そこに遠征から帰還した青葉も合流し、草案を作っていくようです。
そして、その裏で、海軍と陸軍の、共同作戦が動き出すようです。
戦艦レ級フラッグシップ改、
そして、遠征から帰還した重巡青葉は
横須賀のレ級の私室で、レ級の新しいカメラについて
お互いに案を出し合っていた。
「なるほどなるほど、ローパスフィルターのON、OFFをカメラ内で切り替えるようにしたいんですねー。」
青葉はレ級が欲しい機能をまとめた紙を見ながら、笑みをみせつつ、つぶやいていた。
レ級はそんな青葉を見ながら、笑顔で口を開いていた。
「そーなんだよー。今の写真でもいいんだけど、拡大した時にもっと解像度が欲しい時があるからさー。どうかな?」
「んー、私はおすすめできませんねー。なんせ、デジタルカメラとなると、内部で画像の処理をしますから、確か、間違っていなければ、ですけれども、ローパスフィルター有りと無しで、別々のプログラムを用意しないと駄目だったと思います。そうなると、プログラムでの不具合が心配になりますし、何より機械的な構造がカメラの中に増えますからね。レ級さんのように、海でアグレッシブに写真を撮影するスタイル、つまりは、日常的に衝撃を受け続ける撮影には向いてないと思います。」
「なるほどなぁ。確かに考えりゃそうかぁ。うん、やめとくー。」
レ級は青葉の説明を聞き、おとなしく、
ローパスフィルターのON,OFF機能を諦めたようである。
「ただ、そうなると迷うのが、ローパスフィルターの有り無しだなぁ・・・。青葉的にはどっちがいいと思う?」
「そうですねぇ・・・。私は有りのほうがいいと思います。確かに解像度は高くなると聞きますけれど、レ級さんの場合は、高解像度が必要な風景写真、というよりも、動きが多くて、早いピントが必要となる戦場を撮影するっていう感じですからね。撮影スタイルから言っても、そこまでの高解像度は必要ないと思いますよ?さらに言えば、逆に細かい艤装周辺に、偽色という、いわゆるノイズの一種が走りやすくなりますからね。」
「偽色・・・?」
「えぇ、偽色です。モアレ、とも呼ばれています。ほら、細かいチェック柄とか、髪の毛とかに、本来の色以外の色が写っていること、ありません?」
レ級は今まで撮影した写真を思い出していた。
確かに青葉の言うとおり、毎日艦娘を撮影している中で、
数枚、細かい柄や髪の毛といった場所に、
本来の色ではない、虹色のような色が発生していたのだ。
「・・・ああっ、そういえば、時々あったな。なんか虹色みたいな感じの。あれが偽色っていうのか!」
レ級は大きくうなずきながら、口を開いていた。
そんなレ級を見ながら、青葉はさらに言葉を続ける。
「ローパスフィルターを外してしまうと、今以上に偽色が現れる可能性がありますからね。あとは高解像度が欲しいか、、正しい色が欲しいかっていう、レ級さんの好みで選んでいいかと思います。」
「なるほどなぁ、それだったら、私は色を取ろうかなー。そんなに拡大することってないし。・・・・よっし!ローパスフィルターはついたままでいいかなぁ。」
レ級は自らの作った草案に、赤いペンで線を引く。
そして、目立つように「ローパスフィルター有!」と書き込んでいた。
「あ、でだ。青葉。あと相談しようと思ってたのが、レンズについてなんだ。
せっかくだからカメラ本体より多くレンズを持っておきたくてさ。」
「おぉ、それはいいアイデアですね!確かにレ級さん、6台のカメラに6本のレンズでしたしね。一眼レフなのに、レンズ交換をしないというのが、常々もったいないなーとは思ってたんです。」
「だよなぁ!私もそう思っててさー。せっかくだから作ってもらおうかなーって。」
レ級はそう言うと、カメラの草案の中から、レンズの項目を青葉に見せていた。
青葉はレ級の草案を見ながら少し、思案していたが、
気になるところがあったのか、草案に指を当てつつ、ゆっくりと口を開く。
「基本のレンズ構成は今までのと一緒なんですね。16-35,24-70,70-200のF2.8通しのズームレンズに、あ、単焦点は増えてる。24,35,50,85,100のF1.2・・・1.2!?わ、まだ開発もされてないレンズじゃないですか!すごいものをレ級さん発注しようとしてますねぇ・・・!ええっと、それに加えて・・・400mm500mm,600mm,のF2.8レンズぅ!?」
青葉は、レ級の出した草案に、驚きを隠せないでいた。
何せ、今まで開発されていないレンズまで草案に出されていたのだ。
思わず、レ級の肩を掴みながら、大声でレ級に叫んでいた。
「いやいやいや、レ級さん、これはなかなか無茶だと思いますよ!?望遠でF2.8の大口径レンズは400ミリしかいまのところないですし!っていうか、さらっと書いてありますけど、100-400ミリのF2.8通しレンズっていうのも無茶すぎます!」
レ級は、青葉の剣幕に気圧され、引きつった笑みを浮かべていた。
(・・・あっれー?私そんなに無茶なこと書いてたの・・?)
深海棲艦の、人間の価値観からズレているレ級からしてみれば、
提督から「欲しいカメラとレンズの案出してね」と、
「そうすれば作ってあげるから」と言われたから、
気軽に草案を作っていたのだ。
だが、艦娘として海軍に昔から所属している青葉は違う。
カメラを海軍から依頼するということは、
カメラの開発費を全て海軍から出さなければならない事を、
青葉は知っているのだ。
特にデジタルカメラともなれば、機構は複雑になり、
軍用品として耐えうるよう、民生品とは違う、
タフなカメラを新規に、設計を行わなければならない。
時間もかかれば、金もかかるのだ。
「レ級さんっ、これ、今、規格に無いレンズ群なんですよ!ッて言うことはですよ?これ、海軍の品なわけで、つまり海軍から多額の開発資金を出さなければならないんです!確かにレンズが欲しいのは判りますけど。もうちょっと現実的な案にしましょうよ!」
相変わらず、すさまじい剣幕でレ級に詰め寄る青葉。
というのも、実際、レ級と同じように提督から、
青葉が使う新デジタルカメラについての話があった時には、
デジタルカメラのあまりの値段に、青葉は思わず話を断っていたのだ。
ただ、それでもレ級は諦めきれないのか、まくしたてる青葉に対して口を開く。
「・・・そうなの?うーん・・・。でも、欲しいし。実際、いくらぐらい、かかるものなの?」
「・・・そうですねぇ。カメラに関しては、新規開発で数億円からと言われています。レンズに関しても、数千万から数億円とかいう話ですよ!元々のノウハウがある会社とはいえ、それでもやっぱり、レンズ一本に対して数千万の出資をしなくちゃ駄目だと思います。」
数千万から数億。青葉の口から出た言葉に、さすがのレ級も驚愕の表情を浮かべていた。
「わぁぉ・・!?お、億までいっちゃうのか・・・。ってことはもしかして、私の持ってるカメラも・・・?」
レ級は今現在、自分が使っているカメラに視線を落としていた。
そう、新規開発であれば数億円。民生品でそれなのだ。
もし、それが、レ級がタンカーから奪った、
軍用品でワンオフものだったら、果たしていくらなのか。
「えぇ、もちろん、高価です。というより、海軍の新規ネットワークのための設備だったので、すべてが億単位です。レ級さん、深海棲艦でよかったですねー。もしそうじゃなければ、今頃とんでもない額が請求されてたと思いますよ。」
そう言い終えると、青葉はにやりと笑みを作る。
さすがのレ級も、苦笑いを浮かべるしかなかった。
「・・・うん、なんか海軍に相当迷惑かけてたみたいね・・・。おっけー。今回の新規のカメラ、もうちょっと現実的な案にしてみる。」
「判っていただけましたかー! とと、それじゃあレ級さん、私の持ってるレンズのリストとかを後でお渡ししますから、そこからほしいものをチョイスしてみてください!判らないことがあれば、また相談していただいて構いませんので!」
「あいよぉ。青葉、悪いなぁ。」
「いえいえ!カメラの構成を考えるのも楽しいものですから!と、それじゃあレ級さん、早速カタログをもって来ますね!」
青葉はそう言いながら、レ級の私室を後にする。
レ級は片手を挙げ、青葉を見送るのであった。
「・・・それにしても私のカメラが数億・・・?うん、うーん?姫様の命令で、タンカーから強奪したとはいえ、さすがに罪悪感が・・・うん。あれだね。私、いろいろな意味で、深海棲艦でよかった。」
レ級はそういうと、ファインダーをのぞき込み、
一度だけシャッターを押し込むと、
シャッターの気持ちの良い音が響く。
カシャリ
「・・・億のシャッター音って思うと、なんかまた違う、かなぁ・・?」
レ級はシャッターの音と、手から伝わる振動を感じると
改めて、自身のカメラを見つめるのであった。
◆
レ級と青葉がカメラ談義をしていたその頃、
横須賀鎮守府に設置されている大本営で、
ひとつの重要な作戦が決まろうとしていた。
「・・・陸軍、この作戦書は真か?」
海軍の将校は、陸軍から提出された作戦書を見ながら、
陸軍の将校を見つめていた。
「えぇ、真です。我々陸軍は、全面的に海軍の支援を要請致します。
先の会見で明らかになった、 貴君達が所持している、
深海棲艦に対しても、協力を願いたい。」
陸軍の将校は、落ち着いた口調で事実だけを述べていた。
それを受けて、海軍の将校は、ため息をつきながらも
作戦書を熟読していた。
そして、あらかた作戦書を読み終えた海軍の将校は、重い口を開いた。
「なるほど、理解しました。戦艦レ級、飛行場姫の協力を取り付けたいわけですか。
努力はしましょう。・・・だが、勘違いはしてもらっては困りますよ。
人類に対しては友好的だが、彼女らは決して軍に従うわけではない。」
「承知の上だ。だが、やってもらわねばならん。海軍よ。
我が帝国陸軍、5200名、いや、約8000名の命がかかっておるのだ。」
「・・・もちろんです。我々も協力は惜しまない。
艦娘以外にも、軍艦を出す。
だがそうなると、貴君らとの密な協力も必要となるが・・・。」
「もちろんだ。この期に及んで陸軍だの海軍だの言うつもりは無い。」
陸軍の将校は、海軍の将校の目を見つめたまま、間髪入れずに返答を返していた。
「判りました。陸軍将校殿。
では、改めて作戦の内容を確認いたします。
作戦名【アツ島、キス島撤退作戦】。
アツ島約3000名、キス島約5000名、
・・・2島合計、約8000を超える陸軍兵を、
誰一人残さず、本土へと帰還させるための大規模作戦です。
・・・異論はありませんか?」
大本営は沈黙をもって是の意思を表する。
「・・・異論は無いようですね。それでは、我々は案を煮詰めましょう。 その間に、横須賀鎮守府の提督殿には、レ級と姫の説得をお願いすることとします。」
今ここに、海軍・陸軍との共同作戦を行うことが決定したのである。
妄想捗りました。深海棲艦と人類の共同作戦、なるか。
レ級のもとのカメラは1DXでございます。
カメラ更新の話を書き始めたら新しい1DXが発表されて、
何その偶然とびっくりしたのはココだけの話。