カメ子 レ級   作:灯火011

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「戦艦レ級(カメコ)」

大火力をすべて捨て去り、その身体能力を艦娘撮影に全力で使う彼女。

「飛行場姫(カメコ)」

装備を全て捨て去り、趣味に走った深海の姫君。

各々、好きなように、写真を撮るようです。


16 第七回 演習撮影会

横須賀鎮守府の演習場で、ドォン、ドォンと言う音が響く。

大本営会議に参加した面々が見守る中、ついに演習が始まっていた。

 

長門・陸奥は主砲弾をレ級に撃ちこみ

赤城・加賀は艦載機で爆撃と雷撃を繰り返し、

駆逐艦である望月と卯月は、戦艦レ級に攻撃を当てようと

必死で雷撃と砲撃を繰り返していた。

 

「なんでうーちゃんの魚雷がぜんっぜん当たらないぴょん!?」

 

「うぁあ・・・全然あたらないじゃん。

 こうなったら、適当にばらまくしか・・・」

 

望月と卯月は焦った顔で次々とレ級に攻撃を加えていくものの、

レ級はそのすべてを避け、カメラを構えながらドンドン写真を撮影していく。

 

カシャシャシャシャシャシャシャ

 

一眼レフの気持ちのいいシャッター音が鳴り響くと共に

望月の気だるそうな動きの中でも、猛獣のように光る眼や

卯月の美しい桜色の髪の毛が風になびくさまなどなど

駆逐艦の美しい姿が記憶されていった。

 

『イイヨォ!2隻ともぉ!

 もっともっと、良い姿ヲ見せてオクレえー!』

 

叫びながら、レ級は駆逐艦の放った砲弾を、当たり前のように掴み

体を回転させ、勢いそのまま駆逐艦の足元へと力いっぱい投げ返していた。

望月と卯月の足元で、戦艦並みの砲撃の水柱が立ち

衝撃によりその服は一発でやぶけ、艤装は水圧によりダメージを受けていた。

 

「うわあっ!うへぇ・・・しんど・・・」

 

「ぅあっちゃぁ・・・あたたた・・・ったぁい・・・」

 

中破判定の2隻は、呟きながらも回避行動と攻撃を続けていく。

その姿に、レ級は

 

(駆逐艦の濡れ透けイヤッタアアアアアアアイ!)

 

脳内に何かがあふれ出る勢いで、写真を撮りまくっていた。

何せ、望月はメガネで濡れ透け。

卯月はサラシで濡れ透けである。

 

カシャカシャカシャカシャカシャ

 

レ級はファインダーから目を離さず、永遠と写真を撮り続けている。

肌蹴て恥ずかしいのか、顔を赤くして肌を隠す望月の表情

そして、サラシが濡れ透けて、その下の肌が若干見えている卯月。

 

「「冗談じゃない!(ぴょおおおん!)」」

 

戦艦レ級のカメラに自分のあられもない姿が撮られていると

自覚した望月と卯月は、これ以上恥ずかしい姿を撮影されまいと、

残った武装でより苛烈な攻撃をしかけていく。

 

同時に長門と陸奥も攻撃を加え、

赤城と加賀も艦載機で雷撃と爆撃を繰り返していた。

そんな戦艦と空母の頑張りようもむなしく、未だに無傷のレ級である。

 

『イヤッホオオオオオオオオオオオウ!

 甘いっ甘イッ!長門ォ!陸奥ゥ!赤城ィ!加賀ァ!

 ヌルイっ、ゾー!』

 

レ級はそう叫びながら、長門と陸奥の弾丸を掴み、空中へと投げ返していく。

投げた先では、赤城と加賀の艦載機が、次々と墜落していた。

 

「なんて化け物だ・・・!この私の弾を素手で掴むなど・・・!」

 

「あら・・あらら?」

 

そう言いながら、砲撃を続ける長門と陸奥であったが、その顔色はすぐれない。

錬度で言えば、大和と武蔵を超える2人であったが

戦艦レ級の前には、全くの型なしである。なにせ、自慢の主砲弾を掴まれ

延々と投げ返されているのだ。

 

「赤城さん、残りの艦載機は?」

 

「私はもう7割が落とされています。

 投げ返した長門さん達の弾丸でここまで落とされるなんて、信じられないわ。

 ・・・・加賀さんは?」

 

「赤城さんとほとんど一緒です。完全に動くのは2割程度です・・・。」

 

空母2隻も同じようで、その表情は苦しそうだ。

というのも、戦艦レ級に爆撃と雷撃を繰り返すものの

戦艦レ級は全くダメージを負わないどころか

長門と陸奥の砲弾をあろうことか、艦載機に投げ返していた。

しかもその精度がすさまじく高く、味方が砲撃する分だけ

赤城と加賀の艦載機は落とされ、搭載数がそこを尽きかけていた。

 

『苦しそうナ表情モイイネェ!

 もっと撮影させてオクレエエエエエイ!』

 

レ級は叫びながら、駆逐艦の撮影に満足したのか、

今度は戦艦と空母に向かって突撃していく。

その姿をみた長門と陸奥は

 

「ふざけるな!写真撮影ばかりしている貴様に負けてたまるか!」

 

「あらあら、流石に舐め過ぎじゃないかしら?」

 

近づいてくるレ級に主砲の照準を合わせ、戦艦2隻は一斉砲撃を繰り返していく。

だが、その砲弾はレ級の手の中に納まり、元々の勢いにレ級の腕力が乗せられ、投げ返される。

 

『ナガトオオオオオオ!陸奥ウウウウウウウウウ!

 濡れ透けニナレエエエエエ!

 ついでに赤城と加賀ァ!

 肌蹴て濡れ透けロオオオオオオオオ!』

 

レ級が魂の叫びと共に、長門と陸奥、赤城と加賀の足元に、砲弾を投げ返していく。

魂が入った投げ返しの水柱は、大和の主砲をも超える勢いである。

 

「っ・・・レ級、なかなかやるな・・・!」

 

「やだ・・・・至近弾でこんなに・・・もう」

 

「一航戦の誇り・・・こんなところで失うわけには・・・」

 

「そんな・・・馬鹿な。」

 

 

そんな大和レベルを超える至近弾を食らった4隻の船は

駆逐艦と同じように肌蹴、その顔を赤くしている。

赤城と加賀に限っては、飛行甲板も水圧で圧壊していた。

 

カシャカシャカシャカシャカシャカシャ

 

戦艦レ級は、すかさずカメラを構え、中破判定の4隻を余すところなく撮影していく。

元々制服の露出が大きい処に、服が破けてさらに露出度が増し、

着弾の水柱によりビショ濡れている長門と陸奥。

長門に関しては、演習開始前は凛とした表情のカッコイイ戦艦だったのに

今では顔を赤くし、乙女のようである。

陸奥も陸奥で、余裕のあったお姉さんから、

衣服が肌蹴て、ただの恥じらう乙女になっていた。

 

赤城と加賀も、袴の裾は破壊され、魅力的な太ももがあらわになり

更に上半身も胸元があらわになり、思わず顔を赤くしていた。

 

『イイヨイイヨー!その表情もらっタ!』

 

レ級はそんな4隻にに一気に近づき、連続でその表情を、姿を撮影していく。

その顔は、「もうたまらない」という気持ちの悪い笑みを浮かべていた。

 

「最高ダー!もっとモットォ!」

 

「ぐっ・・・ふざけるなぁ!レ級ううう!」

 

長門が恥ずかしさと怒りのまま叫び、残っている主砲でレ級に攻撃を加えていくが

また同じように、砲弾を掴まれ、足元に投げ返される。

すると、長門の上半身の服が、水圧に耐えきれなくなり完全に破壊された。

 

「あっ・・!なっ!?」

 

自身のあられもない姿に、顔を真っ赤にして固まる長門。

そして、そんな長門を一心不乱に撮影する戦艦レ級。

 

カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ

 

レ級が手にする一眼レフの、気持ちのいいシャッター音は止まらない。

そして、レ級自身も、ファインダーから一切目を離さず、長門達を撮影していく。

長門は、このあられもない姿が撮影されているという事実に

顔を更に赤くして、口をパクパクしていた。

 

「あ、あ、うわああああああああ!」

 

「演習終了!勝者!戦艦レ級!」

 

我慢の限界が来たのか、長門があまりの恥ずかしさに思わず

叫びながらその場に座り込むのと同時に

演習終了のコールが会場に響くのであった。

 

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ドォン!ドォン!バシャアアアアアアアア!という音が横須賀鎮守府の演習場に響いている。

戦艦レ級が、長門・陸奥・赤城・加賀・卯月・望月と演習をしている音だ。

 

現状、横須賀艦隊が猛烈な勢いで攻撃を行っているが

レ級はその攻撃を全て回避し、全力でカメラで写真を撮影していた。

時折、レ級の一眼レフのシャッター音が響くあたり、妙に気が抜ける演習である。

 

「すげぇ・・・・」

 

そんな演習を見ながら、将校の誰かがぼそりと口にした。

将校達が驚くのも無理は無い。

卯月と望月は新兵であり、まだ仕方が無いとしても

日本でも屈指の錬度を誇る横須賀鎮守府のエース

長門・陸奥・赤城・加賀の猛烈な攻撃を受け

件の戦艦レ級は、写真を撮りながらも、至近弾の一発も受けていないのだ。

 

「飛行場姫殿、そちらの船の錬度は出鱈目ですね」

 

『イヤイヤ、ソウデモナイ。普通ノ深海ノ船デアレバ、スデニ沈ンデイルワ。

 アソコマデ動ケル深海ノ船ハソンナニ居ナイワ。レ級ガ特殊ナノヨ。』

 

横須賀提督と、飛行場姫は横に並び、演習を見ながら軽く会話をしていた。

人類の提督と、深海の姫君が並ぶ姿は、異様である。

 

『ソレニシテモ、ソチラノ船モヨクヤルワネ。

 レ級ガアソコマデ回避行動ヲトルナンテ。ミタコトガ無イワ』

 

カシャリ、カシャリと演習に興じるレ級と艦娘を

ズームレンズの200ミリの望遠端で撮影しながら

飛行場姫は、呟くように横須賀提督に話しかける。

 

「我々がさんざ苦労した飛行場姫に、お褒めの言葉を頂けるとは光栄です。

 して、飛行場姫殿、先程から撮影をしているようですが、良い写真は撮影出来ましたか?」

 

カメラを構え囁く飛行場姫を見ながら、横須賀提督は言葉を返す。

すると、飛行場姫は、ニッコニコの笑顔を横須賀提督に向け

 

『エェ、トレタワ。見テヨ。レ級ト長門ガ最接近シタコレ!

 オタガイノ顔ガ、フレソウナグライデ、砲撃ト回避ヲ繰リ返シテイルノヨ!』

 

そういいながら、姫はカメラのディスプレイに撮った写真を写し出し、

自慢げに横須賀提督に見せていた。

横須賀提督も写真を確認すると、目を見開き

 

「おぉ。以前レ級の写真を見たことがありますが

 これもそれに匹敵する一枚ですね。良い写真、撮りますねぇ」

 

飛行場姫と同じような笑みを返しながら、写真を見つめていた。

 

その写真には、「必死な表情の長門が砲撃を行い

ニヤリと犬歯をむき出しにして笑うレ級が砲撃を避け長門に最接近している」

そんな姿が映し出されていた。

 

飛行場姫の写真と、写真を自慢げに見せる素直な笑みに

見惚れていた横須賀提督であったが

ふと気付くと、長門達艦隊が、6隻ともに中破を受けていた。

空母は壊滅、他の船も武装が壊滅。戦闘継続は困難。

そう判断した横須賀提督はマイクを持ち

 

「演習終了!勝者!戦艦レ級!」

 

演習の終了を、告げるのであった。

 

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演習が終わった横須賀鎮守府は、混乱の極みにあった。

何せ、精鋭である艦隊が、武装を持たないレ級により壊滅したのだ。

大本営が臨時に会議を開き、艦娘が演習場に集結するのは仕方のない事である。

 

大本営はレ級と、飛行場姫の処遇について話し合っているようで、慌ただしく人が出入りし

時折「ふざけるな!」とか、「あの深海の船に勝つにはどうすればよいのだ!」

などなどの怒号が飛び交っていた。

 

そんなさなか

 

『大和ォ!写真撮らせテー!』

 

「構いませんが・・・」

 

『それじゃあそれじゃあ、鎮守府の建物の前ニ立っテもラッて

 振り返ってミて!』

 

「こう、でしょうか?」

 

『オォ!ナイスポーズ!大和!カワイイヨー!』

 

カメラ片手に、全くぶれない戦艦レ級の姿と

 

『雪風ト、島風。スマナイガ、並ンデ工廠ヲバックニ、一枚トラセテハモラエナイカ』

 

「ひっ・・・私たちですかっ!?」

 

『エエ、アー。オビエナイデ、ッテイウノハ無理ダロウケド

 今日ハ武装モナニモ無イカラ、写真ダケダカラ、少シダケネ?』

 

「そ、それならいいですよ、ねっ?島風」

 

「そう、だね。でも撮影するなら早くして!すごい緊張する!」

 

『ワカッタ、努力スル』

 

同じくカメラ片手に、艦娘に撮影交渉をしている飛行場姫の姿があった。

そんな彼女らを見ながら、艦娘と軍関係の人間、全てが

 

(((何この混沌とした鎮守府。目をそむけて部屋に戻りたい(ぴょん))))

 

と思ったのは、仕方のないことだろう。

 

そんな大本営と艦娘を無視して、レ級と飛行場姫は撮影を続けていた。

 

カシャカシャカシャカシャカシャカシャ

 

カシャン、カシャン、カシャン

 

レ級は相変わらずの連射、飛行場姫は相変わらずの単射で艦娘を撮影していく。

 

大和の見返り美人、魅惑の太もも、凛とした表情に、大きく映える艤装

雪風と島風の愛らしい姿、2人が近づき、手を組み合って向かい合う姿

 

お互いに最高の一枚を撮影するために、ファインダーを覗き

延々シャッターを切りながら、撮影に没頭していく。

 

「そう言えば!レ級さんと飛行場姫さんにお聞きしたい事があるのですが!」

 

すると、今まで静かにしていた青葉が、カメラとメモ帳を片手に2人に話しかけていた。

レ級と飛行場姫は青葉に振りかえり、ファインダーから目を外し、同時に首をかしげながら

 

『どうシたんだ?青葉?』

 

『ドウカシタカシラ、青葉』

 

青葉に対して口を開いていた。

それを確認した青葉は、良い笑顔で、言葉を続けていく

 

「いえいえ、簡単なことなのですが

 見る限りお二方ともカメラが好きそうですし、仲良さそうですし、

 レ級さんと飛行場姫さんの御関係は一体どういうものなのかなーって思いまして!」

 

レ級と飛行場姫は、青葉の言葉に、お互いに顔を見合わせる。

そして、目配せをした後に、飛行場姫が口を開く。

 

『ソウダナ。艦娘ノ基準ニ合ワセレバ、上司ガ私デ、部下ガレ級トイッタトコロダナ。』

 

飛行場姫は、青葉を見ながら返答を返していた。

青葉は、飛行場姫の言葉から更に疑問を持ち、真面目な顔をしながら更に言葉を続ける。

 

「ほほう、レ級さんは飛行場姫の隷下の船なんですねぇ・・・。

 となると、他に存在するレ級も、同様に飛行場姫の部下なんでしょうか?」

 

青葉は、件のレ級と、他のレ級の関係性と、

深海の指揮系統をさりげなく聞き出そうとしていた。

飛行場姫は一瞬目をつぶり、思考を行う。

 

(青葉メ、サリゲナク探リヲイレテキタカ。

 大本営トヤラノ入レ知恵ナノカモシレンナ。

 マァ、答エタ所デ問題ハナイダロウ)

 

そう考え、飛行場姫は苦笑しつつ、レ級を見ながら改めて口を開いた。

 

『コノレ級ト、他ノレ級ハ全クノ別物ダ。

 アト、私ガ担当シテイルレ級ハ、コイツダケダワ』

 

(なるほどですねぇ・・・。

 艦娘と同じように、深海の船も指揮系統がいくつもあるのですか!

 青葉、良い情報を仕入れました!)

 

青葉は飛行場姫の言葉を聞き、笑顔で考える。

そして、もうひとつ、気になることを、レ級と飛行場姫にぶつけていた。

 

「ありがとうございます。勉強になります!

 あとですね、もうひとつあるんですが。

 レ級さんって、写真を撮らないで戦った場合、

 強さってどのぐらいなんですか?」

 

『フム、レ級ノ強サカ』

 

飛行場姫は、青葉の言葉に、眉間にしわを寄せながら考え込む。

レ級自身も、飛行場姫と同じように、難しい顔をしながら考えていた。

 

(コイツノ強サカ、ドノグライナノダロウ。

 タシカニ、水母棲姫ニハカテタガ、アレハ水母ノ油断ガオオキカッタワケダ

 カトイッテ、弱イ訳デハナイ。フラッグシップ改マデ成長シタレ級ハ

 イッタイドコマデ通用スルノカシラ)

 

(私ノ強さカぁ。どのぐらイなんだろ。

 水母棲姫の時ハ、油断してたカら勝てたケど。

 飛行場姫様と一回喧嘩シたときは、一方的にボッコぼこニされたシなぁ)

 

青葉は、むむむ、と唸りながら考え込む姫とレ級を見ながら、

 

(お二人が悩むほど、レ級さんって強いのでしょうか・・・?

 もしかして、飛行場姫さんよりも強いのでしょうか!?)

 

などと、見当違いなことを考えていた。

青葉も深海の2隻と同じように、眉間にしわを寄せながら、思考を続けていく。

そして、飛行場姫が思考を終え、少し苦笑しながら青葉の質問に答えていた。

 

『ソウネェ、レ級ノツヨサハ、飛行場姫デアル私ヨリ少シ弱イクライカシラ。』

 

青葉は、飛行場姫の言葉に反応し、

 

「そうなのですか!いやぁ。お二人とも急に考え込むんですもん。

 もしかしたらレ級さん、飛行場姫さんより強いのかと思って、

 ひやひやしましたよ!」

 

ほっとした表情で、飛行場姫とレ級にに話しかけていた。

飛行場姫は、そんな青葉を見ながら、笑いながら口を開いた。

 

『アハハ、ソレハナイワ。レ級、私ニ喧嘩デ負ケテイルモノ。

 ソウイエバ、レ級ノ正式名ヲオシエテイナカッタワネ。』

 

「おぉ!深海の船に正式名称があるのですね!是非教えていただきたいです!」

 

『ソコマデ期待サレテモ、艦娘ノヨウナ固有ノ名前ハナイワ』

 

「あー、確かに、以前レ級さんから聞いた覚えがありますねぇ」

 

青葉は、首に手を当てながら、以前、レ級から自己紹介をされた時のことを思い出していた。

 

(『各船デナマエヲモッテイナイノデ、レ級トデモヨンデクレ』。

 レ級さんはたしか、そんなこと言ってましたねー。

 っていうことは、正式名称とは、いったい?)

 

飛行場姫は、そんな青葉を見ながら言葉を続けていた。

 

『レ級ノ正式名称ハ、「戦艦レ級フラッグシップ改」トイウノ。

 我々深海ノ船ノ、レ級トイウ艦種デハ、

 フラッグシップ改ニ辿リ付イタ唯一ノレ級デ、

 別名「異端ノレ級」トモヨバレテイルワ』

 

そういう飛行場姫の顔は、少し誇らしげであり、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「「戦艦レ級フラッグシップ改」ッ!?」

 

青葉は叫ぶと共に驚愕し固まった。そして、他の艦娘も同じように驚愕に固まっていた。

なにせ、今まで「戦艦レ級」は赤いオーラのエリートまでしか確認されていなかったのだ。

それが、目の前にいるカメラを持った、変なレ級が「フラッグシップ改」だというのだ。

青葉を含めた艦娘達が驚くのも無理は無い。

 

そして、青葉が恐る恐るレ級に訪ねていた。

 

「レ級さん、飛行場姫の話は、本当なんですか!?

 フラッグシップ改なんて、見たこと無いですよ!」

 

レ級は、そんな青葉の言葉に、態度を持って返答していた。

 

気付けば、レ級の目からは蒼い炎が滾り、全身からは金色のオーラが溢れ出ていた。

そして敬礼をしながらも、獰猛に、青葉を見据えながら、笑っていた。

 

青葉はもとより、他の艦娘も、レ級の姿に釘づけになり、誰も動けなくなっていた。

 

『戦艦レ級』

 

深海棲艦と呼ばれる存在の中でも特に上位種に位置する艦種である。

数多くの艦娘を沈め、提督を苦しめている最悪の敵と言って良い。

なにせ、開幕の航空戦、そのあとの魚雷、そして砲雷撃戦、対潜戦闘と

全てにおいて高水準で纏まっている敵であることを、認識させられた瞬間である。

 

だが次の瞬間、金色のオーラと、目の蒼い炎は霧散し

 

『青葉。ビビリすぎだナぁ!

 私は確かニ、そこそこ性能イイけど、ソレハ写真を撮るたメだけニ

 頑張った結果なんダヨ!艦娘ヲ沈めるナンて、ナンセンスダね!』

 

青葉を見据えながら話すレ級は、

にへらぁと、いたずらに成功した子供のような笑みを浮かべていた。




妄想捗りました。

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