カメ子 レ級   作:灯火011

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「戦艦レ級(カメコ)」

大火力をすべて捨て去り、その身体能力を艦娘撮影に全力で使う彼女。

趣味に生きる彼女は、どこまで辿り着くのでしょうか。


102 我道を往く戦艦レ級+α その1

「戦艦レ級」

 

深海棲艦と呼ばれる存在の中でも特に上位種に位置する艦種である。

 

数多くの艦娘を沈め、提督を苦しめている最悪の敵と言って良い。

なにせ、開幕の航空戦、そのあとの魚雷、そして砲雷撃戦、対潜戦闘と

全てにおいて高水準で纏まっている敵である。

 

 

「戦艦レ級」

・・・と呼ばれる彼女が

「戦艦大和」

と呼ばれる、日本帝国軍最強の戦艦の脇で

横須賀の街の中、遠くを見つめながら

大和と共二隻でぽつーんと立っていた。

 

「迷い、ましたね」

 

「迷ったなぁ・・・・」

 

そうつぶやく二隻の手には、

○○○カメラと書かれた黒い紙袋が握られていた。

 

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さて、SN作戦終了後、横須賀鎮守府ではとんでもない珍事が起きていた。

なんと、大和と横須賀鎮守府の提督が、敵の深海棲艦を鹵獲してきたのである。

しかもただの深海棲艦ではない。

 

「青葉。やっぱりお風呂はいいわねぇ・・。

 深海のドックとは大違いね。いつも海水に修復剤いれてたから。」

 

「あら、そうなんですねぇ・・・・!深海の秘密、また一つ知っちゃいました!

 それにしても、飛行場姫さんは御風呂に入る姿も様になってますねぇ!」

 

「・・・そうかしら?私は別にいつもの通りなんだけど」

 

「いやいやっ!長い手足に、白い肌っ!堂々としたそのお姿!

 そして長い白髪を束ねてアップにしているいつもと違う姿っ!

 ギャップも相まって最高です!」

 

「・・・そこまでほめても何も出ないわよ?

 ま、悪い気はしないけど」

 

飛行場姫という、深海棲艦の中でも特にぶっ飛んだ船を鹵獲してきたのだ。

しかも、全く敵意がないという、前代未聞の状況である。

もちろん、大本営にもその報はすぐに入ったが

 

『監視は横須賀鎮守府にて行う事。

 そのほかの処分も全て横須賀鎮守府に一任す』

(SN作戦で潰そうとしたのになんで生きてるの?

 もう無理。手におえないんで任せた)

 

という命令書が横須賀の提督のもとに届き

今では、飛行場姫は捕虜でありながらも

かなり自由に横須賀の土地を闊歩できる立場になっていた。

 

「それはそうと飛行場姫さん!

 次の演習、改装された5航戦と、歴戦の1航戦の航空戦らしいですよ!

 飛行場姫さんも腕が鳴るんじゃないですか!?」

 

興奮気味に、笑顔で飛行場姫に話しかける

青葉は飛行場姫とかなり仲良くなっていた。

何せ、同じカメラが趣味の船同士である。

深海棲艦だろうが、艦娘であろうが

意気投合するのは仕方がないことであった。

 

「そうなんだけどねぇ・・・」

 

飛行場姫は困ったように苦笑を浮かべながら口を開く。

 

「レ級が戻ってきたでしょう?しかも、気づけば、

 戦艦大和がカメラの魅力に取りつかれているんだもの。

 カメラマンが多くて、プレッシャーが半端ないわ」

 

青葉は飛行場姫の言葉に、がっくりと肩を落とし

 

「あぁー・・・。そうでした。

 しかも大和さん、飲み込み早いですよねー。

 なまじ耐久力と攻撃力と馬力があるので

 普通の艦娘では撮影できないような場所にもいってますしね」

 

しょんぼりとした表情を浮かべ、呟く青葉の脳裏には

 

『やりました!青葉っ!レ級の言うとおりにしたら

 こんな写真が撮れましたぁ!』

 

と、レ級のタブレットを持ち、自慢げに撮れた写真を青葉に見せる

戦艦大和の姿が思い出されていた。

しかも、タブレットに写っていた写真は

「血を流しながらも、凄まじい表情で拳を振りかぶるエリートレ級」

という前代未聞のド迫力写真である。

 

『一発、エリートのレ級に殴られたんですがっ!

 その直前にレ級さんのカメラで一枚撮れたんです!

 確認したらこんなに迫力のある写真がっ!』

 

青葉に凄まじい勢いで自慢してきた戦艦大和の姿を

思い出しながら、青葉は更にため息を付いていた。

 

「はぁー。飛行場姫さんに続いて、大和さんも写真を始めるなんて。

 レ級さんの影響、はんぱないですねぇ。」

 

飛行場姫は、肩を落としながら呟く青葉を視界におさめつつ

苦笑を浮かべながら、口を開く。

 

「まぁ、仕方ないわよ。レ級の写真を見たら

 『私もちょっと写真、やってみたいな』って思っちゃうじゃない。

 気を落さずにいきましょう。

 大和よりも、青葉の方が経験年数も場数も多いんだから。

 私は基本的に海に出れないから、戦闘中における

 いざっていう時の写真は、青葉、あなたが撮影するのよ?

 なにより、カメラ人口が増えるのは好ましいことじゃなくて?」

 

青葉は、飛行場姫の言葉に、顔を上げ口を開く。

 

「そう、ですよね!

 カメラ好きが増えるのはいいことです!

 ・・・私が出会えないシチュエーションに、

 出会える大和さんには、少し嫉妬しちゃいます・・・がっ!

 私は私の撮れる写真で勝負すればいいんですもんね!」

 

青葉の顔は、先ほどまでのしょんぼりした表情とは一変、

にこにこの笑顔に変わっていた。

 

「そうそう。それでこそ青葉だわ。

 ねぇ、青葉。そろそろきりも良いから、お風呂出ない?

 飲み物、おごるわよ」

 

飛行場姫はニコニコ顔の青葉を確認すると

風呂をあがろうと青葉に声をかけていた。

飛行場姫も、青葉も、よく見れば顔が赤くなり

少しふらついていた。

 

「本当ですか!一緒に出ましょう!

 あ、私はフルーツ牛乳でお願いします!」

 

青葉は、ザッバァ!と勢いよくお湯から出ると

早足で脱衣所へと足を向けていた。

 

「こらこら、青葉。体はちゃんと拭きなさい。

 フルーツ牛乳は逃げはしないわ」

 

「はぁーい!」

 

青葉は飛行場姫の言葉に、おとなしく体をふき始めていた。

そんな光景を眺めながら飛行場姫も、ゆっくりと風呂から体を引き上げる。

 

ザバァ

 

そんな音と共に、飛行場姫の裸体が露わになっていた。

きめ細やかな白い肌、絹のような白い髪、そして真紅の瞳。

芸術品のような逸品である。

 

「あぁ、あっついわ。

 浸かり過ぎたわね・・・。今日はコーヒー牛乳かしら」

 

体をふきながら、飛行場姫はそう呟きながら

ゆっくりと、白いおみ足を脱衣所へと向けていた。

 

横須賀鎮守府、風呂場。

鹵獲されている飛行場姫の、日常の一端である。

 

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横須賀鎮守府の風呂場で青葉と飛行場姫が風呂場に入っているころ

とある一隻の船、小柄でパーカー姿の色白の少女が横須賀の街に繰り出し

街中を歩いていた憲兵に声をかけていた。

 

「すいませーん。○○○カメラってどこでしょーかー」

 

「○○○カメラ?あぁ、この道を真っ直ぐ行けばあるぞ。」

 

憲兵は、少女の言葉に、指をさしながら言葉を返す。

 

「ありがとうございまーす!」

 

少女は、にっこにこの笑顔を浮かべながら、憲兵にお礼を言う。

憲兵は、少女の笑顔に、思わず笑顔になりながら口を開いていた。

 

「気にするな。気を付けてなー」

 

色白の少女はトコトコと道を真っ直ぐ進む。

すると、憲兵の言った通り、「○○○カメラ」と看板が掲げられた

カメラ専門店が見えてきた。

 

「おお。これが人類のカメラ専門店かぁ!」

 

店の前で叫ぶ色白の少女の声に、道行く人が視線を向ける。

色白の少女の外見は、黒色のパーカーを羽織り、

首元にはネックウォーマーを付け

パーカーの下には黒のインナーを着込んでいる少女である。

そこまでは良い。

 

特徴的な尻尾が、少女の背中から伸び

先端部分の頭と思わしき部分が、少女の頭に乗っかっているのである。

 

一般人から見れば「化け物」と見えかねない姿であるが

ここは艦娘が闊歩する最大拠点、横須賀の街である。

『あぁ、人類って言うってことは新しい艦娘かな』

『海軍がまた変なの作ったのか?』

『わぁ、髪さらっさらでかわいい』

『瞳が綺麗だなあ』

などなど、好意的な目で、色白の少女を見つめていたのである。

さながら「初めてのお使い」を見る大人たちの目線である。

 

そんな視線を無視して、色白の少女は○○○カメラの

案内板をじっくりと検証していた。

 

「ほうほう・・・地下1階がライカの専門フロアか。

 ビスマルク達がもってたなぁ。

 頑丈だったし、いい味だしてたなー。

 3階が、日本光學工業株式會社と榎本光学精機、

 あと理研感光紙株式会社と、旭光学工業株式会社か。

 何か聞いたことあるな。確か、大和の測距儀って

 日本光學工業株式會社だっけ・・・?」

 

日本光學工業株式會社。

レ級の脳裏に大和の名前が浮かぶ。

 

「そういえば、最近大和、自分のカメラ欲しいとかいってたなぁ。

 今日、大和非番だったし、もしかしたら店の中にいたりして!」

 

色白の少女は、案内板を横目に、笑顔で階段を昇って行く。

3Fまで来たところで、レ級はそーっと、店の中を覗いていた。

 

「大和、大和ぉっと」

 

色白の少女は、目を皿のようにして店の手前から奥まで索敵を行う。

するとよく見知った長身の女性が『D4』と書かれたカメラを手に、

 

「うーん、このカメラ、レ級の持っていたカメラに近いわね・・・」

 

ひとり呟いている姿を見つけたのである。

 

「おお!大和っ!本当にいたっ!」

 

長身の女性・・・大和の姿を見るや否や、色白の少女は

勢いよく動きだし、大和の横に立ち、声をかけていた。

 

「ううん、でも、こっちの『S』っていうのも・・・」

 

「大和ぉ!こんなところでどうしたぁ!?」

 

「わぁっ!」

 

大和はいきなり声をかけられた驚きから、

ビクっとしながら思わず叫んでいた。

 

「あははは!大和ぉ。びびりすぎだってば」

 

大和が声の主を知ろうと、少し怒った顔で顔を横に振る。

すると、そこにいたのは、良く見慣れた色白の少女であった。

 

「・・・レ級さんっ!?」

 

「あはははっ。大和ぉ、『うわぁっ!』って!あははっ!」

 

色白の少女・・・否、戦艦レ級フラッグシップ改は

大和の横で、涙を浮かべながら大声で笑い続けていた。

大和は、レ級からからかわれたと気づくと

顔を真っ赤にしながら、レ級に叫んでいた。

 

「レ級さんっ!そんなに笑わないでくださいっ!」

 

大和の叫びに、カメラ屋の中にいた他の一般人と店員が一斉に振り向く。

その視線に気づいた大和は

 

「あっ・・・す、すいませんっ」

 

更に赤い顔になりながら、周囲に頭を下げるのであった。

 

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「悪かったって、大和ぉ・・・・」

 

「知りませんっ」

 

戦艦レ級は、カメラ屋の中で気まずそうな雰囲気で大和につき従っていた。

 

「からかい過ぎたって。ごめんよぉ」

 

少し涙目になりながら、レ級は大和に謝り続けていた。

傍から見れば、大柄なお姉さんに謝る妹のような光景である。

大和は一つため息を付くと、レ級に顔を向き、口を開く。

 

「仕方ないですね・・・。それじゃあ、私のカメラ選び

 手伝ってくれたら、許してあげます」

 

「おぉ、本当かっ。大和ぉ!いくらでも教える!」

 

大和の言葉に、笑顔になるレ級。

その光景を傍から見ている一般人は

 

(あの姉妹、かわいいなぁ)

 

と、ほっこりしていたのは、完全なる余談である。

 

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妄想捗りました。

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