カメ子 レ級   作:灯火011

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カメラに釣られ、人類の作戦に参加してしまった
駄目深海棲艦、レ級+飛行場姫のコンビ。

彼女らは、北の泊地で作戦を再度確認しつつ
少しだけ、平和な時間を過ごすようです。

(最後に酔っぱらいのレ級さん、ちょっとだけ出ます。)


◆誤字直させていただきました。ご指摘感謝です。


124 レ級 北へ その2

北方、幌筵泊地。

今、この泊地には、日本全国の鎮守府より

多数の艦艇が集められていた。

 

「キス島周辺が、濃霧に包まれる瞬間を狙い

 自衛隊の揚陸艇にてキス島の撤退を開始する。

 阿武隈よ、この作戦どうなんだ? 

 貴様は一度、キス島撤退作戦を指揮していたはずだが。」

 

武蔵は阿武隈に口を開く。

 

「いいと思うわ。相手は容赦なく電探を使ってくるでしょうけど、

 このキス島周辺は岩礁が多くて、電探の反応があったとしても

 目視しないと岩か船か分からないのよ。

 だから、逆にいうと、相手の見張りの目を潰す、

 濃霧の発生に頼るしかないのよね。

 それに自衛隊の力を使えば、大発で撤退させるよりも、

 よっぽど速いでしょうしねー。」

 

キス島徹底作戦を担当する阿武隈は、

ミーティングで受けた作戦内容を思い出しながら

武蔵に口を開いていた。

 

「ま、でも、今回は相手が人間じゃないだけやりやすいわね。

 それに、アツ島も今回は助けられるチャンスがあるわけだし。」

 

「あぁ、確かにな。相手は化け物だからな。

 気兼ねなく私の主砲をぶっ放せる。

 ・・・アツ島に潜む深海棲艦が、どの程度の

 力を持っているのか、測れないのが不安だがな。」

 

「確かにそうですよねぇ。」

 

はぁ、と阿武隈と武蔵は同時にため息をついていた。

結局、相手が人間ではないだけで

相手の思考や、相手の戦略が読めているわけではないのだ。

 

なんとなく、相手が過去に起きた海戦にしたがって

戦力を貯めているからこそ、こちらも対応ができる。

実際問題、その程度の諜報能力しかないのが現状である。

 

「2隻して、なーに悩んでんだ。」

 

そんな悩む2隻のもとにやってきたのは

人類に味方する深海棲艦(カメラに釣られた馬鹿野郎)である、

「戦艦レ級フラッグシップ改」である。

 

「レ級か。何、今回の深海棲艦の強さを測りかねていてな。

 ま、いつものことなのだが、毎回は撤退作戦も兼ねているからな。

 余計、鬱になりそうになっているのさ。」

 

武蔵はそう言いながらも、はぁ、と溜息をこぼしていた。

阿武隈も同じように、はぁ、と溜息をこぼしながら、口を開く。

 

「そうなのよねぇ・・・。キス島撤退作戦だけでも気が重いのに。

 武蔵達のアツ島攻略、撤退作戦のことまで考えると・・・。うぅん・・。」

 

阿武隈は完全に頭を抱えてしまっていた。

レ級や金剛に振り回され、いつも痛い目を見ている阿武隈であるが

第1水雷戦隊の旗艦を任されるほどの実力と知識を有しているのだ。

 

そんな彼女が、頭を抱えてしまうほど、今回の作戦は難しいのである。

 

何せ、キス島だけならまだしも、

深海棲艦の防備が厚いアツ島も、

濃霧に紛れて撤退しなくてはならないのだ。

 

片方だけの撤退は出来ない。

なぜなら、深海棲艦に感づかれてしまえば

片方の島に敵が集中してしまうからだ。

 

作戦の流れは、アツ島の深海棲艦に打撃を与え

そのすきにアツ島に揚陸艇を上陸させ、

人員を引き上げる。

同時期に、キス島にも揚陸艇を上陸させ

同じように人員を引き上げなければならない。

 

気候条件、タイミング、そしてこちらの戦力と相手の戦力。

全てが揃っていなければ、成功しない作戦である。

 

(厳しいなぁ・・・)

 

阿武隈はシュミレーションをしながらも

頭を抱え続けていた。

だがしかし、そんな阿武隈に、レ級が特大の爆弾を落とす。

 

「んー、アツ島にいる最大戦力だけでも判れば

 少しは気が楽になるんかな?」

 

「そりゃーねー。

 ボスが判ってるか判ってないかで言えば

 情報があったほうが、数段気が楽になるわよ。」

 

「ほっほう。そんな阿武隈に、私、

 レ級からのプレゼントがあったりします。」

 

レ級は笑顔を見せながら、阿武隈に一枚の手紙を渡していた。

 

「・・・なに、この手紙。」

 

阿武隈はレ級から手紙を受け取ると、表と裏をよーく観察していた。

特に海軍のマークもなく、ただひとつ、表に㊙と書いてるだけの手紙。

 

「開けてみろって。」

 

にやにやしながらレ級は、阿武隈を見つめ続けていた。

阿武隈は、そんなレ級に少しだけ違和感を覚えながらも

ゆっくりと手紙をめくり始める。

 

するとそこには、驚くことなかれ

キス・アツ島の航路図と

その近辺に存在する深海棲艦が、

所狭しと描かれていたのだ。

 

「・・・んなっ!?」

 

阿武隈はそのことを理解すると、レ級と地図を交互に見つめていた。

 

「信憑性はまぁ、そこそこ、かな?

 今朝、姫様から渡されたやつだから、

 大体この地図通りに動いてると思う。」

 

「なななな、なんでこんなものが!?」

 

「ま、ウチの姫は飛行場姫って言うぐらいだからな。

 偵察行為はお手の物よ。」

 

レ級はそういいながら、笑顔で阿武隈を見つめていた。

 

 

飛行場姫が棲みついている、アツ島撤退作戦の旗艦、あぶくま。

その司令室では、飛行場姫と金剛が、最後の作戦の打ち合わせを行っていた。

 

「偵察の結果はこのルートがおすすめというわけですか。

 なーるほどデースね・・・。」

 

「そ。ただ、アツ島近辺に、確かに姫・・・のような反応を感知したわ。

 おそらく、港湾型の姫だとは思う、のだけれどね。」

 

金剛は、歯切れの悪い飛行場姫の言葉に、首を傾げつつ口を開く。

 

「港湾型の姫、デース?それは港湾棲姫ではないのデースか?」

 

「うーん・・・ちょおっと違うのよねぇ・・・。

 港湾棲姫にしては、艤装が大きすぎるのよ。

 それに、こんなところまで出てくる姫じゃないし。」

 

飛行場姫はそう言うと、はぁ、と溜息をついた。

 

「・・・もしかすると、私の知らない改良型の港湾棲姫かもしれないわね。

 そうなると、かなり厄介ねぇ・・・・。」

 

「むう。飛行場姫が知らないとなると、私達なんかはお手上げデースよ。」

 

金剛と飛行場姫は、お互いに肩をすくめつつ、ため息を吐いていた。

なにせ、今回の金剛の任務は、アツ島撤退という、

過去の帝国海軍では行われなかった作戦である。

誰もが、緊張と重圧を感じていた。

 

「それにしても、まさか飛行場姫が味方に来てくれるとは

 思ってもいませんデーシた。・・・というか、沈んでなかったんデスね。」

 

金剛は、自分の拳を見る。

間違いなく、金剛は、自らの拳で、飛行場姫に引導を渡したはずなのである。

 

「あー・・・。あなたの一撃はすごく痛かったわねー。

 ・・・ま、私も意地汚く生き残るために、全力を尽くしたってことよ。

 ま、それにカメラももらえるっていうし・・・・。」

 

最後の「カメラ」に関しては、ぼそり、と喋ったつもりであったが

ばっちりと、金剛の耳に入っていたようで、

 

「・・・飛行場姫ぇ。まさか、今、カメラがもらえると、いいましたカ?」

 

「・・・なんのことかしらね。」

 

飛行場姫は、顔を少しだけ赤くして、金剛から視線をそらしていた。

と、次の瞬間、金剛は飛行場姫の肩に手を回すと、耳元に顔を近づけ

にやり、と悪い笑みを浮かべた。

 

「飛行場姫ぇ・・・カメラのために深海棲艦を裏切ったんデースかー?

 ・・・馬鹿じゃないんデスか?正気なんデースか?」

 

「・・・うるっさいわね。自分でも馬鹿だなぁとは思ってるわよ。

 っていうか近いわよ。離れなさい。」

 

飛行場姫は赤い顔で苦笑しつつも、金剛を突き放していた。

 

「あははは。冗談デースよ!

 それにしても、レ級も貴女も本当非常識デースよねぇ。

 カメラが欲しいために、私達の作戦に参加するなんて。」

 

「ま、さっきもいったけど、自覚はしてるわよ。

 でも、仕方ないじゃない。ほしいものはほしんだから。」

 

飛行場姫は、あっけらかんとした態度で、金剛に言葉を返していた。

金剛は少しだけ、驚きに目を染める。

飛行場姫の姿が、何処か、

カメラが大好きな戦艦レ級と被って見えたのだ。

 

「あはは。飛行場姫もかなりレ級に染まってマスねー。」

 

金剛は笑みをうかべつつ、飛行場姫の肩を叩いていた。

 

(レ級といい、飛行場姫といい、

 深海棲艦とかいつつ、ほとんど艦娘デース・・・。

 こんな深海棲艦が増えれば、きっと戦いはなくなりマースよねぇ!)

 

ちょっとした未来への希望を見つけた金剛は

肩を叩き続け、「ちょ、痛いわよ」と

飛行場姫から小言を受けるが、気にせずに、笑顔を見せていた。

 

「っと、そういえば飛行場姫に聞きたいことがありマース。

 ・・・作戦開始の日時についてなんデスが、あなたの指示を受けて

 今海軍では2月初頭を、明後日を作戦開始日時として動いています。

 飛行場姫の最終判断としては、どうなのですか?」

 

「そうね・・・気象状況、艦載機からみた海上の状況から見るに

 間違いはないわ。キスカ島、アツ島共に、濃霧に包まれるはずよ。

 あとは、港湾型の姫さえどうにかすることができれば

 無事、撤退作戦はなんとかなると思うわ。」

 

「そうでーすか。判りました。情報、感謝デース。」

 

金剛は用がすんだ、とばかりに、司令室を後にしようとする。

飛行場姫は、立ち去ろうとする金剛に向かって、口を開いた。

 

「ま、それに、よ?

 貴方達人間と艦娘だけ逃がすことを少しだけ考えているわ。

 安心しなさい。貴方達は、間違いなく成功する。」

 

「・・・なんデースか?それは。

 囮になるとでも言うのデス?」

 

今後は神妙な顔になりながらも、飛行場姫に口を開いていた。

 

「えぇ、最悪の場合は、ね。

 ・・・なによ金剛、私だって変な事いっている自覚はあるわよ。

 私とて横須賀で暮らしているうちに、

 艦娘と人間に愛着ぐらい持つようになるわよ。

 ま、だから貴方達は、安心して作戦を遂行しなさい。」

 

「わかりました。デモ、飛行場姫、いいデスか?

 我々も全力で行動しますから

 ・・・そうならないように動いてくだサイ。

 せっかく話せる深海棲艦に出会ったのに

 お別れするのは悲しいデースから。」

 

「えぇ、私達も生き残るつもりよ。」

 

「了解デース。お互い、生き残って日本に戻りまショウ」

 

金剛はそう言うと、今度こそ、司令室を後にする。

 

「全く、金剛も過保護なものね。

 ま、ともかくとして、私、飛行場姫は

 人間と艦娘が生き残ることを第一として、動きます。

 たとえそれが、私の死を伴うものだったとしても、ね」

 

誰にも聞こえないように呟いた飛行場姫。

その真意は、誰にも分からない。

 

 

一方その頃。

北の海に、とある深海棲艦が、2隻姿を表していた。

 

「姫様、サムイナー。」

 

「サムイワネー。レ級。」

 

片方は、赤いオーラの戦艦レ級。

そしてもう片方は、港湾型の姫である。

 

「ソレニシテモ姫様、楽シミデスネェ。」

 

「フフ、私モ本気ヨ」

 

彼女たちはそう言うと自身の艤装を展開させる。

レ級は対潜装備、港湾型の姫は、対潜哨戒機である。

 

そして、港湾型の姫は、レ級へと、指示を飛ばすのであった。

 

「レ級。ワタシノ艦載機ニ、ソナーヲノセテオイタカラ、

 海中ニナニカガイレバ直ニツタエルワネ。」

 

「オッケーデス。ソシタラワタシガ、ソコマデ進軍シテ

 爆雷落トシテ漁ヲスレバイイワケデスネ。」

 

2隻の深海棲艦は、そう叫びながらも、

じゅるりとヨダレを垂らしていた。

 

「ソノ通リヨ。サァ。マッテナサイ鮭!」

 

「オッシャー!目指セ!キングサーモン!」

 

・・・カメコのレ級と、飛行場姫の様な存在が

どうやらもう1組、存在するようである。




妄想捗りました。


私の話は頭の中で妄想が捗りまして
レ級達が勝手に動くさまを描いているのですが、

最近、ストーリー進めようとするとこう・・・・。
唐突に頭の中でレ級達の宴会が始まって、どうにもならなくなります。

自由なレ級共に、個人的にぐぬぬしております。

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