦笑を浮かべながら、菊月へと言葉を投げる。

菊月は一瞬だけ目線をカメコに送ると、

目の前を向き直し、口角を上げ、口を開いた。

 

「気にするな。私はお前に付いて行くといったんだ。

 この程度のこと、出来ぬわけがない。」

 

「ははっ、頼もしい。

 ・・・・次も、頼むぜ?」

 

「あぁ。もちろんだ。」

 

カメコと菊月は、お互いに拳を出しあい、コツンと拳を合わせる。

 

「そいや、お前、加賀の援護は?」

 

「加賀か。まぁなんだ。今日の加賀は護衛はいらんぞ。

 何せ今日は、絶好調みたいだからな。」

 

菊月の言葉に首をかしげるカメコ。

そんなカメコを見ながら、菊月はにやりと笑みを浮かべるのであった。

 

 

---敵機直上、急降下!---

 

加賀の頭の上に、1トン爆弾が降り注ぐ。

 

当然として、日本の空母である加賀は、高性能な対空装備を持たない。

しかも動きは鈍重に近い・・・のは戦船時代の加賀である。

 

今、ここにいるのは、船の魂を持つ、人の形をした加賀だ。

 

「ふっ。」

 

加賀は鋭く、小さく息を吐くと、弓を真上に向ける。

そして、矢を番えると、迷いなく矢を放ったのだ。

 

すると、矢は迷いなく、1トン爆弾を貫き、

上空に爆炎を広げながらも、矢は戦闘機となり、

勢いそのままに、敵攻撃機を粉砕していった。

 

だが、敵の数は多い。

爆弾を1個や2個を貫いたところで、

加賀の烈風が攻撃機を粉砕したところで、

加賀に降ってくる爆弾の数は、未だに多いのだ。

 

右に舵を取り、左に舵を取り、加速し、減速し。

 

加賀は持てる技術を総動員し、敵の爆撃を避けていく。

その間も、加賀はいつもの無表情だ。

 

(厳しいわね。烈風を持ってしても制空権が危ういなんて。

飛行場姫の戦闘機も、かなり危ないみたいですし。)

 

加賀がそう考えた時である。

遠くにいた戦艦ル級が、その艦砲で、加賀を狙ってきたのである。

 

水柱が立ち、ずぶ濡れになる加賀。

幸いにも直撃弾はなく、甲板は濡れただけである。

 

(初弾夾叉。まずいわね。)

 

加賀はそう思いながらも、再度上空へと烈風を上げる。

とその時、後方に控えるあぶくまの飛行場姫より、加賀へと声がかかった。

 

「加賀、まだいけるかしら?」

 

心配そうな、普段では聞けない飛行場姫の声を聴いた加賀は、

いつもの調子で、ぶっきらぼうに言葉を返す。

 

「問題ないわ。飛行場姫。」

 

「そ。まずくなったら退避なさい。」

 

「えぇ。心得ています。」

 

そうしているうちにも、相手の航空機に落とされていく、烈風。

 

だが、ただ落とされるわけでもなく、

烈風を追いかけて、速度をなくした敵を飛行場姫の戦闘機が、

一撃離脱を行い、逆に叩き落とす。

 

そして飛行場姫の戦闘機を落とそうと近づいてきた敵機を

加賀の烈風が巴戦で落としていた。

 

敵味方、お互いに多数の航空機を失いながらも

未だに制空権争いをしている加賀と飛行場姫、そして敵のヲ級2隻の練度は

流石といったところだ。

 

 

話は変わるが、この加賀という軍艦は、少し、他の航空母艦と生い立ちが違う。

加賀は非常に数奇な運命を辿り、航空母艦に変貌したのである。

 

赤城と加賀。

 

彼女らは一航戦として、同じ海で戦い、同じ海で沈んだ。

だが、彼女らは、驚くべきことに、姉妹艦でもなく、同型艦ですらないのである。

 

彼女らの本当の名前を聞けばそれも納得である。

 

航空母艦赤城、真の名前は「八八艦隊 天城型巡洋戦艦 2番艦 赤城」。

 

航空母艦加賀、真の名前は「八八艦隊 加賀型戦艦 1番艦 加賀」。

 

彼女らは、本来「巡洋戦艦 金剛型」と「戦艦 長門型」を

発展、強化した戦艦として産声を上げるはずであったのだ。

 

そう、航空母艦「加賀」は、主砲と航空機という武装の違いこそあれど

その体は、間違いなく長門型を引きつぐ、最新鋭の「戦艦」なのだ。

 

そして、そんな彼女は、今世において

 

接近戦では無類の強さを誇る戦艦レ級エリート改、

 

レ級エリート改とタメを張りつつ、砲雷撃戦で無類の強さを見せる戦艦金剛、

 

航空機の扱いでは右に出るものはいないであろう、飛行場姫

 

という、とんでもないメンツに囲まれながら、生活をしている。

 

結局何が言いたいのかといえば、

こんな非常識な艦共と生活をしている加賀が

常識的な船であるわけが、ないのである。

 

 

戦艦ル級は、航空機を操る敵の航空母艦、加賀を、付け狙っていた。

理由は単純で、「1:1の砲雷撃戦を、蚊蜻蛉に邪魔されては叶わない」。

 

先ほどの一発は、夾叉。であれば、次の一撃は、当てる。

 

戦艦ル級は、絶対の自信を持って、砲塔を回転させ、加賀へと照準を絞る。

 

そして、航空機を発艦させ、隙だらけのタイミングで、3連装砲を、叩き込んだ。

 

ドンピシャリのタイミング。確実に敵の航空母艦は大損害を受けた・・・はずであった。

 

確かに、加賀は爆炎に包まれ、一瞬姿が見えなくなる。

コレで邪魔されない。と、安堵の笑みを浮かべる戦艦ル級であったが、

次の瞬間、加賀は無傷で、爆炎の中から飛び出してきたのである。

 

驚きに顔を染める戦艦ル級。

 

そんな戦艦ル級を尻目に、加賀は、いつの間にか目の前に突き出され、

握られた左手の手のひらを、ゆっくりと開く。

 

すると、戦艦ル級にとって、見慣れた弾頭が、3つ、加賀の手から、こぼれ落ちたのである。

 

加賀は、戦艦ル級の弾丸を、掴みとったのだ。その事実に、戦艦ル級は、言葉を失っていた。

だが、戦艦ル級の驚きは、これだけでは終わらない。

 

なにせ、言葉が聞こえないほど、遠く離れているはずの敵の航空母艦から、

戦艦ル級は確かに、底冷えするような音色でありながら、力強い言葉を聞いたのだ。

 

『・・・頭に、来ました。』

 

その言葉とともに、敵の航空母艦は、超低空に矢を飛ばす。

海面に触れるか触れないかの距離を翔ぶ矢は、一直線に戦艦ル級へと向かっていく。

 

当然、戦艦ル級は、こちらへ向かってくる矢を落とそうと、

主砲、副砲、対空砲を放ち始めていた。

だが、その矢はまるで意志があるように、右往左往と動きまわり

ル級の砲撃をのらりくらりとかわしていく。

 

『雷撃準備。』

 

加賀の一言と共に、矢が変化し、5機の97艦攻へと変化する。

その腹には、各機体共に、魚雷を一本、抱え込んでいた。

 

戦艦ル級は目を見張る。

超高速、超低空で敵の雷撃機が進入してきたのだ。

ル級は更に熾烈に対空砲を撃ちまくるが、

ペラが海面に擦るほどの低空を、数百キロ出して近づいてくる

小さな的に当てるのは、熟練者であっても困難だ。

 

だが、ル級の弾幕は流石である。

 

1機の97艦攻のエンジンが、黒煙を上げ始めたのだ。

 

思わず、にやりと笑みを浮かべる戦艦ル級。

だが、それだけだ。他の97艦攻は、ル級の砲撃を物ともせずに、ル級へと肉薄する。

 

10機近くの空母ヲ級の戦闘機が、ル級の援護に入ろうと急降下を行うが、既に時遅し。

 

戦艦ル級は、加賀の97艦攻から、魚雷を5本、直当てされ

なすすべもなく、轟沈していったのだ。

 

『・・・優秀な、みんな優秀な子達ですから』

 

そして、ル級を撃沈せしめた97艦攻を落とそうと、高度を落としたヲ級の10機余りの戦闘機達は

上空から襲いかかってきた飛行場姫の戦闘機に、一瞬の内に全て、叩き落とされていた。

 

制空権争いで、10機の差は大きい。

ここに来て、制空権は一気に、加賀と飛行場姫に傾いたのである。

 

「ヲ級達。いくら戦闘機の操縦が上手くったって、貴女達じゃあ、判断が甘いわ。

 判断力が問われる制空権争いを私に挑むなんて、愚の骨頂。

 いくら鹵獲されてるとはいえ、いくら戦闘にブランクが有るとはいえ、

 私は伊達に、飛行場姫って名乗ってるわけじゃないのよ?」

 

飛行場姫はそう言いながら、獰猛な笑みを浮かべていた。

その姿は、正に深海棲艦の姫君、と言える姿であった。




「私、こう見えても長門よりも足が速いんですよ。
 拳、長門よりも硬いんですよ。

 だから、接近戦、できるようにしておきたいんです。
 
 今度色々教えて下さい。レ級、金剛。」

彼女はそう言うと、普段の加賀からは想像もできないほど、
獰猛な笑みを浮かべたのです。
別に、加賀は近距離で戦う必要が無いのに。

【金剛の日記:レ級との模擬戦後】より抜粋



妄想捗りました。

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