大火力をすべて捨て去り、その身体能力を艦娘撮影に全力で使う彼女。
深海の異端児である彼女は、深海棲艦にとってどんな存在なのだろうか。
「戦艦レ級」
深海棲艦と呼ばれる存在の中でも特に上位種に位置する艦種である。
数多くの艦娘を沈め、提督を苦しめている最悪の敵と言って良い。
なにせ、開幕の航空戦、そのあとの魚雷、そして砲雷撃戦、対潜戦闘と
全てにおいて高水準で纏まっている、深海棲艦である。
「戦艦レ級」
・・・と呼ばれる彼女たちの中でも、特に異端児とされるレ級がいる。
戦場の艦娘のシャッターチャンスを狙っている個体だ。
その装備と言えば、通常であれば兵器が入るべきスペースには
広角・標準・望遠のズームレンズと、
35ミリ、50ミリ、85ミリの単焦点レンズを装備した
デジタル一眼レフがホルスターに取りつけられ入っている。
更に、格納庫には各種充電設備と、記憶媒体、タブレットが鎮座し
51cm砲があるべき部分には、夜戦撮影用のサーチライトが取りつけてある。
つまりは、写真を撮るために全ての武装を外しているのである。
「戦えないレ級」
艦娘や人間を攻撃する深海棲艦の中では、相当な異端児である。
その行動だけみれば裏切り者にも近いが、
決して深海棲艦と敵対しているわけではない。
朝から出撃し、燃料が切れるまで艦娘の写真を撮りまくるこのレ級。
その量と言えば、一日に最低でも数百枚、ひどい時は数千枚を超えるのだ。
それだけの写真を撮るこのレ級は、シャッターチャンスを物にするために
「○○鎮守府所属の○○艦娘は錬度が○○で
○○を装備していて、かつ○○という戦術が得意。
常に○○と行動し、いつも○○から○○を通り○○という航路を進軍する」
その戦術をほぼ把握しきっているのだ。
深海棲艦にとっては最高の情報源である。
しかも、その時々の写真まで存在しているため
「コノ艦娘ノ砲撃ハ強力、一番ニ狙ワナケレバナラナイ」
「コノ艦娘ハ夜戦ニモチコマレタラ、ヤッカイ」
「コノ艦娘ハ・・・新型カ!コチラモ開発ヲイソガネバ・・・・」
などなど、深海棲艦の情報共有にも非常に役立っている。
その情報能力の高さ、そして資料の有用さ故に
戦わなくても深海棲艦として認められているのだ。
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カシャカシャ
とある場所で、カメラのシャッター音が響く。
「ウーン・・・?どウもピンとが合わないナ、前ピンばっかりだ」
0400、レ級の拠点である。
レ級は今、作業台に向かい、椅子に座りながら
絶賛カメラの手入れ中であった。
どうやらレンズのオートフォーカスが狂っていたようだ。
「アジャストかけて・・・どレ、もう一回。」
測定用の器具にフォーカスを合わせシャッターを切る。
と、同時に、先程までとは違う、狙った場所にピントが合い
カリっとした映写をする写真がモニターには映っていた。
「おぉ・・いいねいいネ!イヨし、そレじゃあ、早速出撃ダ!」
彼女は椅子から颯爽と立ち上がり、ホルスターにカメラを収納していく。
その数は、6つ。
各種シチュエーションにこたえられるように、彼女が独自にチョイスしたレンズとカメラだ。
カメラ自体は6台とも同じもの。外部ストロボ付き。
レンズは各種ズームレンズ3本と、単焦点3本。
人間の価値にすれば、恐らく500万は下らない装備だ。
そんな高級なカメラ一式が入ったホルスターを無造作に肩にかけて
颯爽と拠点を後にするレ級。
今日も彼女は艦娘をビビらせながら、自分の好きな写真を撮るため、
戦場を駆けまわっていくのであった。
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