カメ子 レ級   作:灯火011

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重巡洋艦「青葉」の先導のもと、
艦娘との演習に参加し、写真を撮ることになったレ級。
レ級はいつもの様に、カメラを持ってウキウキとしているようです。

ただし、1隻、とんでもない船がレ級についていくようです。


15 深海棲艦のNewカメ子とレ級 2

日本にある帝国海軍基地の中でも、

最大級の規模であるのが、関東地方の南にある横須賀鎮守府だ。

深海棲艦に対する最大の軍事拠点でもある横須賀の街は、

常日頃から、一般、軍、商社などなど様々な人々と様々な船が行き来し、

普段から、艦娘や軍関係の人々は街に繰出し、周囲の商店で買い物をしたり

住民と交流を行ったりと、軍事関係の街としては、比較的穏やかな場所である。

 

だが今日、横須賀鎮守府、及び横須賀の街は異様な雰囲気を醸し出していた。

 

商人たちは、いつにもまして物資の搬入を急ぎ行い、

横須賀鎮守府の周辺には警備兵が多数配置され、一般人は閉めだされていた。

横須賀鎮守府内で何があるか、何か事件があったのかという

情報に関しても封鎖されている異常事態である。

普段街を闊歩している軍関係や艦娘達も、誰ひとりとして町中を歩いては居なかった。

 

そして、横須賀鎮守府の内部には、臨時の大本営が設置され

日本各地にある鎮守府から、各鎮守府の司令官や、上層部が次々と

横須賀鎮守府に入っていく。

 

周辺住民には特に予告もなく行われた情報規制と鎮守府の封鎖。

その様子に、

「何か大規模作戦でも行われるのか。」

「深海棲艦が攻めてくるのではないのか。」

「一体何が始まるんだ。」

等々不安な噂が広まっていた。

 

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横須賀鎮守府内部に設置された臨時大本営。

天皇を始めとした、陸海軍の将校がずらりと並ぶ。

その中には、横須賀・呉・大湊・佐世保といった

名だたる鎮守府の提督たちも同席していた。

そして、全員の着席を確認するとともに、

横須賀鎮守府の提督が、起立し、美しい直立姿勢のまま口を開いた。

 

「今回はお集まりいただき、誠に感謝致します。」

 

一礼を行うと、着席している提督や将校たちが応じ、会議の始まりを告げた。

 

「今回お集まりいただいたのは、電信でお伝えした通り

 件の「戦艦レ級」が我が鎮守府の演習に参加するという、

 前代未聞の事象が派生したからです。

 ただいま大和から資料を配らせますので

 各自、お受取りください。」

 

横須賀鎮守府の提督の言葉に、秘書官である大和は

着席している将校たちに資料を渡していく。

資料を受け取った将校たちは、驚愕の表情を浮かべたり

「これは面白い」と言わんばかりの笑顔を見せたりと

多種多様の反応を見せていた。

そして、全員に資料が渡ったことを確認し、

横須賀鎮守府の提督は口を開いた。

 

「資料の通り、本日1400より、件の戦艦レ級と

 我が横須賀艦隊の演習を行います。

 構成はまだ練度の低い駆逐艦2隻、望月と卯月

 我が艦隊の中核を担う空母を2隻、赤城と加賀

 そして、同様に中核を担う戦艦、長門と陸奥

 この6隻が今回、件の戦艦レ級と演習を行います」

 

その資料には、本日の演習内容と

呉と横須賀で撮られた、艦娘と撮られた集合写真と

青葉が撮影してきた、「熱心に青葉のカメラ一式を見るレ級」

そして、「青葉と共にカメラを手に持ち、砂浜で2人で笑顔で写るレ級の写真」

が印刷されていた。

 

「次のページから、件のレ級が、

 艦娘と映る写真が数枚印刷してあります。

 驚かれたでしょうが、この写真から察するに、このレ級には

 完全に敵意はないとみて良いでしょう。

 しかし、もしもということも有りますので、対処が出来るように

 本日は遠征艦隊と哨戒艦隊、そしてエスコート艦隊以外、

 大和以下横須賀鎮守府に在籍する全ての艦娘は、待機を命じております。

 そして、お集まり頂いた皆々様には、その状況をご覧頂き

 今後の件の戦艦レ級の処遇について

 精査をよろしくお願いしたく存じ上げます」

 

言い終わると同時に、横須賀鎮守府の提督は一礼をし、着席をする。

天皇以下、陸海軍の将校は、「艦娘と映る深海棲艦」の写真を見て

ヒソヒソと話し合いはするものの、

「戦艦レ級」が横須賀鎮守府に来ると言う事実に

誰一人として、大本営会議終了のその時まで言葉を発することが出来なかった。

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大本営の会議が沈黙を持って会議終了を告げた頃、

件のレ級こと、カメラを持った戦艦レ級は

重巡洋艦「青葉」との約束より早めに「鎮守府近海の島」へと到着していた。

 

「まーダ早かっタカナぁ」

 

浜辺へと上陸したレ級は、カメラを手に取り、機材の調子を確認していく。

いつもの武装無しの姿に、カメラのホルスターを5つぶら下げ

尾っぽにはサーチライトを4つ装着しているいつもの姿である。

 

「レ級、イツモ貴様ハコンナトコロマデ写真ヲ撮リニ来テイタノカ」

 

しっぽの上に、カメラを持った『飛行場姫』さえ座って居なければ、であるが。

 

「エェ。鎮守府近海とナれば、新しい艦娘ガ訓練してたリしますからネ!

 誰よりモ早く写真を撮りタいんでス」

 

レ級は、姫を見ながらにこやかに言う。

そんなレ級を見ながら、

 

「本当ニ馬鹿ダナオマエハ」

 

呆れ顔でそう呟く飛行場姫であったが

実は今回の飛行場姫も「やらかして」いる。

 

「そういウ姫様も、今回、『艦娘と演習して撮影する』

 って伝えたら『私も連れて行け、武装解除するから』トか言っテ

 ソレを本当に実行しちゃウとか、私トいい勝負ですよネ」

 

レ級も若干呆れ顔で、自身の尻尾に乗っている飛行場姫に言葉を返す。

そう、今回なぜ「飛行場姫」がこの場にいるのか。

しかもレ級の尾っぽに乗っているのか。その謎は至極簡単に解けるのである。

 

カメラにハマってしまった飛行場姫が艦娘の写真を撮りたくなったからだ。

 

ただし、過去に艦娘と2回戦火を交え

幾度と無く艦娘を撤退に追い込んだ経験がある飛行場姫だ。

どうしたって艦娘と軋轢がある。

 

それでもどうしたって、艦娘の写真を一度は撮りたい。

ということで、飛行場姫は

「レ級、ドウニカシテ艦娘ノ写真ヲトリタイノダガ」

レ級にそう尋ねたところ

「武装を完全ニ解除しテ、カメラダケでイケばイイんじゃないでしょうか。

 今度、艦娘の演習ニ誘われタので、ついてキマす?」

と、レ級から提案を受け、飛行場姫はそのまま実行に移したのだ。

 

完全に武装を取り払い、身一つで来るという暴挙。

艤装を完全に外したため、一人では海に浮かべなくなり

レ級の尾っぽに乗って、艦娘の写真を撮影するために

鎮守府近海のこの島まで、馳せ参じたわけである。

 

その手には「デジタル一眼レフ」(70-200mm望遠レンズ)が

しっかりと握られ、その表情は

隠し切れない喜びで、にこにこしていた。

そんな姫の姿を見ながら、レ級は一人考える

 

(んンー・・・・。思いがけズ本当ニついてくるなんてナァ。

 姫様、かなりの数の艦娘をボッコボコにしてたカらなァ。

 いくら姫様が非武装とハ言ってモ、

 流石に、鎮守府に姫様が行くのはまずいンじゃ・・・・

 青葉、びっくりして、帰っタりしない。ヨネ?)

 

海の向こうを見ながら、

迎えに来るはずの青葉が「飛行場姫」にビビって帰らないように

レ級は一人祈るのであった。

 

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カメラを持って鎮守府近海を進軍する3隻の船。

重巡洋艦「青葉」、航空母艦「加賀」、戦艦「武蔵」は

レ級をエスコートするため、鎮守府近海の島へと向かっていた。

 

「いやぁー!楽しみです!

 戦艦レ級の写真撮影の風景を生で見れるなんて!」

 

戦闘を行く青葉は、にっこにこでカメラ片手に、最高潮に興奮していた。

その後ろには、「武蔵」、「加賀」と続く。

 

「青葉よ、興奮するのは判るが周囲の警戒を怠るな。

 レ級を迎えに行く前に、駆逐級の攻撃でダメージを受けるなど

 愚の骨頂だぞ」

 

「もちろんです!しっかりと警戒もしています!」

 

武蔵の言葉に反応し、しっかりと答えを返す青葉。

そんな青葉を見ながら、言葉とは裏腹に、その顔は少し綻んでいた。

 

(戦艦レ級の写真をまた見れるとはな。

 青葉には感謝せねばならんな)

 

武蔵は一人考えながら、青葉の後を追従していく。

 

「武蔵、大丈夫です。

 周囲警戒は私の艦載機が行っています。」

 

武蔵の言葉に反応したのか加賀が後方から声をかけていく。

口を開いた加賀も、心なしか顔が明るい。

武蔵は上半身を捻り、加賀の方を見ながら口を開いた。

 

「そうか、それならば安心だな。

 加賀よ、警戒は任せたぞ」

 

「もちろんです。1隻足りとも見逃しません」

 

加賀は弓を構え、新たな偵察機を発艦させていく。

警戒は厳、憂いなく、レ級の元へ向かっていた。

そうしていると、遠くに例の島が見えてきた。

 

「武蔵さん!加賀さん!島が見えてきました!

 おっ、レ級さんは既に到着しているようです!」

 

青葉は、額に手を当てながら、島の状況を確認していた。

島の上には、パーカー姿のレ級がカメラをもって待機していた。

その姿を、武蔵と加賀も確認していた。

 

「本当に来ていたんですね。

 少し疑っていた私が馬鹿でした」

 

加賀はそんなレ級の姿を見て、少し呆れ顔でつぶやいていた。

そして目をつぶり、戦艦レ級の上空を飛んでいた艦載機と意識を同調させ、

改めてレ級の姿を確認していく。

 

(改めて見ると、本当に武装が無いレ級ですね。

 手にはカメラ、体の両脇にはホルスター。

 尻尾にはサーチライトが・・・4つかしら。

 そして、尾っぽにはカメラを持った白い人影が乗って、

 ・・・・人影!?)

 

加賀はハッとして、目を開けた。

未だ島は遠く、肉眼でレ級の詳しい状態までは分からない。

「何かの見間違えかもしれない」

と、改めて加賀は目をつむり、艦載機との意識を同調させていく。

 

(件の戦艦レ級以外に、あんな物好きな深海棲艦は居ないはず。

 きっと見間違えでしょう・・・・。

 ええと、手にはカメラ、体の両脇にはホルスター。

 尻尾にはサーチライトが4つ。

 そして、尾っぽにはカメラを持った白い人影が乗っていま、すね。

 見間違えではありませんでしたか、しかし、レ級が連れてきたのでしょうか?

 それにしても、武装も、艤装も装備していませんね。珍しい。

 深海棲艦でしょうか?でも、白い深海棲艦なんてなかなか居ないはずですが・・・。

 はて、あの白い深海棲艦、何処かで見た記憶が・・・・・)

 

そこまで確認したところで加賀は目を開き、艦載機との同調を解除した。

そして、加賀は若干つかれたような表情を浮かべながら、青葉と武蔵に話しかけた。

 

「青葉、武蔵、良い知らせか、悪い知らせか判りかねますが報告です」

 

加賀の言葉に、青葉と武蔵は振り返り

 

「どうしました?加賀さん。そんな顔をして」

 

「どうした、加賀。急に疲れた顔をして」

 

2隻とも不思議な顔をして加賀を見ながら、訪ねていた。

その姿を見ながら、加賀は口を開いた。

 

「島に居る戦艦レ級を、艦載機から確認しました。

 カメラを装備して、非武装ですから、間違いなく件のレ級です。」

 

頷く青葉と武蔵。その顔は、「やっぱりな」と笑顔になっていた。

だが、加賀の次の言葉で、その表情は一気に凍りつく。

 

「それと同時に、戦艦レ級の尻尾に座る『飛行場姫』を確認しました。

 ただし、武装どころか、艤装を装備していません。」

 

「「はっ・・・!?」」

 

加賀を見たままの体制で、表情どころか、体も凍りつく青葉と武蔵。

そして、青葉と武蔵は一瞬の思考の後、同時にバッと島の方へ振り向き

島にいるレ級の姿をよく確認する。

 

そうすると、青葉たちの姿に気づいたのか、

ぴょんぴょん跳ねつつ、大きく両手で手を振るレ級の姿が目に入る。

 

「おぉーイ!青葉ァ!武蔵ィ!加賀ァ!」

 

レ級は叫びながら、笑顔で手を振っていた。

 

そして、ぴょんぴょん跳ねるレ級の尻尾に座りながら、

右手でカメラを持ち、青葉達を見ながら、左手をひらひらさせ、

涼しい顔をしている飛行場姫の姿があった。

 

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「おぉーイ!青葉ァ!武蔵ィ!加賀ァ!」

 

レ級は青葉たちの姿を確認すると、

ぴょんぴょん跳ねながら、大きく両手を振っていた。

 

「ホォ、本当ニキタノダナ」

 

飛行場姫は、揺れるレ級の尻尾の上で器用にバランスを取りながら

呟きつつ、青葉達艦娘に手を振っていた。

そんな姫の言葉に振り向き、

 

「ふふフ。青葉と私ハカメラの縁ガありますかラネ!」

 

レ級は、姫に対して自慢気に話していた。

姫もそんなレ級を見て、

 

「ソノヨウダナ。レ級、オマエハ予想ノウエヲ行クノダナ」

 

少し呆れつつも、やわらかな笑顔でレ級に話しかけていた。

レ級が少し照れながら、姫から視線を外し、艦娘達に振り返って

改めて手をふろうとした時である。

 

青葉、武蔵、加賀が、こちらを見ながら表情を固くし、文字通り固まっていた。

そして、先頭にいる青葉が、主砲をレ級に向けながら大声で叫んでいた

 

「レ級さーん!?その、武装はしていないようですがっ!

 尻尾に乗っている『飛行場姫』はどういうことなのでしょーかー!?」

 

レ級の「姫様が居て大丈夫だろうか」という予感が的中したのである。

青葉に続き、武蔵も主砲砲をこちらに向け、

加賀に関しては、爆装させた艦載機を発艦させていた。

その光景を見ながらレ級は

 

(アー・・・・予想通り、とイうか。姫様見タら、艦娘ってコウなるよナァ。

 んー、ドウシヨウ。何カ、警戒を解く良イ方法、無いかナァ)

 

顔を書きながら、一人打開策を考えていた。

飛行場姫に関しては、

 

「アー・・・ソウナルワヨネェ。撮影ハ無理カシラ」

 

とつぶやき、少し残念そうに艦娘を見ている。

そんな飛行場姫の姿を見たレ級は、覚悟を決めたように、

青葉達の方を向き、息を吸い込み、叫ぶ。

 

「青葉ぁー!飛行場姫様も、写真撮りタイっていうから、連れてきたァー!

 艤装も外しテ、カメラ一個ダケ装備してアるから、一緒に撮らセて上げテ!

 お願イー!」

 

変化球なしの直球で勝負を仕掛けたのである。

もしこれで、拒否されるのであれば、

レ級は一旦姫様を拠点に届けてから、改めて一人で演習に参加しようと考えていた。

 

すると、青葉たちは主砲の標準をレ級達から外し

 

「レ級さーん!上空から飛行場姫の武装解除は確認できましたー!

 レ級さんのお仲間ということでしたら、このまま鎮守府までお連れ致しますー!」

 

叫びながら、少し硬い表情ではあるが、

青葉、武蔵、加賀は島へと進軍を再開していた。

レ級はそんな青葉達を確認すると、飛行場姫へと顔を向け

 

「OKみたイですよ。姫様」

 

ニコニコした顔で、姫に話しかけるのであった。

飛行場姫も、そんなレ級を見ながら、

 

「ヨカッタワ。コレデ撮影ガデキル」

 

カメラをしっかりと両手で持ちながら、良い笑顔で一人、呟くのであった。




妄想捗りました。

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