カメ子 レ級   作:灯火011

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完全なる番外・蛇足編です。


「飛行場姫」

大火力と耐久力を兼ね備え、艦娘と戦う海域の長。

レ級が金髪の艦娘を撮りにドイツに向かったさなか

第二次SN作戦後、彼女はどこにいったのでしょうか。


第三章 我が道を進む船達 アフター
101 蛇足編 カメ子 飛行場姫


「静かな海になったわねぇ」

 

崩壊した拠点の残骸に一人、ぽつーんと座り、

艦娘の砲撃によって破壊された自分の艤装と

目の前に広がる青い海と、青い空を見ながら

飛行場姫は呟いていた。

 

「レ級も随分、私たちを撮影してたようだし。

 まぁー。私もこれから暫くは、隠居生活かしらねぇ」

 

その顔は、艦娘に拠点を叩き潰された割には

すがすがしい笑顔であった。

 

「それにしても、レ級も粋な事をしてくれるわね。」

 

飛行場姫は、呟きながら、戦闘中にレ級から投げ渡された

12-150ミリレンズ(フルサイズ換算24-300ミリ)装着済みの

ミラーレス一眼カメラをその手に握っていた。

 

『姫様ァ!撮る写真トったから!私ちょっとドイツまデ金髪の艦娘撮ってクルー!

 適当に帰ってクるから、コレで好きな写真とっといテ下さイ!』

 

そう言って笑顔で、尻尾に北方棲姫を乗せながら、カメラを投げてきた戦艦レ級。

飛行場姫は、そんなレ級の姿を思い出すだけで、顔に笑みを浮かべていた。

 

「あの馬鹿(レ級)のせいで、下手に沈みたくなくなったじゃない。

 あぁもう。早く艦娘の写真を撮りたいわぁ」

 

渡されたカメラには、飛行場姫を含めた多数の姫達の戦闘シーンが収められていた。

飛行場姫は再生ボタンを押し、次々と画像を見ていく。

 

駆逐棲姫のホバーで海上をしながらも砲撃を行う姿

軽巡棲鬼の美しく、妖艶な戦闘中の横顔

飛行場姫が腕を振り、それと同時に艦載機を一気に発艦させる姿

それに応じるように、赤城と加賀が艦載機を発艦させる姿。

戦艦棲姫と長門が真正面から殴りあう姿

空母棲姫が血まみれになりながらも、艦娘に最後の特攻を仕掛ける姿

防空棲姫が空を睨みながら、艦載機を次々と落としていく姿。

 

そして、防空棲姫が沈むと同時に、照月となって再誕する美しい姿。

 

余すところなく、戦場がカメラに記録されていた。

 

「フフ、いいわねぇ。 

 それにしても、何時の間にこれだけの写真を撮っていたのかしら。」

 

飛行場姫は首をかしげつつも、笑顔になりながら、レ級の写真に見入っていた。

そして、カメラの画像が一巡したところで、飛行場姫は空を見上げ一人呟く。

 

「まぁ、そうねぇ。それはそうとしてもねぇ・・・・

 これからどうしようかしら」

 

飛行場姫は、破壊された自身の拠点を見渡しながら途方に暮れていた。

何せ、艤装は完全に破壊され、自身の体にも多少なりともダメージが残っている。

そして、他の姫や深海棲艦は、艦娘により、ほとんどが沈むか、

より奥地の基地に撤退を余儀なくされているのだ。

 

つまり今、アイアンボトムサウンドに残されているのは飛行場姫のみである。

 

飛行場姫は、拠点の残骸を一瞥し

 

「ここにいても仕方ないかしらねぇ・・・・。

 そうだ、レ級の拠点にでも行ってみましょうか。

 何か使えるものがあるかもしれないしねぇ。」

 

呟きながら、レ級の拠点があった場所に向かうのであった。

 

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飛行場姫は、艤装を失い、海上を移動できなくなっている。

そのため、陸地を遠回りしながら、

やっとの思いでレ級の拠点へとたどり着いていた。

 

だが、レ級の拠点も、見事に艦娘の砲撃によって破壊され、

レ級と2隻で写真を見ていた頃の拠点は、見る影もない。

 

「あらぁ。レ級の拠点も破壊されつくしてるわね。

 これじゃあ、何も期待できないかしら」

 

飛行場姫は呟きつつも、レ級の拠点だった場所の確認をしていく。

拠点の天井は完全に抜け落ち、上空から気持ちのいい太陽の光が差し込んでいる。、

更に、レ級がカメラのメンテナンスをしていた机も、木端微塵となり、

レ級がミノムシスタイルで、カメラに撮られたベッドも焼け落ちていた。

 

「艦娘も随分、徹底的に砲撃したわねぇ。

 敵の拠点とはいっても、やりすぎのような気もするわね」

 

飛行場姫は、レ級の拠点の惨状を確認しながら、

少し険しい顔で一人呟いていた。

そして、飛行場姫はジャリ、ジャリと一歩一歩、崩壊した拠点を歩く。

その姿は、飛行場姫の白い姿と、崩落した拠点が相まって

芸術品の様な美しさを醸し出していた。

 

「あら・・?これは」

 

ジャリ、と飛行場姫の足が止まる。

姫の目の前には、レ級がカメラを持ってから不要になっていた

レ級の武装が転がっていた。

 

(レ級は暫く帰ってこないし、武装を頂いていきましょうか。

 最悪、海に浮かべる装備があれば、なんとかできるかしらね)

 

飛行場姫は、使えそうな武装を漁っていく。

 

「レ級の主砲ね。3連装砲が2門と・・・あと艦載機が少し。

 ・・・・あら?それに、これは」

 

すると、武装以外にもとあるものを発見する。

 

飛行場姫はレ級の武装をどかし、その奥にあった

≪修復≫と書かれた、中身入りのバケツを取り出していた。

 

「あら。レ級ったら、いいものを持ってるじゃない。

 艤装に使えば、ひとまずは動けるようになりそうね」

 

少し笑顔で呟くと、飛行場姫は、両手に持てるだけの

レ級の武装と、修復バケツを持って、自身の拠点へと歩みを進めていた。

 

そして、拠点に戻る途中、飛行場姫はその歩みを少し止めていた。

 

「ハァ、ハァ、レ級の装備も、陸路で運ぶと、重いわねぇ・・・!」

 

飛行場姫は、飛行場とはいえ、船である。

陸路で物資を運ぶのは、相当な労働なのだ。

 

「はぁー。少し、休憩しようかしら」

 

飛行場姫は、肩で息をしながら、

レ級の装備と、バケツをその場に静かに置き、その場に座り込んだ。

 

「はぁー。はぁー。疲れたわぁ・・・・。

 それにしても、陸を行くのも、気持ち良いわねぇ」

 

座り込んだままの飛行場姫は、レ級のミラーレスのカメラを取り出し

丁寧に構え、ファインダーを覗き、シャッターを切る。

 

カシャン。

 

すると、ディスプレイには、抜けるような蒼い空と

深い色のジャングルが映っていた。

 

「あら、このカメラもいい色を出すのね。

 悪くないわ。うーん、良い風景だけに、誰かをモデルにして撮影したいわね」

 

綺麗な景色を撮影した飛行場姫は、この景色の中で写真を撮影したくなっていた。

何せ、静かな南の島だ。今は艦娘が闊歩する場所であるり、

深海の姫にとっては最悪の場所であるが

写真を撮るためのロケーションだけは最高である。

 

「あぁ、レ級がいればレ級をモデルに、一枚撮影するんだけどねぇ。

 うぅん。他の姫もいないし、諦めるしかないかしら」

 

飛行場姫は、少ししょんぼりした顔で、呟いていた。

そして、そろそろ休憩を終わりにして、

自身の拠点へと歩みを再開しようとしたときである。

 

『おや、もしや、そこにいるのは飛行場姫殿では?』

 

見たことのある人間が、傍らに大和を従え、飛行場姫に声をかけていた。

その姿をみた飛行場姫は、表情を硬くし、その人間に話しかけていた。

 

「あら、これは、横須賀の提督殿。それに大和。

 先の海戦では強烈な46cm砲をありがとう。

 ・・・・深海の船の掃討作戦中かしら?」

 

そう言われた横須賀の提督は、顔をぽりぽりとかきながら

困った顔で、飛行場姫に話しかけていた。

 

『えぇ、正解です。

 陸地に上がっている船がいる、という情報が上がって来ましてね。

 まさか、飛行場姫殿だったとは予想外でした』

 

「そう、それならば、私は艤装と武装を全て破壊されていてね。

 今、何もできないわよ?

 鹵獲するにしても、破壊するにしても、好きにしたらいいわ。

 提督殿、あなた達に私の命をゆだねるわ」

 

飛行場姫は、両手を広げ、提督と大和に話しかけていた。

それをみた大和と提督は、呆けた顔で少し固まった後

2人は目配せをして、提督が飛行場姫に、話しかけていた。

 

『そうですねぇ。本来であれば、知り合いという事で

 見逃すという選択もなきにしもあらず、なのですが

 飛行場姫殿をここで逃がすと

 後々、我が日本帝国海軍に多大な被害が生まれるでしょう』

 

ふむ、と飛行場姫は相槌を打ちながら

 

「間違いないわね。

 私はこれから艤装を直して、ほかの姫を合流しようとしているわ」

 

少し笑みをうかべつつ、提督にそう答えていた。

それを受けた提督は、少し険しい顔になりながらも、口を開いていた。

 

『そうですか、それでは見逃すわけには参りませんな。

 大和、飛行場姫を確保しろ。

 我が横須賀鎮守府まで連れ帰れ。』

 

大和は提督の台詞を受け、飛行場姫に近づき

手首に、縄を縛り付けた。

その間、飛行場姫は、おとなしく目を閉じ、

静かに大和に従っていた。

 

『飛行場姫殿。それでは、参りましょう。』

 

「えぇ、わかったわ。」

 

提督の言葉に、静かに答え、歩き始める飛行場姫。

その後ろ姿は、若干寂しそうであり、哀愁漂う姿であった。

 

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横須賀鎮守府の演習場では、ドォンドォンという、艦娘が演習を行う音と

カシャンカシャンと、カメラのシャッターが切れる音が響いていた。

 

「大和ォ!甘いデース!砲撃で私を倒せるなんてナッシングと思ってくだサーイ!」

 

「出鱈目です金剛さん!46センチの砲弾を殴って弾くなんて!」

 

そんな叫び声が響く、演習場の近くの桟橋では、2人の人影が並んで話していた。

 

一人は横須賀鎮守府の提督であり、

もう一人はカメラを持った飛行場姫である。

 

飛行場姫はカメラを構え、ファインダーを覗きながらも、

横須賀の提督に話しかけていた。

 

「それで、なぜ私は演習の写真を撮影しているのかしら?提督殿」

 

『それは、まぁ、飛行場姫殿は、カメラをもっていますからな』

 

飛行場姫は提督の言葉に、ファンダーから目を外し

提督の顔を見ながら、口を開いた。

 

「そう。・・・それはそうだけどねぇ。でもね、私は敵の深海の姫よ?。」

 

『そうですな、ですが今、飛行場姫殿は、艤装もなにもつけておりませんからな』

 

「確かにそうだけどねぇ。でも、提督殿、私の処分は一体どうなっているのかしら」

 

『「カメラを持って写真を撮影し、艦娘の能力向上に協力せよ。」

 先もそう説明したではありませんか、飛行場姫殿』

 

「そう、世迷い事かと思っていたけれど

 聞き間違えではなかったのね。

 まぁ、そういうことなら。

 私も写真を撮れる分には、大きな不満はないわよ」

 

飛行場姫はそういうと、改めてカメラを構えて

ファインダーを覗き、シャッターを切っていく。

 

カシャシャシャシャシャシャ

 

気持ちのいいミラーレス一眼の音が演習場に響く。

 

大和と武蔵が、赤城と加賀の航空機の雷撃を避けつつも、46cm砲を撃つ様や

雪風、島風が波間を切って進んでいく勇ましい姿、

更に、呉から横須賀に出張し、演習に参加している金剛が、46cm砲の弾丸をぶん殴り

砲撃を避けていく鬼のような姿などなど

 

多くの写真が撮影されていく。

 

そして、横須賀の提督は、顔に笑顔を浮かべながら、

真剣に写真を撮影する飛行場姫に問いかけていた。

 

『お互いに利害が一致しているという事で

 まぁ、しばらくはおとなしく、

 横須賀に鹵獲されたままで過ごして頂けませんかね?

 あと、こちらの事情にはなるんですが

 貴方が前回の演習で撮影した写真なんですけどもね

 艦娘から評判良くてですね。

 飛行場姫とレ級を演習に呼んで、また撮影させろと、

 せがまれて困っているんですよね』

 

提督がそういうと同時に、演習場から

 

「ヘエエエイ!飛行場姫!良い写真とれてますカー!?

 ちゃんと撮ってくれないと、ノー!なんだからネ!」

 

という、金剛の元気な声が響いた。

飛行場姫は、ファインダーを覗いたまま、

 

「そうねぇ。まぁ、レ級もドイツにいってしまったし。

 拠点も無くなってしまったし、他の姫とも連絡とれないしねぇ。

 暫くはおとなしく、鹵獲されておいてあげましょう。

 ま、それに、私の写真の評判が良いというのであれば、

 しっかりと艦娘を、撮らせていただくわね。」

 

そう呟く顔は、穏やかな笑みを浮かべていた。

彼女もまた、写真に、カメラに魅入られた一人である。




ちょっとだけ妄想滾りました。


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