カメ子 レ級   作:灯火011

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自身のカメラについて、妄想をふくらませていた戦艦レ級。
そこに遠征から帰還した青葉も合流し、草案を作っていくようです。

そして、その裏で、海軍と陸軍の、共同作戦が動き出すようです。





121 レ級 カメラの更新②

戦艦レ級フラッグシップ改、

そして、遠征から帰還した重巡青葉は

横須賀のレ級の私室で、レ級の新しいカメラについて

お互いに案を出し合っていた。

 

「なるほどなるほど、ローパスフィルターのON、OFFをカメラ内で切り替えるようにしたいんですねー。」

 

青葉はレ級が欲しい機能をまとめた紙を見ながら、笑みをみせつつ、つぶやいていた。

レ級はそんな青葉を見ながら、笑顔で口を開いていた。

 

「そーなんだよー。今の写真でもいいんだけど、拡大した時にもっと解像度が欲しい時があるからさー。どうかな?」

 

「んー、私はおすすめできませんねー。なんせ、デジタルカメラとなると、内部で画像の処理をしますから、確か、間違っていなければ、ですけれども、ローパスフィルター有りと無しで、別々のプログラムを用意しないと駄目だったと思います。そうなると、プログラムでの不具合が心配になりますし、何より機械的な構造がカメラの中に増えますからね。レ級さんのように、海でアグレッシブに写真を撮影するスタイル、つまりは、日常的に衝撃を受け続ける撮影には向いてないと思います。」

 

「なるほどなぁ。確かに考えりゃそうかぁ。うん、やめとくー。」

 

レ級は青葉の説明を聞き、おとなしく、

ローパスフィルターのON,OFF機能を諦めたようである。

 

「ただ、そうなると迷うのが、ローパスフィルターの有り無しだなぁ・・・。青葉的にはどっちがいいと思う?」

 

「そうですねぇ・・・。私は有りのほうがいいと思います。確かに解像度は高くなると聞きますけれど、レ級さんの場合は、高解像度が必要な風景写真、というよりも、動きが多くて、早いピントが必要となる戦場を撮影するっていう感じですからね。撮影スタイルから言っても、そこまでの高解像度は必要ないと思いますよ?さらに言えば、逆に細かい艤装周辺に、偽色という、いわゆるノイズの一種が走りやすくなりますからね。」

 

「偽色・・・?」

 

「えぇ、偽色です。モアレ、とも呼ばれています。ほら、細かいチェック柄とか、髪の毛とかに、本来の色以外の色が写っていること、ありません?」

 

レ級は今まで撮影した写真を思い出していた。

確かに青葉の言うとおり、毎日艦娘を撮影している中で、

数枚、細かい柄や髪の毛といった場所に、

本来の色ではない、虹色のような色が発生していたのだ。

 

「・・・ああっ、そういえば、時々あったな。なんか虹色みたいな感じの。あれが偽色っていうのか!」

 

レ級は大きくうなずきながら、口を開いていた。

そんなレ級を見ながら、青葉はさらに言葉を続ける。

 

「ローパスフィルターを外してしまうと、今以上に偽色が現れる可能性がありますからね。あとは高解像度が欲しいか、、正しい色が欲しいかっていう、レ級さんの好みで選んでいいかと思います。」

 

「なるほどなぁ、それだったら、私は色を取ろうかなー。そんなに拡大することってないし。・・・・よっし!ローパスフィルターはついたままでいいかなぁ。」

 

レ級は自らの作った草案に、赤いペンで線を引く。

そして、目立つように「ローパスフィルター有!」と書き込んでいた。

 

「あ、でだ。青葉。あと相談しようと思ってたのが、レンズについてなんだ。

 せっかくだからカメラ本体より多くレンズを持っておきたくてさ。」

 

「おぉ、それはいいアイデアですね!確かにレ級さん、6台のカメラに6本のレンズでしたしね。一眼レフなのに、レンズ交換をしないというのが、常々もったいないなーとは思ってたんです。」

 

「だよなぁ!私もそう思っててさー。せっかくだから作ってもらおうかなーって。」

 

レ級はそう言うと、カメラの草案の中から、レンズの項目を青葉に見せていた。

青葉はレ級の草案を見ながら少し、思案していたが、

気になるところがあったのか、草案に指を当てつつ、ゆっくりと口を開く。

 

「基本のレンズ構成は今までのと一緒なんですね。16-35,24-70,70-200のF2.8通しのズームレンズに、あ、単焦点は増えてる。24,35,50,85,100のF1.2・・・1.2!?わ、まだ開発もされてないレンズじゃないですか!すごいものをレ級さん発注しようとしてますねぇ・・・!ええっと、それに加えて・・・400mm500mm,600mm,のF2.8レンズぅ!?」

 

青葉は、レ級の出した草案に、驚きを隠せないでいた。

何せ、今まで開発されていないレンズまで草案に出されていたのだ。

思わず、レ級の肩を掴みながら、大声でレ級に叫んでいた。

 

「いやいやいや、レ級さん、これはなかなか無茶だと思いますよ!?望遠でF2.8の大口径レンズは400ミリしかいまのところないですし!っていうか、さらっと書いてありますけど、100-400ミリのF2.8通しレンズっていうのも無茶すぎます!」

 

レ級は、青葉の剣幕に気圧され、引きつった笑みを浮かべていた。

 

(・・・あっれー?私そんなに無茶なこと書いてたの・・?)

 

深海棲艦の、人間の価値観からズレているレ級からしてみれば、

提督から「欲しいカメラとレンズの案出してね」と、

「そうすれば作ってあげるから」と言われたから、

気軽に草案を作っていたのだ。

だが、艦娘として海軍に昔から所属している青葉は違う。

カメラを海軍から依頼するということは、

カメラの開発費を全て海軍から出さなければならない事を、

青葉は知っているのだ。

 

特にデジタルカメラともなれば、機構は複雑になり、

軍用品として耐えうるよう、民生品とは違う、

タフなカメラを新規に、設計を行わなければならない。

時間もかかれば、金もかかるのだ。

 

「レ級さんっ、これ、今、規格に無いレンズ群なんですよ!ッて言うことはですよ?これ、海軍の品なわけで、つまり海軍から多額の開発資金を出さなければならないんです!確かにレンズが欲しいのは判りますけど。もうちょっと現実的な案にしましょうよ!」

 

相変わらず、すさまじい剣幕でレ級に詰め寄る青葉。

というのも、実際、レ級と同じように提督から、

青葉が使う新デジタルカメラについての話があった時には、

デジタルカメラのあまりの値段に、青葉は思わず話を断っていたのだ。

 

ただ、それでもレ級は諦めきれないのか、まくしたてる青葉に対して口を開く。

 

「・・・そうなの?うーん・・・。でも、欲しいし。実際、いくらぐらい、かかるものなの?」

 

「・・・そうですねぇ。カメラに関しては、新規開発で数億円からと言われています。レンズに関しても、数千万から数億円とかいう話ですよ!元々のノウハウがある会社とはいえ、それでもやっぱり、レンズ一本に対して数千万の出資をしなくちゃ駄目だと思います。」

 

数千万から数億。青葉の口から出た言葉に、さすがのレ級も驚愕の表情を浮かべていた。

 

「わぁぉ・・!?お、億までいっちゃうのか・・・。ってことはもしかして、私の持ってるカメラも・・・?」

 

レ級は今現在、自分が使っているカメラに視線を落としていた。

そう、新規開発であれば数億円。民生品でそれなのだ。

もし、それが、レ級がタンカーから奪った、

軍用品でワンオフものだったら、果たしていくらなのか。

 

「えぇ、もちろん、高価です。というより、海軍の新規ネットワークのための設備だったので、すべてが億単位です。レ級さん、深海棲艦でよかったですねー。もしそうじゃなければ、今頃とんでもない額が請求されてたと思いますよ。」

 

そう言い終えると、青葉はにやりと笑みを作る。

さすがのレ級も、苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「・・・うん、なんか海軍に相当迷惑かけてたみたいね・・・。おっけー。今回の新規のカメラ、もうちょっと現実的な案にしてみる。」

 

「判っていただけましたかー! とと、それじゃあレ級さん、私の持ってるレンズのリストとかを後でお渡ししますから、そこからほしいものをチョイスしてみてください!判らないことがあれば、また相談していただいて構いませんので!」

 

「あいよぉ。青葉、悪いなぁ。」

 

「いえいえ!カメラの構成を考えるのも楽しいものですから!と、それじゃあレ級さん、早速カタログをもって来ますね!」

 

青葉はそう言いながら、レ級の私室を後にする。

レ級は片手を挙げ、青葉を見送るのであった。

 

「・・・それにしても私のカメラが数億・・・?うん、うーん?姫様の命令で、タンカーから強奪したとはいえ、さすがに罪悪感が・・・うん。あれだね。私、いろいろな意味で、深海棲艦でよかった。」

 

レ級はそういうと、ファインダーをのぞき込み、

一度だけシャッターを押し込むと、

シャッターの気持ちの良い音が響く。

 

カシャリ

 

「・・・億のシャッター音って思うと、なんかまた違う、かなぁ・・?」

 

レ級はシャッターの音と、手から伝わる振動を感じると

改めて、自身のカメラを見つめるのであった。

 

 

 

レ級と青葉がカメラ談義をしていたその頃、

横須賀鎮守府に設置されている大本営で、

ひとつの重要な作戦が決まろうとしていた。

 

「・・・陸軍、この作戦書は真か?」

 

海軍の将校は、陸軍から提出された作戦書を見ながら、

陸軍の将校を見つめていた。

 

「えぇ、真です。我々陸軍は、全面的に海軍の支援を要請致します。

 先の会見で明らかになった、 貴君達が所持している、

 深海棲艦に対しても、協力を願いたい。」

 

陸軍の将校は、落ち着いた口調で事実だけを述べていた。

それを受けて、海軍の将校は、ため息をつきながらも

作戦書を熟読していた。

 

そして、あらかた作戦書を読み終えた海軍の将校は、重い口を開いた。

 

「なるほど、理解しました。戦艦レ級、飛行場姫の協力を取り付けたいわけですか。

 努力はしましょう。・・・だが、勘違いはしてもらっては困りますよ。

 人類に対しては友好的だが、彼女らは決して軍に従うわけではない。」

 

「承知の上だ。だが、やってもらわねばならん。海軍よ。

 我が帝国陸軍、5200名、いや、約8000名の命がかかっておるのだ。」

 

「・・・もちろんです。我々も協力は惜しまない。

 艦娘以外にも、軍艦を出す。

 だがそうなると、貴君らとの密な協力も必要となるが・・・。」

 

「もちろんだ。この期に及んで陸軍だの海軍だの言うつもりは無い。」

 

陸軍の将校は、海軍の将校の目を見つめたまま、間髪入れずに返答を返していた。

 

「判りました。陸軍将校殿。

 では、改めて作戦の内容を確認いたします。

 作戦名【アツ島、キス島撤退作戦】。

 アツ島約3000名、キス島約5000名、

 ・・・2島合計、約8000を超える陸軍兵を、

 誰一人残さず、本土へと帰還させるための大規模作戦です。

 ・・・異論はありませんか?」

 

大本営は沈黙をもって是の意思を表する。

 

「・・・異論は無いようですね。それでは、我々は案を煮詰めましょう。 その間に、横須賀鎮守府の提督殿には、レ級と姫の説得をお願いすることとします。」

 

今ここに、海軍・陸軍との共同作戦を行うことが決定したのである。

 




妄想捗りました。深海棲艦と人類の共同作戦、なるか。

レ級のもとのカメラは1DXでございます。
カメラ更新の話を書き始めたら新しい1DXが発表されて、
何その偶然とびっくりしたのはココだけの話。

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