fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

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皆様方、お待たせいたしました。
本当ならもう少し投稿をはやめようと思っていたのですが、大学でいろいろありまして、全然投稿する暇がありませんでした。


次の話は多分短いですが、46話で終了の予定です。
46話以降はエピローグとDLCを予定しています。


fallout3の作品は一通り終了後、作者の就活のため暫し、執筆活動は休止します。本当なら年越し前に終わらせるつもりでしたが、ちょっと無理そうですw






四十四話 Snatch!

       

 

 

 

 

装甲車というものは、人が軍馬を用いて人を運搬し、その台車に装甲をつけた時から始まる。古代において戦車とはギャロップと言ったような馬によって引かれた戦う荷馬車と思えばわかりやすい。それはローマにおける闘技場でも高価を発揮し、それを用いて敵を一掃する様は興奮を覚えるに違いない。

 

 

 

装甲車は産業の発展からエンジンが組み込まれ、世界大戦を経て、銃弾を弾き飛ばして兵員を運ぶ役割が重要となると、それを戦場で見ることが多くなった。二度目の世界大戦では、工業力が高く機動力を重視した国家が装甲車を作り上げた。兵員を安全に運搬することや軽装甲によって敵陣地を突破する能力を持つそれらの兵器は戦場において重要視されることになった。

 

 

核による大戦争から200年。稼働する装甲車の数も少なく、エンクレイヴ軍においても生産数は極めて少ない。しかし、その設計思想は過去の設計と比べてもかなり違いがある。

 

 

 

まず積載量であるが、マイクロフュージョンセルによる大出力のエネルギーとそれを動力とするエンジンによって小型ながらも、パワーのあるエンジンがあるために従来のディーゼルエンジンを載せた装甲車と比べて格段に積載量が増えている。そして、その積載量は完全武装の兵士なら20人は乗ることが可能である。しかし、これは「重さ」に限った話である。そもそも、装甲車は狭い。輸送を考えれば、利便性も踏まえて20人もの人を乗せて運用などしない。

 

 

 

エンクレイヴで生産されるAPC(装甲車)(Armored Personnel Carrier)「M235 コンドル」はパワーアーマーを着た兵士を4人搭乗させることができる画期的な装甲車である。そのため内部は広く作られており、車体は縦と横に大きく、ストライカー装甲車を縦に伸ばしたようなものと考えてもらいたい。八輪駆動のため悪路でも安定した走行が可能である。標準的な装備としてM2重機関銃や30mm機関砲などが遠隔操作で射撃可能である。また、それらは、IFV(歩兵戦闘車)(Infantry Fighting Vehicle)として換装が可能であった。I85mm榴弾砲が装備することから、エンクレイヴ軍におけるIFVは「戦車」の役割があった。ウェイストランドにおけるこれらの兵器はチートのようなものである。

 

 

 

そして俺が乗っているのは、APCと呼ばれる兵員輸送車だった。30mm機関砲搭載車両のため、M2期間銃を載せたものと比べるとだいぶ空間が取られている。しかし、それは気にならない程度に兵員スペースが確保されており、狭いイメージを持っていた俺はその広さに驚いていた。兵員はパワーアーマーなら3名。普通の歩兵なら六人程度だろう。

 

 

 

「司令部です。地下駐車場に止めます。巡回の部隊がいますが、腕章を確認してください。味方には撃たないでくださいよ」

 

 

「分かっている。君たちは私達を下ろしたらどこへ?」

 

 

「次はわかりませんが、多分人手が足りないので何処かの区画に行くと思います。多分西の工場区画ですかね。彼処は西海岸派の将校が多いので」

 

 

「腕章ってその青いやつか?」

 

 

俺は腕章をつけた兵士に聞いてみる。

 

 

「これですか?一応、議会に所属するメンバーは蹶起した時に識別のためにつけるよう言われてます。確か、色が青なのはフランス革命のとこから来ていると聞いてますが」

 

 

フランス革命時に革命の指導者や地下組織のメンバーが行動時に識別のためにそうしたものをつけていたらしく、青色を使ったという話らしい。もし、赤色であったならば、共産主義として、西海岸派などの勢力から批判されかねない。そもそも青色にしたのは識別しやすい色であるからかもしれない。

 

 

装甲車への銃撃は先程からやみ、外では怒鳴る声や命令をしている指揮官の声が聞こえてくる。 外の光景を見ている運転手や機銃手は会話をしていた。

 

 

「サントス市場は制圧したみたいだな」

 

 

「市民が多いですからね」

 

 

民間人の殆んどは東海岸寄りの思想を持つものがほとんどであるが、暴動の時に迷わず神経ガスを使おうとしたエンクレイヴ軍に恐怖して、表立ったことはしていない。議会派は市民議会などの左派団体を取り入れ、武装蜂起の際は、協調していくことに同意した。思想や心情は議会の大半を占める保守的・右派的思考とは相容れないが今後の民主政治にはお互い歩み

寄るしかない。

 

 

民間人のエリアらしきところを通り抜けていき、幾つかのトンネルなどを通って装甲車は停止する。

 

 

「到着しました。総司令部です。忘れ物が無いように」

 

 

どこかのバスの運転手のような口調でいう装甲車の運転手は笑いながらいい、ハッチを開く。降りていくと、青い布を肩のアーマーにつけたパワーアーマー兵士と士官服を着た指揮官らしき男が近づいてきた。

 

 

「スタウベルグ中尉殿、作戦おめでとうございます」

 

 

「私達がやったわけではないわ」

 

 

「それでもです。無事に帰還できたことは喜ばしいこと。おふた方はこれをつけておいてください。」

 

 

渡されたのは同じ青い腕章だった。渡された腕章をすぐに右腕の上腕に取り付けると、アリシアと共に地下駐車場近くのトイレで着替え、エンクレイヴの士官服の格好に変身する。男女別のトイレだったので見ることは叶わなかったが、渡された荷物の中にはアリシアが持っていた9mm弾を発射するブローニング拳銃が入っていたため、ホルスターに納めてエレベーターホールでまつ。

 

 

エレベーターが階に到着すると、扉が開いたその先にはオータム大佐の補佐官が待ち構えていた。

 

 

 

「大佐は第一作戦指令室でお待ちです。中尉と少尉は急いで向かってください」

 

 

 

「え、まだ演じる必要があるのか?」

 

 

 

今回の士官服は脱出したときの軍服とは違って大尉でも少佐でもない少尉の軍服だ。そして、更に奇妙なことに俺のフルネームの名札が左胸についているではないか。 偽名でなく本名。これでは本当にエンクレイヴの将校になってしまうじゃないか。

 

 

「はい、演じるというかそのまま成って戴こうかと思いまして」

 

 

 

「俺、士官学校とか出てないから。それにエンクレイヴの人間じゃない」

 

 

「一応Vault101の全住民をエンクレイヴの国民として編入することになっているので、その資格はあります。それに、エンクレイヴ軍は慢性な人手不足です。なので、それぞれの適応する階級を提供して軍務に服するよう強制的に入隊させることが可能です」

 

エンクレイヴは現在、慢性的な人手不足だ。ワシントン全域をカバーする戦力がなく、統治するのも各拠点や集落に重点配備するしかなくなっている。兵担においても、軍需物資を生産するための工場の人手を他から回さなければならず、ほぼ全ての部署が人手が不足していた。

 

 

「拒否とか出来ない・・・よな。それに、部隊指揮なんてしたことないよ?」

 

「ご冗談を。我々はあなたのpip-boyから数々の戦闘データによって貴方の指揮官としての能力が分かります。分隊やツーマンセルの指揮だけでなく、交渉術や戦闘指揮、戦闘能力、物資を的確適所で使用し、傭兵を纏め上げたではありませんか?それにリベットシティーと呼ばれる地域ではR-91アサルトライフルや既存の銃の改造案や傭兵ネットワークの創設。正直申し上げれば、ユウキ・ゴメス少尉ではなく、その能力に見合う階級は少佐クラスの方が適任です」

 

 

多くは高性能な物資や兵器があったからで、ただのチートである。しかし、高性能な兵器や装備を持っていたとしても人は死ぬ。俺は幸運でもなければ、かといって体をサイボーグにしたわけではない。幾ら物資チートを誇っていたとしても、所持しているのがVault警備員崩れならば宝の持ち腐れと言ってもいい。普通ならウェイストランドの荒れ地で死体としてそこら辺に転がっていてもおかしくない。俺は使えるところで物資を有効活用した。ただ物資を溜め込むだけではなく、それを流して地域の影響力を強めたことが今の俺を形作っているだろう。メガトンに武器屋を開いたことで物流が大きく動き、キャップの流動が大きく変化した。需要と供給が一致し、高性能な武器を求める中堅から腕の良い傭兵との繋がりが構築された。そしてリベットシティーの小さな工場でも俺の作ったアサルトライフルの改造や少数ながらも、銃の修理や量産が出来つつあった。更に、フラックの要望でpip-boy地図情報をプリントアウトし、傭兵や商人の為の情報ネットワークを確立させた。ある意味、それは中世ドイツで作られたギルドや戦国時代の堺に通ずるところがあるのではないか。そして、ジェファーソン記念館での一戦。旧式の兵器であるものの、攻撃を仕掛けてきた部隊に対して、善戦をすることができた。結局撤退したが、俺達よりも攻撃してきた部隊より損耗度は低い。敵対し、エンクレイヴの兵士を殺したとしても、その結果は敵ながら天晴れと言えるのか。

 

 

それら全て、俺がやったことではない。少し誇張も入っているだろう。だが、彼の言っていることはあながち間違いではなかった。

 

だからと言ってエンクレイヴに仕官するつもりもない。だが、シャルは現在、大佐の保護下にある。つまり・・・・・・。

 

 

「・・・嵌められたか・・」

 

 

「騙したつもりは私も大佐にもありません。仕官しなくても結構です」

 

 

「じゃあ、俺の家族は?父や兄貴もエンクレイヴいるんだ。状況からして家族を人質にしたようなものじゃないか」

 

 

「はて、“仕官しないと家族の命はない”と言ったわけではありませんよ」

 

 

言わなくても言っているようなものじゃないか。口からそう言おうとしたん、副官は俺を睨み付ける。

 

 

「大佐は仰いました。“ゴメス氏の意思に任せる”と。ですが、シャルロット氏はどうするのですか。私からすれば命が幾つあっても足りない荒野で過ごすより、仕官してお二人がエンクレイヴの・・・・いえアメリカの国民になればいい。そもそも、我々はアメリカ国民でしたな。・・・・それに、もし子供ができたら?貴方は荒野で育てるつもりですか?Vaultやエンクレイヴのような所で育てた方がいいでしょう?」

 

ウェイストランドで子育てすることとレイヴンロックでするとでは大分違う。それに、なぜジェームズがVault101 に入ってきたのか。それはG.E.C.K.の在りかを知るためだけではない。子供を安心して育てられる環境が欲しかったからだ。ウェイストランドはエンクレイヴに植民地化され、次第に住むのに困らない場所になる。だが、そうなるのはまだ先の話。10年以上かかるかもしれない。

 

「騙していないのはよくわかった・・・・・、もう少し考えさせてくれ」

 

「分かりました、いい返事をお待ちしています」

 

副官は踵を返し、エレベーターのコンソールを弄り、持っていた鍵で閉鎖されている区画のボタンを押した。

 

「作戦指令室のある地下5階は閉鎖されています。入れるのは作戦に関与する指揮官だけです」

 

エレベーターは直通なのか止まらずに下っていく。扉の上の何も書かれていない地下五階の作戦指令室に到着すると、左右の機関銃陣地がこちらを狙う。

 

「オータム大佐の代理だ。通してくれ」

 

「了解です。」

 

そこはただの廊下であったが、クーデターを起こしている最中であるため、警備は異常とも言えるほど警戒を厳にしていた。休憩用のベンチは倒され、軍が使用する防護壁を使用して封鎖していた。

 

明らかに異質なその警備部隊であったが、奥には警戒中のミニガンを装備したパワーアーマー兵も準備していて、死守する構えを取っていた。もっとも、司令部ビルは完全に制圧され西海岸派の部隊は完全に掃討している。中に入ることはおろか、近づくことも出来ないだろう。

 

機関銃陣地を通りすぎ、金属探知機と各種センサーが置かれた部屋へと入る。

 

「武器をお預かりします。このトレーに武器を置いてください。弾薬やナイフも忘れずに」

 

番号が振られたセラミックのトレーに9mmピストルとシークレットサービスから拝借したコンバットナイフ。弾が無くなった22口径消音ピストルと9mm弾倉二つをトレーに置くと、トレーは近くの小型武器庫に置かれ、引き取り証の札を貰いポケットに納めた。

 

「金属の物や弾丸、金属片が入っている場合は教えてください」

 

と空港でやるような金属探知機が行われ、一度負傷していると答えると、一応金属探知機のゲートをくぐり、警報が鳴る。

 

「何処を怪我しました?」

 

「顔だけど・・・摘出した筈なんだが」

 

ハンディータイプの金属探知機を顔に近づけるとブザーが鳴る。タワーでタロン・カンパニーに襲われたときに手榴弾の破片が左頬と目の下に突き刺さった。大事には至らず、破片は摘出したと思ったがまだ体内に残っていたようだ。仕方なく、身体検査で何かもっていないか検査を受けた。

 

アリシアは負傷したことがあっても、機密区画に入ることが多いため、負傷して金属片を体内に留めても、こうして俺のように面倒な目に遭う。昔、銃撃に遭って9mmが体内に残っていたが、エンクレイヴの防疫検査で引っ掛かり摘出したようだ。

 

全ての検査を済ませ、バンカーのハッチの両脇にたった警備兵は俺たちに敬礼し、すぐに返礼で答える。警備兵は両端にあるカードキーでハッチを開いた。

 

 

作戦指令室と呼ばれたそこは、映画やアニメで見るような所だった。正面に大きくスクリーンがあり、それを半円状に広がり、机に座ったオペレーターらしき女性情報統制官が各部署へ連絡を伝えていた。その連絡を当直の担当情報士官が受け取り、何かあれば増援部隊。上の上司へ連絡する。

 

 

 

「こちらCP。Tango 2-1、第3ヘリポートで死者多数。Zulu3-1を援護せよ」

 

 

 

「Delta4-2、今砲撃しているのは味方部隊だ!砲撃を中止せよ!繰り返す・・・」

 

 

「 Golf2-4、パッケージは司令部へ連行せよ。生かして連れ帰れover」

 

 

「Whisky leader、こちらCP。工場地帯は完全に制圧した。これより第3区画のヘリポートへ増援に向かえout」

 

エンクレイヴ軍は二つに割れ、腕章やそれに順ずる何かで識別をしている。クーデターは味方同士の撃ち合いが一番多い。味方である部隊がいきなり反旗を翻すのだ。された側はたまったものじゃないだろう。同士討ちや民間人の殺傷もしないようにするため、戦闘指揮などは戦闘指揮所(CP)や本部(Head Quarter)が必要となる。現場指揮官は逐次状況を知らせ、状況が変わり支援が必要になれば、連絡を行い航空支援が行われる。

 

議会の会合で使われていた議事堂と違い、ここは戦闘を統制し、統合するエンクレイヴ軍の脳髄にあたる。緊張によって顔が強張る戦闘指揮を行う彼らは反乱軍のイメージを作りなしていると言えるだろう。今後、臨時政府が作られ、その政府軍として機能する。旧来の軍とは違う印象を民衆に与えなければならない。軍を第一とする軍国主義的なものではなく、国民を第一に考えているものでなくてはならない。

 

スクリーンに対して半円状に広がり、階段のように大学の教室のような机に座り、オペレーターが各部隊の統制を行っているところをみると、エヴァンゲリオンの戦闘指揮所か甲殻機動隊の指令室にも見えなくない。

 

スクリーンとオペレーター達の端末の間には、円型の3Dスクリーンがレイヴンロックを映している。将官や佐官がそこを立ち、丁度説明を行っていたようだ。

 

 

「着いてきて、私のあとに」

 

アリシアは言うと、その集団の中で指揮を取っているオータム大佐の元へ行く。

 

近づいていくにつれて、彼らの会話が聞こえてきた。

 

「レイヴンロックの主要軍施設の90%が制圧。D.C.地区に展開している約70%は我々の指揮下にあります。北東部と南東部の基地、中部も完全に我々の傘下に加わると」

 

「それで、反発している部隊は?」

 

「第一航空団の二個中隊。第22機械化中隊所属の装甲車5両。シークレットサービスが2個中隊。ジェファーソン記念館に駐留する第87空挺大隊から派遣された二個中隊。パワーアーマーは約30前後、武装ヘリは4機ほどあります」

 

「かなり多いな」

 

「殲滅戦の覚悟を持っていかねば我々は時間が経つにつれて分が悪くなります。それに制圧と言っても、全ての部隊が了承したわけではありません。その上位指揮官のみを懐柔か拘束の二択でしたので。早急に議会の正式発表と政府の樹立宣言も・・・・そして何より・・・」

 

「本体の破壊はまだ出来ていないか」

 

円筒型の3Dスクリーンには議会の意向に反して徹底抗戦をしようとする部隊が持つ武器兵器類が映し出される。それらは二個大隊規模の大きいものである。そして、大統領支持派とレイヴンロックから今まさに脱出しようとしている西海岸派の将校達。彼らは少なくなく、新政権にとっての膿でしかない。

 

本体とはつまり、大統領のことを差す。ZAXコンピューターは自我を持つAIであるが、その容量は非常に大きい。彼の本体であるサーバーを破壊しようと特殊部隊を大統領官邸に送り込んだが、あったのは空のサーバールームだけで、本体はすでに別のところへ移されていた。

 

オータム大佐や複数の高官と周期的にカウンセリングを受ける整備士がいるが、大統領のことを知るものはそれ以外にいない。敵対勢力の西海岸派や大統領を信奉する一派と睨むが、いつ移動したのか分からなかった。

 

「大統領の身柄を拘束しないとな。所在は分かるのか?」

 

「いえ。しかし、レイヴンロックの第七ヘリポートからジェファーソン記念館へ浄水施設の制御装置と書かれた機械が二日前に送られたそうです。パイロットによると、それは巨大な電算機であったようで・・・・」

 

「そうか、奴はやはり我々の行動をつかんでいたか」

 

報告を受けたオータムは眉間に皺を寄せて唸る。水面下で同志を増やし、決起の準備を整えていたオータムにとってほぼ成功に近い形とは言え、知ってて尚鎮圧しなかったのはどうみてもおかしかった。大統領のような権力があれば証拠がなくとも、逮捕できるのだ。銃殺などは流石に無理かもしれないが、逮捕の間に証拠を見つけ、一網打尽にできる。

 

なぜ、知っていて防止しようとしなかったのか?

 

機械と言えど、人が創ったもの。間違いも存在するのか。

 

オータムは俺達が近づいているのを知り、残りの報告をしようとする情報士官を止めて俺達の方へ視線を向けた。

 

「スタウベルグ中尉、ゴメス少尉。特務を終え、帰投しました」

 

「ご苦労・・・と言いたいところだが、今回の暗殺の目星はまだわからない。二名は別名あるまで待機を命じる。」

 

「了解しました」

 

簡潔に報告を行い、俺とアリシアは踵を返して指令所から去ろうとする。

 

これで終わりか?呆気ない。

 

そんな感想を胸に帰ろうとした。

 

情報将校の報告を背に外に出ろうと歩き始めるが、地響きと共に揺れが指令所を揺すった。

 

「何事だ!」

 

「司令部ビルの2階小型弾薬庫で爆発!特殊部隊と思われます!」

 

「まさか、司令部の周囲は完全に制圧したはず」

 

「敵は我々のトラックに偽装し、正面から強襲してきた模様」

 

「警備部隊に武器の使用を命じる。敵の規模は?」

 

「およそ一個小隊。半分が重武装のパワーアーマーで武装しています。・・・・・警備部隊によりますと、人質がいる模様。20代女性仕官かと」

 

「誰だ?・・・・まさか・・・」

 

その台詞に俺は居てもたってもいられずに、司令室の外へ向かう。後ろで俺の名前を呼んでいたが、それを無視し、司令室の外の武器保管室へ行き、持って来ていた武器を返却してもらう。

 

 

もしかしたら違うかもしれない。そんなことが思い浮かぶが、流石にこのタイミングにシャルと同じ20代の女性が拐われている理由は検討が付かない。そして、そもそも、シャルはゲームの主人公である。俺ではなくシャルが大統領の元へ行くよう求められるのがゲームの展開だ。

 

間違いなく拐われたのは、シャルに決まっている。それ以外にあり得ないのだ。

 

 

「HQ、こちら司令室武器庫。状況知らせ」

 

(全部署に通達。特殊部隊が一階と二階を攻撃している。保安要員は各部署を守れ。これは訓練にあらず、応援保安要員は直ちに四階へ集合せよ)

 

無線で司令部内の警備本部と無線連絡を取っている警備兵は緊張した面持ちで周囲の警備兵にコンバットアーマーを配布し、レーザーライフルで武装する。

 

「武器はあるか?」

 

「ありますが、許可はありますか?少尉殿?」

 

「いや・・・・・、」

 

基本的に警備兵以外は重武装をすることを許されない。非武装の士官は安全地帯に避難するか、非常事態に基づき、武装を許される。そうしなければ、指揮系統に歪みが生じることになるからだ。戦闘部隊の指揮官であればなおさらで、如何に有能であれど指揮系統が混乱する恐れがあるため、回避することの出来ない非常事態以外では武器を取って戦ってはならない。

 

しかし、例外も存在し、本部や何らかの命令によって警備部隊以外の増援が駆けつけることもあり、現場の判断でそれを行うこともある。だが、実際のところ、俺は何らかの命令を受けているわけではないし、これは私用に他ならない。

 

「重火器の携行は警備本部の命令書がないと許可できません。申し訳ないですが・・・」

 

自分よりも階級が高いため、敬語で言っているが、暗にその程度知っておけと言うような眼差しでこちらを見る。本当はそんなことを思っていたのではないかもしれないが、拐われていたのはシャルなのは確実であり、焦りと緊張からそんな疑心じみたことを考え、ホルスターに収まった拳銃で脅してしまおうかと頭を過ぎったその時、後ろに人気がして振り返った。

 

「軍曹、少尉と私は警備本部から応援要請を受けた。ここにある武器を借りるがいいか?」

 

アリシアは自分の引取り証と共にいつ作られたのか、警備本部が発行する命令書が留められたクリップボードを軍曹の座る机に置いた。

 

「確認しました。武器庫の中へどうぞ」

 

「中尉殿これは・・・?」

 

「・・・・罪滅ぼしだ」

 

武器庫の扉が開き、俺とアリシアは内部に入っていく。

司令室前の小型武器庫と言えど、C4などの軍用爆薬は敵にそのまま奪われる恐れが在るため置いていないものの、弾丸を使う小火器からレーザーやプラズマを使う重火器など多岐に渡っている。

 

武器庫に入った俺とアリシアは武器庫を管理する軍曹から武器庫を通され、警備兵が非常時に着る防弾ベストを手渡される。それは、現代のMOLLE(Modular Lightweight Load-carrying Equipment)のようなベストだった。兵科に合った装備品を付けられるよう統一された規格でポーチや無線機などを装着できるよう設計されたもので、この世界の2080年代では50年代の人々が考えた未来故に兵士一人一人の価値がそこまで高くなく、兵士の装備も発達しなかった。2270年代になってやっと兵士の単価が上昇し、兵運用が発達したのかも知れない。もしくは、俺のように前世で情報を得たのか・・・。

 

アメリカのイーグル社が開発したプレートキャリアCIRAS(Combat Integrated Releasable Armor Systm)に似た構造を持つそれは既にからのマグポーチとフラグポーチが付いており、破片や弾丸を貫通しないよう防弾プレートが挿入されていた。

 

「軍曹、このプレートだが・・・」

 

「技術研究所で設計されたものらしいです。たしか、パワーアーマーを着ない歩兵向けに作られた次世代の防弾アーマーだとか・・・。レーザーやプラズマには一発だけ耐性があります。7.62mm弾だと20mの距離でも貫通しません。コンバットアーマーMk.6と言われています」

 

 

この世界のコンバットアーマーは肩にある防弾プレートがあまり必要ではないとエンクレイヴの研究グループは思っていたようで背中のプレートが無かったことも挙げられ、エンクレイヴ軍は戦術思想を変更して現在のアーマーを考えたようだ。従来のコンバットアーマーは強化プラスチックとセラミックの複合材が使われた最新鋭の物らしいが、兵士の意見を尊重しなかったり、対ゲリラなどのコマンド部隊などがあまり発達しなかった世界であるためか、兵士の装備品は戦場にいない技術研究の技術者のみが作っていた。

 

それを、核戦争後。一兵卒の意見までも考慮して装備は変わっていった。巨大な機関になると、一度決めてしまえば変わることは少ない。それを維持する費用や製造過程を見直さなければならなくなる。しかし、数の少ないものであったり、規模が小さければ装備の変更はかなりの低コストで収まる。核戦争による規模の強制的な縮小によって技術革新が得られるとは何と皮肉なことだろうか。

 

エンクレイヴの士官服の上からプレートキャリアを着込み、武器庫に保管された破片手榴弾を三つほどポーチに突っ込み、プラズマ手榴弾と閃光手榴弾をひとつポーチに入れて、ライフルラックへ目を向ける。

 

「軍曹、火薬を使用する武器はあるか?」

 

「対人火器として配備されているのがありますが、連絡によるとパワーアーマー装備の特殊部隊です。光線型重火器の方がいいのでは?」

 

「いや、念のために10mmサブマシンガンを使おうと思ってな。対パワーアーマー用の装備って何がある?」

 

 

「こちらです」

 

軍曹が『火気厳禁』、『当直士官の命令によって開封すること』と書かれた札の貼られたガンキャビネットに近づき、扉を開いた。

 

「技研で作られたM18A1対物ライフルです。通常の対物ライフル弾と共通で50口径を使用します。カーボンとステンレスの複合で電子機器を搭載して特殊弾頭を発射できます」

 

それはM82A1とも似た対物ライフルであるが幾分かスリムになり、スコープも距離と経度などが分かる補助標準装置もセットになっていた。幾つか分からない装置も見つけたが、軍曹が見せたお陰で解決した。

 

それは50口径弾に違いないが、弾頭の部分は普通のと違って幾分か柔らかい物質で出来ていた。

 

「技研で開発された特殊徹甲弾です。弾頭は命中すると粘着トリモチのように装甲に張り付きます。この物質は新開発された爆薬の一種でこの前の戦闘で使われました。」

 

「これは私が使う」

 

アリシアは重そうなライフルを撫で、横においてあった弾倉に入っている弾丸を抜き取り、特殊徹甲弾の弾薬箱から弾を取り出して弾倉に詰めていく。

 

「今回の弾薬は室内や施設の二次的破壊も考えられるので、爆薬を指向性爆薬にしたタイプです。周囲に軽い爆風がありますが、一メートル以内でも爆風に巻き込まれても火傷程度で済みます。」

 

 

「他にある?」

 

「一応、技研が開発した光線兵器がありますが・・・・」

 

「ん?」

 

「これになります・・」

 

出されたのは、レーザー兵器らしいのだが形状はライフルではなく、肩に背負うランチャータイプの物だ。それだけ聞かされれば似たような兵器であるテスラキャノンが思い浮かべられる。だが、それは純粋な光線兵器であり、一撃で主力戦車を破壊できる対戦車火器だ。

 

「なんでスパルタンレーザー?」

 

それは一見してみれば、この世界の兵器設計思想から逸脱したものだ。デザインもスタイリッシュになり、補助照準装置としてレーザーポインターとスコープが装着してある。

 

アメリカで大人気のSFゲーム「HALO」に登場する携行型対戦車光線兵器と記憶している。それは装甲兵「スパルタン」と呼ばれる強化兵士が運用できるよう設計されているため、スパルタンレーザーと愛称を込めて呼ばれている。

 

この世界にはないものなのだが・・・・

 

「スパルタ・・・まあ、技研が開発したMX1レーザーキャノン“ゴリアテ”です。弾種はマイクロフュージョンセル。一発ごとにセルを装填し、弾倉には10発。一気に全て撃つオーバーファイアモードを備えています」

 

技研ではスパルタン・レーザーと呼ばれているらしいが、とある技術者が「パクリは不味い」と名称を変えたと曰く付きだったらしい。多分、これを作った人間は誰なのかは分かっている。

 

「まだ試作段階らしく、20発撃つと、プリズムレンズにひびが入るらしいです。」

 

「それは難儀な物だが、まあ一撃でパワーアーマーを破壊できるなら良しとするか」

 

それは非常に重く、仕方ないので背中に背負うようベルトを調整して肩に掛ける。バナナ弾倉に成っているので、それにマイクロフュージョンセルを詰めて、装填する。予備弾倉は既存のマグポーチに入らなかったため、多目的用の脇腹近くのポーチに入れて事なきを得た。

 

軍曹から10mmサブマシンガンを受け取り、弾倉を差し込み次弾を機関に送り込む。

 

「中尉、バックアップをお願いします」

 

「任せろ。」

 

10mmサブマシンガンを下げ、廊下を急いで移動し、エレベーターに乗ろうと思ったが緊急時であったため反応がない。

 

「階段はこっちか?」

 

階段のマークのある扉を見つけて、扉に近づいた。アリシアはドアノブに手をつけ、開ける準備が整うと一気に扉を開け、進入して周囲に銃口を向ける。まだ、敵はここまで来ていないらしく、重い装備であったが階段を駆け上がった。

 

階段を上がり、地下二階の階層まで登りきると上の踊り場が騒がしい。10mmサブマシンガンを下ろし、背中に背負ったままのレーザーキャノンを背負うと、足音を立てないようにゆっくりと階段を上がる。一階の踊り場が見えるところまで来ると、誰かの声が聞こえてきた。

 

「パワーアーマーの兵士が居るなんて聞いてないぞ!」

 

「警備本部への連絡は?」

 

「駄目だ。二階と三階も攻撃をうけてるし、地下へ降りるしか!」

 

警備兵の三人は階段を閉めて何やら撤退の算段らしいが、彼らが見える位置まで近づくと、ミニガンの銃撃音が響き、5mm弾がドア越しにいる彼らへと降り注いだ。

 

二人はボロ雑巾のように踊り場に倒れるが、下り階段近くにいた警備兵は伏せたお陰で肩をかすった以外に怪我はない。俺とシャルは無事だった警備兵に声を掛け、警備兵もそれに気付いてゆっくりと移動しようとするが、突如コンクリートの壁から鋼鉄の腕が警備兵の顔を掴む。

 

「反逆者め、簡単に仕留めてしまったぞ」

 

スピーカーらしきものを使っているのか、警備兵の頭が鈍い音を立てて血潮が宙を舞う。レーザーキャノンをコンクリートに狙いをつけるが、流石にパワーアーマー相手では赤子のように捻り潰される。

 

パワーアーマーは血濡れの腕を壁から抜き取ると、大きな足音を立てながら廊下を歩いていく。

 

一階と二階・三階は完全に攻撃を受けているため、そこから侵入するのは骨が折れる。するとアリシアは俺の肩を叩いた。

 

「地下一階は駐車場エリアだ。すでに司令部周辺には機械化部隊の増援が到着している。脱出路は多分、地下一階を使う筈だ」

 

「さっき来たところだな。・・・・じゃあ、そこで押さえれば」

 

「まだ間に合うかもしれん」

 

俺は咄嗟に身体を地下へ向けて階段を駆け降りようとするが、アリシアは俺の肩を掴む。

 

「ユウキ、お前が焦ったらあいつは助からん!落ち着け!」

 

軽く頬を叩かれ、我に帰る。焦って何度失敗したことか。それを愛する女のために焦り失うことは避けなければならない。アリシアによって俺は我に帰り、一度深呼吸をする。大きく息を吸い、一瞬止めて吐く。

 

焦りは若干あるものの、さっきのように考え無しには動かない。

 

「下はまだ攻撃されていないが、慎重に行くぞ」

 

「ああ」

 

階段を下り、地下一階の踊り場に降りる。鉄製の扉があり向こう側に誰もいないか耳を着けて確かめる。音はなく、周囲にはまだ敵は居ないのだろう。

 

アリシアに合図を出すと、後ろから援護するように少し階段をあがって対物ライフルで金属扉に狙いをつける。俺はドアノブを回し、軽く隙間を開けて向こう側の様子を確かめようとするが、扉に金属の塊が勢い良くぶつかる。俺は扉に近くにいたため吹き飛ばされ、階段の踊り場の縁に激突する。

 

アリシアは反射的に対物ライフルを引き、耳鳴りがするほど凄い音が響き渡る。対物ライフルから放たれた粘着性の高い高性能爆薬がパワーアーマーヘルメットにぶち当たり、ベチャッという音が響き渡った。

 

「おい、なんだこれ?子供だまっ・・・」

 

そのあとに言葉が続くことはなかった。粘着した爆薬は2秒も立たずに爆発し、ヘルメットを粉々に吹き飛ばす。肉片と金属片が飛び散り、コンクリートを血で染めた。

 

コンクリートに打ち付けられた俺は痛みで悶絶していたが、打ち身だけで骨折は辛うじて無いようだ。

 

「ユウキ、しっかりしろ」

 

「・・・・大丈夫、行ける」

 

背中はジンジンと痛みが走るが、それを緩和する時間もない。投げ出されたレーザーキャノンを背負い直すと破壊された扉を潜り抜ける。

 

 

地下駐車場のエントランスは破壊されたエレベーターと血の海に沈む遺体が幾つも転がっていた。向こうにはいくつかの軍用車両と高官用の車があったが、幸運にも俺達の姿が遮られるよう車が横倒しになっていた。さっきまで何もなく真っ白なタイルの床であったのに、今では警備兵の血溜まりが作られていた。姿勢を低くしながらエントランスを出た。

 

近くに議会派の兵士が倒れていた。俺は近づき首筋を触るが、脈はない。ブービートラップがないことを確かめてひっくり返すと胸はプラズマによって大きく穴が空いていた。酷い死に方に顔を背け、アリシアがライフルを構えているところへ近づいた。

 

「どうした?」

 

「正面、装甲車のそば。パワーアーマー兵が二人。二人で同時にやるぞ。」

 

アリシアが見ている場所。スロープによって地上に出る所に見張りのために配置されたのかパワーアーマーを着た兵士が二人確認できた。近くには議会派識別のために一部青い塗装が施された装甲車が確認できる。

 

俺はアリシアから少し離れ、横転した車両の端からパワーアーマーのちょうど胸の辺りに狙いをつける。照準装置を覗き、チャージを行う。発射を行うにはエネルギーチャージを3秒しなければならず、速射できないがその分高威力が期待できる。照準装置のカーソルの横にあるチャージサイクルが満タンとなり発射出来ることを知らせた。

 

「一秒開けてユウキは発射しろ。そうしないと、時間差で爆発するこれだと仕留めきれずに攻撃される」

 

「じゃあ、2でアリシアは撃て。1で俺が撃つ」

 

「分かった。5・・4・・・・3・・・2・・・」

 

アリシアはライフルを撃つと狙っていた兵士の隣にいた兵士の頭に命中する。兵士はいきなりのことで動けない。

 

「・・・1!・・・」

 

重い引き金を引き絞ると、チャージされたレーザーが重低音の発射音と共にプリズムレンズを通して発射される。パワーアーマーを溶かし、搭乗する人を炭へと変え、それでも勢いが収まらず、停車していた公用車のガラスを突き破った。

 

「敵!・・・」

 

持っていたミニガンを向けようとした瞬間粘着爆薬の信管が作動して爆発。周囲に破片を撒き散らしながら糸が切れた人形のように地面へと転がった。

 

「危な、威力高すぎだろ」

 

一応、説明書を読み、敵兵士を殺すことに成功したが、あまりにも威力が強すぎた。もともと、装甲の厚い車輛を破壊するために設計されたのであろう。パワーアーマーは現在の装甲車よりも若干装甲は薄かったためかもしれない 。背後の公用車の窓は溶け、合成革のシートが燃えていた。

 

 

「ユウキ、爆薬は持ってるか?」

 

「持ってないが、プラズマと破片が4つ程」

 

「それをエンジン基部に取り付けろ。これは議会派の装甲車じゃない。情報部所属の装甲車だ」

 

「情報局?」

 

「ああ、戦前のCIAと呼べばいいのか。味方部隊の内偵もやるし、それなりの戦力を持つ」

 

情報局は国防総省の内部にある諜報を主とする機関だが、それは省内でも異質である。諜報や味方の内偵も行う彼らは当然忌嫌われる。そして更に大統領派を公言する将校が多数おり、表沙汰には出来ない任務を多数行っていた。人の口には戸は立てられぬと言うが、それは情報局を有効に活用している。反逆者のあぶり出しのために情報をわざと漏洩させ、反乱分子をその軍備を持って抹殺する。シークレットサービスを親衛隊とするならば、情報局はゲシュタポのような秘密警察組織としての面も持つ。憲兵自体は警察的な法執行に対し、情報局のような存在は国外の敵の情報収集と国内の敵の情報収集にも従事していた。

 

「そこってアリシアが居たところだよな。なんで・・・」

 

「私は対外工作などの部門だ。公安関係と私たちとじゃ別組織と言っていいほど情報が渡らん。」

 

情報局の本部は現在、議会派の部隊によって制圧され局長は拘束されていると聞く。大統領派や西海岸派閥子飼いの部隊なのだろう。装甲車は偽装がされているものの、各装甲車の認識番号を照会すればこの装甲車が議会派が保持するものではないことが分かるはずだ。

 

「 情報局の奴ら、我々の部隊装備まで分かるなんて」

 

「ちょっと待てよ・・・・。なんで装備まで知ってて議会派を野放しにしたんだ?」

 

 

明らかに不自然だった。大統領の暗殺にスムーズすぎるレイヴンロックの制圧。もっと抵抗してもいいはずで、少しぐらい情報が漏れて大きな抵抗を受ける筈だ。しかし、すんなりとことが運んでいる。抵抗も少なく、司令部を制圧していることを考えると、もしかしたら・・・・。

 

「アリシア聞いてくれ、もしかし・・・・・」

 

俺の言葉は続かなかった。

 

天井が突如爆発し天井の一部が降ってきたのだ。

 

コンクリート破片が散り、塊が周囲を舞う。瓦礫に押し潰されないよう、公用車の影に飛び込むと、コンクリート片の先にはパワーアーマーを着た兵士が4人程此方にミニガンを向けていた。

 

 

敵は包囲されていたのか、ショートカットのためフロアの床を破壊して、下のフロアに降りてきたのだ。

 

 

「反乱軍だ、殺せ!」

 

ミニガンの 砲身は回転し、俺へと向ける。死を覚悟して公用車の影に隠れると、爆音が唸り5mm弾が車へと殺到する。エンジンをわざと外しているそれらの弾丸は公用車の装甲を撃ち抜き俺の頭の上を通過する。ギリギリ弾丸は俺の上を抜けて後ろの公用車へと命中した。ガラスが飛び散り、破片が体に落下する。

 

「ハッハッハ!蜂の巣にしてやる・・・グハェ!」

 

 

ミニガンを持っていた男の後頭部が爆発し、引き金を引き続けていたミニガンの砲身は天井を向き、弾丸が天井へと突き抜けた。

 

転がっていたレーザーキャノンを拾い上げると、プラズマライフルを構えるパワーアーマー兵に引き金を引く。既にチャージがされていたレーザーキャノンはプリズムレンズから数千度にも及ぶ高熱線を発射し、プラズマライフルごと蒸発し兵士の胸に巨大な穴が開いた。

 

「助けて!!」

 

残り二人のパワーアーマー兵のうち一人が肩に抱えていた人物は黒い頭巾を被り、もがいているではないか。そして、その発する声はシャルの声に違いない。

 

「シャル!」

 

「ユウキ、助けっ・・・!」

 

最後まで声を聞くことはなく、抱えていた兵士は装甲車に乗り込み、もう一人の兵士は持っていたレーザーライフルで俺へ牽制射撃を加えた。レーザーは脇近くを掠り、お返しに10mmサブマシンガンを片手で放ち、頭のカメラ目掛けて発射する。

 

しかし、装甲の厚い兵士はレーザーライフルを俺ではなく、アリシアのいる所へ撃ち込む。先ほどの狙撃で位置が割れていたらしく、アリシアの隠れていた公用車の扉に被弾する。

 

 

「急げ、増援が来る!」

 

「放して!」

 

「コイツを取り押さえとけ!」

 

装甲車のハッチが閉まろうとしており、レーザーライフルを持つ兵士は装甲車の中へと入っていく。手元にあるレーザーでは装甲車の装甲を溶かし尽くしてシャルを殺しかねない。プラズマグレネードでも同じこと。タイヤを破壊しようとレーザーキャノンを構えるが、照準装置には「プリズムレンズ破損!発射不能!」と表示される。

 

「使えない!畜生!」

 

レーザーキャノンをかなぐり捨てて、下げていた10mmサブマシンガンを構えて引き金を引いた。ばら蒔かれた弾丸はタイヤに命中する。

 

しかし、装甲車のエンジンは起動し走り始める。

 

「なんで動く!」

 

「銃弾では穴の開かないコンバットタイヤだ。追うぞ」

 

レーザーライフルを持つ兵士は投げたプラズマグレネードがヘルメットの真上で起爆し、全身がプラズマ粘液となり、溶け死んだ。

 

アリシアは対物ライフルを持ち、急いで上に上がろうと言う。装甲車は駐車場出口へと迫り、そのままシャッターを破壊してスロープを登り地上を目指す。

 

アリシアの先導の元、先ほど来た道を戻って階段を駆け上がり、一階へと到着する。一階は司令部の入り口であり、簡素ながらも軍の司令部らしい荘厳としたデザインのエントランスだった。しかし、壁には弾痕や血痕がこびりつき、飾られていた花瓶は粉々になり、貴重な絵画は破壊された。所々に議会派の兵士の死体が倒れ、集中砲火を浴びて破壊されたパワーアーマーの姿があった。

 

「スタウベルグ中尉でしたか!?ご無事ですか!」

 

エンクレイヴ士官服に俺と同じコンバットアーマーMk.6を着た士官はアリシアの顔を見て駆け寄った。さっきの先頭で頭にコンクリートの破片が当たったらしく、頭から血を出していたからだ。エントランスに据え置きだった救急箱からガーゼを取り出して止血をしようとしていたが、邪魔だと言って取ってしまった。

 

「ああ、敵は人質を取って装甲車で逃走しようとしている。急いで追撃しろ。だが人質救出が最優先だ」

 

「了解!司令部に報告します。」

 

無線兵らしき兵が駆け寄り、その士官に受話器を渡して報告を行おうとする。俺はアリシアを連れて急いで司令部から出ると地下駐車場から出てきた装甲車を見つけた。周囲を警戒していた部隊は即座に警報を鳴らし、各々の銃口を装甲車へとむける。

 

「敵の装甲車だ、タイヤを狙え!」

 

10mmサブマシンガンの引き金を引き、タイヤを目掛けて撃つ。ゴム部分は撃ってもきりがないが、傷付けることは可能だ。

 

周囲の兵士たちも俺の声でそれが味方に扮した敵の装甲車だと分かり、持っていたプラズマライフルやレーザーで攻撃を加える。しかし、装甲車の車載重機関銃がこちらへと向いた。

 

「伏せろ!」

 

 

車載50口径重機関銃が火を吹き、大口径の弾丸がコンクリート壁を粉々に撃つ。威力の高い其れは即席の土嚢を吹き飛ばし、防御陣地を破壊する。重機関銃でも貫けない防御壁があったが、入口付近にしか置かれておらず、展開した警備兵を全て守り切れない。逃げ遅れた議会派兵士の頭部に命中し、被っていたヘルメットも空しく頸椎を残して飛散する。更に他の兵士も腹部に命中し、下半身が吹き飛んだ。寸でのところでエントランスの柱に隠れ、攻撃から身を守る。うめき声と硝煙が満たされ、死屍累々の戦場と化した。アリシアは横転した装甲車の陰に身を隠していて免れていた。装甲車は攻撃した敵を一掃したと思ったのか、全速力で司令部から離脱する。

 

「畜生!逃げられる!」

 

「あれを!あれで追いかけましょう!」

 

アリシアが指さしたのは、先ほど乗っていたのとは種類が違うものの、車載は機関砲ではなくM2型重機関銃を搭載したタイプの装甲車だった。

 

駐車場にある装甲車を選び、先の戦闘で戦死した装甲車の操縦士らしき人物から鍵を取り、急いで装甲車に乗り込んだ。

 

「ユウキ、機銃を使って!」

 

アリシアはそう叫び、俺は車内で機銃が撃てる遠隔式操作が出来るRWS(Remote Weapon system)が装備されたコンソールを起動する。操縦方法は簡単なもので司令部に来る時の30mm機関砲と同じ構造であったために、電源を入れてブラウン管の画面を覗いた。赤外線カメラによって映され、爆走する装甲車が見えた。

 

「こちらスタウベルグ中尉。司令部を攻撃した特殊部隊はわが軍の装甲車にのり、幹線道路7号線から第三区画のヘリポートへ移動中、人質がいる。付近の部隊はこれを追撃せよ」

 

(こちらwhiskey leader。第三区画は敵部隊の攻撃が激しい!ヘリも一機落とされている!注意せよ)

 

画面のレティクルを慎重に動かし、コントロールスティックを操作して、狙いを付けた。トリガーを引くと、電気信号を通してM2重機関銃が起動し、毎分一千発もの弾丸が装甲車の右側のコンバットタイヤに直撃した。小銃弾では有効な攻撃はできなかったが、大口径のそれはコンバットタイヤをずたずたに切り裂いた。アスファルトに擦れ、煙を上げる。続けて左のタイヤを破壊しようとするが、敵の装甲車の機関銃が火を吹いた。装甲車の装甲に大口径弾が命中し、火花が散る。

 

「くっそ、機関銃を先に破壊するか!」

 

八輪のうち一つを破壊したが、まだ七輪残っており機銃も健在だ。装甲車のM2重機関銃は走行不能にすることはできるが、完全に破壊することは出来ない。しかし、仮に対戦車火器があったとしても、シャルの命を危うくさせる。

 

タイヤから機銃に照準を合わせ、トリガーを引く。だが、向こうの機銃手も同じ考えのようでほぼ同時に機関銃が火を吹いた。敵の機関銃は50口径弾が命中し、銃身が折れ、弾薬箱に被弾して爆発を起こす。使用不可能になったそれは火を吹いた。

 

「よし!・・・・あれ?」

 

急に画面が真っ黒に染まり、何も映らなくなった。ブラウン管だから叩いても平気なため、普通に叩くが一向に映らない。もしかして、さっきの銃撃でカメラが破壊されたのかもしれない。

 

「アリシア!RWSが破壊された!銃座から攻撃を食らわせる!」

 

「分かった!気を付けろ。ヘッドセット付きのヘルメットを被れ」

 

言われた通り、壁にかけてあった装甲車を操縦する兵士が被る通信装置付きのヘルメットを被り、ゴーグルを付けるとRWSの遠隔操作コンソールを退かして車外へ上半身を露にする。

 

車外に出てみると、そこは軍の訓練施設らしき建造物があり、弾痕や爆発跡が周囲に広がっていた。

 

(もうすぐ、第三区画だ!敵部隊の攻撃がある!警戒して!)

 

第三区画はエンクレイヴ軍上層部の多い住宅街があり、戦前の街並みが再現されたところが幾つかある。その外れにヘリポートと駐屯地もあることから西海岸派や大統領派の兵士や将校が多くいる地帯だ。今いるのは、丁度となりに位置する第四地区と呼ばれる場所であり、軍の訓練施設が集中する場所だ。レイヴンロックの外はほとんど議会派が掌握しているものの、重点的に防衛する戦略にする構えであり、すべてのエリアや空域をカバーすることは出来ない。もし、ヘリポートまでたどり着き、連れ去られてしまえば彼女を助け出せなくなる。

 

青い腕章を付けた歩兵やパワーアーマーを着た兵士の姿も見受けられる。見る限り議会派は苦戦しているものの、着実に西海岸派の部隊を一掃している。

 

RWSユニットはかなり被弾しているものの、手動操作であれば使用は可能だ。弾帯を外し、きれいに整えると弾帯を置き蓋を閉めてチャージングハンドルを引いて次弾を装填する。引き金を引くと、身体に響き渡るような銃声が響き、大口径の弾丸が射出される。タイヤがちぎれ飛び、動くのは6輪のみとなる。

 

(ユウキ!まえ!)

 

無線から聞こえたアリシアの声で道の向こうに目を向ける。そこには、被弾しつつも、ミニガンを振り回すパワーアーマー兵の姿があった。

 

「くっそ!これじゃあ、貫通しないぞ!」

 

パワーアーマー兵へ50口径弾を食らわせたが、装甲によって弾かれていく。エンクレイヴ軍が使用するX-01改良型パワーアーマーは従来と比べて装甲が若干薄いものの、重機関銃の攻撃は弾くことが可能だった。パワーアーマー兵は銃撃をもろともせず、装甲車へ銃撃を始めた。アリシアは装甲車で兵士に体当たりし、50km近い速度を出す装甲車にパワーアーマーは吹き飛ばされる。それを皮切りに他の議会派兵士を狙っていた敵部隊はこちらを攻撃し始めた。

 

「アリシア、スピードを上げろ!逃げられる!」

 

(わかっている!掴まれ!)

 

機関銃銃座を回転させ、銃撃の多い建物へ銃撃を加える。大口径の弾丸は西海岸派の防御陣地の土嚢を蹴散らし、銃を構えていた兵士の脳髄を飛散させた。壁の薄いところに命中すると、壁は貫通し、向こう側に控えていた兵士達は死傷する。

 

猛スピードで走る装甲車に追随して、議会派のベルチバードが上空からサーチライトを照らし出す。

 

(こちらHound1-2。装甲車二両を発見。味方車両はどっちだCP?over)

 

(こちらスタウベルグ中尉。前の装甲車が敵の装甲車だ。人質が登場している、攻撃は避けろover)

 

(こちらCP、命令を変更する。Hound1-2はスタウベルグ中尉の乗るコンドルを援護せよ。重火器の使用を許可する、中尉の命令に従い攻撃を行えout)

 

上空のガンシップ型のベルチバードは建造物と基地の天井にぶつからない高度を維持しながら、サーチライトを照らし、目標を映し出す。

 

重機関銃を追っている装甲車のタイヤを狙い、引き金を引いた。破壊したタイヤを貫通して残り五輪となり、続けて機関銃を連射する。

 

周囲は議会派が優勢の地域になり、建物や敵の防御陣地からの銃撃もほとんどなくなっている。装甲車のタイヤを全て破壊すればすぐにでもシャルを助け出すことができるだろう。タイヤを全てではなく片側のみすべてを破壊することができれば、装甲車も走行できなくなる。

 

「アリシア!装甲車を真横に着けろ!タイヤを破壊する!」

 

(わかった、向こうも抵抗するはずだから注意しろ!)

 

乗っていた装甲車のスピードは上がり、追っていた装甲車の右真横に近づいた。回転する残り2つの車輪に狙いをつけ引き金を引こうとした。しかし、100mにも満たない離れた建物の屋上にミサイルランチャーを構える兵士の姿を見つけた。

 

「ミサイル!回避しろ!」

 

アリシアはハンドルを回し、ロックオンされないようにブレーキを踏む。しかし、ミサイルは俺たちの方へはやってこなかった。ミサイルの射手は俺達ではなく上空のヘリへとミサイルランチャーを向けていたのだ。発射されたミサイルは赤外線誘導によって追尾されて真っすぐにベルチバードへと突っ込んでいく。

 

(こちらHound1-2!ミサイル接近!空域を離脱する!)

 

パイロットは回避しようとするが、ここはレイヴンロックの中であり、回避できる空間など存在しない。天井と地上の間は限られており、ここでは回避できることなど無理であった。しかし、パイロットは機体を左右へと振って何とか機体への攻撃を最小限にしようと動く。ミサイルはそのため、機体の胴体には当たらず、右翼のローターに掠り爆発した。右翼を丸ごと吹き飛んだベルチバードはもう一個のローターの遠心力によって機体が回転し、天井と建物に機体をぶつけて破片をまき散らす。

 

(緊急事態発生!墜落する!メーデー!メーデー! こちらHound1-2!座標はWhisky56 Tango78 Kiro10!)

 

機体は何故か俺たちの方へと向かっており、ヘリは建物にぶつからず道路に沿って降下していく。

 

「アリシア!後ろからヘリが墜落してくる!回避!」

 

さすがにこれはやばい!

 

幾ら修羅場を潜り抜け、ヘリの墜落も耐えたとはいえど、墜落するヘリに直撃でもされれば流石に死ぬ。

 

道路は戦闘のために破片や破壊された公用車の残骸が散らばり、速度を上げられない。周囲の建物を破壊しながらも墜落するヘリは着実に装甲車に近づき、衝突すると思った瞬間、意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

一体どれほどの時間が経っただろうか。

 

 

今が何時で何日かすら分からない。

 

 

 

私は一体どうなってしまうのだろうか?

 

 

 

最後に見たのは、殺される寸前だったユウキの姿だった。あのあと、ユウキの声や銃声が響いて装甲車に押し込められてしまったが、意識を失う前に銃声が多く聞こえたはずだからユウキは生きているのだろう。

 

 

 

連れ去ったのはエンクレイヴの派閥の中でも勢力の強い西海岸派か大統領信奉主義者のどちらか。だけど、どちらの派閥だとしても目的が不明瞭。私はただのvault育ちの医者に過ぎない。そんな人物が特殊部隊に拉致されるというのは、どうみてもおかしい。

 

 

 

一体、何のために私を拉致したのだろう?

 

 

 

 

すると、私が入っていたらしい部屋の扉が開き、被っていた黒い布に太陽光に似た光が差し込み、私はまぶしさの余り目が眩んだ。外は何やら騒がしく、前に聞いたヘリコプターのプロペラ音らしき回転音が聞こえ、兵士の怒鳴り声も聞こえてきた。

 

 

「ハワード大佐、大統領は何故この女に会いたがっているので?」

 

「さあな、分からん。だが閣下はこの女が何かしらの利益になるとお考えのようだ。少尉、こいつを大統領のいらっしゃるお部屋へお連れしろ!」

 

「yes,sir!!」

 

私は椅子から両腕を掴まれ、立ち上がらせ無理やり歩かされる。足はなぜか痺れが走っているらしく、立とうにも痺れが感覚を鈍らせ、引きずられるようにしてどこかの建物へと入っていく。何の薬品か幾つか検討が付くが、エンクレイヴの能力はまだ分からない。新薬を開発している可能性もある。

 

 

周囲はガチャガチャと音を立てた警備兵の足音やパワーアシストの駆動音も聞こえてくる。軽い足取りも聞こえるから、兵士以外の人物もいるはずだ。

 

 

「軍曹、認識番号を」

 

「Zulu Uniform 2334 Delta 9801 Lino 2121」

 

「認識番号を確認した。軍曹の連れた人物のみ入室を許可する。」

 

「了解」

 

光を遮ろうとした。しかし手は鉛のように重く、口元までもっていくのが精々だった。

 

「ほら、手を出せ!」

 

エンクレイヴの下士官は乱暴に私の手錠を外すと、乱暴に私の襟首をつかむと扉の前に連れていく。

 

「大統領閣下だ。粗相のないようにな」

 

ウェイストランドでもお馴染みの水密扉で、貨物搬入用にワイドに広がったものがあった。それが何処の扉なのか判別できた。これはジェファーソン記念館の浄化施設の管理コンピューターが設置された扉だった

 

開閉スイッチのボタンが押されると、水密扉が開き、見たことある光景が現れるはずだった。しかし、そこにあったのは、以前の電算室ではなく、拡張され、巨大なスーパーコンピューターが設置されていた。奥行きは何らかの工事によって拡張され、縦に置かれたコンピューターは浄化施設の水流によって熱を逃がしているようだった。

 

「これは一体・・・」

 

 

「驚いたかね?」

 

 

「うわ!」

 

突然、老人の声が何処からか聞こえ、私は変な声を挙げるが、ここには私以外誰もいなかった。それになぜこんなところに大統領がいるのだろう?ここは大統領執務室ではない、浄化施設の制御コンピューターだった。

 

どうして、大統領という人物がここにいるのか。それよりも、どこにいるのか?一見、そこには誰もいない。

 

 

「君はシャルロット君かね?私はアメリカ合衆国大統領のジョン・ヘンリー・エデンだ」

 

「はい、どうして私を?」

 

「君に話があったのだ。重要な話だよ」

 

私は元Voult住人の医者に過ぎない。それが何故大統領に呼ばれたのか。

 

だけど、その重要な話をするのに顔を見て話さないのだろうか。

 

「大統領・・・・・、重要な話は分かりますが、どこにいるのですか?」

 

「私は君のすぐ近くにいるではないか。どこにいるか分かるかね?」

 

「いえ・・・・、どこにいるのですか?」

 

部屋には誰もいない。居るとすれば、ステルスボーイで隠れているかもしれない。でも、腕につけていたpip-boyにとる生体反応でどこにいるか分かる。光学迷彩で隠れていてもいる方向は把握できる。しかし、その部屋には私以外だれもいないことが分かっていた。

 

「君の近くにいる。この部屋の中だ」

 

「部屋の中には私しか居ないはずです。機械を通して出来る話は重要ですか?」

 

「ハッハッハ、機械を通してと言うが、それは仕方あるまい。機械という存在は機械でしか話せない。間接的に生物を通して命令を伝えるが、実際命令を伝達するときは人に似せたアンドロイドを通してだ。」

 

 

「・・・・・機械という存在?あなたは・・・・」

 

 

「そうか、君はまだ知らないのだったな・・・。目の前の画面をみたまえ」

 

 

私の目の前にあったのは、大きな画面のある場所だった。浄化施設の管理コンピューターのチェックを行うための端末なのだろう。画面の近くには誰が置いたのか分からない過敏が置かれ、白い花が差されている。

 

 

「これは・・・・・」

 

 

「それが私の顔のようなものだ。公にはアンドロイドを使っていたが・・・・・、私の目的のためには壊すしかなかったのだ・・・・。このような姿で申し訳ない」

 

 

大統領が話すたびに画面の点が動き、画面近くからは大統領らしき声が聞こえてきた。自らを機械と言い、公の場ではアンドロイド・・・・・。

 

もし、彼が言っていることが本当なら大統領は人ではない・・・・。

 

 

 

 

「御覧のとおり、私は機械だ」

 

 

 

 

 

 

 




   


やっとここまで来ました。

ここまで長かったな・・・・・

戦闘描写が長すぎてしまったのでくどいかもしれません。時間があったら修正しようと思います




誤字脱字、ありましたらご報告よろしくお願いします。



ご感想いただけると嬉しい限りです。頂けると、執筆速度が某丸裸な真っ赤な仮面紳士のように三倍早くなります。


※X-01改良型はエンクレイヴパワーアーマーの型番です。説明としてX-01の名を載せました。レムナントだとX-01のみ。東海岸のだと改良型が付きます。話の中では今回のみの表記ですので「エンクレイヴパワーアーマー」というゲーム上の表記で統一します。

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