カメ子 レ級   作:灯火011

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とある日、とある鎮守府
とある船と、レ級はタイマンで演習を行うようです。

※続くかは・・・・わかりません。

※ちょっと加筆。金剛さんの出どころを記入致しました。


105 レ級と金剛さん、ファイッ 1(?)

横須賀鎮守府内部に設置された臨時大本営。

 

 

天皇を始めとした、陸海軍の将校がずらりと並ぶ。

その中には、横須賀・呉・大湊・佐世保といった

名だたる鎮守府の提督たちも同席していた。

 

過去、初めてレ級が演習を行った時と

ほとんど同じ状況ではあるが

臨時大本営に集う面々の顔はひきつり

陸軍の将校に至っては、冷や汗をかいている。

 

何故かと言えば。

 

「御集り頂きまして、誠に感謝いたします。

 深海の船を代表してお礼申し上げますわ」

 

まさかの「飛行場姫(鹵獲)」が同席しているからだ。

 

「皆さま、緊張せずに、というのは無理でしょうが

 今、私飛行場姫は、横須賀に鹵獲されている身。

 武器も艤装もありません。」

 

飛行場姫は、笑顔を浮かべたまま一礼する。

そして、横須賀の提督がフォローのために

椅子から立ち上がり、口を開いていた。

 

「武器も艤装もないのは、私、横須賀の提督が保障致しましょう。

 鹵獲後、約1カ月。人的、機械的損害もありませんので

 皆さま、緊張するとは思いますがどうぞ、ご安心なさってください」

 

横須賀の提督と、飛行場姫が一礼を行うと、

一瞬ざわめきが大本営を包んだものの

提督や将校たちが応じ、会議の始まりを告げた。

 

「さて、今回、再度御集り頂いたのは電信でお伝えした通り、

 カメラを持ったレ級フラッグシップ改と、

 我が帝国海軍最高錬度の戦艦、

 呉鎮守府所属である「戦艦金剛」の演習のためです。

 ・・・大和、飛行場姫殿、資料を皆様に。」

 

横須賀鎮守府の提督の言葉に、秘書官である大和と鹵獲艦である飛行場姫は

着席している将校と天皇に資料を配布していく。

特に飛行場姫から資料を受け取った天皇は

流石にその顔にひきつった笑みを浮かべていた。

 

「あら、天皇陛下。そんな顔を浮かべられると、悲しくなってしまいますわ。

 私も負の部分とは言え、日本帝国海軍の魂を持っていますので。」

 

飛行場姫の言葉に、天皇は表情を正し、飛行場姫を見据え直していた。

 

「ふふ、それでこそ我らの天皇陛下です。

 我らが命を捨ててでも仕えるべき方です。

 そのご尊顔を拝することが出来ただけでも、

 ここ横須賀に留まっている価値がありました。」

 

飛行場姫はそう小さな声で呟くと、他の将校へと歩みをすすめ

資料の配布を再開していた。

天皇は、飛行場姫の白く細い体を、ただただ見つめ続けていた。

 

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「さて、飛行場姫殿と大和から資料を受け取って頂いたと思いますが」

 

横須賀の提督は、資料が回ったことを確認すると

資料を手に持ちながら、硬い表情で口を開く。

 

「今回の演習は、資料の通り、実弾演習となります。

 戦艦金剛は、我が海軍最高峰の武器「51cm砲」を搭載し

 最高の武装状態です。

 対して、戦艦レ級は、艦載機は封じてありますが

 大和型ですら一撃で大破に持ちこむ「深海型41cm砲」を搭載し

 他にも副砲や夜戦用のサーチライトを装備してある武装状態です」

 

提督の説明に、将校達は思わずうめきを上げる。

只でさえ、手に負えない戦艦レ級を相手に、こちらの最高戦力を、

しかもタイマンでぶち当てようと言うのだ。

 

あまりの演習内容に、誰も言葉を発せずに居たが、

陸軍の将校は、少し眉間にしわを寄せ、

提督を睨みつけながら、ゆっくりと言葉を発していた。

 

「提督殿。陸軍から一つ質問が。

 もし、武装しているレ級が反旗を翻し

 我々に攻撃した場合はいかがするおつもりなのか」

 

提督は、将校の目を見ながら、一字一句くっきりと

全員に聞こえるように口を開く。

 

「御心配も最もです。

 ですが、今回の演習は、金剛とレ級、双方の希望の元に

 成り立っております。そして、あのレ級は

 今のところ一切、此方側に被害を与えてはいません。」

 

「それはそうであるが・・・万が一ということも」

 

「もしレ級が暴走するようであれば、私が命を持って止めるわ。」

 

合わせるように、飛行場姫も口を開いていた。

レ級の上司から「命を持って止める」と言われてしまっては

陸軍の将校も、黙るしかない。

 

「特に異議が無いようであれば、金剛、レ級共に

 戦闘準備が整っておりますので、早速演習を始めたいと思っております。

 ・・そして、前回、我々はレ級の強さを目の当たりにして、SN作戦を企て、実行致しました、

 が、我々は今回、野暮なことをせずに、経過と結果だけを見届けたいと思っております。」

 

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横須賀鎮守府正面海域。

レ級フラッグシップ改と、戦艦金剛改二が

お互い、今現存する最高の装備を以て対峙していた。

 

「ウー。私から誘った実弾演習とはいえ、フル武装のレ級をみるト、

 思わず、怖気ずいてしまいマース・・・・」

 

金剛は少し青い顔で、レ級を見ながらぼそぼそと呟いていた。

 

「えぇー。びびりー?金剛びびりー?

 私がカメラを置いて武装するなんて、そうそう無いんだぜー。

 貴重なんだからさー。もうちょっと喜ぼうよー」

 

レ級は、カメラを鎮守府の姫に預け

艦載機以外のフルの武装である。

しかも、目からは蒼いオーラを発し

全身からは金色のオーラをたぎらせている状態だ。

 

いくら歴戦の金剛とはいえ、深海棲艦として力を完全に解放した

レ級の雰囲気に呑まれていた。

 

金剛は、オーラを滾らせるレ級を見ながら

青い顔になりつつ、小声でレ級に話しかける。

 

「びびりで良いデース・・・。

 ウウー。レ級ぅ。ヤッパリ、この演習なしってわけには・・・」

 

「いかないデース」

 

「デースかー・・・」

 

レ級に自身の口癖をまねされ、更に落ち込み、

肩を落とし顔を下げる戦艦金剛。

見かねたレ級は、金剛に語りかけるように、

敢えて、昔の口調で言葉を発する。

 

「金剛ォ。オマエサァ。私ヨリ強イ飛行場姫殴リ倒シタンダロォ?

 格下相手ニ弱気ニナルタァ。帝国海軍最強ノ名ハ嘘デ塗リ固メラレテンノカァ?

 流石大本営発表。嘘バッカリダナァ!」

 

レ級の、帝国海軍を舐め腐った言葉に思わず金剛は顔を上げる。

すると、金剛の瞳には、ニヤァリと、人を、艦娘を小馬鹿にするような笑みを浮かべ、

堂々と海面に立つ戦艦レ級フラッグシップ改が、しっかりと映っていた。

 

「はっ・・・。そんなことはないデース!

 私は帝国海軍最強の錬度を持つ金剛デース!大和にも負けまセーン!

 レ級ぅ!帝国海軍を馬鹿にしたその罪の思さ、

 その身にしっかりと叩き込んでさしあげマース!」

 

金剛は先程までの落ち込んだ弱気の姿勢から一転

眉間に血管を浮かべつつ、口角をニヤリと上げ、レ級に叫んでいた。

 

「クハハッ・・・!」

 

「ふふふあははっ!」

 

そして、二隻は同時に笑い声を上げる。

 

「金剛ぉ。そうだよ。そうこなくっちゃ。

 せっかくの私の全力だぜ?金剛が私の砲弾投げ返しマネしてんの知ってんだ。

 私からしっかり技術を盗めよぉ?」

 

「レ級ぅ。見っともないところみせマーシた。

 ですが、レ級。教官気どりデースかぁ?

 レ級こそ、私の動きを見てしっかりと勉強するといいのデース。

 レ級はまだまだ。動きが荒いのデース」

 

金剛とレ級は、お互いに目を見つめ

良い笑顔を浮かべながら、同時に口を開いていた。

 

そして、それと同時に、横須賀鎮守府提督の声が

横須賀鎮守府正面海域に、大音量で響いていた。

 

『金剛!レ級!準備は良いか?

 演習、始めるぞ!所定の位置へ着け!』

 

金剛とレ級は、良い笑顔のまま

お互いに背中を向け、約一〇〇メートルほど離れた位置に着く。

 

「レ級、先にいっておきマース。

 容赦はしまセン。全力で叩きのめして差し上げまショウ」

 

「はっ。それはこっちの台詞だ金剛ォ!」

 

お互いのボルテージが一気に上がる。

金剛からは煌煌(・・)がオーラのように立ちあがり

レ級のオーラは、一層その勢いを強めていた。

 

そして、その姿を確認した横須賀鎮守府の提督が

大声で、開始の合図を叫んでいた。

 

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『演習ぅ!開始ィ!』

 

開始の合図と共に、レ級と金剛は機関出力を最大にすると同時に

お互いの主砲に装填を行っていく。

海軍最新鋭の51cm連装砲と

深海の41cm三連装砲。

 

驚くことに、その装填速度はほぼ同時であった。

 

「51cm連装砲!」

「41cm三連装砲!」

 

「「一斉射ァ!テェー!」」

 

レ級と金剛の主砲が、同時に爆音を上げ

とんでもない熱量が2人を包んでいた。

 

そして、

 

「レ級うううううううううう!」

 

「金剛おぉおおおおお!」

 

金剛とレ級は、砲撃の爆発をもろともせずに、

機関最大出力のまま、お互いの距離を一気に詰める。

そして、互いに右腕を握り、引き絞ると

 

「「寝てろおおおおおおお!」」

 

と、完全なるクロスカウンターでお互いに

拳を顔面に叩き込んでいた。

 

ゴスン!!

 

鈍い音と共に、衝撃波が海を割り、

お互いの拳の威力で、お互いの顔から血が噴き出していた。

 

そして、その反動でお互いに後ろにのけぞった瞬間である

 

「「全砲塔、独立打方(・・・・)!ッテェー!」」

 

装填が完了していた主砲を、お互いに独立打方で全弾撃ち込んでいた。

 

威力で勝る51センチ砲、数で勝る41センチ砲。

お互いの胴体を捉え、同時に撃沈判定かと思った瞬間

 

金剛はレ級の放った41センチ砲6発(・・)

レ級は金剛の放った51センチ砲4発(・・)

 

両手で掴み、そして、投げ返していた。

 

ギャリイ!ギャリイ!ギャリィ!ギャリィ!

 

金剛が投げ返した弾丸は、レ級の投げ返した弾丸にぶち当たり

独特の金属音を上げ、威力が減衰され、ただの鉄の塊になっていく。

 

しかし、状況はここで代わる。

砲段投げ返しを行った場合、敵の砲弾が多いほうが

最終的に多くの手数を持てるのだ。

 

「レ級ぅ!とったぁデース!」

 

金剛はそう叫ぶと、レ級から発せられた41センチ砲弾の

5発目と6発目を掴むと体をひねり込み、

そのままレ級へと投げ返していた。

 

「チィッ!」

 

レ級は既に、金剛が撃った弾丸は、4発、全て投げ返しで

全て消費してしまっていた。

数で勝るレ級の41cm砲が仇になった形である。

 

だが、そこは戦艦レ級フラッグシップ改。

この程度のことで攻撃を食らう奴ではない。

 

レ級は、掴みも砲撃も、回避も間に合わないと見るや

自身の巨大な尾っぽを海面に思いっきり叩きつけ

海の水の壁を作っていた。

 

強力な戦艦の主砲といえど、水の壁には太刀打ちできず

金剛が投げ返した41cm砲の砲弾は、

レ級まで威力が残ったまま届くことは無かった。

 

そして、金剛とレ級は、そのまま一気に後退し

最初の位置まで戻っていた。

 

この間、僅か1分の出来事である。

 

「流石金剛ォ!他の艦娘トは違うナァ!」

 

「レ級ぅ!貴女も流石デース! 

 ここまで私の動きについてこれる艦娘、いないデースよ!」

 

お互いに壮絶な笑みを浮かべながら、大声で軽口を叩きあう。

深海の錬度最高峰と、艦娘の錬度最高峰の戦いの幕開けであった。

 

 

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演習開始、わずか1分。

横須賀鎮守府の観覧席では、将校、艦娘、職員、提督。

誰も言葉を発せられないでいた。

 

艦娘の中でも最大錬度を誇り、大和ですら打ち負かす金剛。

その金剛と、対等に張りあう、カメラを持っていた変なレ級。

 

高速で繰り広げられた一瞬の攻防に、誰もが見惚れていたのである。

 

 

カシャカシャカシャカシャ

 

「いいわねぇ。レ級。戦う貴女も十分魅力的じゃない」

 

只一人、カメラを持って、熱心に写真を撮る

飛行場姫を除いて、ではあるが。

 

「・・・飛行場姫殿、冷静に写真を撮っていらっしゃいますが

 レ級殿、強すぎでは?」

 

横須賀の提督が、小声で飛行場姫に話しかけていた。

その顔は、何とも言えない、苦笑のような

バツの悪そうな笑みを浮かべていた。

 

「そうかしら。レ級はいつもカメラを持っていたけれど

 大体こんな動きよ?ただねぇ・・・。」

 

飛行場姫はそう言うと、懐から6台のカメラを取り出していた。

 

「レ級がカメラを全て持たずに、戦場に出るのは初めてだから

 私の知らない実力を見せてくれるかもしれないわね。

 私を殴り倒した金剛と、何処まで行くのかしら・・・。

 ・・・そうねぇ。提督殿。今回の演習。

 良い結果になるよう、祈っていますわ」

 

そう呟く飛行場姫の顔は、非常に良い笑顔をしていた。

 

「ははぁ、飛行場姫殿も知らないレ級の実力、ですか。

 それは少しばかり、興味ありますな。

 演習の方は、まぁ、心配はしておりません。

 レ級殿、金剛ともども、良くできた船ですから。」

 

横須賀の提督も、少し笑みを浮かべ、金剛とレ級を見据えていた。




妄想捗りました。そこそこ真面目なレ級さんと金剛さんも、いいものです。


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