カメ子 レ級   作:灯火011

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提督との事情もほどほどに、自室で寝ようとしていたカメコさん。
隣の部屋から、なにやらごそごそと、音がしてきたようです。



大規模イベント編
111 レ級、イベント海域「有明」へ


今日も提督と酒をのみつつ、大和達と会話をしていたレ級。

ただし、今日は早々と話を切り上げ、飛行場姫と共に、

横須賀鎮守府の自室へと戻っていた。

というのも、最近、提督のレ級を見る目が

尋常じゃなくやばいと気がついたのだ。

 

「最近提督の視線がやばいんだけども。

 どう思います?飛行場姫様。」

 

隣を歩いていた飛行場姫は、レ級に顔を向けると

苦笑を浮かべながら口を開いていた。

 

「まぁ、そりゃあ、ねぇ。

 最近、提督と夜もお盛んなんでしょう?レ級。

 大和達艦娘達と同じぐらい、執務室に出入りしてるじゃない。」

 

「んー、盛んっていうわけではないですよ。

 提督殿、案外ヘタレですからねー。

 未だに接吻以外は無しですよ。行くたびに提督の抱きまくら代わりです。

 あと、演習で撮影した艦娘の写真を見せるぐらいですかねぇ・・・」

 

レ級は飛行場費の言葉に、手を横に振りながら答えていた。

 

「あら、そうだったのね。

 うーん、そうねぇ。そうすると・・・」

 

飛行場姫は顎に手を当てながら少し考える。

 

(提督の視線、ねぇ。確かにレ級を見る目線には、熱はこもっているわね。

 ただ、何かしら、少しどす黒い感情が見えるような・・・)

 

飛行場姫は、はっとすると、レ級に向かって

ニヤリと口角を上げながら、言葉を続けていた。

 

「もしかしたら、レ級。提督に依存されているかもしれないわね。」

 

「・・・なんでそうなるんです?」

 

「いえね、この鎮守府でのレ級の立場を考えると、そうなるのよ。

 判らないのであれば、一緒に考えてみましょうか?

 まず、艦娘。一見綺麗な娘たちだけど、一回海に出たら戦姫になってその動きは鬼神よ。

 しかも、戦闘が終わったら、傷だらけの姿でほめてほめてと寄ってくる。

 そんな彼女たちと付き合っていたら、普通の人間であったら耐えられないでしょうね。」

 

「ふーむ・・・」

 

「そして、私含めた深海棲艦に関して言えば、常に人類への恨みつらみを吐くばかりでしょう?

 私も鹵獲されてるとはいえ、ソロモンでは随分と恨みをぶつけさせてもらったからねぇ。」

 

飛行場姫は言葉を区切ると、レ級の目を見据える。

 

「つまり、表裏がある艦娘でもなく、深海棲艦とも違って、

 裏表なし、戦わない、恨まない、普通に接する艦。それがあなたよ、レ級。

 しかも、あなた、提督とほどよく戦術の話とかもしてるじゃない?

 普通に話せて、戦術も十分に話せる女性。

 提督からすれば、身近に居ないタイプなのよねぇ。」

 

「はぁ・・・つまり、身近に居ないタイプの艦が急に出てきたから

 提督が私に依存してる、と飛行場姫様はいいたいわけですか?」

 

「えぇ、まさにその通りよ。更に言えばギャップもあるじゃない。

 深海棲艦、最強のレ級、でも、狂っていないどころか友好的。」

 

飛行場姫は一旦言葉を区切ると、にやりと笑みを浮かべてから

レ級へと言葉を続けていた。

 

「つまり、客観的に見て、

 レ級は提督に限らず、人間にとって魅力的なのよ。」

 

そう言われたレ級本人は、首をかしげていた。

本人としては、そんな気はさらさら無いのである。

 

「そんなもんですかねぇ・・・?」

 

「そんなもんよ。で、まぁ、レ級。提督とは上手くやりなさいね?

 あれは、こじらせると絶対に、厄介な男よ。」

 

「んー、判りました。姫様がそう言うなら気をつけます。

 っていうか、姫様の言うとおりなら、大和たちが怖いのかねぇ。提督。」

 

レ級は、首を傾げ、腕を組みながら飛行場姫へと言葉を返していた。

 

「えぇ、おそらくはね。

 しかも、私達のような人型の深海棲艦が横須賀にいて、

 なまじ中途半端に交流しちゃってるでしょう?」

 

飛行場姫は、指を立てながらレ級へと言葉を続ける。

 

「そうなると、よ。

 仲良くしている深海棲艦と同じ人型の深海棲艦を殺しておきながら、

 ・・・褒めてと駆け寄ってくる艦娘を、怖いと思うのは当然じゃないかしら。」

 

「あぁー。確かにそれはあるでしょうねー。」

 

納得、といったようにレ級は頷いていた。

そして、飛行場姫は、レ級の姿を見ながらも苦笑を浮かべて言葉を続ける。

 

「一番の解決方法は、大和達との距離感を提督が

 自分で決めることができればよかったのだけれど。

 レ級がいるから、そこに逃げちゃったのかしらねぇ・・・。」

 

「むぅ、っていうか、なんで提督殿は姫様ではなく、私に依存したんでしょうねー。

 普通に考えれば、鹵獲してきた姫様にいきそうなもんでしょ?

 私よりプロポーションいいし。戦略的な話もよりできるじゃん。」

 

「・・・それはまぁ、姫級で警戒しなくちゃいけなかったんでしょうし、

 もしかすると、レ級の体型が好みだった可能性もあるんじゃない?」

 

飛行場姫は、最近のレ級の服装を思い出しながらつぶやいていた。

提督の執務室にこもるときは、レ級は決まって「第六駆逐隊」の服なのだ。

レ級も飛行場姫と同じことを思い出したのか、苦笑しつつ、口を開く。

 

「・・・提督ってもしかして、駆逐艦が好きなんかね。」

 

「可能性はあるわね。ま、がんばりなさい。レ級。

 横須賀の平和はアナタにかかっているわ。

 それじゃ、私はこっちだから。」

 

「へーい。ま、私は何時もと変わったことする気はありませんけどねー。

 それじゃ姫様、また明日よろしくお願いします。」

 

レ級と飛行場姫は、お互いに手を振りながら、自室へと向かっていった。

横須賀鎮守府2400、深夜の出来事である。

 

 

横須賀鎮守府2500を回った頃、

レ級は、今日撮影した写真をタブレットで確認していた。

 

「んー、大和は相変わらず迫力あるなー。

 格闘戦も、砲撃戦も流石だぜ。」

 

タブレットには、演習で砲撃を行う大和の姿が

でかでかと映しだされていた。

 

「それにしても、提督殿が私に依存ねぇ。

 どうしたものかなー。ちょっと距離を置こうかな?

 よっぱの拠点に久しぶりに行くってのもいいな。酒飲む約束してたし。」

 

レ級は呟きながら、タブレットを指でなぞっていく。

すると、秋雲と夕張が、砲雷撃戦をしている写真が出てきていた。

 

「そーいや、夕張が演習してるの初めて見たなー。

 いっつも工廠にこもってんのに、どうしたんだろ。」

 

レ級はタブレットを操作しながら、秋雲と夕張の顔を拡大していた。

すると、レ級はとあることに気づいたのである。

 

「・・・ん?夕張の艤装、これ私の主砲によく似て・・・。

 あぁ!そうか。私の艤装から作った武装のチェックか!

 流石夕張、制作早いなぁ。」

 

レ級は驚きながらも、にやりと笑みを浮かべていた。

そして、更にそこから写真を観察していく。

 

「ふむふむ、基本的には私の装備そのまんま、だけど。

 工作精度はこっちのほうが良さそうだなぁ。

 んー、気になるし、あとでちょっと見せてもらお。」

 

レ級は呟きながら、今度は秋雲の顔を拡大させていた。

 

「秋雲もいい顔するよなぁ。確か絵を書くんだっけ。

 一回見せてもらいたい・・・ん?」

 

秋雲の顔をよくよく見るレ級。すると、秋雲の目の下に

隠しきれていない隈が見えたのだ。

 

「おや、秋雲、最近忙しい・・・わけないな。

 昼間の遠征で練度上げてるだけだから、

 こんなに隈あるのはなんか、変だなぁ。

 夜、何かやってるんだろうか・・・?」

 

レ級はそう呟くと、タブレットをよくよく観察していた。

隈以外にも、髪の毛がすこしボサボサだったり

肌がところどころ荒れていたりと、艦娘にとってはありえないことである。

 

「ンー?はて。どうしたんだろう?調子わるいんか?秋雲。

 後で提督にさらっと伝えておくかなぁ。」

 

と、レ級が呟いたその時である。

 

【ガタタッ!】

 

レ級の部屋の隣、噂の秋雲の部屋から、大きな音が響いてきたのである。

 

(秋雲ぉ!何してるのよー!)

(夕張さぁんごめんー!ぼぉっとしてたー!)

(あぁもう。コミケの原稿締め切りやばいんだって!わかってるでしょう!)

(ごめんって!急いで書きなおすから!)

 

「・・・?はて。何かあったんだろか。大丈夫かな?」

 

レ級はタブレットを置くと、ドアへと足を向ける。

そして、廊下へと足を運び、秋雲の部屋の前へと歩みを進めていた。

 

コンコン

 

秋雲の部屋のドアをノックするものの、全く反応がない。

 

「おーい、秋雲ぉ?なんかあったかー?」

 

レ級は心配になったのか、秋雲の部屋のドアを静かに開けていた。

すると、そこには、散らばった原稿と、

机に向かって必死に作業しながら、涙目になっている秋雲と夕張の姿があった。

 

「秋雲ぉ!ここ間違ってる!」

 

「うっそぉ!?うわっ、本当だ・・・」

 

「こっちの原稿のベタやっておくから、直しておいて!」

 

レ級はそんな光景に、ぽーかーんとした表情を浮かべ、立ち尽くしていた。

そして、何気なしに床の原稿を一枚拾って、目を通したのである。

 

(・・・漫画?)

 

レ級が拾ったのは、ネームと言われる原稿である。

まだ荒い線と、あらかたのコマ割りだけであり

それほど本を読んだことのないレ級にとっては、謎の存在であった。

 

(・・・そうか、漫画かいてたのか。締め切りってそういうことねー。

 でも、なんでセリフに「レ級!」と「提督!」って言葉があるんだろう・・?)

 

レ級はそんなネームの中に、不審な点をいくつか見つけていたのである。

まず、明らかに自分らしい姿のラフがかいてあること。

体の横に尻尾が書いてあるので、ほぼレ級の姿で確定であろう。

そして、更に言えば、なぜかセリフに「レ級!」「提督!」と書きなぐった跡があるのだ。

 

「なぁ、秋雲ぉ。忙しい所悪いんだけど、ちょっといい?」

 

「なにっ?忙しいのわかってるのならまたあと・・・で・・・?」

 

秋雲は、ここでようやく自分と夕張以外に、部屋に誰かがいると気づいたのだ。

そして、声のした方向に、ばっと顔を向ける。

もちろん、夕張も同様に、焦った顔で首をひねっていた。

 

「「ゲッ!?レ級!?」」

 

夕張と秋雲は焦ったのか、原稿を更に机の周りに散乱させていた。

そして、レ級はそんな散らばった原稿を一枚、拾い上げていた。

 

「「あっ!ダメ!見ちゃだめ!レ級うううう!」」

 

夕張と秋雲は、同時に原稿へと手を伸ばしていた。

だが、時既に遅し。

レ級は、原稿を見ると、顔を真赤にさせて、体をぷるぷると震わせていたのである。

そんなレ級を見て、秋雲と夕張は、顔を真っ青にさせていた。

 

「秋雲。夕張・・・・んなああああああああああああにこれええええええええ!」

 

「「ひいいいいいいいいいいい!?

  ごめんなさああああああああああああい!」」

 

レ級の手元にあった原稿。それは

通称コミケ、コミックマーケットに「サークル秋雲亭」として出す予定の本。

「レ級×提督」本の原稿だったのである。

 

 

「コミックマーケット?」

 

「「はい、コミックマーケットです。世界最大規模の素晴らしいイベントです。」」

 

「そこにこれを出そうと?」

 

「「はい、そのとおりです。」」

 

「なぜにこれを出そうと?」

 

「「提督と深海棲艦というニュージャンルが受けると思いまして」」

 

「・・・なぜに情事本?」

 

「「いやぁ、このまえレ級さんと提督がキスしてるの見ちゃいまして

  妄想が捗ったっていうか、筆が進んだっていうか!」」

 

「あはは・・・」

 

「「いいでしょう!」」

 

仁王立ちのレ級、正座のサークル秋雲亭(秋雲・夕張)である。

レ級の問に、秋雲と夕張は、まったく同時に、同じことを答えていた。

 

「それにしても、ワタシと提督をモチーフにした本、ねぇ。」

 

「えぇ、生々しく描けてると思いますよ?ねぇ、秋雲。」

 

「だねぇ。執務室で事に至る。燃えない?」

 

レ級は深くため息をつくと、夕雲達へと質問を投げていた。

 

「んまー、事実であるからそこまでは仕方ないとして。

 他の艦娘もよく提督と事情してるけど、そっちは描かないの?」

 

「あぁ、それはもう夏で描いたのよねー。」

 

「うんうん。もうそれこそ何回も。そろそろ違う本出したかったんだよねぇ。

 そんなとこにレ級と提督が飛び込んできたからさぁ!」

 

---ついつい描いちゃってたんだ!

 ほら、あとはベタ塗って整えれば出来上がりなんだ!---

 

秋雲と夕張は声を合わせながら、仕上げに入っている原稿を

レ級へと突き出していた。

レ級は原稿を手で往なすと、ゆっくりと口を開く。

 

「まー、うん。別に本についてはいいや。

 そこまで作ってたら、今更ダメっていうのも酷でしょ?」

 

秋雲と夕張は、思わずガッツポーズをとる。

 

「でも、その本を出す条件を一つ呑んでほしいんだけど。」

 

「なんでしょう?」

 

「そのコミックマーケット、連れて行ってくれない?

 さっき世界最大規模の素晴らしいイベントって言ってたじゃん。

 ちょっと写真撮ってみたいなぁって思ってさ。」

 

レ級は苦笑を浮かべながら、秋雲と夕張に言葉をかけていた。

秋雲と夕張は、レ級の言葉に、怪しく目を光らせると

ゆっくりと口を開いていた。

 

「ほほー。写真、写真ですね。

 確かに素晴らしい写真が撮影できますよ。」

 

「だねぇ。レ級ぅ。いいよー。サークルチケット1枚余ってるから

 一緒にいこう。この秋雲さんが手取り足取り教えるよー。」

 

レ級はそんな2人を見ながら、笑顔を見せつつ、口を開く。

 

「おー、いい写真撮れるの?

 サークルチケット・・?はよくわからないけど

 頼んだ、秋雲。夕張。」

 

「「任されたよ!」」

 

秋雲と夕張は、胸を張って答えていた。

そして間髪入れずに、夕張は、レ級を見ながら口を開く。

 

「あ、ただレ級さん、少し時間あります?」

 

「ん、明日は遅番だから全然時間あるよー。」

 

「それなら、少々お手伝い願っても宜しいでしょうか。

 実は明日締め切りなんです。原稿。このままだと間に合わない・・・!」

 

「・・・そうなの?あそこまで作っておいて?」

 

「「そうなんですよぉ!お願いしますっ!猫の手も借りたいんですぅ!」」

 

夕張と秋雲は、涙目になりながらレ級へと叫んでいた。

 

「おぉ、判った、判った。泣くなって、手伝うから。

 それで、私は何をすればいいの?」

 

レ級は首をかしげながらも、のんびりと構えていた。

 

「「流石レ級さん!それじゃあこっちの机に!」」

 

そんなレ級に、夕張はペンと原稿を手渡す。

そして矢継ぎ早に、レ級へと口を開いていた。

 

「それじゃあ早速!ええとですね、ここをインクで塗ってほしいんです。

 線からはみ出しちゃだめですよ!やり直しになっちゃいます!」

 

「おう、任された。こう見えて結構手先は器用なんだぜー。」

 

「流石ぁ!深海棲艦のエースは伊達じゃないねぇ!」

 

深夜の秋雲の部屋で、3人は淡々と原稿を仕上げていくのであった。

 

戦闘報告。

横須賀鎮守府の深夜、サークル秋雲艦隊。

新メンバーを加えて、イベント海域、哨戒戦、入稿を無事突破。

 




妄想捗りました。

次回予告
緊急指令:E-1 衣装と設営


※この小説を読んでる中にいるかは不明ですが。
 進捗、どうですか?皆様のご武運をお祈り致しております。

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