カメ子 レ級   作:灯火011

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レ級が暴走してます。


第一章 我道を往く深海の船
1 第一回 変わったレ級の、とある一日


「戦艦レ級」

 

深海棲艦と呼ばれる存在の中でも特に上位種に位置する艦種である。

 

数多くの艦娘を沈め、提督を苦しめている最悪の敵と言って良い。

なにせ、開幕の航空戦、そのあとの魚雷、そして砲雷撃戦、対潜戦闘と

全てにおいて高水準で纏まっている敵である。

 

 

「戦艦レ級」

・・・と呼ばれる彼女が真っ青な海の上、遠くを見つめながら、

一人でぽつーんと立っていた。

 

ただ、その装備は先に出た特徴とは一切合致しない。

 

航空機を持たず、魚雷を持たず、対潜装備も持っていない。

戦艦の最大の特徴である主砲すらも持っていない。

強いて言えば、服であるパーカーとビキニ水着が合致する程度だろう。

 

その代わりに、肩から左右に3つづつ、

計6つのホルスターがぶら下がっている。

 

そして、尾っぽの部分には、51cmの主砲、ではなく

人間世界でも高級品とされている大光量のサーチライトが4つ取りつけられていた。

 

そんな風変わりなレ級が動く。

遠くを見ていた瞳が、艦娘を発見したのだ。

 

「機関出力全開、最大戦速」

 

レ級の言葉と同時に、一気に加速するその体。

 

「今日ハ4人か、そうしタら、望遠で良イかナ?」

 

ぶつぶつと呟きながら、体の左右にあるホルスターから

あるものを引っ張り出す。

 

 

手元に引っ張り出したのは「デジタル一眼レフカメラ(ストロボ付き)」

装備してあるレンズは「70-200 F2.8ズームレンズ」

 

 

「ヌふふ。さぁ、今日ハ何が撮れるかナぁー!」

 

 

デジタル一眼レフカメラを手にしながら、レ級は艦娘に突撃するのであった。

 

 

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艦隊の旗艦である金剛は、その日、新人の育成も兼ねて鎮守府正面海域の哨戒を行っていた。

メンバーは金剛・暁・響・雷だ。

 

この海域は、波もさほど高くなく、たとえ深海棲艦が紛れ込んでも

精々主力艦隊が撃ち漏らした駆逐艦級程度と、育成には最高の条件だ。

 

 

「電探に感あり!対水対空戦闘用意!」

 

 

彼女の妖精が艦隊に電信を打つ。いつものことだ。丁度良い、戦闘の練習をさせよう。

そう思って目標を確認しようとした金剛だが、その目には、信じられないものが映っていた。

 

「戦艦レ級」

 

忘れもしないあのパーカー姿、そして、巨大な尻尾。

何度も大破撤退をさせられた記憶が甦る。

なぜ、あいつがこの海域に!?

なぜもっと、早く気がつかなかった!?

一瞬思考が止まりそうになるも、首を振って思考を再開する。

 

そこからの金剛の行動は、早かった

 

「敵戦艦、レ級を目視!いいですカ!?私が足止めをシマス!

 暁!響!雷!3人は即時撤退デース!」

 

新人の3人も、戦艦レ級がヤバイ、というのは情報として知っている。

指示が飛ぶと同時に、最大速度で鎮守府に舵を切った。

 

同時に、金剛は最大戦速でレ級に突撃していく。

 

(アレに勝てる可能性は・・・ないでショウ・・・

 せめて、あの子たちの時間を稼ぎマス・・・!)

 

そして、金剛の主砲の射程内にレ級が飛びこむと同時に

 

「ファイヤーーーーー!」

 

35.6cm砲、4基8門が、一斉にレ級に襲い掛かった。

 

 

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(ウってきたウってきた)

最大戦速で突撃するレ級に、金剛の砲弾が雨のように降ってくる。

 

だがその弾は当たることは無い。

装備は一眼レフカメラだけでも、その体はしっかりとしたレ級なのだ。

そして、金剛の砲撃を避けながらも、レ級はカメラのファインダーを覗く。

 

(オォ・・・なんて言ったっけ、コンゴウ?。凛とした表情が最高ダワー)

 

若干ニヤケながら、望遠レンズを着けた一眼レフで、金剛の姿を撮影していく。

 

 

カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ

 

 

1秒間に10枚以上という連射で、金剛の激しく、美しい砲撃の瞬間の絵を切り取っていく。

そして、金剛の移動するその姿も余すところなくファインダーに収め、撮影していく。

 

(こんなときに砲撃できれば、水しぶきの中の金剛とか撮影できるのにナァ)

 

残念思考を行いながら、レ級は更に金剛に近づき、撮影を行っていく。

 

金剛の後ろに一気に回り込み、金剛が振り向いた瞬間

流れるような金剛の砲撃

必死な金剛の表情

 

(あぁ、どれも最高ノ作品だ・・・・!)

 

余すところなく、「戦場の艦娘」を撮影していく。

 

作品作りに没頭するレ級であったが、燃料が残り少ないことに気づく。

 

(残念だナ。時間切れってか。)

 

砲撃を続け、必死に攻撃をしてくる金剛を撮影しつつ、鎮守府正面海域を後にする戦艦レ級・・・否。

 

戦場カメ子、レ級であった。

 

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追撃も無く悠々と、拠点に帰って来たレ級。

レ級は早速、今日の一番の写真を選定していた。

 

「違ウ・・・パンチラしてればいいってもんじゃない・・・」

 

記録媒体からWiFiを通して、タブレットに移し替えた写真を見ながら、一人残念思考をつぶやいていた。

 

「ウーン・・・コレアングルはいいけド、ピンボケちゃってるなぁ・・・」

 

「見返り美人のコンゴウもいいけど、これ、艤装入ってないカラ艦娘写真と言えるノカ?」

 

うーん、うーんと悩みながら次々と写真を吟味していく。

 

「やっぱりこの、正面からの一斉砲撃ガ、迫力あってイイナ!

 今日はコの、正面一斉砲撃のコンゴウがベスト写真ダ!」

 

---本日のベスト写真----

 

という名前のフォルダに、本日の金剛の写真が保存される。

凛とした顔で、こちらを射抜くような目線、そして砲撃の迫力。

そんな写真を見ながら、一人、レ級はニヤニヤしていた。

 

ちなみに、同名のフォルダの中には、既にここ1年分の艦娘の写真が入っていて、

フォルダの写真を次々と見ながら、彼女は満足げに笑みを浮かべる。

 

「撮り始めてからのコレクション増えたナ」

 

その中には、戦い、損傷をしている艦娘、逆に、敵を撃破している艦娘など

なまなましい写真も多く含まれている。

 

「今日みたイな美しい、凛とシた写真もいいけど

 戦場の臨場感のある写真モいいよナ。ヤッパリ。

 ・・・明日はどんな写真が撮れるカなぁ」

 

ベスト写真フォルダの写真を見ながら、

にんまりと笑みを浮かべつつひとり呟くレ級であった。

 

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