カメ子 レ級   作:灯火011

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描き納め間に合わず、描き初め。
あけました。おめでとうございます。

戦時中、深海棲艦との戦いの中でも繰り広げられるコミックマーケット。
人間の情熱と希望を、レ級は肌で感じるようです。


115 有明海域 E-4

『「ただいまより、コミックマーケット○○を開催します」』

 

そんなアナウンスに合わせて、国際展示場全体から、大きな拍手が鳴り響く。

もちろん、サークル秋雲の3隻も、サークル秋雲に並ぶ先行列の人も同様に

笑顔を浮かべながら、拍手を続けていた。

 

---そして、次々と各サークルが配布を始めるさなか、

サークル秋雲亭も、配布をついに開始させる。

 

「新刊5冊に、既刊を各1冊づつお願いします!」

 

「はぁい!それじゃあお兄さん、合計で10冊ね!

 ええと、既刊が2500円に、新刊5000円で7500円よろしく!」

 

「8000円でお願いします。」

 

「はーい。それじゃあ5百円のお返しね。

 レ級、商品を渡してあげて。」

 

「おう。有難うございます。またよろしくお願いします。」

 

「こちらこそありがとう!いやぁ、新しい売り子さん、美人ですねー。

 レ級でしたっけ。最近情報公開されたのに、凄い完成度!」

 

「でしょー?あとでコスプレエリアにも行くんで、またよろしくね!

次の方はー!?」

 

「新刊5冊お願いします。」

 

「はーい。それじゃあ5000円です。ありがとね!」

 

「有難うございます。またよろしくお願いします!」

 

「こちらこそ!可愛いね!がんばってくださいね!」

 

「・・・おっ、おう!ありがとう!」

 

一般参加者の対応をする、第六駆逐隊のコスプレをした秋雲、

そして物品を手渡す、いつもの姿のレ級。

そして、

 

「最後尾はこちらでーす!

 あっ、お兄さん、そこは前列!

 サークル秋雲の最後尾はこっちでーす!」

 

「そこっ、ちゃんと守ってー!3列で!もっとつめてー!

 同人誌一枚分でも詰めてくれたらもっと並べまーす!」

 

「並ばないと艦載機で爆撃しまーす!

 嫌だったらちゃんとならびーやー!」

 

コミケスタッフに混じって、列の整理をする、

龍驤コスプレの夕張の姿があった。

 

(うわー、龍驤のコスプレの人かっわいいなー。 

 スタッフさんかな?)

(いや、スタッフ証つけてないからサークル秋雲さんのレイヤーさんじゃないかな)

(なんだお前知らないの?あれがサークル秋雲さんのイラストレーターの一人だよ。

 美人、絵もうまい、コスプレも可愛い。サークルの人気の原因のひとつだよ)

 

「そこっ!話もいいけれどちゃんと前を見てくださーい! 

 前を見て航行しないと艦首切断してしまいますよー!」

 

(かっわいいなぁ・・・)

 

一般参加者はそんな夕張たちを見ながら、ほんわかと癒やされていた。

サークル秋雲亭。今回のコミケでも、大人気である。

 

 

(すっげぇ・・・飛ぶように売れる・・・。

 すんげぇなぁ、秋雲と夕張って・・・・)

 

次々に消えていく在庫の山を尻目に見ながら

レ級は次々と同人誌を一般参加者に配布していく。

夕張に言われたとおり、渡すときに必ず

 

「有難うございます!またよろしくお願いします!」

 

と、参加者の顔を見て笑顔でハキハキと喋ると

一般参加者は笑顔で「がんばってね!」と声をかけてくれる。

 

(不思議な空間だなぁ。みんなルールを守ってどんどん機敏に動いていく。

 人間って、不思議な生き物だなぁ・・・。)

 

配布開始から未だ10分程度であるが、

既に300冊を超える本が捌けていた。

そして、レ級は次々に笑顔で本を更に配布していく。

 

「すっげー!完成度高いっすね!」

 

「あはは・・・ありがとうございます!

またよろしくお願いします!」

 

「次回も楽しみにしています!では!」

 

「レ級!次新刊5の既刊1冊全部!」

 

「あいよぉ!」

 

レ級は笑顔のまま、更に袋詰をする。

最初のうちは手慣れていなかったのか、少し戸惑っていたが

そこは深海棲艦の最高峰、レ級である。

わずか数分で袋詰と手渡すコツを覚えていたのだ。

しかも金銭のやり取りは秋雲が手早くやってくれているため

レ級は秋雲の言われたとおりに、袋詰し、手渡し、笑顔で送り出す。

その間わずか、一人に付き10秒とかからぬ早業である。

 

「またよろしくおねがいします!」

 

レ級は既に数十回と繰り返した挨拶を更に更にと繰り返していく。

戦艦の馬力、耐久力、持久力。全てを総動員した動きだ。

おそらく、金剛との演習や、写真撮影以上に精密に動いている。

 

(ふおおお!もう100人はいくぞ・・!

 ってまだ1時間たってねぇー!しかも行列なくなってねぇ!?

 はんぱねーよー!人間の情熱っ!コミックマーケットぉお!?)

 

レ級は内心で叫びながらも、変わらぬペースで同人誌をさばく。

少し額に汗を浮かべながら、笑顔で、一般参加者にどんどん同人誌をさばく。

 

(((この売り子さん、かっわいいなぁ・・・・!)))

 

同時に、確実に男性、女性関係なく一般参加者の心を笑顔で打ち抜いていくレ級。

自覚ないままに、確実にサークル秋雲亭と、

未だ数の少ない、ジャンル:深海棲艦のファンを増やしていくのであった。

 

夕張とスタッフ・・・、正確には龍驤コスプレの1人と1隻は、

列の最後尾についたまま、すこしばかり雑談をしていた。

 

「サークル秋雲亭、最後尾はこちらでーす!

 このまな板のサンドイッチ龍驤が目印でーす!」

 

最後尾、と書かれた看板を体の前と後ろに貼りだした夕張は

そう叫びながら、確実に列を形成させつつ

スタッフとともに、列をどんどんと送り出していく。

 

「いやぁ、それにしてもすごいですね、サークル秋雲亭。

 去年より列長くなってるじゃないですか。」

 

「あはは・・・。嬉しい限りなんですけれど・・・。

 これじゃあ、確実に、物がなくなっちゃいますね・・・。」

 

「あら、今回は何部持ち込んだんですか?

 ・・・ってそこー!横入りしなーい!

 単縦陣の中に入ったら衝突事故起こしますよー!

 確実に後ろについて隊列を守ってくださーい!」

 

さすがのスタッフ、少し雑談をしながらも、列の監視はバッチリである。

 

「流石ですねー。

 っと、今回は新刊8000に既刊が2000です。

 でも、この様子だと2時過ぎぐらいには完売かなぁ・・・。 

 はーい!こちらの列はサークル秋雲亭でーす!

 最後尾はコチラでーす!」

 

「おお、増えてる!8000かぁ、すごいなぁ。

 それでもこの行列じゃなくなりますね。

 次、1万とか用意したらいかがです?

 はーい!ここサークル秋雲亭の最後尾でーす!

 ダブル龍驤が目印でーす!並ぶときは確実に隊列を守ってくださーい!」

 

龍驤コスの2人と目印に、どんどんと更に列を作っていく一般参加者。

そんな参加者達をどんどんとまとめて行く夕張とスタッフ。

 

「1万かぁ・・・そこまでいくと仕事に支障が出ちゃうんですよね・・・・。

 うーん、どうしようかなぁ。」

 

「あぁ・・・ま、仕事に支障が出るならやめておいたほうが懸命ですねー。

 そういえば、今回随分かわいい子が売り子してましたけど、お知り合いですか?」

 

スタッフは夕張に小声で質問を投げかけていた。

夕張は苦笑を浮かべながらも、スタッフに言葉を返す。

 

「ん、えぇ。深海棲艦のコスプレをしたいっていう子がいたんで

 コミケとかのイベントに出たことはないって子を

 連れて来ちゃいました。売り物のこと言ったら恥ずかしがってましたけどね。」

 

「あはは、そういえば提督と深海棲艦が情事する漫画でしたっけ。

 なかなか酷なことをしますねー。

 でも、よくコミケ初参加で売り子を引き受けてくれましたね。」

 

「ここまで来たらやる!って意気込んでくれましたから。

 本当助かってます。おっと・・!そこ、もうちょっと横にずれてくださーい!

 広がっていると、通行人と接触して第四艦隊事件がおきちゃいまーす!」 

 

夕張とスタッフは、雑談を続けながらも更に更にと列を作り、さばいていく。

コミケ常連の壁サークル秋雲亭の夕張と、コミケスタッフは、さすがの練度であった。

 

 

コミケ開始から早2時間。サークル秋雲の行列は変わらずであったが

既に在庫の半分以上ははけてしまっていた。

 

「レ級、そろそろ売り子いいぜー?あとは私が捌いておくから。

 約束通り写真撮ってきなよ!っと、とりあえず新刊5冊な!」

 

タイミングを見計らって、秋雲がレ級に声をかける。

レ級は少し驚いた顔をしながら、秋雲に言葉を返していた。

 

「新刊になります。またよろしくお願いします!

 ・・・いいのか?まだまだ在庫あるけど。」

 

「いいっていいって。むしろここまで手伝ってもらったんだ。

 そろそろコミケを自由に見てきて欲しいんだ。

 いつもレ級、横須賀鎮守府ぐらいしか見れてねーだろ?

 時々はこういうイベントの空気、楽しんで来いって。」

 

レ級の顔が一気に笑顔になる。

そして、秋雲の手を握りながら、口を開いていた。

 

「おお!ありがとう秋雲っ!それじゃあ早速いってくるぜ!」

 

「うん、いってらっしゃい!カメラわすれんなよー!」

 

レ級は勢い良く席を立つと、カメラバックを片手に、

コミケの会場内へと繰り出していた。

 

そんなレ級の後ろ姿を見送りながら、秋雲は慣れた手つきでブースに座る。

そして、笑顔を見せながら、一般参加者の対応を始めるのであった。

 

「レ級はちょっと休憩にいきましたので、

 代わりにこの第六駆逐隊、電がお相手するのです!

 さっ、次の方、いかがします?」

 

 

レ級はコミケの人混みの中を、カメラを片手に堂々と闊歩していた。

見事な色白な肌、銀色の髪、そして真っ赤な瞳。

更に、背中から伸びる巨大な尾っぽを、ゆらゆらと揺らめかせている。

 

「おおー・・・すっげー。

 艦娘の漫画に、グッズ・・・。あっ、これ金剛の漫画だ・・・!

 ほぉおお!すっげ・・・!」

 

サークルを次々見て回るレ級。

そして、サークルの出品物を見るたびに、感嘆の声を上げていた。

 

サークル秋雲亭のように、漫画を置くサークル。

公式の資料のような、綺麗なカラーのイラストを置いているサークル。

ラフ絵ではあるが、魅力的な絵をおいてあるサークル。

 

そして、一風変わった艦娘の名前の湯呑みやタンブラー、

缶バッチやコップ、そして小説本と、レ級を飽きさせることがない。

 

「すっげー・・本当になんでもあるなぁ・・・。

 そういえば、夕張たちがここはコミケの中でも、艦娘とか深海棲艦の物が

 固まってる場所って言ってたっけ。」

 

コミックマーケットでは、ジャンル分けというものがなされている。

それは、一般参加者やサークルが混雑することを避けることが目的であり

同じジャンルは、東ホールの1、こっちのジャンルは東ホールの2,

などなどにわけられているのだ。

 

更に細かく言えば、そこから細かいジャンル分け

キャラ、イラスト本、漫画本、小説、物販などなどにわかれている。

 

そして、レ級はとあるサークルの前で足を止めていた。

 

「・・・・」

 

無言で見つめるサークル。

そこは、深海棲艦の本を扱うサークルである。

そしてさらに言うと、なんと、レ級のコスプレをした女性が売り子をしていたのだ。

 

(・・・Me?)

 

思わず英語で思考をしてしまうレ級。

当然だ。なにせ、自分を再現したコスプレをされているのだ。

髪型、髪色、肌色、そして服までも。

流石にしっぽは再現できていないが、それにしたって完成度はかなり高い。

さらに言えば、レ級フラ改は若干ロリである。

それに対して、コスプレのレ級は、なかなかの豊満ボディだ。

 

「・・・うわぁーお・・・・。まじかー。」

 

レ級は諦めたようにため息を吐きつつ、そのサークルに近づいていくと

他の一般参加者と同じように、一冊本を取る。

 

「これくださーい。」

 

「あっ、はーい!500円になります。

 レ級のコスプレされてるんですね!」

 

「う、うん!でもおねーさんもかなり完成度の高いレ級ですね・・・。

 っていうか、豊満ボディが羨ましい・・・・。」

 

「あは、ありがとう。でも、あなたもものすごい綺麗じゃないですか。

 しかも尻尾まで再現されて!うらやましいです!

 あ、すいません。こちらが新刊です!」

 

レ級のコスプレの女性は、レ級に新刊を手渡していた。

レ級は満足そうな笑みを浮かべながら、口を開く。

 

「あははっ、ありがとう。っと、新刊ありがとうございます、またー!」

 

「はいっ、ありがとうございました。またよろしくお願いします!」

 

お互いに手を振りながらも、レ級はサークルを離れていた。

本の内容は深海棲艦のイラスト本。しかもレ級がメインだ。

ぺらぺら、と本を軽く流し読むと、レ級本人ですらやったことのないポーズや

戦闘中の姿、さらに言えば、他の深海棲艦との絡みなどなどの絵が描かれていた。

 

(私こんなことしたことねーって・・・

 絵とはいっても、これだけのことを想像できる

 人間の情熱ってすげぇなー・・・)

 

そんなことを思いながら、レ級は周りをぐるりと見る。

するとレ級の目には、混雑の中並び、移動し、

購入する人間の情熱をしっかりと目に焼き付けていた。

 

(・・・すっげー。人間ってすっげー。

 っていうか、今、人間って私達深海棲艦と戦ってんだよなぁ?

 シーレーンを潰されかけてるのに、この活気は・・・)

 

レ級は人間の想像力と行動力に感心しながら、

それでもイベントを楽しみながら、コミケの会場を闊歩していくのであった。

 

 

レ級はしばらくコミケのサークルスペースを闊歩していたが

そろそろ人間のコスプレを撮影しようと、コスプレのスペースへと足を運んでいた。

 

「すっげー・・・。本当に艦娘みてーだ・・・。」

 

だが、レ級はカメラを構えることすら忘れ、

ただただ人間のコスプレに見入ってしまっていた。

 

というのも、本物かと見間違えるほどの金剛4姉妹。赤城と加賀の一航戦、

瑞鶴、翔鶴の姉妹、天龍、龍田の姉妹などなど、艤装の有り無しはあるが

全てにおいて本物か、それ以上の出来なのである。

 

「うおー・・・!艤装すっげぇ。」

 

吹雪のコスプレなんかは、艤装が完璧に作られていた。

そんな吹雪のコスプレをまとった人間がポーズを取ると、

レ級は思わず、演習での砲撃シーンを思い出してしまうほどの出来だ。

 

(すっげー、ってしか言えねーわこれー。

 なるほど、確かにこれなら・・・夕張と秋雲、驚くわなぁ・・・)

 

レ級はカメラを首から下げつつも、写真を撮らずにコスプレ会場を回遊する。

いつもは、艦娘を引っ掻き回し、自らの雰囲気に引き釣りこむレ級にとって、

珍しいことではあるが、コミケの雰囲気に飲まれていたのだ。

 

そして、更にコミケの空気は、レ級に牙をむく。

 

---すいません、そこのレ級さん。

 写真を撮らせてもよろしいでしょうか?---

 

「・・・私?えーっと、えーっと・・・いいです、よ?」

 

急に声をかけられ、カメラを向けられたレ級は

二つ返事で、己の写真を取ることを許可してしまったのだ。

 

さて、一旦状況を整理しよう。

このレ級フラ改。実は相当目立っていた。

というのも、まず風貌。事情を知らぬ一般参加者が見れば、

姿形が写真で公開された深海棲艦に非常によく似ていて、中の女性も含めて非常に完成度が高い。

更に、装備している服装から艤装にかけては、完全再現とも言っていいレベルだ。

 

そして更に言うと、サークル秋雲亭で売り子をしていたことが、

いい意味でも、悪い意味でも知名度を上げていた。

元々美人の作家さんが自ら売り子とコスプレをしているサークルで有名であり

同人誌が完売次第、すぐにコスプレ会場に移動をするサービス精神満載のサークル秋雲亭。

そんなところの新人売り子。マークされるのは仕方がないことなのである。

 

と、いうことを念頭に置くと、レ級が写真撮影について、一人のカメコに許可を出すということは

他のカメコの餌食になってしまうことを、意味していた。

 

---すいません、次こっちもお願いします!---

---こっちにもポーズお願いしますー!---

 

レ級が気づいた時には既に時遅し。

レ級の周りには、レ級を囲むように、カメコの輪が出来上がっていたのだ。

しかも全周を囲まれてしまったために、全く身動きがとれなくなってしまっていた。

 

(な。なんぞこれー!?)

 

フラッシュの渦の中、レ級は一人心のなかで焦りつつも叫んでいた。

まさかここまで撮影されるとは、一欠片も思っていなかったのである。

だが、そこは深海棲艦の中でもそこそこ常識があり

割と頼まれたことに対して断り切れないレ級さんである。

 

---こっちむいてくださーい!---

---レ級っぽく睨んでー!ポーズくださーい!---

 

(レ級っぽく睨むってなーにー!?

 っていうかポーズってなんだよぉ!?)

 

心のなかではかなり焦っているものの

表面上は焦りを出さず、なんとか要望に答えてしまっていた。

 

しゃがみながら、上目遣いのようにカメラのレンズを睨むレ級。

敬礼を行いつつ、笑みを見せるレ級。

拳を突き出しながら、尻尾をカメラに近づけるレ級。

ペタンと座りながら、フードを取り、無表情のまま上目遣いをするレ級。

 

何種類、何十種類とポーズを考え、そして実行し

そして目線を360度に配りながら、カメコ達に撮影されていくレ級。

 

(ふおおお!?な、なんとかこれでいいのかっ・・・?

 私なんかよりも完成度の高い仮装いっぱいいるのにっ・・・!

 っていうか、カメラの数へってねえ・・・どころか増えてるっ!?)

 

焦るレ級、止まらぬフラッシュ、増えるカメコ。

しかも、レ級は焦っているためか、若干の涙目である。

そんなレ級を撮影するために、更にカメコが増える。そして更に焦って、更に涙目。

悪夢のような悪循環が、レ級に襲いかかっていた。

 

---次こっちにおねがしまーす!---

---こっちにもポーズお願いします!---

 

「は、はいー!」

 

レ級は無駄に高い性能を駆使し、まだ撮影できてないであろうカメコに視線を向ける。

そんな細やかなサービス精神を駆使し、更にポーズを取る。

 

両手をカメラにむかって向け、口を開けて「がおー」というようなポーズ。

そして、腰に手を当てると、背筋を伸ばし、首をひねり、体のラインを出す。

更に四つん這いになり、女豹のポーズのまま上目遣い、などなど。

 

レ級が撮影する側だった時に、艦娘達にお願いしたポーズや

レ級自身が撮りたいなぁ。と思い浮かぶポーズを、

戦艦に由来する、高い身体能力を駆使しながら繰り出していた。

 

そして、そのまま円が無くならないまま約1時間、とあるカメコが、大声を出していた。

 

---すいません、レイヤーさんさっきからずーっと撮影されているので

 そろそろ休憩に入りまーす!カウント5!4!3!2!1!しゅうーりょー!---

 

一人のカメコがそう言うと、今までの円撮影がウソのように、人が一気に散っていった。

そして、心配そうな顔をしたカメコが一人、レ級に声をかけていた。

 

「レイヤーさん、大丈夫ですか?

 ずーっと撮影されてましたけど・・・・」

 

「・・・ありがとうございます・・・いつ終わればいいのかわからなくって・・・」

 

レ級は腰を下ろしたまま、息を整えながらカメコに言葉を返していた。

 

「あぁー・・・。もしかして初参加ですか?

 レイヤーさんすごい可愛くて出来がいいコスプレなんで、今みたいに強制的に切らないと

 ずーっと撮影されちゃいますよ。」

 

「そ、そうなんですか。ありがとうございます。」

 

「あはは、ま、頑張ってください。せっかく来たんですし、お互いに楽しみましょう。

 それでは、また。」

 

「ありがとうございます・・・!」

 

延々とレ級は写真を撮られ続けていたのであるが、

ようやく、レ級に救いの手が伸ばされ、ようやく撮影から開放されたのだ。

 

(ぱねぇ・・・ぱねぇ・・・。っていうか人間のカメコさん、マジ助かった。まじで・・・!

 しっかしなんだこのイベント・・・。艦娘に砲撃受けてたほうがまだ気が楽だわ・・・!)

 

レ級は内心で安堵しながらも、コミケに戦慄を覚えるのであった。

 




妄想捗りました。コミケってカオスですが楽しいですよね。

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