カメ子 レ級   作:灯火011

3 / 55
「戦艦レ級」
深海棲艦と呼ばれる存在の中でも特に上位種に位置する艦種である。

そんな彼女の、日常である。

(一人称、直しました)


3 第二回 水も滴るいい女

0415、鎮守府正面海域。

 

戦艦レ級(カメコ)が夜の闇の中を

今回は85ミリの単焦点、

F1,2の明るいレンズを装備したカメラを構えながら、進軍していた。

 

海上は真っ暗なため、無線傍受を行いながら、艦娘を探していく。

 

≪こちら提督、了解した。領海内だが油断せずにな。

 最近はレ級の目撃例もある。

 護衛対象であるタンカーを守護しつつ、警戒を厳とせよ≫

 

レ級の無線機が、提督と艦娘の無線を傍受した。

 

「オ、領海ってコとは、あと1時間ぐらいノ場所だナ

 タンカーが通レル場所ってコトは・・・・・」

 

燃料や物資を運ぶタンカーとなると、航路も限られてくる。

撮影のためだけに、このレ級、そこらへんの知識を相当蓄えていた。

記憶と知識を頼りに、少しずつ航路を修正していくレ級。

 

 

その表情たるや、おもちゃを与えられた子供の如く

すっごい楽しそうな笑顔を浮かべていた。

なにせ、この時間帯の艦娘は、遠征や出撃で疲れている。

良い雰囲気というか、色気の様なゾクゾクする表情が撮れるのだ。

 

(今日は誰カなぁ?駆逐艦か軽巡洋艦ダトは思ウんだけどな)

 

わくわくしながら、恐らく艦娘がいるであろう航路に近づいていく

と、同時に、レ級のレーダーが

艦娘の護衛対象と思われる大型船の反応を捉えていた。

更にレーダーからの反応を細かく解析していくと、艦娘5人と思われる反応もある。

 

「オ!キタキタ!流石ワタシだ。」

 

レ級は、欲しいおもちゃを見つけた子供の如く

速力を上げ、撮影をするために更に艦娘に接近していく。

そして、レ級の無線が、更に艦娘の無線を傍受していく。

 

≪---電探に感あり。第六駆逐隊はそのまま護衛を継続。

 正体を確認してきます≫

 

どうやら相手の電探が、こちらに反応したらしい。

レ級からすれば、願ったりかなったりである。

レーダー上でも、ひとつの反応がこちらに接近してくることが判る。

相手のうち一人が、がわざわざこちらに出向いてくるらしい。

 

「そうかそうカ。5人全員の写真が撮れないのハ残念だけど

 1対1の撮影もまた乙だよナァ!」

 

そんなことを呟きながら、レ級はその艦娘にどんどん接近していく。

艦娘の反応も、どんどん近付いて行く。

 

そしてサーチライトの有効距離まで近づいたところで

 

「艦娘。ミィつけた。」

 

と叫ぶと共に、レ級は、闇夜に隠れていたはずの阿武隈を、

寸分たがわず、サーチライトで発見していた。

このレ級、高性能である。

 

---------------------------------------------------------------

「0420 周囲に敵影なし。電探にも反応は無いわね」

 

本日の任務は海上護衛。タンカーを無事日本の横須賀まで送り届けることだ。

第六駆逐隊と、阿武隈は、その任務をあと少しというところで終えようとしていた。

 

≪こちら提督、了解した。領海内だが油断せずにな。

 最近はレ級の目撃例もある。警戒を厳とせよ≫

 

「了解。提督。」

 

鎮守府まではあと1時間の航路。そして、あと数十分で夜明けだ。

旗艦である阿武隈は、少し安心しながら護衛を続けていた。

 

(護衛もあともう少しね。

 ・・・・第六駆逐隊も遠征に慣れてきたようだし

 そろそろ攻略部隊に出しても良いころかもね)

 

電が揃う前の第六駆逐隊の面々は、演習中にレ級に遭遇した経験があり

当時は、遭遇したレ級のオーラとも呼べるものに

精神をかなり擦り減らされ、おびえてしまっていた。

 

それ故に、しばらくは遠征で空気に慣らさせ、

阿武隈の判断で改めて攻略部隊に配備していく

という方針をとっていたのである。

 

事実、戦場の空気に慣れてきたのか

今回の護衛任務でも、駆逐級2、軽巡級1と交戦したものの

タンカーに被害なく護衛を続けていた。

 

「あと1時間程度で鎮守府に着くわ。第六駆逐隊、改めて警戒を厳とせよ」

 

「「「「了解!」」」」

 

「うんうん、良い返事ね。あともう少し、頼んだわよ」

 

「「「「はい!(なのです!)」」」」

 

第六駆逐隊の面々は、タンカーを中心として輪形陣をとる。

 

(いい感じね・・・・ん?)

 

その時、阿武隈の電探に、反応があった。

 

(何かしら。今まで反応なんて無かったのに)

 

「電探に感あり。第六駆逐隊はそのまま護衛を継続。

 正体を確認してきます」

 

阿武隈は、その反応を確認するために、第六駆逐隊には護衛を続けるよう命じ

少し航路を外れて、電探の反応のある場所に向かっていった。

 

(反応は1隻・・・軽巡級までなら奇襲でいけるかな)

 

徐々に近づいていく電探の反応。

酸素魚雷と単装砲をすぐにでも撃てるように準備をし

姿勢を低くしながら、奇襲に備えて体制を整えていった。

 

と、同時に、視界が一気に光で満たされ、阿武隈の動きが止まる。

 

「うわっ・・・?何っ!?」

 

 

「艦娘。ミィつけた。」

 

にやりと笑いながら

大光量のサーチライトを大量に背負った、戦艦レ級がそこに立っていた。

 

「嘘っ・・・・!?冗談きっつ・・・!」

 

レ級の姿を視認するとともに、すぐに戦闘に入る阿武隈。

単装砲が火を噴き、魚雷発射管から魚雷が投下されていく。

その動きは流石、第1水雷戦隊の旗艦である。

 

-----------------------------------------------------------------

 

(今日ハ阿武隈!最近撮れて無かっタから、これは捗ル!)

 

早速、阿武隈の砲撃と雷撃をかわしていきながら、

カメラを構え、ファインダーをのぞいて構図を整えていく。

 

(あぁ、良い表情ダ。そうそう、徹夜明けの艦娘の顔はなんとも・・・)

 

このレ級、やっぱり残念である。

阿武隈からの至近弾を受けながらも、ファインダーを通して阿武隈を見続けるレ級。

 

そして、構図が決まったのか、レ級の一眼レフのシャッターが下ろされる。

 

カッシャカッシャカッシャカッシャカッシャ

 

昼間のように1秒に10枚とはいかないものの、それでも高速でシャッターが切られていく。

 

サーチライトで照らしつつ絞りを思いっきり開いて、背景をぶっ飛ばす。

顔にピントが合い、色っぽい表情を収めつつ更に接近していく。

近づくに従って、阿武隈の顔に、疲れに加えて絶望と恐怖が浮かぶ

 

(良い。その顔貰っタ。)

 

阿武隈に最接近し、その顔をアップで撮影していく。

 

「なんで当たらないのよっ」

 

そんな阿武隈の叫びを聞きながら、後ろに回りこみ

追従するように首を動かした阿武隈を更に撮影していく。

 

(ウン、どの艦娘も見返り美人ダ!)

 

艦娘の焦りの表情、そして、焦りと疲れ、恐怖と絶望の中でも

こちらに砲撃してくるその根性。

余すところなく、レ級は撮影を続けていく。

 

ある程度撮影をしたところで、レ級はふと

(水しぶき、ほしいなぁ)と思い立った。

だが、思い出してほしい、

このレ級、武装が一切ないのだ。

カメラなどの装備を海面に投げれば、水しぶきを作れるが

カメラを投げると言う事は、このレ級にとっては轟沈のようなもの。

(どうしようか。諦メたくないナァ)

ファインダーから目を離さず、砲撃を掻い潜りつつ

どうすれば水しぶきを作れるのかと、レ級は思考を続ける。

 

ファインダー上には、こちらに砲撃を行う阿武隈が映っていた。

 

(お・・・?そうカ!砲弾、あるジャン!)

 

次の瞬間、何を思ったかこのレ級

あろうことか阿武隈の発射した砲弾を素手でつかんだのである。

そして、その勢いのまま、体を一回転させ

砲弾を阿武隈の近くに投げ返した。

 

【自分が撃てなイなら、相手の砲弾を投げ返して

 着弾の水しぶきを作ればいいじゃない!】

 

思い立った考えを、実行に移したのである。

14センチの単装砲の弾丸にレ級の腕力が加わり

阿武隈の足元に、戦艦の砲撃の様な水しぶきを作っていた。

 

(これは、キタ!シャッターチャンス!)

 

レ級のテンションは最高潮だが、阿武隈はたまったものではない。

何せ、戦艦並みの至近弾をレ級から貰っているのだ。

そして、その精度、発射速度は、自分の単装砲に匹敵する。

戦艦レ級の強大さを、身にしみて体験していた。

 

「きゃっ!嘘でしょ!?」

 

足元に着弾し、全身がズブ濡れになる阿武隈。

更には着弾の圧力で、装甲が損傷、魚雷発射管が潰れていた。

有り程に言えば、中破判定である。

その原因、足元に着弾した弾が実は自分の放った弾丸、

レ級に投げ返されたものなどとは、全く思わない。

 

そして、レ級はそんな阿武隈の姿を、食い入るように撮影していた。

 

(濡れスケ濡れスケ濡れスケ濡れスケ濡れスケ濡れスケ・・・・否っ

 肌蹴て濡れスケ肌蹴て濡れスケ肌蹴て濡れスケ肌蹴て濡れスケ)

 

呪文のように頭の中で繰り返しながら、シャッターを連続で切っていく。

何せ、思うような水しぶきを作れた上に

水も滴る良い女が構図の中心に居るのだ。

艦娘の写真を撮りたいレ級に、この状況下で興奮を抑えろと言う方が無茶である。

 

(艦娘、サいコー!)

 

レ級、魂の叫びである。

 

そして、この阿武隈撮影会は、レ級の気持ちが落ち着く0530まで続けられた。

レ級、阿武隈共に直接的な被弾なし。ただ、阿武隈は至近弾のみで大きな損傷を受けていた。

 

1時間以上、レ級に嬲られ続けた阿武隈は、トラウマを植え付けられ、

疲労困憊になりつつも、なんとか鎮守府に帰還することとなる。

 

----------------------------------------------------------------------

 

戦艦レ級は、阿武隈撮影の後、補給のために一旦拠点に帰還していた。

燃料を呑みながら、作業台でカメラのメンテナンス中である。

 

「いヤぁ。大量、大量」

 

そして、片手間で手元のタブレットの阿武隈写真を見返していた。

 

夜戦に挑む彼女の表情といい、発砲の態勢、こちらを睨むその眼光

そして、後半に行くに従って、疲労困憊していき恐怖が浮かぶ表情

どれをとっても魅力的な一枚である。

 

「イイね。やっぱり、艦娘は、水が似会ウ。

 あー、次はどの艦娘が撮れルかなぁ・・・」

 

レ級はある一枚の写真をマジマジと見ながら、一人呟く。

その写真はというと

 

【水しぶきの中で、中破しつつも濡れスケになりながら、

 必死に砲撃してくる阿武隈の写真】

 

 

この渾身の一枚の出来を見ながら、

にやにやと素晴らしい笑顔を見せるレ級であった。

 

 

 

 

「戦艦レ級」

深海棲艦と呼ばれる存在の中でも特に上位種に位置する艦種である。

 

数多くの艦娘を沈め、提督を苦しめている最悪の敵と言って良い。

なにせ、開幕の航空戦、そのあとの魚雷、そして砲雷撃戦、対潜戦闘と

全てにおいて高水準で纏まっている、戦船である・・・ハズ。




細かく書いていこうとすると、難しいですね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。