fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

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やっと出来ました。

最終章は非常に難産です。

就活の間にやるのも難しいですがw


ほぼ戦闘シーンです。久々なので誤字脱字や文法上おかしなところあれば教えていただけると助かります


四十六話 ラストバトルⅡ

 

ジェファーソン記念館へ本隊が攻撃を開始する時間が既に8時間を切っていた。東部BOSの司令部である国防総省の地下にある拘置所エリアに連れてこられた。パワーアーマーを脱いだ後、裏切り者扱いを受けてひとしきり殴られた後、引きずられるようにして拘置所エリアに拘束された。整備士のザカリエフ伍長は非戦闘員と言って適当な扱いを受けている筈だが、俺の場合はそうはいかないだろう。なにせ、BOSの隊員だった男がエンクレイヴの輸送機から降下し、認識票まで貰っているのだから。

 

 

拷問官が来るのかと考えていたが、殴られている時にエルダーに会わせろと言った直後、パワーアーマーを着た兵士に蹴られ意識を失ったところまでは記憶があった。かび臭いマットと詰まった便器。そしてウジが湧きかけた腐りかけの肉。食おうとは思わず、体中が痛み、顔を殴られた時に歯が折れ、口を切っていたのか、少し腫れている。

 

 

看守には数時間後にエンクレイヴの反乱軍が大統領率いるジェファーソン記念館の部隊を攻撃するから、エルダーに会わせろと叫んだところ、川から汲んだらしい水を入れたバケツで全身びしょ濡れになった。

 

 

寒さで震えながらどうにかして脱出する方法を考えなければならない。とあるゲームで仮死薬によって敵兵の注意を引きつけて脱走するシーンがあったが、そんな便利グッズは持っていないし、独房からの脱出方法を学んではいない。だが、仮病を使うことは出来そうだ。先ほど新しく置かれた、手をつけていないモールラットの肉を見て、それを食って吐きさえすれば何かしらの問題になるが、見た目からしてかなりヤバイ色をしており、生存力の高いモールラットの肉は一週間経っても腐ることは無かったから、もしかするとそれ以上経った物か変な疫病に感染したものかもしれない。

 

 

食べるはずであった戦闘糧食を奪われたため、胃袋は空っぽ。腹の虫が納まらず、狭い独房に響いていた。

 

 

「本当に食べたら軽蔑するわよ」

 

 

 

いつから見ていたのか、独房の外にはサラ・リオンズが品定めするような目で俺を見つめていた。かなり腹が減っているが流石に食べようとは思えない色をしているし、食うわけがなかった。

 

 

「食うわけが無い。それより、銃殺する日は?それとも出して自由にしてくれるか?」

 

 

「出す?無理無理。貴方は事もあろうに任務を放棄し、更にはエンクレイヴの輸送機から降下して来た。しかも首には識別票をぶら下げてね。銃殺はすぐにはしないけど、殆ど決まってるわ」

 

「事情があったんだ、あんたは命に代えても守りたい者がいるか?」

 

「嫌味な質問ね、総司令官の娘にして指揮官。こんな女を欲しがる男は稀よ」

 

サラはウェイストランドの平均的な女性よりもレベルが高い。モテない訳がなく、部下と指揮官の溝を埋めればなんとかなるのではないかと思ったりする。だが、そんなことは聞いてはいない。

 

「父親は?あんたは父親を見殺しに出来るのか?」

 

「……!アンタは脅されてパワーアーマー着て来て私達を殺そうとしているわけ」

 

「違う、なんか勘違いしてないか」

 

どうやらそこで重要な勘違いが発生したらしい。俺はタメ息を吐いてしまい、サラを不機嫌にさせた。

 

「もうひとりの……整備士のザカリエフ伍長は?」

 

「別の独房に入れたわ、あなたよりはいい待遇のはずよ」

 

「アイツの口から何か言わなかったか?エンクレイヴ内でクーデターが発生して新政府が樹立して、エデン大統領率いる旧政府軍と交戦中だってことは?」

 

「なにそれ!?初耳よ!」

 

どうやらB.O.S.は諜報を全くしていないらしい。これでは幾ら頑張っても勝てはしないじゃないか。よくゲームでこんな弱小組織が買ったと思う。

 

「まずはエルダーに報告させろ、このままじゃBOSだって無くなることになるんだぞ」

 

 

 

 

 

 

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俺の話を聞いたエルダーは早速指揮官を集めて会議を開催した。上級パラディンや上級スクライヴなど、狭い会議室に押し込められた人の熱気によって室温は上昇していた。しかし、その室温を下げるような話によって彼らは冷や汗を流していた。

 

 

1通り話した俺は一息つくかのように背もたれに寄りかかる。『カチャリ……』という音を立てた先には手錠が掛けられており、BOSの憲兵が1人俺の後ろに立っている。その彼も俺の話を聞いているためか心なしか能面の顔が若干青くなっていた。

 

「そんなこと信じると思っているのか裏切り者。戦前と同じ水準に大陸の基地を結ぶ地下トンネル?そんなもの戦前のオカルト雑誌じゃあるまいしあってたまるか!!」

 

1人の上級パラディンは怒鳴り声を上げ、近くのパラディンは抑えるのに必死だった。

 

「では、パワーアーマーを見ても何も思わないのですか?どう見てもあれはよほどの国力がない限り製造できませんし、ジェファーソン記念館を攻撃し、メガトンやリベットシティを占領した装甲車は?ヘリはどうですか?そのことは偵察で見ているでしょう?それも嘘だと仰るので?」

 

俺はそう言い、怒鳴った指揮官を黙らせる。すると、渋い顔をしていたスターパラディン・クロスは総司令官に発言の許可を求めた。許可され起立したクロスは残念そうな顔をして話し始める。

 

「こんなことになって残念だ、ユウキ君。私や他のパラディンの総意として聞こうと思う。君はBOSをどう思っている?半ば我々は君を強制的に入隊させた。志願でもなく、君の主義思想に反してね。君にとってエンクレイヴはどうだった?BOSは今後どうした方がいいと思う?」

 

そんな質問にパラディンはどよめく。実は半強制的に入隊したことなどエルダー・リオンズとクロス以外は知らないことだ。強制的にと言うのは、語弊があるが、それ以外の選択肢を選べなかったというのもある。

 

ジェファーソン記念館を攻撃され、居場所を無くしたDr.リーや科学者達、雇い入れた傭兵。彼らを保護したのはBOS。彼らの支援無くして奪還は出来ないし、綺麗な水を無限に作り出す計画にBOSの軍事力は不可欠だ。

 

理念や思想などBOSに忠誠を誓っている訳では無い。

 

「言い方を変えれば、選択肢が自分にはそれしかありませんでした。エルダー、以前言ったことを覚えておいでですか?」

 

「どのことかの?」

 

「B.O.Sの活動意義についてです。コーデックスや設立理由を考えると人類救済のため、2度と核戦争を起こしてはならないという事から結成された。だけど、アウトキャストや西部の総司令部はテクノロジーに固執するあまり人類救済という目的を見失った。エルダーの行っていることは正しいと思います」

 

その言葉で上級パラディン達の表情は柔らかいものに変化していた。数名はまだ疑わしいと言った表情であった。続けて俺は話し出した。

 

「現地の住民や末端の兵士。そしてエンクレイヴ内のNo.2であるオータム大佐と面会し、現状、エンクレイヴ内は二つに分裂しています。先ほど申し上げたように今臨時政府を建てたオータム大佐以下議会派はウェイストランド救済をしようとしている。願わくば人類を救済しようとしている。BOSも歩み寄り、戦わない方法があると考えます」

 

「奴らがそれをすると思うのか?既に幾つかの集落ではエンクレイヴの小隊によって壊滅させられたと聞いているぞ」

 

「それはどんな集落ですか?メガトンやリベットシティのような文化的……いや友好的な所でしょうか?辺境の集落では食人だってある。その都度戦闘になってもおかしくない。」

 

文化的で友好的な集落はたまに存在するが、アンデールのような人の革を被った悪魔が居るケースもある。エンクレイヴが接触を試みてそういった奴らに出くわせば鎮圧されてもおかしくない。

 

「もし、ジェファーソン記念館へ攻撃を仕掛け、エンクレイヴの議会派を援護して、大統領派を掃討すれば、こちらの有利な条件を提示できるかもしれません。まだ、エンクレイヴと国交を結んではいませんよね?」

 

俺は目の前にいるエルダーに声を掛ける。

 

「まだじゃ。お互い牽制しあってるが、大きく戦うことはしてない。」

 

「この戦いを行えばBOSに有利な条件でエンクレイヴと交渉に出ることが出来ます。戦闘に加勢すれば、ウェイストランド人の支持も得られます。まだ、BOSの支持は根強いはずです。なんせ俺が子供の頃からD.C.を根城にミュータント退治をしてウェイストランドを保護していたんですから」

 

俺の話を聞き、上級パラディンは頷く。そして一人のパラディンは発言した。

 

「兵力はかなり違いがある。通常戦力では奴らに太刀打ちできません。全軍を投入すれば浄化施設の奪還は出来るでしょうが損耗は8割を超えます」

 

BOSの全軍、ウェイストランドに分散する部隊や新兵や補給部隊、戦闘員をすべて含めた全軍をジェファーソン記念館へ投入する。人海戦術を用いれば、敵が車輌や航空兵器を持ちえたとしても損害をもろともせずに襲いかかる。8割を死傷して奪還できたとしてもウェイストランドのパワーバランスは変化し、エンクレイヴに軍配が上がるはずだ。

 

エルダーは流石にそれは出来んと提案を下げさせ奪還作戦は暗礁に乗りあげようとしていた。しかし、とあるスクライヴが手を上げたことによって進展する。

 

「''例のあれ,,を投入させましょう」

 

「無理だろう?!あれは試作品なはずだ」

 

手を挙げたのは技術研究責任者のスクライヴ・ロスチャイルドだった。彼の言ったことに数名のパラディンやスクライヴは驚きの声を上げるが、ロスチャイルドは首を横にふる。

 

「動力源が安定しなかったが、D,リーのお陰で動かすことができます。システムはいくつか調整の余地があるが、それを修正すれば直ぐにでも。」

 

例のアレ。

それはアラスカ方面軍チェイス将軍の要請によってRobco社が制作した巨大人型兵器。

 

「リバティー・プライムは直ぐにでも投入可能です。ご決断を!」

 

BOSの生き残りを掛けた戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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国防総省近くにある395号線のある14Thストリート橋は200年経った現在でも川に架かっていた。核戦争後の影響で川の水位は低くなり、放射能に汚染された河川が海へと流れ込んでいる。

 

その橋にはBOSが来ないよう防御線が張られており、更にエンクレイヴの議会派の空挺部隊を警戒して52口径105mmライフル砲を備えたIFV(歩兵戦闘車)と防空を主にするAPC(兵員輸送車)が対空兵装である地対空ミサイルを装備していた。元々、多目的ミサイルとして開発されたものであるが、ヘリや低速の航空機などにはこれで対処できる。

 

「こちらSierra1-3、BOSの様子がおかしい。外に部隊を集めている、映像で確認できるかover」

 

(こちらCP、確認できた。しかし、敵の攻撃あるまで発砲は禁ずる。交戦規定どうり、FPL(突撃破砕線)侵入後警告後に撃退されたし)

 

「了解、CP。Out……クッソ」

 

見張りについていた大統領派の兵士はタメ息をついた。指揮官に説得されて正統派と言われたこっちについたが、戦力差は開いており、勝てる気がしない。せめて装備丸ごと持って行ってレイダーになるのも手かもとその兵士はパワーアーマーの中で独り言を呟いた。マイクは切っているため、周りにいる同僚には聞こえず、いっそのこと本当に脱走しようと考え始めた。装甲車丸ごと奪ってポイントルックアウトに逃げた分隊も居たので俺もそっちに合流しようかと兵士は思うが、分隊の半分は熱心な大統領派であるため、再びタメ息を吐いた。

 

「おい、ペンタゴンの様子がおかしいぞ」

 

さっきの連絡のあと変化があったらしくヘルメットを被っていない無用心な新米士官は双眼鏡によって国防総省を確認しようとした。小隊内では頭でっかちのヒヨコと称されバカにされている指揮官だ。靴紐を結べない新兵とまでは言わないが、頭でっかちの知識詰め込みし過ぎたオタクより新兵の方がまだ可愛いほうである。それも、大統領派に組みしようと言った彼に何故か小隊の半数は同意してしまったのでしぶしぶ付いていくことになったのだが、さっきまで脱走しようとしていた兵士の思考には後ろから士官を川底へ落としてしまおうかと本気で考えるに及んだ。しかし、それは杞憂に終わった。空気を切る音とともに、周囲に何かが飛び散った。滑り赤黒い何かであったが、頭を破裂させた分隊長が倒れ、兵士達が正気へ戻った。

 

「スナイパー!」

 

ヘルメットを脱いでいた兵士は直ぐにヘルメットを被る。

 

「サプレッサー付けたスナイパーライフル……7.62mmか」

 

徹甲弾でなおかつ、308口径であれば従来のX-01Aは貫通する。しかし、装甲板と傾斜角度を上げたX-01A-C1であれば308口径弾が徹甲弾であっても貫通しない。指揮官の階級の下にいる先任曹長は対物ライフルを持つ兵士にひきつけている間に狙撃手を仕留めるよう言う。

 

先任曹長は周りの部下と共に国防総省近くに攻撃を始めた。

 

「制圧射撃開始!」

プラズマ弾やレーザー光線が発射され、国防総省の周囲に設置された陣地へ着弾する。警戒ロボットがその攻撃に対し、5mm弾を発射し、橋に命中した。更に国防総省の屋上に備え付けられた櫓からはミサイルランチャーを構えたと思しき兵士がミサイルを発射しようとしている。

 

「こちらSierra1-3、hammer head聞こえるか?」

 

(こちらhammer head、聞えているOver)

 

「屋上の櫓らしき場所にML(ミサイルランチャー)。砲撃支援求む」

 

(hammer head了解、攻撃に移る)

 

 

Hammer headと呼ばれるIFVは、105mmライフル砲を装備しており、攻撃支援を受け取ると、車長は砲手に狙いを定めるよう指示し、BOSの兵士がいる櫓に照準を合わせた。スムーズに砲塔が旋回し、砲身がミサイルランチャーを構えるBOSの隊員に向けられる。

 

「敵の監視塔に照準よし。」

 

「撃ち方はじめぇ!」

 

IFVに乗る車長の号令とともに砲手は発射ボタンを押す。IFVの中でも一際口径のデカイ105mmライフル砲弾は櫓に直撃し、BOSの隊員は吹き飛ばされ、設置していたミサイルに誘爆し、大爆発を起こした。

 

 

「目標沈黙を確認!」

 

「CPより連絡、交差点まで後退せよとのこと」

 

IFVに乗る無線手が車長に叫ぶものの、車長は砲手とともに射撃装置の画面を見続けていた。二人の表情は凍り付き、まるで死神でも見たかのような顔をしていた。

 

「何だ……これ……」

 

車長は震える声を何とか抑えつつ、口にする。

 

画面にはクレーンで釣り上げられた黒い巨人の姿があった。車長はあまりの大きさに言葉を失う。巨大な鋼鉄の身体に合衆国陸軍のマーク。実験機なのか色は米軍機の色ではないが、それは国防総省から現れた。体長15m弱、一つ目玉のそれは赤いモノアイでこちらを睨みつけているのである。車長は急いで操縦手に移動を命じた。

 

クレーンから下ろされた巨人は数秒ほど何もしなかったが、急に人間のように顔を出してスピーカーらしき物体がないにも関わらず、声が発せられた。

 

『レッドチャイニーズに死を』

 

モノアイから放たれた高出力レーザーはIFVの手前に展開していた対空兵装のAPCに直撃し、装甲を溶かすと同時に燃料や爆薬に引火して大爆発を起こした。破片が飛び散り、近くにいた兵士は爆発に巻き込まれ、何人かの兵士は爆風で橋から川へ落下する。

 

「砲手!やつに牽制射しろ、急いでここを離れるぞ!」

 

歩兵も手に負えないと思ったのか、生き残った兵士達は急いでこの場から立ち去ろうと走る。自動装填装置によって、105mmAPFSDF弾が装填され、砲手は走行中でありながらも照準を合わせた。

 

車長は巨大な二足歩行ロボットを見て昔見た映画のシーンを思い浮かべ急いで逃げなければと考えた。橋に設置されたバリケードを避けながら急いでそこから離脱する。

 

「標的をロック、発射ぁあ!!」

 

砲手は引き金を引き、火薬が燃焼し爆発エネルギーによってAPFSDF弾が発射され、

毎秒2000mの速度で巨大ロボットに迫る。しかし、砲弾を探知したのか、赤いモノアイが激しく点滅すると高出力のレーザーがモノアイから発射され、蒸発した。

 

「嘘だろ!?」

 

砲手は叫び声を上げた。周囲の兵士達は果敢にもプラズマライフルやレーザー、見知るランチャーで攻撃を加えていくが、傷一つつかない。車長は上部ハッチから身を乗り出すと車載レーザーガトリングに手を伸ばした。

 

「これでも喰らえ、ブリキ野郎!」

 

重高温の銃声が響き、車載型のレーザーガトリングが空中に真っ赤な赤い光線を描く。しかし、その巨人は光学兵器を跳ね返す磁気が帯びているのか跳ね返って明後日の方向へ飛んでいく。悪態を付いた車長であったが、巨人は再び声を上げる。

 

『コミュニストを皆殺しにせよ!』

 

『アメリカは共産主義に必ず屈しない!』

 

エンクレイヴに対して共産主義者(コミュニスト)とはいったい何の冗談なのか。巨人は背中にあった円筒上の何かを手に取ると、装甲車へ投げつけた。ガトリングでうち落とすつもりでガトリングレーザーを向けるが、その円筒の真ん中にある表示を見て車長は驚愕する。

 

その円筒には放射能のハザードマークが書いてあり、起爆装置が点滅しすぐ目の前まで来ていたからだ。

 

車長は命令しようとするものの、遅すぎた。起爆と同時に車長の意思は刈り取られ、熱線と爆風があたりを包むこむ。焼け爛れた装甲と煤で汚れた星条旗を記した装甲車の残骸は同じく星条旗を記し、民主主義の守護者と標榜する巨人『リバティー・プライム』によって川底へたたき落とされたのだった。

 

 

 

 

 

 

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「こちらhammer4-0、HQ。BOSが大統領派に攻撃を仕掛ける。BOSの指揮官は議会派へは攻撃しないと言っている。攻撃するな」

 

(こちらHQ、衛星の映像から見ると国防総省から二足歩行兵器の移動が認められる。BOSの武装か?Over)

 

「そうだ、BOSのリオンズ将軍より支援すると言う話だ。二足歩行兵器への攻撃は自動的に敵対と見なされ攻撃される恐れがある。絶対に攻撃するなout」

 

 

無線の音声を外へ流し、横にいるサラ・リオンズに聞こえるようにして無線に応答する。すると、上出来であったのかサラの表情は満面の笑みを浮かべていた。

 

 

「お見事」

 

「攻撃しないという保証はないよ」

 

無線交信を終了したが、回線はオープンにした状態にしておく。サラ・リオンズはT-49d型のパワーアーマーではなく、角ばった感じのT-60型を装備して笑顔で俺の肩を叩き、整列する部隊の目の前に立った。

 

サラ・リオンズが着ていた戦前での最新鋭機T-60型は国防総省の地下にあった武器庫に保管されていたものらしく、スクライブの尽力によって閉鎖されたロックダウンを一部解除した時に開いたらしい。キャピタル・ウェイストランドのBOSの標準装備であるT49Dは余剰軍事倉庫に眠っていたものであり、51b型は整備するための部品が少ない為お蔵入りとなっている。T60型も西海岸ではほとんど見かけず、最新型であるため、絶対数はT49やT51と比べて少ない。だが、試験投入という形でサラ・リオンズ含め数人の兵士が使用していた。

 

そもそも、T60型は主力機のT-51bパワーアーマーに次ぐ次世代パワーアーマーとして期待されていた代物である。大戦争の間際には一線級の部隊に重点的に配備されたため、その殆どがキャピタルではスクラップになっている状態だ。加えて首都を直接核と陸上攻撃することを想定していなかった。

 

 

 

周囲は旧米軍の迷彩であるグレーの塗装が施されているが、俺だけ1人真っ黒なエンクレイヴの塗装となっている。1人だけ浮いた感じもするが、この際仕方がない。

 

リバティー・プライムとそれを誘導する先遣隊は橋の確保に成功し、本隊の到着を待っている。

 

サラは愛用のレーザーライフルを構え、国防総省中庭に集まる兵士達が見えるように武器ケースの山の上に立った。

 

「鋼鉄の兄弟達よ!」

 

最前線に行く兵士達を統率する彼女の声に呼応し、中庭に集まった100人近い兵士たちの視線がサラに集まった。

 

「エンクレイヴは内戦によって二分している。浄化施設にいるのは本隊から離れた賊軍のみになった!私たちはこれからそこを強襲し、浄化施設を奪回する!」

 

特殊部隊「プライム」とそれを支援する砲撃、狙撃を行う兵士達は事前のブリーフィングもあってか、驚きはせず、相槌が聞こえた。

 

「あの場所は荒廃した大地を救う設備がある。アメリカの亡霊が使っていいものではない。ウェイストランド人のために、奴らのためには使わせてはならない!

 

奴らは強い。我々にはないものをいくつも備えている。だが、奴らにないものを我々は持っている。それはこれまで異型の者達と戦い培ってきた勇気。戦友。そして再び大罪を為さないよう人類を救済する大義。

 

我々は必ず勝つ。今は無き戦友達のために撃鉄を上げろ!奴らの喉を5.56mm弾で引きちぎれぇ!!」

 

 

 

「「「「「Ahhhhhhhhhhhhh!!!!」」」」

 

 

 

兵士達の雄叫びが中庭を響かせ、突き上げてた拳やレーザーライフル、アサルトライフルの銃口が空を指す。

 

「兄弟たちよ!行くぞ!」

 

 

 

「「「「hooah!」」」」

 

 

 

米陸軍式の掛け声とともにサラを旗元に兵士達は門へと進む。1人はBOSの記章の旗を持って。その旗印の元BOSの兵士達は前進を始めた。エンクレイヴのような最新鋭装備を携えた兵士達とは違い、彼らの空気はまるで異なる。長年に渡るスーパーミュータントとの死闘によって、彼らは逆境に慣れ、場数と技量は一人のBOS兵一人に付き、エンクレイヴ兵5人分に匹敵する。戦争慣れしていないエンクレイヴ軍は技術力と装備をもってしても越えられない壁が存在する。

 

 

サラ・リオンズと共に走り、門をくぐると、目の前の快進撃に目を奪われる。

 

15m弱の巨大な二足歩行ロボットであるリバティー・プライムは、漆黒のエンクレイヴ兵を高出力レーザーでなぎ倒し、IFVの砲撃を跳ね返し、背中に装着された小型核爆弾によって一瞬にして駐屯していた部隊を壊滅に追いやっていた。応援に駆けつけたガンシップタイプのベルチバードが急降下し対戦車ミサイルによって破壊しようとするものの、ミサイルを発射する瞬間にレーザーが直撃し爆散する。

 

 

「進撃しろ!抵抗するものは叩き伏せろ!」

 

 

リバティー・プライムの攻撃を避け、追随するBOSの兵士を殺そうと待ち構えるエンクレイヴ大統領派の兵士達は手持ちの兵器を用いて反撃に転じようとするが、高音と共に空から飛来する何かによって吹き飛んだ。

 

「奴ら迫撃砲を持っていやがる!気を付け・・・」

 

と先任軍曹の階級章を付けたエンクレイヴの下士官は言い終わる前に胸に大きな穴を開けて絶命する。近くにいた兵は恐慌状態になり、防御陣地から這い出してしまい、その場所を狙っていた迫撃砲の餌食になって倒れてしまった。

 

 

「次、800m先。敵兵2名・・・ML装備。左からの風風速10m」

 

「確認、仕留める」

 

先に先遣隊として到着したBOSの狙撃チームは近くのビルの屋上を陣取って生き残っている防御陣地にいる兵士を見つけると、観測手は狙撃するための情報を教え、狙撃手はそれを元に敵兵の急所をパワーアーマー対策に出力を強化させたガウスライフルによって狙撃していく。

 

俺は橋を渡りきり、下り坂とビルとビルを繋ぐ連絡橋にはエンクレイヴの兵士が固定式レーザーガトリングを持って歩兵部隊を牽制する。

 

「連絡橋の上をマークして」

 

「了解、目標をマーク!」

 

サラの近くにいた兵士はレーザーライフルのような物を構え、不可視レーザーを発射した。赤外線カメラを用いれば見ることができようレーザーは連絡橋に命中し、他のレーザー装置を持つ兵士もレーザー照射する。

 

これも地下の兵器庫から持ち出されたものであり、核戦争後航空戦力による爆撃の誘導など出来なかったため、それらの技術は散逸した。リバティー・プライムとリンクしたそれは目標の位置を知らせた。

 

『歩兵の支援要請を受諾。共産主義者の根城を攻撃』

 

リバティー・プライムはその巨体の背中に装着された小型核爆弾を掴み取ると、連絡橋にいる兵士達へ投げた。投げられた小型核弾頭、歩兵携帯型核弾頭であるミニニュークの3倍の威力であるそれは連絡橋を一瞬にして火の玉へと変わり、元々スーパーミュータントの狩場であったそこは崩落した。

 

『レッドチャイニーズの車輌を確認!世界は赤を必要としない』

 

リバティー・プライムが攻撃するのは歩兵に誘導された敵勢力と攻撃をしてきた敵のみに限定される。熾烈な攻撃を耐え抜いたエンクレイヴ兵もそれなりに存在し、BOSの隊員は残党の掃討にあたった。

 

 

「まだ、生きているぞ!殺せ!」

 

動く目標を見つけ、殺気立ったBOSのナイトはレーザーライフルを後退しながら逃げるエンクレイヴ兵に狙いを定め、引き金を引く。しかし対光学兵器対策として塗られた特殊塗料によって弾かれてしまう。

 

「敵は後退中!追撃しろ」

 

支援砲撃として高層ビルの屋上から迫撃砲が発射される。独特な高音と共にフレシェット弾が降り注ぎエンクレイヴ兵士を釘付けにしていった。

掃討が荒方完了すると、リバティー・プライムはジェファーソン記念館に通じる橋へ赴くため二重設置されたエネルギーフィールドを破ろうと動き始めた。

 

 

『敵のエネルギーフィールド確認。中和中ー』

 

 

物理的な遮断が可能なエネルギーフィールドによってBOSの兵士の進撃は一時ストップする。リバティー・プライムがそれを中和しようとする時、エンクレイヴのヘリ部隊が攻撃を仕掛けてきた。

 

 

「敵の攻撃だ!全員路肩に!」

 

 

唖然とするBOSの兵士を隠そうと掴み引きずる。逃げ遅れた兵士はガンシップタイプのベルチバードの20mm機銃が火を噴いた。パワーアーマーと言えど、機銃掃射には耐えられない。鉄の暴風に称される対地攻撃によって蜂の巣になった。

 

「こちらalpha 1-0!敵航空戦力と陸上戦力の攻撃を受けている。近接砲撃支援を要請するover!!」

 

 

(こちらHQ、こちらにも敵の航空兵力によって砲撃支援が出来なくなった。現状の現戦力によって打破せよout)

 

「ダメだ!砲兵部隊も殺られている」

 

航空戦力は先に砲撃部隊を撃滅した後、大統領派の陸上部隊を支援しようと残りの弾薬をこちらで使い切るつもりらしい。

 

「糞が、こいつを食らいやがれ」

 

背中の副武装である背部に装備された多目的ミサイルランチャーを操作し、ヘリをロックオンする。赤外線シーカーによって自動追尾能力のあるミサイルは発射すると、自動誘導によって片方のティルトローターに直撃する。回転翼の一つを失ったベルチバードは回転しつつ、横のビルに激突し、大爆発を起こした。

 

 

しかし、まだ数機のベルチバードが旋回しており、兵員輸送型であると確認できた。

 

「リバティー・プライムは?」

 

大火力であればベルチバードを全て打ち倒せる。俺は近くにいる誘導レーザー装置を持つ兵士に話しかける。

 

「ダメです。あのエネルギー装置を中和しようしていて対空攻撃までするのは無理です」

 

彼は試しとばかりに旋回中のベルチバードにレーザーを照射するが、ブザーと共にキャンセルされる。

 

『歩兵部隊の支援要請。キャンセル!自らの手で殺せ』

 

とリバティー・プライムは目の前の事で1杯いっぱいらしく、旋回する数機のベルチバードは制圧した地区に更に兵員を降下し始めた。

 

「敵のへリボーン強襲だ!」

 

エネルギーフィールド近くに集まりすぎていたBOSの攻撃部隊は三方向から包囲される形となった。ミサイルによって撃ち落とそうとするが、ベルチバードの自動機銃によって攻撃を受け、急いで遮蔽物へ隠れる。ヘリから鋼鉄製のワイヤーがおろされ、そのワイヤーにつられてパワーアーマーの部隊が降下する。

 

「左右に展開!!敵の防御陣地を使って」

 

サラ・リオンズはすぐに命令を出し、敵の防御陣地を利用しつつ、リバティー・プライムを覆うようにして陣形を形成する。遮蔽物や防御陣地のある場所に移動し、制圧したエンクレイヴの防御板を使い攻撃するエンクレイヴ兵士を退ける。

 

 

 

『エネルギーフィールド中和まで3分』

 

「ブリキ缶のポンコツ野郎」

 

敵のプラズマ弾が周囲に飛来し、運悪く飛び出した兵士はプラズマの高温によって装甲が溶けてしまった。逃げようにも密着したアーマーは脱ぐことが出来ず、隊員は断末魔の叫び声をあげながら体を溶かした。

 

「くそ、これはまずいぞ」

 

 

ここで装備の格差に思い悩むことになるとは。多くプラズマライフルを供給するエンクレイヴはその圧倒的な火力でBOSの兵士をねじ伏せて行った。BOSの火器はレーザーやアサルトライフルなどで、ミニガンやミサイルランチャー、鹵獲したプラズマライフルによって敵を倒すことができる。だが、その数はエンクレイヴが断然上で歯が立たない。

 

手持ちのミニガンを乱射するが、倒したのは二人程度。軟目標を蹂躙するために使われるミニガンはパワーアーマーに対してあまり効果を発揮しない。BOSの攻撃部隊の200人余りの兵士は半減してしまう。

 

BOSの優勢であったが、リバティー・プライムが戦闘できなくなったことによってエンクレイヴ大統領派は息を吹き返し、組織的な攻勢に転じ始めた。車両と航空兵器。加えてプラズマ火器によってBOSは劣勢になった。空からの機銃掃射によって大口径の銃弾が装甲を貫き、死に絶える。装甲車の固定型レーザーガトリングによってレーザーが体を突き刺し、プラズマが兵士の身体を溶かしていった。

 

リバティー・プライムは残りもう一つのエネルギーフィールドを中和するため残り3分近くリバティー・プライムを死守しなければならない。あれは自力で自己防衛する機能があるが、エネルギーフィールド相殺時には支援が出来ない。何もフィールドを直接出力する機器破壊しないのかと言いたいが、何度もバグというバグを修正し続けたスクライヴ達にそれを求めるのは酷というものだろう

 

ミニガンの弾薬が切れ、ミサイルも残りわずか。落ちていたプラズマライフルを拾い上げると接近してくるエンクレイヴ兵に引き金を引く。

胸を撃たれた兵士は真ん中にポッカリと空洞が空き倒れていく。

 

閃光手榴弾でエンクレイヴ兵の目を撹乱しつつ、劣勢になりつつあるBOSの指揮をするサラのいる遮蔽物に身を隠す。

 

「どうだ?」

 

「すこぶる元気よ」

 

「違う、俺達のことさ」

 

サラはたまにアホなことを言う。脳筋だから仕方ないとはいえ……

 

「なんか変なこと考えなかった?」

 

「つくづくウェイストランド人はエスパーだって思い知らされるよ!」

 

プラズマグレネードを投げ、エンクレイヴの部隊を吹き飛ばすものの、増援として駆けつけた歩兵部隊や装甲車によって猛攻に晒された。レーザーやプラズマ。時にはミサイルによって瓦礫の山をさらに瓦礫へと変えていく。

 

「センチネル!部隊の半数が死傷!損耗が激しい!撤退を!」

 

「ダメよ!ここで退却はBOSの存亡に関わるわ!」

 

ここで撤退すればBOSは衰退し、エンクレイヴに最悪殲滅されるだろう。ウェイストランドに影響を確固たるものにするためには何としても浄化施設を奪い取らねばならない。

 

「しかし……」

 

サラに反論しようとした兵士は飛来してきたプラズマ弾が頭に命中し、土嚢にもたれ掛かるようにして崩れ落ちた。

 

「くっそ!」

 

「弾がない!」

 

「俺もだ!」

 

弾薬が欠乏し始め、予め準備しておいた予備のマイクロフュージョンセルの弾薬箱をなげてよこす。

 

「弾を節約しろ!あとは敵を殺して奪い取れ」

 

レーザーとプラズマが陣地を集中攻撃していて、一歩出ることすら叶わない。

 

「ユウキ、弾無くなった」

 

「最後の弾倉だ。大事に使え」

 

 

マイクロフュージョンセルをサラに投げ、残骸の隙間から除き見る。敵はおよそ一個中隊に加え、APCが2両残っている。火力と兵員に圧倒的差があり、ジリ貧で全滅する危険があった。

 

腰のスモークグレネードで視界を眩ませ、撤退する方法もある。ただ、撤退する兵力が残されているかだろう。もう既に半数以上が死傷している。軍事上3割が全滅判定を受ける。この現状は非常に不味い。

 

「センチネル・リオンズ、これでは持たない。」

リバティー・プライムはそろそろ中和を終える頃合だ。だが、追随する歩兵部隊がいなければ、撃破されてしまうかもしれない。

 

だが、サラは首を横に振った。

 

「いいえ、ここで引くわけには行かないわ。ここを死守よ。」

 

サラの目にははっきりと決心の感情が現れていた。だが、同時に死の恐怖も含んでいるような眼差しだった。その瞬間、陣地近くがいきなり爆発し、建物の瓦礫が飛散する。咄嗟にヘルメットを被らないサラを庇い、がれきを背中に受け止める。砲撃音の方向へ見るとパワーアーマーを着るエンクレイヴ兵と装甲車の群れが陣地に迫っていた。。

 

増援としてやってきたのか105mmライフル滑空砲を搭載したIFVはエンクレイヴのパワーアーマー兵の随伴の元、BOSの防御を破ろうと前進した。砲塔は微調整を行い、砲身はこちらの陣地に狙いを付ける。

 

「逃げろぉー!」

 

数人のナイトはその叫びで陣地から飛び出していく。俺も逃げようとしたが、さっきの爆発で破片を頭部に当たって脳震盪を起こしたのか気絶するサラ・リオンズが膝の上に倒れてきた。

 

「これまでか……」

 

なんともあっけないものか・・・。

 

 

砲塔が回転し、砲身が俺のいる陣地へと向けられた。彼女を担ごうが見捨てようが間に合わない。

 

シャルの顔が目に浮かび死を覚悟し、その場に蹲る。

 

 

高低音の音と共に爆発音が響き渡った。目を食いしばって耐えようとしていたが、いつまで経っても意識が途切れることが無く、目を開けると火達磨と化すIFVの車両があった。

 

 

 

 

 

 

 

(こちらBlue Thunder0-1。敵装甲車排除を確認!これより掃討を始める)

 

 

 

頭上に飛来するガンシップタイプのベルチバードは旋回し、翼に装着されたロケットポッドからロケット弾を発射する。推進剤が燃焼し、パワーアーマーを着る兵士達を次々に紙吹雪のように吹き飛ばしていく。次々とベルチバードの編隊とIFVの車輌が接近する。それは大統領派の部隊ではない。民主主義を復活しようとする議会派の部隊だ。

 

 

(こちらHQ,劣勢に立たされるBOSの攻撃部隊を援護せよ。彼らの大型兵器へは発砲攻撃を禁ずる)

 

(Rider1各機、敵装甲車を捕捉、攻撃開始)

 

(Rider1-2,旧厚生省に大型SAM複数を確認、攻撃する)

 

(mongoose2-3、敵車両捕捉。DU弾(劣化ウラン弾)装填……撃ってぇ!!)

 

 

翼や車両の側面、パワーアーマーの右肩などに記された青い塗装が成され、議会派のエンブレムが記された部隊が到着した。後ろから議会派のヘリ部隊と車両部隊の強襲によって大統領派のBOSを包囲した部隊は総崩れとなる。優れた装備と人員で圧倒する事に慣れた彼らは同規模の敵との交戦には耐えられない。空と地上の二方面から攻撃を受け、あっという間に戦線が崩壊した。

 

「リオンズ指揮官は!」

 

 

パラディンの1人はこちらに駆け寄り気絶した彼女を見る。

頭からは出血しており、彼女の金髪は血で汚れていた。腰に付けていた水筒を取り出し、思いっきり彼女の顔に掛けた。そして、ほっぺを叩き彼女の意識は覚醒する。

 

「……ふぇ?……何!」

 

額と生え際の近くを切ったらしく、近くにいた衛生兵がガーゼでそこに止血していく。意識が覚醒し、言語機能に異常がないかどうか確かめた後、パラディンは残党の銃撃を考え姿勢を低くして報告した。

 

 

「報告、敵包囲は崩れました。例のエンクレイヴ反乱軍が挟撃に転じた模様。リバティー・プライムもエネルギーフィールド中和を確認。御命令を!」

 

 

「敵施設へ突入するわ。敵は大統領派と呼ばれるエンクレイヴの過激派のみ。議会派と呼ばれる反乱軍部隊には発砲しないこと!」

 

「yes.ma,am!」

 

 

未だふらつくサラに肩を貸して陣地から離脱し、衛生兵が包帯でぐるぐる巻にすると、落ちていたヘルメットを被せる。

 

「何するのよ!」

 

「破片食らって脳震盪を起こしたんだから被っておけ!」

 

半ば強引にヘルメットを被せ、衛生兵に彼女を引き渡す。衛生兵には脳震盪で意識を失ったが脳溢血の可能性も視野に入れるよう忠告しておく。ざっと生き残ったBOSの隊員の数は70名。ほかは戦死か負傷によって行動出来なくなっている。

 

「指揮継承順で誰が指揮する?」

 

「ちょっと私が・・・」

 

「負傷しているんだから、後方で待機だ。」

 

衛生兵が座るよう促すなか、頑固にも戦場に出ようとするサラ・リオンズは周囲の兵士から止められる。先ほど脳震盪によって気絶していたこともあり、重度であれば脳溢血の可能性もある。こちらからすれば安静にしてもらいたい。そうなると代わりの指揮官が必要となる。

 

「貴方です、パラディン・ゴメス」

 

俺は驚きのあまり、同じパラディンの彼に向き直る。

 

「いやそれは不味くないか?」

 

 

 

「エルダーと、センチネル・リオンズはリオンズ隊長が殺られた場合は代理でパラディン・ゴメスに指揮権を移譲するようにと言ってました。……私は敵に下ったと思い貴方を軽蔑してましたが、リオンズ隊長を庇った時貴方に付いて言ってもいいと思った。」

 

「いや、おれはそもそもナイトなんだが……」

 

そもそもナイトという階級は下士官等を指す。その下にはイニシエイトやその他旧軍の階級を使用するが、パラディンは尉官から佐官にかけての戦闘指揮官である。因みにサラ・リオンズはパラディンとエルダーの中間にあるセンチネルという新たな階級を創設しているが、あまり定着せず、たまにパラディンと呼称する。

 

そして俺だがいつから部隊を指揮するパラディン(英雄)になったのか。

 

「いいえ、貴方はエンクレイヴの首都に潜入して情報を収集した。その功績でパラディンに昇進よ」

 

「情報って……まあいい」

 

リオンズはまだ衛生兵に救護を受けているが、彼女を先頭に駆り出すのは酷だろう。昇進なら先に俺へ伝えるべき事柄だ。すると、彼女は「忘れてたわね」とヘルメット越しでもわかる笑みを浮かべていた。この脳筋め

 

だが、一番問題なのはエンクレイヴの兵装を装備した俺という存在だ。後ろ盾にサラ・リオンズがいたことで俺がBOS側の兵士だと思われていても、指揮官が敵方の装備を着て、以前にスパイ疑惑で拘留されていたならば話は別だ。数名は俺の戦いぶりやサラを信頼してこそ、俺を信用しているが、大半は俺を疑っているか敵視しているかのどちらかだ。

 

「一応、あんたにはペンタゴンには戻らずに後方指揮を任せるよ。前線は俺が率いるから」

 

 

 

ふと、シャルと出てきたVault101の扉を思い浮かべた。あの時でて来てから多くの危険と出会いをしてきた。この世界がゲームの世界ではなく、現実の世界と認識してから、記憶と違うこの世界の運命を左右するところまで進んでいった。

 

ウェイストランドを旅してから思ったのが、自らの頭を撃ち抜けば、扉をくぐった時の瞬間に戻れるのではないだろうかと。もし、ゲームの世界であれば、前のセーブデータから再開される。それかこれは全部夢落ちなのではないかと思ったことすらある。

 

 

だが、Vault101を出る時に目にした光景を思い出し、すぐにその考えをやめる。怒りを露にし、復讐心を燃やしたシャルと遭遇し、彼女を連行しようと近づいた瞬間に俺と共にいたオフィサー・ダンケルはラッドローチに襲われた。俺は何とか撃退したものの、ダンケルはラッドローチに頸動脈を食い千切られ、失血死した。大量の生暖かい血液がグローブにしみこみ、清潔なVaultのタイルが真っ赤に染まる。自らの血液で溺れ、バタバタと足を動かし、圧迫止血をしようとしても噴水のように吹き出る血液がヘルメットのフェイスガードに飛び散った。眼前に死が迫る恐怖。ダンケルの目には必死に助けようとした俺の姿と死への恐怖が滲んでいた。

 

この世界はは0と1を組み合わせた電子上のデータでもなければ、視覚化したコンピューターによる仮想現実でもない。ハヴォックエンジンで構成された物理演算でもない

赤い血が流れ、命が失われていくか弱い人間だ。

 

何度も危ない目に遭い、傷だらけになりながらも人を殺してここまで生きてきた。人を打つ時の感触。目の前で死に絶える男の姿。いつしか、この世界で死ぬことが本当に死を意味することを直感で理解した。

 

 

 

――生き残ってシャルと共に人生を歩んでいきたい ――

 

その思いを考え、パワーアーマーの無線を操作し、BOSの周波数に合わせた。

 

 

「こちら、パラディン・ゴメス。負傷したセンチネル・リオンズに代わって俺が前線指揮をとる。残存兵力をジェファーソンに叩き込む。リバティー・プライムによる砲撃支援をするため、レーザー誘導は確実に行え。間違ってもエンクレイヴの反乱軍勢力には攻撃するなよ」

 

生き残った兵士達は倒れた仲間の武器や弾薬を拾い、俺の後に続く。旗手の持つBOSの紋章が書かれた隊旗はさっきの戦闘でボロボロになってしまっている。

 

「生き残った兵はジェファーソン記念館を目指せ!」

 

プラズマライフルを拾い上げ、生き残った兵士達の先頭に立ち、ジェファーソン記念館に急いだ。

 

 

 




次がラスト!
その次が後日談となります。

DLCはどうしたか?・・・・・それはのちのち・・・・

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