カメ子 レ級   作:灯火011

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新橋泊地のホテルにINしたレ級達。
3人1部屋で、ゆったりと過ごすようです。


114 有明海域  E-3 前哨戦

 

ホテルのチェックインを無事終えて、夕張、秋雲、レ級の面々は

無事に新橋泊地の部屋に到着する。

そして、早速レ級が、いの一番に部屋の中に突進していた。

 

「おぉ、すっげぇなー!鎮守府の宿舎より豪勢じゃん!」

 

「そりゃあそうよ。客人を迎える施設だもん。

 秋雲、レ級。明日の準備をして、寝る準備しましょ?」

 

「はいよー!よっしゃ、早速カメラのメンテナンスだー!。」

 

「わかったよ、夕張。それじゃーあたしは先に風呂はいっちゃうわー」

 

ホテルの部屋はふっかふかのベットが3つ。そして大きな窓に、姿見まで完備してあり、

更に、冷蔵庫の中には酒まで完備してあるという、一日過ごす分には、素晴らしい部屋である。

 

「いんやぁー、それにしても、疲れたぁー!」

 

レ級はカメラバックを床に置くと、大きく伸びをしていた。

数日前から徹夜をし、今日は朝から荷物を積み込み

自分の衣装と、カメラを運搬していたレ級である。

疲れるのも仕方がなかった。

 

そして、伸びを終えたレ級は、カメラバックから

カメラを2台ほど取り出していた。

今回、レ級がコミックマーケットに際し持ってきたレンズは

人物撮影ということで、潔く単焦点を2本だけ。

少し広角で撮るための35ミリと、

人物のバストアップよりもアップの写真を取るための85ミリのレンズである。

 

そして、そんなレ級を横目に、荷物を解き終わった夕張は、

ベットに腰掛けながらも、レ級のカメラに興味津々である。

 

「わぁ、レ級。すごいカメラ持ってきたわね。

 ちょっと見せてもらっても良い?」

 

「んぉ?いつも演習を撮ってるカメラだぜ?別にいつもとかわんねーけど。

 ま、いいぜ、なかなか見せる機会ないし。」

 

レ級はそう言うと、笑顔で夕張にカメラを渡す。

夕張は、少し緊張した面持ちでカメラを受け取っていた。

 

なにせこのカメラは、もともとが帝国海軍が威信をかけて作ったカメラであり

今ではレ級フラッグシップ改の宝物とも言えるカメラである。

落としたり、壊したりしたら、間違いなく切腹ものである。

 

「わ・・・結構重いのね。」

 

夕張はつぶやきながら、レ級のカメラを観察していく。

ほぼ真四角とも言える本体には、多数のボタンとダイヤルが配置され

カメラ素人である夕張には、何のことかはまったく不明だ。

巨大な水晶球のようなレンズには、おそらくピント合わせのためであろう数字と

真っ赤なラインが一本入っている。

 

「ボタンとダイヤルがいっぱいね・・・どう使うのか全然わからないわ。

 ねぇ、レ級。一回シャッター切ってもいいかしら?」

 

「あはは、だろーなー。だって、夕張カメラ詳しくないもんな。

 私も使いこなせてねーもん。ま、とりあえず電源はそこのレバーな。」

 

夕張はレ級に言われたとおりに、電源のレバーを爪ではねる。

すると、カメラの右上面にある液晶画面に、数字の羅列が表示される。

 

「何か液晶に数字がいっぱい出たけど・・・これで電源は入ったのかしら?」

 

「そうそう。それで電源入ったんだ。

 数字の意味とかはいろいろあるんだけど、ここで説明すると長くなるからな。

 とりあえず、それでシャッターは切れるぜ。シャッターのボタンは右上面のソレな」

 

夕張は言われたとおりに、シャッターのレリーズを人差し指で押し込んでいた。

 

カシャン!

 

カメラからシャッターが切れる音とともに、

夕張の手に、確かなシャッターの感触が伝わっていた。

 

「わぁ・・・!なにこの感触。何かくせになりそう!」

 

夕張はカメラを手に持ちながら、思わず笑顔で叫んでいた。

 

「あはは、夕張、良い反応するなぁ!いいだろ。

 私もそのシャッターの感触で、カメラに惚れちゃったからねー。

 どうだい、夕張。せっかくだし、カメラはじめてみるか?」

 

「んー・・・そうねぇ。私は写真!っていうよりも、絵を書きたいからパス。」

 

「そっかー。ま、確かに夕張の絵の腕すげーしなぁ。

 そうしたら、夕張。お互いもっと腕上げていこうぜ。」

 

「えぇ!そうね。あ、ただ、時々はカメラ触らせてもらってもいいかしら。

 時々はちょっと、その、シャッターの感触に触れたいっていうか。」

 

夕張は恥ずかしそうに顔を赤らめながら、レ級に口を開いていた。

レ級はそんな夕張を見ながら、笑顔で口を開く。

 

「いいぜ。もちろん。」

 

「あは、ありがとう。レ級!」

 

夕張はそう言うと、カメラをレ級に差し出していた。

レ級はカメラを受け取りながら、夕張の顔を見つめながら、口を開く。

 

「そういえば夕張。明日売り子って言ってたけど、私何すりゃいいんだ?」

 

「あぁ、そういえばあまり説明してなかったわね。

 えーと、まぁ、ブースの中で、本を手渡してもらえればいいわよ。

 お金の勘定とか、列の整理とかは私たちに任せておいて。」

 

「・・・渡すだけでいいのか?」

 

「えぇ。ま、渡すときに、ありがとうございます。またよろしくお願いします。って

 一言付け加えてもらえればいいわね。あとはいつものレ級で大丈夫よ。」

 

「そう?そのぐらいなら任せてくれ!

 っていうか、そうなると、本を渡すのは私だけ、か?」

 

「んー、そうなるかしらね。列は私が管理するし、お金は秋雲が管理するわ。」

 

「でもよぉ?夕張、それってさぁ・・・」

 

レ級はそこで一旦言葉を区切ると、少し赤い顔を夕張に向けていた。

 

「私の情事本、私が手渡すってことになるんだよな?

 それ、結構恥ずかしいんだけど。」

 

「あはは、何をいってるのよレ級!あなたが主役の本なんだから、

 あなたが売り子をすれば、みんな喜ぶに決まってるじゃない。

 ここまで来たんだから、少しぐらいの恥ずかしさは我慢しなさいよ。」

 

「うへぇ・・・。まぁ、ここまで来たしなー。

 OK,恥ずかしいのはちょっと置いといて、売り子がんばる。」

 

レ級はそう言いながら、カメラをカバンにしまい込むと、

頬を赤くさせたまま、ベットへと潜り込んでいた。

 

「あら、レ級、もう寝ちゃうの?お風呂はどうする?」

 

「ンー、先にねるー。

 流石にもう眠いって。朝風呂にでもはいるさー」

 

「あら、そう。まー、引っ張り回しちゃったしね。

 私は秋雲と明日の打ち合わせをしてから寝るから、ゆっくり休んでね。」

 

「んー。」

 

レ級はベッドから手だけを出すと、夕張の言葉に答えていた。

そして、その直後、レ級の規則正しい寝息がホテルの部屋に静かに響くのであった。

 

 

「いやぁー!ホテルの風呂はいいねぇ。」

 

秋雲は体から湯気を立ち上らせながら、

体をバスタオルで包んだ姿で部屋へと戻ってきていた。

 

「あら、お帰りなさい。秋雲。

 ちょっと明日の打ち合わせしない?」

 

「おっ、そうだなー。っと、その前にビールを一本っと・・・」

 

秋雲はそういいながら、ホテルの冷蔵庫を開け、中から缶ビールを取り出すと

プシュっといい音をさせながら、缶のプルタブを引き上げる。

そして腰に手を上げながら、勢い良く缶を口につけた。

 

ゴッゴッゴッゴッ

 

秋雲の喉からビールを流し込むいい音が聞こえ、次の瞬間

 

「っくぅー!コレだよコレ!風呂あがりの酒はいいねぇ!」

 

「秋雲ー。おっさんみたいよ?」

 

「いーのいーの。夕張さんしかいないんだから。

 他の駆逐艦たちがいたらできないけどねー。」

 

秋雲は缶ビールをひらひらと揺らしながら、ベットに腰を下ろすと

一口ビールに口をつけつつ、レ級が眠るベットを指差していた。

 

「あれ?レ級はもう寝ちゃった?」

 

「えぇ、2徹は辛かったみたい。」

 

「そっかー、ま、コミケ初参加だしな。

 それにしても、今更だけど不思議だよなー。

 敵である深海棲艦と一緒に、コミケに出れるなんて。

 しかも、話を聞くと、みんなから恐れられるレ級の最上級個体だぜ?」

 

秋雲はビールをぐいぐいと煽りながらも、言葉を続ける。

 

「そんなのが、写真を撮りまくって、なんかしらねーけど鎮守府に住み着いて。

 しかも深海棲艦の姫も2隻ついてきてる。レ級って本当何者なんだろーなー。」

 

「そう言われるとそうね。飛行場姫と北方棲姫も横須賀の街に馴染んでるし、

 敵意も何もないしね。まっ、その御蔭で、最高の売り子さんをゲットできたわけだけどね。」

 

「あはは、確かに。レ級本でレ級が売り子をするなんて、他のところじゃできないしな!

 くくくっ。私達の本を買いに来る同好の士の顔が楽しみだぜ・・・!」

 

「悪い顔になってるわよ、秋雲。

 ま、でも、確かに楽しみね。あ、あと提案なんだけど、明日昼回ったら

 レ級にコスプレ撮らせに行かせない?もともとそういう約束だし。」

 

夕張はにやりと笑みを浮かべていた。

 

「んー?別にいいけど。私達だけでも捌けるしな。

 でも、1人で歩かせたら危なくないかな?」

 

秋雲は不思議そうな顔を夕張に向ける。

それもそうである。レ級は初のコミケだ。

しかも、レ級は本人であるため、造形、衣装、全てにおいて、

コスプレというレベルを超えているのだ。

そんなのがキョロキョロと、コミケ会場を歩いていたらどうなるか。

 

「間違いなく危ないでしょうね。

 注目の的になるでしょうし、写真を撮りにコスプレのエリアにいこうものなら

 間違いなくレ級を撮影するために列や円ができること間違いなしよ。」

 

間違いなく、大混乱である。

しかも練兵ならば捌き方を知っているだろうが、

コミケにおいて、もう一度言うがレ級は初心者もいいところである。

 

「いや、夕張さん。やっぱりさぁ、

 流石にレ級を1人で歩かせるのはどうかと思うぜー?」

 

秋雲は、コミケを一人で歩くレ級を想像して、

夕張の案を止めに入っていた。

大混乱を起こし、そして、もしかすると本人とバレル可能性すらあるのだ。

 

「うーん、別にそうならないと思うけどなぁ。

 レ級も常識は弁えてるし、撮影も数こなしてるし、

 街にも繰り出してるから、全然大丈夫だと思うわよ?」

 

「んんー・・・夕張さんがそこまで言うなら、それでいいけど。」

 

「大丈夫よ。何かあったら私達がすぐに向かえばいいんだし。

 なにより、レ級って監視の名目で、

 いっつも横須賀の街にいつも閉じ込められてるでしょう?

 レ級にも純粋に、コミケを楽しんで欲しいからね。

 下手に拘束しておくよりも、自由に歩かせたほうがいいのよ。」

 

「なるほどー。夕張さんも考えてるんだなぁ。

 私はついうっかり、面白いことをおこしそうだから、

 レ級を野放しにするのかとおもってたわ。」

 

秋雲は笑みを浮かべつつ、夕張を見る。

すると、夕張は少しバツの悪そうな笑みを浮かべながら、口を開いていた。

 

「・・・実は半分ぐらい、何か起こってもいいかなーって思ってる。」

 

「どうせそんなこったろうと思ったよ!ま、確かにレ級、面白いこと起こしそうだしな!」

 

 

あはは、と夕張と秋雲は笑い合う。

コミックマーケット前日、新橋泊地での一幕であった。

 

 

----そして、同好の士、運命の日。

コミックマーケットは、深海棲艦との戦闘状態である今日も、

何事もなかったように、開幕を迎える。

 

有明海域 メインイベント、E-4。開幕である。




妄想捗りました。
次回、ようやくメインイベントです。

年越し前になんとか書き納めしたいところ。

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