カメ子 レ級   作:灯火011

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各地の鎮守府と警備府に、御触れが流れたようです。

そして、ある写真も一緒に付いてあったそうです。

受け取った鎮守府に少し動きがあるようです。

(一部誤字修正致しました。ご指摘ありがとうございます)


11 とある鎮守府の風景

大本営とは、艦娘の行動を決める最大の最高の統帥部である。

その大本営から、日本各地の鎮守府や警備府に、一つの命令書と一つの写真が送られた。

 

【 近海に現れる深海棲艦『戦艦レ級』には、

 攻撃をせずに交流を図ってくる個体が存在することが発覚した。

 確定ではないが、例外の戦艦レ級は、

 過去横須賀より深海側に奪取された「装備品」カメラを持ち

 艦娘の写真撮影を行っている模様である。

 

 その意図は、佐世保からの報告によると、

 『本当に写真を撮影したい』という話だが真意は不明だ。

 

 現状、攻撃をしてこない戦艦レ級に対して、先制攻撃は禁止とし

 交流を図ってきた場合は、情報収集を行い現状を逐次報告せよ】

 

という文言の命令書である。

【攻撃をしてこない戦艦レ級】とは

もちろんカメラを持った例のレ級のことだ。

そして、書類とともに、一枚の写真が添えられていた。

 

佐世保鎮守府の精鋭艦隊の旗艦である「戦艦金剛」

第一水雷戦隊を取りまとめる旗艦「阿武隈」

同水雷戦隊のエース「第六駆逐隊」

そして、深海棲艦の怪物「戦艦レ級」

 

この7隻が、揃った集合写真である。

 

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横須賀鎮守府の提督室で、大和と提督が命令書を確認していた。

 

「レ級に攻撃するな、とは。とんでもない命令書ですね、提督。」

 

「あぁ、しかもトンでも無い写真付きと来ている。

 命令書だけを見たときは、大本営が狂ったかと思ったが・・・

 まさか佐世保の艦隊とレ級の集合写真付き、とはな。」

 

提督と大和は、佐世保鎮守府の最精鋭艦金剛と、戦艦レ級が通じているという事実に、

命令書と写真を見ながらため息をついていた。

 

「えぇ、佐世保の金剛さんは、深海棲艦を見かけたら必ず倒していた艦娘でしたから。

 正直この写真は信じられません。

 特に、アイアンボトムサウンドでの金剛さんは、鬼神とも言える姿でしたから。

 覚えていらっしゃいますか?提督」

 

「あぁ、そうだな。アイアンボトムサウンドを鎮圧出来たのは彼女の功績が大きい。

 『砲撃が通じないから殴ってきたデース』と言って海域突破の報を

 こちらに入れてきた彼女、忘れはしないよ」

 

そして、横須賀提督と大和はアイアンボトムサウンドの攻略作戦を思い出していた。

提督と大和の脳裏に映るのは、にこやかな笑顔と、活発な声で

 

『三式弾だけじゃ通じなかったのデ、拳で殴って倒して来たデース!

 飛行場姫は撤退したデース!このままアイアンボトムサウンドを制圧しまショー!」

 

と、血塗れの拳を天高く上げている金剛の姿である。

その姿は、連合艦隊旗艦である大和も、それを率いる提督も、思わず引くほどだ。

 

「鬼の金剛、それと同列に写真に写る深海の化物、か。」

 

提督は写真を見ながら、少し険しい顔をしながら呟いた。

 

(それにしても、我が隷下の艦隊が使うはずだった『装備品のカメラ』

 それをレ級が使っているとは。もしかすると、我が艦隊を襲ったレ級と同一の船か?)

 

写真に写るレ級の装備を見ながら、一人思う横須賀提督。

装備を奪取された当時は大いに慌てたものだが

今、同じような撮影機材、装備を揃えている横須賀鎮守府にとっては既に不要の長物ではある。

だが、それを深海側でどのように、誰が運営しているのかが気になっていた。

 

(そしてなによりだ。何故にその装備をもったレ級が

「鬼の金剛」と写真を撮影し、友好的になっているのか。

 少しばかり、興味が湧くな)

 

そんなことを思いつつ、提督は少し笑みを浮かべ、大和に指示を下す。

 

「大和。いいか、過去、戦艦レ級と出会ったことのある船、つまり

 武蔵、一航戦、雪風、島風の第一艦隊を引き連れ

 鎮守府近海でのレ級の探索を命ずる。

 レ級らしき姿を見つけたら、直に報告しろ。

 あの金剛が友好的に接する深海棲艦、一度確認してみたい。」

 

大和は、少しだけ顔に笑みを浮かべ

 

「判りました、提督。私も少々気になる点がありますので

 出来るだけ接触できるよう、隅々まで探索してまいります。

 それでは、早速出撃してきます。」

 

大和も、自分達を襲い、護衛対象のタンカーを奪取したレ級が

命令書にあるレ級と同一の船なのかが気になっていた。

丁度いい機会だと、提督の命令を素直に受け、出撃する大和であった。

 

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横須賀鎮守府、正面海域。

 

艦娘が駆逐級の深海棲艦を発見し、大海原を行きながら砲撃する。

ドーン、ドーンと大きな砲撃音が鎮守府近海に響いていく。

そして、ガゴォンと音と共に、弾丸に直撃した駆逐級が、何処かに誘爆したのか、ドォンと爆発し、沈んでいく。

 

深海棲艦と艦娘の戦いは鎮守府の正面という

人類に一番近い海域であるこの場所でも、未だ続けられていた。

 

カシャンカシャンカシャンカシャンカシャンカシャンカシャンカシャン

 

そんな場違いなカメラのシャッター音を、海域に響かせながら、

駆逐級と艦娘の戦闘を記録していく船が一隻。

手にはフィルムの一眼レフを携え、セーラー服が特徴的な姿の艦娘だ。

 

「いやぁー、第一艦隊の皆々さまが、駆逐級を破壊する姿。

 かっこよかったです!しっかりと納めさせていただきました!」

 

そんなことを言いつつ、にこやかに笑う巡洋艦「青葉」。

彼女が構えるカメラのファインダーには、大和が率いる第一艦隊が映っていた。

 

「それにしても珍しいですねぇ。大和率いる我が横須賀最大の第一艦隊の戦闘シーンを

 鎮守府正面海域で生で!生で見られるとは思ってもいませんでした!

 しかもまさかまさか!それを写真に収められるなんて!」

 

満面の笑みを浮かべながら、まくしたてるように話す、興奮気味の青葉である。

 

「青葉さん。興奮するのはそこまででお願いします。

 今、我ら第一艦隊は、鎮守府正面海域での作戦行動中です。」

 

大和は冷静な顔で、そんな青葉に話しかけていた。

何せ今は、レ級を探すと言う任務中である。

下手に騒がれては、レ級をとりにがす可能性もあるのだ。

大和の一言に、尋常じゃない空気を感じた青葉は冷や汗をかきながらも、

 

「あら、申し訳ないです。私としたことがうっかり。

 興奮しすぎてしまいました。」

 

何時の間にかカメラは仕舞われ、いつもの艦娘の姿に戻っていた。

 

「それにしても、珍しいですねぇ。

 鎮守府正面海域に我が鎮守府の最精鋭が出撃なんて」

 

大和以下、第一艦隊の面々を見ながら呟く青葉。

 

「えぇ、今回は大本営も絡んでいます。少しばかり重要任務ですから。」

 

大和から発せられた、大本営という言葉を聞いて、青葉は目をキラキラさせながら、大和に問いかけた。

 

「大本営ですか!大和さん、もし、差支えなければ、私もその任務に御同行したいのですが!」

 

大和は、青葉のその言葉を受けて、少し思案を巡らせていた、

 

(普段なら、駄目ですと突っぱねる所ですけど・・・・・。

 確か、レ級はカメラを持って、写真が趣味という話でしたっけ。

 この青葉は、カメラを持っていて、写真が趣味でしたね。

 もしかして、レ級と青葉、お互いに趣味が合うなんていうことは・・・・)

 

青葉は、横須賀鎮守府でちょっとした有名な船ではある。

というのも、戦場カメラマンよろしく、戦闘中の写真を撮っては

広報に報告するため、それが鎮守府の瓦版としてよく出回るのだ。

 

アイアンボトムサウンドや、ミッドウェーの写真もあるあたり、本物である。

 

(カメラ好きの青葉と、カメラを持ったレ級。2隻を引き合わす事が出来たのなら

 良い反応があるのかもしれません。試してみる価値はありそうですね。)

 

そう考えた大和は、青葉の同行を許し

6隻+1の7隻は鎮守府正面海域を

戦艦レ級を探して、進軍していくのであった。

 




妄想捗りました。


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