カメ子 レ級   作:灯火011

24 / 55
カメラを持った変なレ級と
呉鎮守府所属、よっぱなレ級ともお知り合いの金剛。

2人がガチで演習を行う中で、
ちょっとした出会いがあったようです。

※魚雷項目直しました。


106 レ級と金剛さん、ファイッ 2+α

横須賀鎮守府正面海域。

深海棲艦であるレ級と、艦娘である金剛が

全力で演習を行っている。

 

レ級は砲撃を行いつつ、自分の尾っぽで

水柱を作り、金剛の砲撃を避けながら金剛に肉薄し、

 

対する金剛は、水柱を諸共せずに砲撃を行いつつ

全速力でレ級に肉薄する。

 

そして、お互いに拳を握りこみ

お互いに同時に顔面に、腹に

みぞおちに、と、急所に次々と拳を叩き込んでいく。

 

「はっはあぁ!金剛ゥ!楽しいナぁ!」

 

「アハハハァ!デースねぇ!レ級ううう!」

 

ドゴォ!ドゴォ!と砲撃にも負けないレベルの

打撃音を拳からさせ、お互いに血まみれになりながらも

口角を上げ、獰猛に笑う2隻の乙女。

 

「沈めやああ!」

 

レ級が大音量で叫びながら、尾っぽを振りぬき、金剛に直撃させる。

 

金剛は、レ級の攻撃を咄嗟に両手でガードしていたが、

尾っぽの、威力と速度が乗った一撃は、

ガードの上からでも確実に金剛の体に

ダメージを与えていた。

 

「くうううううっあああああ!」

 

金剛は、体が持って行かれそうなレ級一撃を受け

思わず叫んでいた。

実際、普通の艦娘なら、一撃で轟沈レベルの攻撃である。

だが、彼女は帝国海軍最高練度の金剛である。

即死級の攻撃を受けつつも、その目はレ級を捉え続けていた。

 

「ぐうっ・・・レ級、貴女こそさっさと沈むデース!」

 

一瞬、金剛は体制を立て直しつつ、

吹き飛ばされる勢いを利用しながら

懇親の蹴りを、レ級のわき腹に叩き込んでいた。

 

「グギッ・・・!」

 

レ級はくの字になりながら、思わず呻く。

何せ、尻尾で思いっきり金剛を叩いた直後である。

防御などは出来る体制ではなかったため

金剛の一撃を直に受けたのだ。

 

飛行場姫を殴り倒した金剛の一撃を

レ級はまともに受けたのである。

 

レ級はなすすべもなく、口から血を吐き、

海面を切りながら、勢い良く転がっていく。

金剛も蹴りを放ったものの、レ級の尻尾の打撃の衝撃で

口から血を吐きながら、同じように海面を転がっていった。

 

----------------------------------------------

 

大和の砲撃ですら受け止める金剛が、

ボロ雑巾のように海面を転がっていく光景に、

 

「金剛!」

 

と、金剛が所属する呉の提督が、

手を握り込みながら叫びを上げていた。

他の鎮守府の提督や、大本営の面々は

金剛が海面を転がる光景に驚き、

全く言葉を発せないでいた。

 

対して、レ級の上司である飛行場姫は笑いながら

海面を転がるレ級をファインダー越しに見ながら

淡々とシャッターを切っていた。

 

「ふふっ。レ級ったら楽しんでいるわねぇ」

 

カシャカシャ、と、気持ちの良いシャッターの音が

周囲に響いていた。

 

金剛が美しいフォームでレ級に蹴りを直撃させている瞬間や

レ級が水しぶきの中砲撃を行う瞬間、

互いに殴りあう中で、服が徐々にはだけて行く様が記録を

しっかりと、記録している飛行場姫である。

 

飛行場姫は見事に、戦場の艦娘と深海棲艦を撮影していたのである。

 

「いいわねぇ。最高じゃない。」

 

カメラの写真を確認しながら、飛行場姫は笑顔でつぶやいていた。

 

-----------------------------------------------------

 

金剛とレ級は、海面を回転している最中に

ほぼ同じタイミングで体制を立て直し

海面に手足を付き、4つんばいにになりながら

海面を滑る勢いを殺していた。

 

そして、レ級と金剛は、4つんばいの体制で勢いを殺し終えると

何事もなかったかのように、血まみれのまま

2本の足で、海面を力強く踏みしめていた。

 

「・・・ッハァ!効いたぜ金剛ぉ!

 なんだその蹴りぃ!

 左腕折れちまったじゃねーかよぉ」

 

レ級は、口角を上げ、叫びながら

ぶらんぶらんと、左手を降る。

 

「レ級こそナイスな一撃デースねぇ!

 私も左の肩をやられマーシたよぉ!」

 

金剛も口角を上げ、叫ぶ。

その左腕は、力なくぶらん、と垂れ下がっていた。

 

「クククッ」

 

「あはははっ」

 

そして、金剛とレ級は、お互いに笑い合うと

 

「楽しいなぁ!金剛!」

 

「楽しいデースねぇ!レ級!」

 

猛獣のような笑みで大声で叫ぶと

更に口角を上げ、全く同じタイミングで、海面を蹴っていた。

 

レ級はそのさなか、海面に向けて

魚雷を10斜線、拡散させずに海へと落とす。

だが、レ級の魚雷は日本の酸素魚雷ではないため

航跡が白く表れていた。

 

そして、金剛は、レ級へと体を加速させながらも

しっかりと魚雷の航跡を見つけていた。

普通なら一旦退避するか、避けるところであるが

金剛は魚雷を全く気にせず、直進していく。

 

気づけばレ級と金剛との距離は残り10メートル。

魚雷は既に金剛の足元にあった。

 

「金剛ぉ!避けねーのかぁ!?」

 

レ級は最大戦速で突っ込みながら

金剛に大声で叫ぶ。

 

「魚雷ごときで私を沈めようなんて

 100年早い・・・・」

 

そう言うと、金剛はわざと左足で魚雷を踏み抜く。

すると、戦艦ですら沈めきる爆発が、金剛を襲った。

 

レ級は驚きのあまりに、思わず目を見開く。

そして、レ級の目の前では次々と魚雷が爆発し、

金剛にとどめを刺さんとしていた。

 

ように見えた。

 

が、次の瞬間、魚雷が爆発した水柱の一つから

金剛が勢い良く飛び出して来ていた。

 

「デエエエエエッッス!」

 

信じられないことではあるが

金剛は、レ級のはなった魚雷を

わざと踏抜き、巨大な爆発のエネルギーを

自身の推進力へと変えていたのだ。

 

だが、その代償は大きい。

魚雷を踏み抜いた金剛の左足の艤装は完全に破壊され

足そのものにも魚雷の爆風が届いたのか

肌が裂け、肉と骨が一部見えている。

 

「ナッ!?」

 

レ級はその光景に、完全にスキを見せてしまっていた。

そのスキを見逃すほど、金剛は甘くはない。

 

「フィニイイイイイイイッッシュ!」

 

金剛はそう叫ぶと、空中で体を捻り

ダメージが少ない右足で、

力の限りレ級の頭を蹴りぬいていた。

 

考えて頂きたい。

金剛が、爆発で得た速度は、おおよそ60ノットである。

戦艦が、60ノット(おおよそ100キロ)の速度を出しながら

懇親の一撃で、「戦艦」レ級を蹴り飛ばしたのだ。

 

言葉にするのも烏滸がましいほどの

大音量の衝突音が周囲に響き

その衝撃波は、鎮守府の建物の窓を揺らすほどであった。

 

結果として、レ級はなすすべもなく空中を舞う。

 

文字通り、血を撒き散らしながら、

海面に叩きつけられることも無く

長距離をふっ飛ばされていた。

 

そして、次の瞬間

 

ドッゴアアアン!

 

とてつもない大きな音が鳴るとともに

大本営、鎮守府の職員、見物人、そして提督、艦娘が

何事かと音のした方向に首を向けていた。

 

すると、鎮守府の建物、正確にはレンガ作りの工廠が一つ、

全て崩れ去っていた。

 

「あ゛ぁー!?工廠がぁー!?」

 

横須賀の提督が、思わず叫び声を上げていたが

状況が全くつかめていないのか、他の見物人は静まり返っていた。

 

工廠が崩れる音が鎮守府に響き渡る。

そして、完全に工廠が崩れ去ると、その中から

一つの人影が、ゆっくりと現れていた。

 

「グェェ・・・金剛め、容赦なくやりやがってぇ・・・。」

 

しゃがれた声で呟きながらも

工廠の崩れた瓦礫の中から、血まみれで

片目が完全に潰された、戦艦レ級が

瓦礫をどかしながら、ゆっくりと立ち上がっていた。

 

そう、レ級は金剛の蹴りにふっとばされ

工廠まで飛び込んできていたのである。

 

「イッテェなぁ。もう。ゲホッ。

 だけど、まだ、まだだぜ」

 

レ級呟きながら、工廠の瓦礫の中をユックリと歩き出す。

金色と蒼のオーラを纏い、血まみれで

所々肉と骨を見せながらも、ゆっくりと海に歩いて行く。

壮絶な光景を目にした、すべての人々の動きが完全に止まる。

 

そして、海の上では、レ級を蹴り飛ばした金剛が

満身創痍になりながらも、レ級に向けて再加速を行っていた。

 

「レ級ぅ!ワターシの渾身の一撃、良くたえマーシたねぇ!」

 

金剛はそう叫ぶと、砲塔をレ級へと向ける。

その顔は、凄まじく獰猛な笑みであったが

口からは鮮血が垂れ続けていた。

 

「・・・ハッハァ!あの程度で私を沈められるとか

 甘い事かんがえてんじゃねーよ!

 今度は私の番だぜ!金剛ォ!」

 

金剛の叫びに、レ級は同じように叫びつつ、

海へと飛び込みながら、砲塔を金剛に向ける。

一瞬海面下に沈むものの、直に浮上すると

金剛に向けてその体を加速させる。

しかし、ダメージは深刻であり

口と頭からどす黒い血を滴らせていた。

 

「レ級ううう!」

 

「金剛ゥウオオオ!」

 

お互いに叫ぶと、同時に主砲を打ち込む。

だが、その弾はお互いに当たることは無い。

満身創痍のためなのか、命中精度はガタ落ちであった。

 

ドバシャ!と、レ級と金剛の周辺に

戦艦の砲撃の水しぶきが立ちあがる。

直撃弾とは言わないまでも、超至近弾であったため、

金剛とレ級の艤装が、水飛沫による水圧で圧壊していく。

 

簡単に言えば、砲塔使用不可能。次弾装填装置破損である。

 

「ぎいい、金剛ォ!」

 

「がっ・・・ふっ、レ級ゥ!」

 

呻きながらも、金剛とレ級は、更に速度を上げ、肉薄する。

 

「いい加減に、沈めぇ!」

「いい加減にィ!沈むデース!」

 

そして、何度も繰り返したように、お互いに右手を握り込むと

体をひねり、体重を乗せ、相手の顔面へと拳を繰り出した。

 

バゴォ!

 

金剛の拳は、綺麗にレ級の顔面に。

レ級の拳は、綺麗に金剛の顔面に。

 

美しいくらいに、音までも、同時であった。

 

「あは、ハハハハァ。」

 

「うふふ、ふふふふ。」

 

そして、金剛とレ級は、お互いに不敵に笑いながら

口角を上げ、言葉を続けていた。

 

「レ級。しっかりと見させていただきマーシた。

 まだまだ動きが荒い、ですが。技、盗ませてもらいマーシタよ。」

 

金剛は、今回の演習で完全に砲弾投げ返しを完全に覚えていた。

にやりとする金剛に、レ級もにやりとしながら、言葉を返す。

 

「ハハハ。砲弾、まさか完璧に砲弾を投げ返されるとはナァ。

 だけど金剛ォ、勉強になったぜぇ。確かに私、無駄な動き、多いわぁ」

 

レ級も自分の動きの荒さを実感していた。

実際、尻尾を振りぬく時に、もっとコンパクトに鋭く振り回せれば

金剛の蹴りを受けていなかったのかも知れないのである。

 

「「はははは。楽し・・かったぁ・・・!」」

 

金剛とレ級は、そう呟くと

そのまま、海面へと倒れ込んでいた。

 

金剛とレ級の演習の結末は、ダブルノックダウン。

お互いに気持ちよさそうな顔で、海に浮かんでいた。

 

2隻の姿を確認した横須賀の提督は

マイクを手に取り、大声で叫ぶ。

 

『演習終了!引き分けとする!

 救護、急げよ!』

 

提督の演習終了宣言に、最初は静かであった観客席であったが

徐々に拍手が上がり始め、最終的には歓声が上がっていた。

 

-----------------------------------------------------------

 

「ふふふ。レ級ったら、私より、強くなってるじゃない。」

 

人間達が歓声を上げるさなか、

姫は嬉しそうな笑みを浮かべ、一人呟いていた。

何故かと言えば、金剛の実力は、

姫が拳だけで撤退を余儀なくされるほどである。

その金剛の拳を受けても怯まず、

そして拳の数倍の威力はあるはずの

スピードを乗せた蹴りすら耐えてしまったレ級の姿に、

飛行場姫は、満足していた。

 

(ふふ。本当、レ級が本当に、カメラを持たずに

 艦娘と戦っていたのなら、今頃深海の天下でしたでしょうに)

 

飛行場姫は考えながら、頭を横に振る。

 

(でも、それは無いわね。

 カメラと出会ってなければ、レ級はきっと

 エリートのまま、フラッグシップ化

 しなかったでしょうし。)

 

飛行場姫は、レ級のカメラの中でも

最大望遠の70-200mm F2.8の通しレンズが装着された

カメラを取り出すと、しっかりと脇を閉め

カメラを構え、ファインダーを覗く。

 

そして、海面にぷかぷかと仰向けで浮かぶ

金剛とレ級にピントを合わせると

 

カシャン

 

とだだ一回、シャッターを切る。

 

ファインダーが一瞬ブラックアウトし、センサーへと光が入る。

そして、カメラのディスプレイには、満足そうな笑みを浮かべながら

目を閉じ、海面に漂う、金剛とレ級の姿が映し出された。

 

「ふふ、本当、レ級はどこまで行くのかしらね」

 

飛行場姫は、ディスプレイに移された写真を見ながら

穏やかな笑みを浮かべ、呟いていた。

 

----------------------------------------------------------

 

『艦娘を撮影したい』

その情熱をもって、フラッグシップ改まで上り詰めた戦艦レ級。

 

レ級の影響は、別の深海の船と艦娘の関係にまで、影響を及ぼし初めていた。

 

(ヤベーッス。アレハヤベーッス。)

 

横須賀鎮守府、正面海域。

金剛とレ級が演習をするさなか

ただ一隻、深海の船がその様子を窺っていた。

 

(飛行場姫様ノ様子ミニキタノニ。

 ナンデ、カメラノレ級サント、艦娘ガ戦カッテンスカ)

 

つぶらな蒼い瞳。

つるつるの黒い肌。

白い手足。

そして、大きな口と歯。

 

提督誰しもが出会う、御馴染の深海の駆逐艦

「駆逐イ級」である。

 

ただし、このイ級は偵察固体であり

深海棲艦の中でも、最速の足の持ち主である。

 

(ウゥーン。コレハ上ニ報告ダナー。

 レ級フラッグシップ改ト、対等ニタタカエル艦娘アリ。

 艦種ハレ級ノ写真ヲ後日送付スル、ッテカンジカナ)

 

深海棲艦の基地のデータベースには

レ級が撮影した艦娘の写真データがしっかりと保管されている。

駆逐イ級は、後々に参照するために、

レ級と同等の力のある、金剛の顔をしっかりと脳裏に焼き付けていた。

 

(シカシスッゲーナー。アノ艦娘。

 レ級サントガチデヤッテ、レ級サント引キ分ケルナンテ)

 

駆逐イ級は、波間に隠れながらも

レ級フラッグシップ改と対等に殴り合った

金剛を称賛していた。

 

何せ、姫級でも苦戦する程度の実力を持っているレ級である。

そのレ級と対等に殴り合うなど、駆逐イ級からしても化物である。

 

(サーッテ、マ。鎮守府ガ御祭ニナッテルアイダニ

 撤退スッカナァ)

 

駆逐イ級はそう考えると、体を転進させ

鎮守府正面海域から、離脱しようと

機関出力を上げ、体を加速させる。

 

(サーテ、久シブリニ全力デカエルカー!)

 

駆逐イ級は、機関出力を最大にして、

波間をかき分け、その体が最高速度に達しようとしたとき

遠くから、鈴の様な声が、駆逐イ級の耳に入ってきていた。

 

「・・・・なにあれっ、あのイ級!はっやーい!」

 

その声に、駆逐イ級は視線を向ける。

すると、ミニスカ、うさみみ、そしてZ旗のパンツ。

見ようによっては、痴女のような艦娘の姿が、そこにはあった。

 

『・・・!?ヤッベェミツカッター!?』

 

駆逐イ級は、一気に距離を離そうと

艦娘とは逆へ舵をとっていた。

 

 

「まってー!そこのイ級ぅー!」

 

艦娘が、あろうことか駆逐イ級を追いかけてきたのである。

 

(ノオオオオオ!?私今日ハ戦ウ気ネーッテノ!)

 

だが、駆逐イ級は艦娘を無視して、更に体を加速させ

一気に水平線の向こうへと、撤退していった。

 

そして、残された艦娘は、驚きの顔のまま

呆然と立ち尽くしていた。

 

「・・・はっやーい。

 まさか、私が追いつけない、なんて・・・。

 ・・・あはは、次は負っけないからねー!」

 

帝国海軍、最速の足を持つ艦娘「島風」は、

駆逐イ級が消えた方向を見ながら、

笑いながら大声で叫んでいた。

 

最速の駆逐イ級と、最速の艦娘「島風」。

2隻が交流する日も、近いのかもしれない。




妄想捗りました。島風さん、イ級さん、相性いいかもしれません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。