カメ子 レ級   作:灯火011

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ついにやってきてしまった大規模イベント。
物量が物量なために、サークル秋雲亭は、前日搬入を行うようです。

誤字修正いたしました。金金。


113 有明海域  E-2

先の衣装の話し合いから数日。

ついに、運命の年末・・・冬のコミックサーケットが翌日に迫っていた。

そんなイベントの前日、サークル秋雲の面々は、鎮守府に無事届いた製本を検品し、

早速、前日搬入のため、鎮守府の車を借りだし、会場へと向かっていた。

 

「いんやぁ・・・秋雲、夕張。8000部の検品て鬼のよう・・・だなぁ。

 毎回こんなことしてるのかよぉ・・・」

 

レ級は夕張の運転する車の後部座席で、

思いっきり椅子を倒しながら、疲れた顔でつぶやいていた。

朝まで秋雲と夕張と共に、同人誌を検品していたレ級は、文字通り徹夜明けで疲れていたのだ。

そんなレ級を見ながら、秋雲と夕張は笑い声をあげていた。

 

「あははっ、何を言ってるの。今回3人だからすごく早かったのよ?」

 

「そうなんだぜぇ、レ級。いつもならもう2,3日は徹夜してるからな!あははっ」

 

「まじかよぉ・・・・。っていうか、お前ら本気で何者だよぉ・・・。

 なんで私より寝てないのに、お前らそんなに元気なんだよぉ。」

 

レ級は未だ倒した椅子に寄りかかりながらつぶやいていた。

なお、レ級は徹夜2日目、秋雲と夕張は徹夜4日めである。

普通であれば秋雲と夕張の体力が、レ級フラッグシップ改よりも先に尽きるはずであるのだが、

いま現状、レ級がつらそうな顔で椅子を倒し、秋雲と夕張はなんと普通に

隈一つ無い顔で、会話をしながら車の運転を交代で行っているのだ。

 

「えっ、コミケの前ってこんなもんじゃない?ねぇ。秋雲。」

 

夕張は笑顔で運転しながらも、口を開いていた。

そして、同意するように、秋雲も続けて、レ級を見ながら口を開く。

 

「そうだなぁ。月月火水木金金よりは全然ましだぜ?レ級。

 っていうかレ級さぁ、お前レ級フラッグシップ改とかいってなかったっけ?

 なんで私達、普通の艦娘よりも、体力ないんだよー。」

 

レ級はそんな2隻の言葉に、上半身を起こすと

呆れ顔で2隻を見ながら口を開いていた。

 

「いや、確かに私はフラッグシップ改だけど・・・。

 でもな?無理なことってあるんだぜ?」

 

「えー」

「ええー」

 

「えーじゃないって。無理なものは無理なんだ。

 4日徹夜とか深海棲艦でもできる奴いねーって・・・。」

 

「「あんなに強いのに、納得いかない」」

 

「いや、持続力はあんまり・・・うん、まぁいいや・・・」

 

レ級は呆れた顔で、秋雲を夕張を見つめると、ひとつ大きく伸びをしながら、

椅子の背もたれの位置を直し、改めて椅子に座り直していた。

そして、不思議そうな顔をしながら、秋雲と夕張に質問を投げかけていた。

 

「そういえば夕張と秋雲ぉ。今どこに向かってるんだ?

 近場とか言ってたけど。」

 

夕張は、運転を続けたまま、レ級の問に答えていた。

 

「えぇとね。有明。明日私達が本を配布する場所よ。」

 

レ級は首をかしげながら、更に問を投げる。

 

「ほぉ・・・?あれ、そこってどこだっけ?

 でも明日だよ?なんで今日、向かってるんだ?」

 

夕張は運転を続けつつも、笑顔になりながらレ級に話しかける。

 

「場所は国際展示場ね。通称ビックサイトよ。

 まぁ。本番は明日だけどね。なにせ部数が多いから事前に搬入するの。」

 

「あぁ、なるほどな。・・・確かに8千部あるもんなぁ。

 それで全部、無理やりこの車に詰め込んだわけね・・・・」

 

レ級はそう言いながら、トランクに朝、3隻で検品しつつ、

車に積みこんだ大量の段ボール箱を横目に見ていた。

そんなレ級を見ながら、今度は秋雲がレ級に口を開いていた。

 

「そーいうことだぜぇ。8千部もあるとな本当設営も大変だからな!

 ってことでレ級。今日と明日、よろしく頼んだぜ?

 8000部となると、そこそこ時間かかるから、3人で設営と配布しなきゃいけないからな!

 レ級初めてだからかもしれないけど、驚くぞー。トイレに行く暇もないんだから!」

 

「なるほどなぁ・・・。

 そっか、私も一緒に、トイレも行く暇もなく、

 8000部の設営の手伝いと、配布をするのかー。」

 

レ級はなるほど、といったように手を合わせていた。

そして、車の前席の、夕張と秋雲の間に顔をぐいっと入れると

ボソリと一言、つぶやいていた。

 

「つまりそれは、私、配布の終わりの時間によっては

 コスプレの写真撮れないって奴では?」

 

「「あっ」」

 

「あっ、じゃねーよ。」

 

レ級はため息をつくと、後部座席へと改めて座り直していた。

そして、腕を組むと、ゆっくりと口を開く。

 

「秋雲ぉ、夕張ぃ・・・。頼むぜー。私に相談なく決めないでくれよぉ。」

 

レ級の言葉に、秋雲と夕張は体を固くしつつ、青い顔をしながら、レ級を見つめる。

そして、レ級はそんな2隻を見ると、やれやれと、首を振りながら言葉を続けていた。

 

「・・・・ま、今回は私も聞くの忘れてたし、お互い様ってことで、いいけどさ。」

 

「「レ級さんの優しさに感謝いたします。本当っ!」」

 

夕張と秋雲は青い顔から一転、笑顔になりながら、車の前席で大声を上げるのであった。

 

 

レ級達を載せた車は、無事、国際展示場へと到着。

そして、搬入のために、東ホールのサークル設置場所の前まで、車を進めていた。

 

「うぉおお!!!すげぇー!秋雲っ、夕張!

 国際展示場ってでっけーなー!」

 

レ級は車から降りると、両手を大きく上げながら、叫んでいた。

そんなレ級に、当然の如く多数の注目が集まる。

 

そして更に、注目を集める事態が起きる。

 

「こら、レ級。迷惑になるから、大声をあげないの。

 さっ、早く搬入終わらせましょう。」

 

「そうだぜー。他の業者とかサークルもいるからな。

 さっさとおろしちまおう。」

 

夕張と秋雲が、私服姿で車から降りてきたのである。

はたから見れば、色白の少女(レ級)、そして健康的な肌色の少女(秋雲)と女性(夕張)だ。

全員顔立ちが整い、そしてなおかつ、

普段海で戦っているからか、無駄な贅肉など一切ない体である。

つまり、美人の3人の女性が車から降りて、設営を行っているのだ。

 

・・・コミックマーケットの壁際で。

 

コミックマーケットの壁際。通称:壁サークル。

最大手のサークルの証明であり、行列ができてもいいように壁際に配置されいているサークルだ。

更に言えば、この壁サークルのひとつであるサークル秋雲は、美人の2人が作者で

自ら艦娘のコスプレをしながら売り子をするということで有名なのである。

今日は更にそこに、なぞの色白の少女・・・なぜか尻尾が付いているが少女が、お手伝いをしているのだ。

 

「レ級!そっちのダンボールは右において。うん、そう。」

 

「ふおお・・・搬入もなかなか大変だなぁ・・・。」

 

夕張は自ら荷物を運びながら、レ級に指示を飛ばす。

レ級は器用に手と尾っぽてダンボールを運搬しながら、おとなしく夕張の指示に従っていた。

 

「秋雲、ビニール袋あったっけ?」

 

「大丈夫、夕張さん、もってきてるよ!

 片付け用のカート分と、あとポスターぐらいでいいんだよな?」

 

「それで大丈夫。あ、そうだ、今のうちにチラシまとめておきましょ。」

 

「へーい。」

 

秋雲はテーブルの上においてあったチラシを、

同じくテーブルの上においてあった大きな袋に詰め込んでいた。

コミケではサークル向けに、チラシが多数配られるため、

前日搬入の時に片付けてしまうのが楽なのだ。

 

「夕張ぃー。こっちのダンボールはどこにおけばいいー?」

 

レ級はそんな秋雲を尻目に、ダンボールを黙々と運び続けていた。

 

「そうね・・・それは壁際でお願い。」

 

「へーい。どんどん私を使っていいぜー。深海棲艦パワー!」

 

レ級はそう言いながら、尾っぽと腕で合計4つのダンボールを持つと

見事に夕張に言われたとおり、壁際にダンボールを置いていく。

 

『あそこ・・・サークル秋雲さんかぁ。いつみても可愛いなぁ。

 しかもあの搬入数・・・いつか追いつきたいな』

 

『いつも見ない子いるけど、誰かしら?

 明日、売り子するのかなぁ・・・。でも、見てると癒やされるなー。」 

 

そして、そんなサークル秋雲を見ながら、周りの同好の士達はすこしばかり

癒やされるのであった。

 

 

レ級達は無事に事前搬入を終え、国際展示場を後にしていた。

 

「レ級、助かったわぁー。いつも2人で時間ぎりぎりなんだよねー」

 

「本当。レ級がいたおかげで無事に事前搬入が終えられたわ。

 ありがとう。あとは明日の売り子もお願いねー」

 

レ級は車の後部座席で、椅子をおもいっきり倒し

首を後ろに傾けたまま、片手を上げると、ゆっくりと口を開く。

 

「うーい・・・。疲れたわぁ。

 徹夜明けであの運搬は、無いって・・・・眠ぃ」

 

8000冊の同人誌の入ったダンボールを運んだレ級は、くったくたである。

もちろん夕張と秋雲も運んだのではあるが、レ級はその数倍を一人で運んでいた。

戦艦レ級の、戦艦である馬力の無駄な有効活用である。

 

体力を使い果たしたレ級を見ながら、夕張は笑顔で口を開いていた。

 

「あはは、大丈夫。今日はゆっくり寝れるから。」

 

レ級は片手を上げた姿勢のまま、夕張に言葉を返す。

 

「んぉ・・・?そうなの?

 でも、鎮守府にはこっからじゃ結構かかかるんじゃねーの?」

 

「大丈夫だよレ級ぅ!私たちは毎年この時期にここにきてんだぜ?

 ホテルの一つぐらい確保してあるに決まってんじゃん」

 

「・・・そうなのっ!?」

 

レ級はそう叫ぶと、上半身を勢い良く起こしていた。

すると、秋雲がいい笑顔で、レ級にサムズアップしていた。

 

「朝0700に起きたって余裕でイベントに間に合うんだ。最高だろ?」

 

「最高だそれ・・・なんだよ0700って、がっつり寝れんじゃん!」

 

レ級はテンションを上げながら、笑顔で叫んでいた。

 

「ふふ、イベントの時だけの特権よ。

 それじゃあ、いざホテルへゆかん、ってね。」

 

夕張はそう言うと、アクセルを踏み込み、車を加速させる。

目的地は新橋泊地。最終海域直前の、憩いの場である。

 




妄想捗りました。

大規模イベント、足を運んでいただいた方。有難うございます。
またいずれ、機会があればしっかりとした本を描きます。

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