カメ子 レ級   作:灯火011

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横須賀鎮守府に現れると噂されれている戦艦レ級。
早速、横須賀の街を闊歩するようです。

※少々オリジナル艦娘っぽいものが入ります。



109 カメ子さんの日常 その2

「戦艦レ級」

 

深海棲艦と呼ばれる存在の中でも特に上位種に位置する艦種である。

 

そして、提督からも、艦娘からも恐れられるはずの彼女は

カメラを一台首から下げ、横須賀の街を、

尻尾をゆらゆらと揺らしながら、堂々と闊歩していた。

 

「ンー。秋空の下は気持ちがイイネェ。」

 

ぐーっと伸びをするレ級は、いつものパーカー姿ではなく

第六駆逐隊の制服を着こみ、頭に雷のヘアピンを装備していた。

そして、レ級自身の青白い肌に、少し青みがかったさらさらの髪が、

それらの魅力を高めていた。

 

「それにしてもどこにいこうかねー。

 ドブ板通りはいつも行ってるしなぁ。」

 

ぶつぶつとつぶやきながらも、

レ級は笑みを浮かべつつ、

横須賀の街を楽しみながら、歩みをすすめる。

 

だが、横須賀の街を出歩くようになってから

レ級はまだ日が浅い。鎮守府から少し出た所で

レ級は観光案内板を目の前に、首をせわしなく動かしていた。

 

「んぉー。こっちには自衛隊の基地があるのかぁ。

 今世の金剛を見物しにいくのもありだよなぁ。

 おっ、こっちには三笠さんがいるのか。」

 

レ級は、顎に手を当てながら、目をつむり

少し考える素振りを見せる。

 

(そういえば、横須賀に来てから三笠さんに挨拶してなかったな。

 東郷さんにも挨拶してこよう。うん。そうしよう。)

 

レ級は笑みを浮かべ、早速、戦艦「三笠」へと足を動かしていた。

 

 

横須賀鎮守府から、約10分歩いた所に

戦艦三笠が保管されている、「三笠公園」はある。

 

レ級は400円を払い、早速戦艦三笠へと入っていく。

そして、戦艦三笠とはなんぞやといえば、

大日本帝国海軍の戦艦で、敷島型戦艦の四番艦である。

金剛と同じイギリスのヴィッカーズ生まれであり

これまた不思議な事に、金剛と同様、

連合艦隊旗艦を務めていた船である。

 

何より、東郷平八郎率いる連合艦隊が

ロシア海軍バルチック艦隊を破った日本海海戦で

旗艦を務めていたことが、何よりこの船の名声を高めていた。

 

そして、上部構造のほとんどがレプリカとはいえ

艦娘や深海棲艦のような人型とは違う、本物の軍艦である。

重厚な鉄や、巨大な砲塔、ちょっとやそっとじゃびくともしない装甲板。

レ級は、カメラを三笠の船体に向けて何枚も写真を撮影していく。

被弾した灯籠、三笠の砲弾、艦首から艦橋を見上げた写真などなど

戦艦三笠を、あますところなく撮影していった。

 

レ級は艦長室に入るまでは、それはもう余すところ無く

血眼になりながら、三笠の船体を撮影し続けていた。

 

が、艦長室に入り、撮影しようとカメラを構えた時、

レ級は真横からいきなり声をかけられ、撮影の手を止める。

 

「それで、人間でも、艦娘でもない君は

 ワタシの体に何をしにキたのかな?君は。

 君が所属している深海棲艦とは、人類の敵なのだろう?」

 

レ級は、声のした方向に首を向ける。

すると、古い軍服を着て、若干足元が透けている小柄な娘が佇んでいた。

 

レ級は、優秀な頭をフル回転させ考える。

 

(お?一発で私を深海棲艦と見ぬいた?

 この子どもすごいな。・・・いや、まてよ?

 今暁型の制服着てるし、私、普通に考えたら

 新型の艦娘と見られるんじゃないか?

 っていうか、今この子どもなんて言った?

 「ワタシの体に何をしに」って言ったよな。言ったよな?

 ・・・もしかして、この子ども・・・いや。艦娘は・・・!)

 

レ級はそこまで考えと、緊張した面持ちで

ゆっくりと口を開いていた。

 

「・・・イエ、海で戦う者として

 先人に敬意を払おうかと思いまして。 

 後、申し遅れました。私は深海棲艦のレ級と申します。

 ・・・あとカメラが趣味なもので、写真を、と。」

 

レ級はカメラを掲げながら、小柄な娘へと言葉を返していた。

すると、小柄な少女は、パァッと笑みを浮かべて

興奮気味に言葉を発していた。

 

「ほう、ワタシが見えるか!声が聴こえるか!

 人類にも艦娘にも私は見えないのだがな!

 ハハッ!深海棲艦とはいえど、殊勝な若者だ。

 それにしても、貴様ら今代の敵、深海棲艦は妙なものだ。

 人間の雰囲気も感じるし、船の雰囲気も感じる。

 ただ、日本人のような気もするし

 外国人のような気もする。君は不思議な存在だな。」

 

「・・・三笠さん、で宜しいんですよね?」

 

「あぁ、そういえば名乗っていなかったな。

 私は戦艦三笠の、まぁ、なんだ。艦娘ではないのだが

 そのようなものだな。」

 

レ級は姿勢を正すと、海軍式の敬礼を行い、口を開く。

 

「なるほど、なるほど。

 まさかお会いできるとは思っても居ませんでした。

 私は人類の敵である深海棲艦ですので、ヘタすると

 三笠に入れないとも思っておりました・・・。

 それにしても妙ですね。

 人と艦娘には見えず、深海棲艦だけに見えるとか。」

 

三笠はニヘラ、と笑みを浮かべ、

レ級をペタペタと触りながら口を開く。

 

「謙虚だのぉ。深海棲艦にしておくのは惜しいぞ。

 それにしても本当に、深海棲艦のお主にはワタシが見えるのか!

 まぁ、私が見えないことは、人間については仕方がないと思っているよ。

 なにせ彼らは船ではないからな。魂が違う。

 だが、ワタシと同じ艦の魂を持っているのに

 艦娘とやらは、なぜワタシが見えないのか不思議で仕方ない。」

 

そして、三笠は、レ級を触り終えると

少しレ級から離れ、レ級を見据えて更に言葉を続けていた。

 

「レ級とやら、何か原因は思い浮かばないだろうか。

 艦娘と深海棲艦、敵と味方以外に、何が違うのだろうか。」

 

「そうですね・・・。可能性、という話ではありますが。」

 

レ級は言葉を切ると、改めて三笠を見つめなおし

真面目な顔で口を開いていた。

 

「ここだけの話、私達深海棲艦は、

 船以外にも土地、人間、環境そのもの

 そこらへんの恨み辛みから生まれているような

 存在だと、私は思っております。

 それ故に、貴女のような艦娘ではない、思念のような物にも

 敏感に反応してしまうのではないかと。」 

 

「なるほど。それなら少し納得できる。なるほどなぁ。

 それにしても嬉しいものだ!何十年ぶりか!他艦と喋ったのは!」

 

三笠はレ級の肩をバンバンと叩くと、レ級のカメラを見て口を開いていた。

 

「・・・おっと、話しすぎたかな?

 君は確か、カメラでワタシを撮りに来たのだったな。」

 

「えぇ、船体を収めさせていただければな、と。」

 

「よろしい。好きなだけ写すが良い。

 私でよければ、先達の記憶、十分楽しんでいってくれ。」

 

戦艦三笠と呼ばれる娘は、そう言うと笑みを浮かべながら

すぅっと、その場から姿を消していた。

 

「モチロンですとも。撮影させていただきます。」

 

レ級は敬礼を行い言葉を紡いだものの

唖然とした顔で、少しの間、棒立ちをしていた。

 

「・・・・・何。幽霊?今の何?」

 

そして、周りを青ざめた顔でキョロキョロと見回すが

何も変わりない、観光客が沢山いる三笠の船体があるだけであった。

 

 

ちょっとした心霊現象を体験した戦艦レ級は

写真撮影を早々に切りあげ、昼食をとるために

横須賀中央駅まで足を伸ばしていた。

 

横須賀の目抜き通りが駅前にあるため

混雑する商店街の中で、レ級はその姿から、注目を集めていた。

 

なにせ、第六駆逐隊のセーラー服、ニーソを身につけ

青白いさらさらの髪をなびかせている。

これだけでも十分魅力的なのにもかかわらず

スカートから伸びる巨大な尾っぽが、更に人々の目を集めていた。

そして、レ級が歩くたびに、巨大な尾っぽがゆらゆらと揺れるため

スカートがちらりちらりとめくれ上がり、情緒的な感情を

思い浮かばせていた。

 

「あの子、可愛いな。声かけてみようかな」

「やめとけって、あれ、どうみたって艦娘だろう?

 提督にしか好意を向けないって話だぜ」

「まじかよ。諦めるか・・・ちくしょう。

 あんな可愛い子から好意を向けられるとか、

 提督って良い職業だな・・・」

 

若者たちの声もなんのその、レ級はごきげんにカメラを構えながら

横須賀中央駅目の前の商店街を闊歩していく。

 

そして、レ級は目的の店、「カレー本舗」を見つけると

笑顔のまま、店舗の2階へと足を進めていく。

 

「イラッシャイー。お一人様ですかー?」

 

すると、小柄な、小さなウェイトレスの少女から

レ級は声をかけられていた。

 

「はい。一人です。」

 

「お一人様ご案内しますー!

 それでは、中央のテーブル席にご案内しますね!

 それと、久しぶり、レ級!」

 

小柄な小さなウェイトレスは、ニコニコ声でレ級にをかけていた。

レ級も笑みを返しながら、小さなウェイトレスに言葉を返す。

 

「案内ありがとうございます。

 北方棲姫様、お久しぶりです。

 上手くやってるようで何よりです。」

 

「みんな優しいから!

 こちらにどうぞー。」

 

小さなウェイトレス・・・北方棲姫は

中央のテーブルの椅子を引くと、レ級を椅子へと座らせていた。

 

「それで、レ級、今日は何にします?

 おすすめは金剛カレーだよ!」

 

「おっ、北方棲姫様がオススメするのならそれで!

 美味しいんですか?」

 

北方棲姫はレ級に笑顔を向けて、叫ぶ。

 

「勿論!おいしいよー!

 まってて!すぐに持ってくるから!」

 

「はい。ゆっくり待ってます。」

 

レ級は普段使わない敬語で終始、北方棲姫に話しかけていた。

というのも、レ級はさり気なく気遣いができる船である。

一般人が居るさなか、姫級の深海棲艦とニヤニヤと話す事は無いのだ。

 

「むー、なんか言葉が硬いよ?

 いつものレ級のほうがいいのに。

 あと、どうしたのその服。艦娘みたい。」

 

「他人の目もアリますから。

 いつものように粗暴にすると不快になる方も居るでしょう。

 あと、これは雷からパーカーしか持ってない私を見て、頂いたものです。」

 

北方棲姫は納得したのか、にこっとした笑みをレ級に向けていた。

そして、にこにこしたまま、口を開く。

 

「あぁー!雷かぁ。ちっちゃいお母さんだね。

 確かに、誰にでも優しい彼女なら、レ級にだって優しいね!」

 

「えぇ、非常に助かってます。っと、それはそうと北方棲姫様。

 お仕事はよろしいので?」

 

レ級は穏やかな笑みを浮かべたまま、北方棲姫へと話しかける。

 

「アッ!そうだった!

 新規オーダーですー!金剛カレー1セット!」

 

北方棲姫はレ級の言葉にはっとしたのか、

焦りながら厨房へレ級のオーダーを通していた。

 

「んー、北方棲姫様も、

 ただただ艦娘を沈めていた頃に比べたら変わったなぁ。

 最初はどうなるかと思ったけど、横須賀に連れて来てよかったよかった。」

 

レ級は、そんな北方棲姫を見ながら、穏やかに笑みを浮かべていた。

 

海軍カレー本舗。

横須賀中央駅から歩いて5分にある店である。

 

旧海軍の船の名を関するカレーから、通常のカレーまで

幅広いメニューをカバーする、カレー専門店だ。

平日休日問わずに常に満席であることからして

この店の味の良さ、店の雰囲気の良さが伝わってくる。

 

そして、内装も旧海軍を意識してか、木造でシックにまとめられていた。

大型の木造テーブル、少し大きめの木造椅子

床も木造の板が敷き詰められ、軍艦のデッキのようだ。

 

更に、ウェイトレスの制服ははメイド服に近い燕尾服である。

イメージとしては、艦娘龍田のワンピースのような感じだ。

 

「ウェイトレスさんの服いいなぁ。

 美人さんだし。見てて飽きない。」

 

レ級はそんなカレー本舗の椅子に座りながら

ぶつぶつと笑顔で呟いていた。

 

「しかもカレーの新聞もあるのか。

 ランチマット代わりなんだろうけど、勿体無いな。」

 

レ級はテーブルに敷いてあるカレー新聞を読む。

そこには横須賀のカレーの歴史がずらりと並んでいた。

 

「ほぅほぅ・・・すごい昔からなんだねぇ。

 流石古からの軍港。全てにおいての歴史が違うなぁ。」

 

レ級は喉が渇いたのか、水をゴクリと一口飲む。

そして、グラスをコトリとテーブルに置いた、まさにその時である。

 

「レ級!お待ちどうさま!

 金剛カレー1セットですー!」

 

小さなウェイトレス、北方棲姫が出来立ての金剛カレーを

お盆いっぱいに抱えてきたのである。

 

「おっ!待ってました!」

 

レ級は笑顔で北方棲姫を迎える。

そして、北方棲姫はレ級の前に皿を置きながら

間髪入れずに、説明を続けていった。

 

「えぇと、まずコレがサラダー!

 あと、コレがご飯ね。あとこれがルー。

 あぁ、あと食後の紅茶と、あと食前の牛乳ね!」

 

「おぉ、かなりのセット内容ですね。

 それにしても、食前の牛乳ですか。」

 

レ級は首を傾げていた。

北方棲姫は、レ級を見ながら、笑顔で口を開く。

 

「うん!牛乳飲むと胃が荒れないんだ!

 あと、私個人的なおすすめは、

 フィッシュアンドチップスはまずルーをかけないで食べて欲しいかな!

 その後に、全体にルーをかけてみて!美味しいから!」

 

「ん、わかりました。姫様。

 それじゃあ、頂きます。」

 

レ級は片手を上げる事で、北方棲姫に応える。

 

「どうぞどうぞー!それじゃあ仕事に戻るねー!

 レ級ッ!何かあったらマタ声かけてねー!」

 

北方棲姫も、レ級に手を振りながら、仕事に戻っていった。

 

「ふむ、それじゃあまず、おすすめ通り、っと」

 

レ級は金剛カレーに乗っているフィッシュアンドチップスを

さくり、と口に含む。レ級はゆっくりと、

ほっくほくのじゃがいも、そしてさくさくの魚を堪能する。

 

「おふっ、揚げたて・・・うまっ」

 

噛むたびに広がる魚の旨味。

カレーと合わせたら、どれだけ美味しくなるのか

レ級は楽しみになっていた。

 

「よし、それじゃあ今度は、ルーをかけて・・・。

 っと、まずはルーとご飯を楽しまなくちゃ」

 

レ級はルーをご飯に掛け、ゆっくりと口に運ぶ。

スパイスの良い香りが、レ級の鼻を静かに刺激していた。

レ級は、一瞬カレーを口に運ぶ手を止め、思わず喉を鳴らす。

 

「にひひ」

 

にやりと笑みを浮かべたレ級は、勢い良く、カレーライスを

口の中に放り込んでいた。

すると、どうだろう。口に入れた瞬間は、まろやかな甘味のあるカレーだった。

だが、ひとかみ、ふたかみと味わっていくと、後から後から

しっかりとしたスパイスの旨味と、牛肉の旨味が効いてくる。

 

そして、十分カレーを楽しんだ後、

ゴクッ、とレ級は口の中のカレーを飲み込む。

 

「ふぅー・・・。あぁ、これは、旨い。」

 

しみじみと呟くレ級であったが

間髪入れずに、今度はフィッシュアンドチップスにカレールーを掛け

口の中に放り込んでいた。

 

「おぉ・・・!」

 

レ級は、口の中で生まれたハーモニーに思わずため息をつく。

魚の旨味と、カレーのスパイスが

ここまで合うものかと感動していたのだ。

しかも、噛むごとに旨味は増し、

スパイスと魚が更に融和し、レ級の口の中で昇華されていく。

 

そして、レ級はその後、カレーを最後の一滴まで堪能した後

長い溜息を付き、ただ一言、呟いた。

 

「あぁ、うまい。」

 

レ級、裏表なしの心からの言葉であった。

 

「レ級!今日はキてくれてありがとね!

 また一緒に艦娘の写真撮ろうね!」

 

レ級は会計をしながら北方棲姫と少し話をしていた。

 

「えぇ、ぜひぜひ。

 北方棲姫様の仕事が空いた時に鎮守府に来てください。

 事前に提督に許可は貰っておきますので。」

 

「うん!ありがとう!

 っと、えーと、1630円になります!」

 

レ級は、笑顔で革の財布から2000円を北方棲姫に手渡していた。

 

「いやぁ、北方棲姫様。それにしてもカレー美味しかったです。

 もっと早く食べに来ればよかったですよ。」

 

「あは、そう言ってもらえると働きがいがあるよ!

 そういえば、この後はどっか撮影にいくの?」

 

北方棲姫は首を傾げながら、レ級に今後の予定を訪ねていた。

レ級は、にやりと口角を上げつつ、口を開いていた。

 

「ヴェルニー公園にいこうかと。

 夕焼けの護衛艦を撮影するのも楽しいかなーって。」

 

「あは、楽しそう。いいなー。私もいきたい。」

 

北方棲姫は不機嫌そうな顔をしながら呟いていた。

レ級は呆れた顔で、北方棲姫へと口を開く。

 

「ダメでしょう、北方棲姫様。仕事中でしょうに。」

 

「うん、判ってるー。」

 

北方棲姫は不機嫌な顔から一転、笑顔でレ級に声をかけていた。

そして、レ級も笑顔になりながら、北方棲姫へと口を開いていた。

 

「あは。まー、それじゃあ北方棲姫様。私はそろそろ。

 お仕事がんばってくださいね。」

 

「うん。またね!レ級!」

 

レ級は北方棲姫に背を向け、カレー本舗を後にしようと歩みをすすめる。

そして、レ級の足が、階段にかかろうとした時である。

 

北方棲姫は、真面目な顔で、静かに、レ級に話しかけていた。

 

「ねぇ、レ級。一体あなたは、どこまで行くの?」

 

レ級は足を止め、北方棲姫へ体を向き直し

真剣な顔をして、ゆっくりと、しかし確かな声で

静かに北方棲姫に語りかける

 

「ふふ、どこまでも、行けるところまでですよ。

 折角、今一度、現世で大地を踏みしめることができたのです。

 楽しまなければ、損でしょう。姫、あなたも、そうでしょう?」

 

北方棲姫は目を閉じ、レ級の言葉をただ静かに、聞いていた。

そして少しの間のあと、北方棲姫は目を開き

いつもとは違う、妖艶な笑みを浮かべると

 

「ふふ、そうね。」

 

と、ただ一言、言葉を発したのであった。

 

 

レ級は北方棲姫が働くカレー本舗を後にすると

その足のまま、ヴェルニー公園へと、歩みを進めていた。

 

ちょうど時間は夕暮れ時。

ヴェルニー公園から見た護衛艦達は、夕日に照らされ

美しい艦影を、海へと落としていた。

 

カシャリ、カシャリ、カシャリ。

 

レ級は50ミリのレンズで、

その風景をしっかりと撮影していた。

 

「やっぱり夕焼けは映えるなぁ。

 波に反射した夕焼けもまた綺麗だ。」

 

レ級は、タブレットを取り出すと

いま撮影したばかりの護衛艦の画像を確認していった。

 

波間に揺られ、美しく夕日を受ける巨大な船体。

海に落ちる巨大な船体の影、そして、暗くなってきたからか、

各所にライトが灯った「護衛艦 こんごう」の姿。

 

どれもコレもが、美しい一枚である。

 

「今代の金剛も綺麗な艦だなぁ。

 確か、今代でも金剛型1番艦なんだっけな。」

 

レ級は、金剛の映る写真を見ながら、一人呟いていた。

 

「えぇ、先代に続いて、私も1番艦なんです。

 先代と仲の良い、深海棲艦さん。」

 

「・・・ん?」

 

気づけばレ級の隣に、全くレ級が知らない少女が立っていた。

レ級は、隣にたった少女を確認する。

明らかに海上自衛隊の服装ではあるものの

その姿は、まだ学生のような雰囲気であった。

 

レ級は、優秀な頭をフル回転させ考える。

 

(お?一発で私を深海棲艦と見ぬいた?

 っていうか何このデジャブ。

 この女の子、「先代に続いて私も1番艦」と抜かしよったか?

 抜かしよったよな?・・・ってことは、だ)

 

「・・・もしかして、護衛艦こんごうさん?」

 

「えぇ、そのとおりです。深海棲艦さん。

 いえ、戦艦レ級さんとお呼びするべきでしょうか。」

 

護衛艦こんごうは、綺麗な姿勢でお辞儀をする。

レ級は諦めたように、綺麗なお辞儀を返していた。




妄想捗りました。心霊体験、レ級サン。

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