カメ子 レ級   作:灯火011

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大和とカメラ専門店で出会った戦艦レ級。

レ級の過ぎたいたずらに、怒っちゃった大和のご機嫌取りに

カメラ選びの手伝いを行うようです。

(ほんのりとぼかして描いています。)


103 我道を往く戦艦レ級+α その2

日本光學工業株式會社、通称「ニコン」。

九三式双眼や九七式狙撃眼鏡、

倒分像立体視式十五米二重測距儀といった

軍事産業の中核を担っていると言っても良い光学メーカーである。

 

特に、倒分像立体視式十五米二重測距儀は

戦艦大和・武蔵にも搭載され、その能力はかなり高い。

 

「私、ニコン製品の測距儀が搭載されてますので、できれば

 日本光學工業株式會社のカメラを使いたいのですが・・・」

 

『D4』を手に取りながら、大和はレ級に問いかけていた。

 

「んー、そうだなぁ。」

 

レ級は、大和の問いに、表情を曇らせながら上を向きつつ

じっくりと考えに浸っていた。

 

(私のカメラ、精機光学研究所の試験機って話ダシ

 大和、ずいぶん私のカメラの操作に慣れてたしなぁ。

 確か、ピントリングの操作が逆だし、

 あとピントの食いつきも違うんだよなぁ)

 

精機光学研究所、通称「キャノン」。

日本光學工業株式會社のレンズを用いて

国産初のレンジファインダーカメラを作った光学メーカーである。

 

余談ではあるが、現在、「ニコン」と「キヤノン」の

2大光学メーカーが、カメラ市場の

世界シェアの9割近くを占めていたりする。

 

「大和が何を求めるかによるなぁ。」

 

「私が、ですか?」

 

「そうそう。どんな写真を撮りたいか、っていうので

 選ぶ光学メーカーのオススメはかわってくるんだ。」

 

大和はレ級の言葉に、首をかしげながら言葉を続ける。

 

「そうなんですか?カメラって、どこでも同じなのでは・・・」

 

「あぁー、大和、それは違う。

 細かい所の性能で、結構各社特徴があるんだ」

 

レ級は、少し笑顔を浮かべながら

大和の顔の前に人差し指を立て、言葉を続ける。

 

「例えば、いま主流のデジタル。私の使ってるカメラだな。

 このタイプだと、私のカメラの中身は「キャノン」なんだ。」

 

「キャノン、ですか。このニコンとは違うのですね」

 

「違うんだなー。

 キャノンの特徴としては、動く相手に強くて

 白色が綺麗っていう感じだな。艦娘の肌とかすごい綺麗だぜ」

 

レ級はにやにやとしながら、大和の顔を見ながら言葉を続ける。

 

「で、ニコンはピントが正確で、黒に強いって言われてる。

 一回鎮守府でニコンの試作機借りて撮影してみたけど・・・・」

 

レ級はそういいながら、自身の格納庫からタブレットを取り出していた。

同時に、ささっと「ニコン」、「キャノン」というフォルダをタップし

「武蔵の砲撃の写真」を表示させていた。

 

「判りやすいのがこの写真だなぁ。

 同じ武蔵だけど。キャノンは肌が白くて綺麗だろ。

 ただ、艤装のディティールはちょっと甘い感じ。

 逆にニコンは、肌はそうでもないけど

 艤装とかのディティールや色味はすごく味がある感じ」

 

レ級は大和に説明しながら、タブレットの写真を大和に見せていた。

大和はまじまじと、レ級のタブレットに顔を近づけ、キャノンとニコンの

写真を見比べる。

キャノンは確かに、肌がきれいで美しい。

ニコンは逆に、髪の毛が美しく映写され、すごみがある写真と言える。

 

「確かに、かなり大きな違いがありますね。

 うーん・・・悩みます。」

 

レ級のタブレットを見ながら、大和は悩ましげに呟いていた。

写真の素人である大和からすれば、

どこのメーカーのカメラも同じように見えていたのだ。

そんな大和をみたレ級は、少し笑顔を浮かべ、大和に話しかけていた。

 

「まぁ、私は最初からキャノンの試作機しかなかったし。

 思い切って買いたいカメラ買っちゃうのがいいのかもしれないぜ」

 

「そう、ですね。

 それじゃあ・・・!」

 

大和は、目の前にあるカメラを手に取りレジへと足を向ける。

その手には、『D4S』と書かれたカメラと『35mm f/1.4G』のレンズが握られていた。

 

「ニコンにしたかぁ」

 

そうつぶやくレ級も、少し気になるカメラを、目の端に捉えていた。

 

「・・・?オリンパス、ペンF?」

 

世にも珍しい、ハーフサイズのカメラである。

そして、42mm F1.2という、大口径のレンズも、一緒になって販売されていた。

 

「なんだろう?買ってみようかなー」

 

レ級は、オリンパスのペンFを手に持つと、大和の後ろに続き

楽しそうな笑みを浮かべながら、レジに並んでいた。

 

深海に対する最大の戦力である横須賀鎮守府が鎮座する、横須賀の街。

そんな街を、深海の船がのんびり闊歩する、そんな日常である。

 

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横須賀の街が時間にして1900を過ぎ、照明が煌々とともっている頃、

 

「戦艦レ級」と呼ばれる彼女と

「戦艦大和」と呼ばれる、日本帝国軍最強の戦艦が

横須賀の街の中、遠くを見つめながら

大和と共二隻でぽつーんと立っていた。

 

「迷い、ましたね」

 

「迷ったなぁ・・・・」

 

そうつぶやく二隻の手には、

○○○カメラと書かれた黒い紙袋が握られていた。

 

実はこの戦艦レ級と戦艦大和。

お互いに、横須賀に来てからまだ日が浅い。

それ故に、鎮守府への帰り道で迷ってしまっていた。

 

「そういえばレ級さん。レ級さんもカメラ購入してましたよね?

 どんなカメラを買ったんですか?」

 

「お?そういえば見せてなかったっけ。

 えーっとねぇ」

 

ごそごそ、と黒い紙袋の中をあさり

緩衝剤に包まれたカメラとレンズを取り出すレ級。

そして、レ級は緩衝剤をカメラとレンズから全て取り外すと

カチリと、カメラ本体にレンズを嵌め、大和に手渡していた。

 

「オリンパスっていうところの、ハーフサイズのペンFっていうカメラらしいんだ。」

 

大和の頭の中に疑問が浮かぶ。

 

「ハーフサイズ・・・ですか?」

 

「そうそう。ハーフサイズ。

 ええっとねぇ。普通さ、フィルムって1コマに1枚の写真でしょ?」

 

大和はレ級の言葉に、頷きながら口を開く。

 

「そう、ですね。普通のフィルムのカメラはそうです。」

 

レ級は、大和を見ながら、笑みを浮かべつつ、更に口を開いていた。

 

「ハーフカメラは、1コマに2枚の写真を撮影できるようにしたカメラ、なんだ。

 だから、ハーフカメラっていう、みたい。

 36枚のフィルムだったら、72枚撮影できるって感じだなぁ」

 

「へぇ。便利なんですね。しかも。ちょっとかわいいですね」

 

大和はレ級の言葉に感心しながら、ペンFをレ級に返していた。

レ級はペンFを受け取ると、構えながらぼそりと呟く。

 

「だなぁ。手にすっぽり収まるし。」

 

ペンFのファインダーを覗いたレ級は、何かを思いついたような顔で

大和に勢いよく話しかけていた。

 

「あぁ、そうだ大和。せっかくだから、買ったカメラで

 横須賀の街並を撮影していこうぜ」

 

大和は少し考えるも、

 

(道に迷ってますし、そうですね。

 写真撮りながら、道を聞きつつ鎮守府に帰るのもありですね!)

 

そう納得し、レ級に対して、笑顔で口を開いていた。

 

「・・・いいですね!まだ今日は時間ありますし。

 帰り道を探しながら、撮影してみましょうか」

 

大和はごそごそと、黒い紙袋からカメラの箱を取り出すと

その場でセッティングを行い始めていた。

大型の四角の黒いカメラに、大口径レンズである35mm f/1.4Gを取りつけ

電源を入れる。

 

 

レ級は、そんな大和を尻目に、黒い紙袋の中から

リバーサルフィルムを取り出すと、素早い手つきで

ペンFにフィルムを取りつけていく。

 

フィルム室の裏ぶたを開け、フィルムをパトローネ室にセットし

ガイドレールに少しフィルムを引っ張り出していく。

そして、フィルムの先端であるリーダー部をスプールにセットし

数回、フィルムがまかれたことを確認するために

フィルム巻き上げレバーを動かし、シャッターを切る。

レ級は、無事にフィルムが巻き上げられていることを確認すると

ペンFの裏ぶたを閉じ、フィルムの感度を設定し、早速ファインダーをのぞく。

 

 

「ふふ、久しぶりにわくわくするぜー。

 おお、流石42mm F1.2。暗くなっても明るいぜー!

 さぁ、フィルムでしかもハーフサイズ、どんな絵がでるのかなぁ!」

 

「ふふっ。楽しそうですね。それじゃあ。私もっ!」

 

大和はそういうと、D4Sを構え、楽しそうに写真を撮るレ級に、

ピントを合わせシャッターを切っていた。

 

ガシャン。

 

重いシャッター音と共に、画像がカメラに記憶されていく。

そして、カメラのディスプレイに、プレビューとして写真が表示される。

 

『楽しそうな子供のような顔を浮かべ、

一心不乱にカメラを構える色白な可憐な少女。』

が映し出されていた。

 

そのレ級の美しさは、横須賀の夜景と相まって、

妖精のようである。

 

大和はその写真をカメラで確認すると、

 

「ふふ、やっぱり、写真を撮っている時の

 レ級さんはより一層、魅力的ですね。」

 

ぼそりと、満足そうに笑みを浮かべ、呟いていた。




妄想、久しぶりに捗りました。
時折短編で続けていくと思いますので、よろしければご覧ください。

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