fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

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遅くなり申し訳ないです。
いつも使っていた小説を書くSONY社製の携帯端末が壊れたため、ノートパソコンで書いている次第です。

大学で教職を取ると辛いですね、レポートを書いて書いて・・・そしてまた書いて・・。

もう辛いっすww


第七章 The American Dream
三十九話 レイヴンロック


「地球は青かった。だが、神は居なかった」

 

 

嘗て人類で初めて宇宙へ行った宇宙飛行士、ユーリィ・ガガーリンはソヴィエト連邦の有人ロケット「ボストーク1号」によって宇宙空間へと旅立った。彼は後に記者とロシア清教の歓迎パーティーで語ったという。

 

彼が見た地球の大気の青い海や緑の大地。そして文明の灯火は彼の死後、沢山灯った。人類はその後、彼のあとに続いて宇宙空間へ旅立った。何百年もの昔から星は人を魅了し、その空を我が物にしようと手を伸ばした。人はそれを求め、隣から延びる手に気が付いた。それを求めていたのは一人ではなかったのだ。

 

宇宙へと資源を求めたアメリカと中国は核という最悪の兵器を使わずに相手に対しての有効打を得ようとしていた。宇宙開発へと乗り出した両国は次々と地球軌道上に監視衛星を配置し、人類のためにと言いつつ、軍事衛星を次々と打ち上げた。

 

先人達のような、宇宙の神秘を解き明かすという崇高な目的は無くなり、敵よりも一歩先という蛮勇の目的へと宇宙への渇望は変わっていった。

 

両者の戦いは遂に終わりを迎え、核の応酬という最終戦争の炎が地球を包んだ。宇宙も例外ではなかった。中国とアメリカ、双方に配備された対衛星攻撃ミサイルによって地球軌道上にある衛星へと到達した。

 

しかし、月へと到達したアメリカの宇宙技術を含む科学技術は10年中国の先を行っていた。幾つかの年代遅れの監視衛星や天候観測衛星は破壊されたものの、衛星攻撃ミサイルを事前に防ぐために、迎撃レーザー砲台が軍事衛星に配備されていたからだ。元々、要らなくなった衛星を破壊した場合、そのデブリは軌道上を回転し、その他の衛星や宇宙ステーションを巻き込みかねない。そこでアメリカ宇宙軍は最新型にはミサイルとデブリを迎撃するシステムを導入するに至った。そのため、中国の衛星は全て破壊されたものの、アメリカの衛星の八割は現存しており、宇宙での戦いはアメリカの勝利に終わった。

 

そんな地球軌道上には、一際巨大な軍事衛星の姿があった。

 

全長200m、トンボを思い浮かばせるようなシルエットをしていた。それは元々各国が出資した国際宇宙ステーションであったが、最終戦争前に巨大な攻撃宇宙ステーションへと変貌した。大気圏に落とす予定出会ったそれをアメリカ政府は危険のない再利用事業としてせんでんしたが、実際は地上目標に回避不可能なミサイルを落す兵器だった。

 

それらには、地上へ核攻撃が可能な核弾頭や燃料気化爆弾など通常弾頭、MIRVを含む質量弾が配備されていた。元は有人であり、研究資材が持ち込まれていたが、今では頑丈な防弾防壁と武器弾薬が満載したコンテナとステーションを維持するためのロボットとメンテナンス機材がところ狭しと並んでいる。

 

最終戦争で、殆んどのミサイルは中国本土へ落とされ、残っているのはメガトン級核弾頭が2、燃料気化弾頭が1、その他通常弾が幾つか残る攻撃衛星は地上目標もなく、ただ前世紀の遺物として軌道上に打ち捨てられた巨大な粗大ゴミと化した。

 

 

視認しやすいように白い塗装が施された国際宇宙ステーションの物陰はなく、宇宙空間での有視界戦闘も考慮に入れた黒く塗装された衛星には星条旗と衛星の名が描かれていた。「ブラットリー・ハーキュリーズ」と名付けられたそれは、地上目標も大規模戦闘も。ましてや敵国も存在しない今日において、繰り返し整備を行うことしかできなかった。

 

そして、星条旗の横には「E」を中心に星々が円を描く、エンクレイヴのマークが描かれていた。最終戦争終結後、ポセイドンオイルに移ったアメリカの首脳陣はヒューストンからの物資輸送は困難だと知り、衛星の管理を機械に任せることになった。今では中央コンピューターが現在の管理人だ。乗組員は既になく、最終戦争後に搭載された脱出カプセルで地上のエンクレイヴへ編入している。

 

そして、中央コンピューターは一人で巨大な衛星の軌道制御を行っていた。200年という歳月でも動いてはいるが、酸素がなくとも金属疲労などによって所々ボロが出始めている。メンテナンス用のプロテクトロンやMr. ガッツィー、果ては警戒用ロボットまで使用する始末だった。

 

日々のルーチンワークが終わりを迎えようとするなか、防宙レーダーに巨大な機影をコンピューターは捉えた。すぐに目標物の大きさは検討がついた。大きさは全長300mを越える円盤だった。さらにそれは二機あった。

 

直ぐ様、防空警報を出して待機中であったレーザー砲台へエネルギーを注入する。何機かは故障しており動いて居なかったが、20機近くのレーザー砲台がレーダーを元に目標へ照準をつける。コンピューターは有視界で隕石を確認しようとするが、確認するよりも先にレーダーから円影が消失する。有視界で確認するが、その宙域には何も存在していなかった。太陽光によるゴースト(誤作動)と認識したが、これが人間であれば疑問に思って、各部点検や哨戒艇を派遣することもあったかも知れない。どちらにしても、宇宙ステーションを管理するコンピューターには誤作動と結論づけるほかなく、地上にあるエンクレイヴの司令部へ報告を送ろうとした。

 

融合炉からエネルギーを供給するレーザー砲台のパイプラインを切り、省電力モードへと切り替え、いつもの通りのメンテナンスと現状維持のルーチンワークを開始した。

 

<Receive Top priority order>

 

地上のエンクレイヴより命令が受信する。命令はいかなる他の命令よりも優先される特別なものだった。

 

<Top priority order

 Request from the NAADC

 The level is A5.

 Call for a ground attack.

 One discharge warhead.

 A warhead is Thermobaric.

 Coordinate November 9 Zulu 43 Echo 47 Alfa 8.

 The attack time is East Coast standard time, 055002.>

 

その命令は北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NAADC)によって出された命令であり、命令のレベルは最高位に位置している非常に優先度の高い命令だった。

 

弾頭は揮発性の高い燃料を当該地域に散布し、爆発させ核爆発にも等しい破壊力を持つ燃料気化爆弾。通常兵器とすれば非常に攻撃力の高いものだ。早朝に落とされるそれは座標通りならばアメリカ合衆国の東海岸に位置するメリーランド州の田舎である。

 

人間ならば、自国にミサイル攻撃を仕掛けるのかと訊くだろうが、コンピューターは非情にも何の感慨もわかず、命令されたとおりの行動に移る。

 

弾道ミサイル発射台にミサイルを設置するため、ロボットアームで保管庫を開けると、並べられていたミサイルを掴みあげ、発射台へと組み込む。宇宙航行と整備装備を装着したMr.ガッツィーが外付けの燃料タンクにパイプを繋いで燃料を注ぎ込む。

 

他にも数機のロボットが各部の点検を済ましていく。これが、地上に何年も放置されていたICBMなら全体改修しなければならないが、ここは幸いにも宇宙だった。酸素も金属を錆びさせる要素もない真空において、200年の歳月は問題でもない。ボロが出ると言っても、常日頃稼働するコンピューターやレーダーと言った部類。最終戦争から200年が経ち、数百年ぶりのミサイル攻撃。コンピューターが壊れていなければ間違いなく、発射が出来るだろう。

 

<Fuel infusion completion

 The last discharge check completion

 System All green>

 

発射準備に入り、燃料パイプが切り離される。衛星の姿勢制御が動き、軌道修正が為された。つい、半年前まではユーラシア大陸へ照準されていたが、命令によって東海岸上空へと軌道変更した。

 

<The aim orbit is clear

count down to liftoff

 It's now 2 minutes to zero>

 

遂に発射秒読みが開始され、まだ人がいた頃の名残である室内のスピーカーから秒読みをする合成音がステーション内に響き渡った。

 

嘗てアメリカ市民の血税を投じたこの軍事宇宙ステーションが二百年経った今では、東海岸本土へミサイルを放とうとしていた。それも、軍事的に価値があるかどうか疑わしい荒れ地のど真ん中だ。それは先人達への最大の皮肉だろう。何せ、敵国ではなく、自国へとミサイルを発射するのだから。

 

 

<4・・・・・3・・・・2・・・・1・・・・Launch!!>

 

接続が切り離され、軌道補正の噴射によって地球へと墜ちていく。地上から発射するときは重力の楔を断ち切るために、噴射炎を吹かせながら弾道ミサイルは上昇していくが、ステーションから切り離された弾道ミサイルは軌道に乗りながら、軌道補正をして重力の坩堝に引かれて落ちていく。

 

大気圏を突破し、薄い雲を通り抜けて核の炎に焦げた大地へと到達する。

 

<It is one minute until aim arrival>

 

第一段階の保護用パネルが分解し、代わりにミサイルを動かす三次元型噴射ノズルが顔を出した。そして一気に燃料が燃焼し、目標地点へ加速する。ほぼ直角に落ち、音速を越える速度に超音速波が周囲に響き、爆音のようなものが周囲に響いた。それを聞いた生物は目覚め、何の音かと戸惑った。

 

<It is 20 seconds to an impacted bomb>

 

目標まで少し。あと数十秒で目標に到達する。すると、ミサイルは一気に減速し、そして爆発した。酸化エチレンなど揮発性の高い燃料が爆薬によって加圧され、一気に放出され、周囲の水素と酸素が反応する。太陽にも似た閃光が周囲を照らし、地上に第二の太陽が出現した。爆風による圧と殆んど真空状態になり、その場にいた生物、FEV変異体は死滅する。そして一気に4000度の熱量が彼らを焼き殺す。

 

爆発による衝撃波によって半径百キロにいるものは、その衝撃波によって吹き飛ばされた。

 

そして吹き飛ばされた彼らは爆発した方向を仰ぎ見る。

 

そこには、ウェイストランドの死の象徴。

 

大きなキノコ雲が昇っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ん?ここは・・・・?」

 

不思議な感覚だった。重力が下へと流れていくなか、全身の筋肉を使わずに地面を垂直に立っている。そして、身体には奇妙にも何かが巻き付けられて指一本動かなかった。

 

「えっと、まさかここは」

 

首は動かないが、目は動かすことができた。周囲は金属製の独房らしく、扉の近くには球体型の監視カメラが設置されていた。そして自分が何故体が動かないか察知した。それは、拘束フィールドが全身を被い、身動きできないためであった。

 

ここは一度見ている光景。エンクレイヴの司令部が置かれているレイヴンロックの地下牢だった。

 

ロッカーを見る限り、あそこに俺の装備品が保管されているだろうが、今のエンクレイヴが俺の武器をそこに置くことはないだろう。そこまでバカではない。普通なら武器装備を没収されて違う場所に保管されている。

 

 

ここに来る前まで、確かエンクレイヴのベルチバードに乗っていた筈だった。そして最後に見たのはVault87に投下された衛星ミサイルとその爆風だった。

 

 

記憶を遡って何があったか思案していると、青白く起動していることを示すライトを出す監視カメラが不自然な動きをするのに気が付いた。そして、赤色の発光をするとカメラは動かなくなってしまった。

 

そして、拘束フィールドが消滅し、いきなり消えたため俺は地面に倒れ伏せた。

 

「一体どうなっている?」

 

ゲームなら、解放される前にオータム大佐がここにきて浄化プロジェクトのパスワードを聞こうとやって来る。本当のパスワードを言えば殺されてしまうが、言わなかった場合大佐は激昂するも、大統領が助け、執務室に来るよう言うのだ。そうして、やっと行動できると言うのにどうしたのだろうか。俺はシャルではないからだからか?

 

すると、目の前にある扉が開いて一人の男が入ってきた。背丈体格は同じくらいで、おれと同じような黄色人種だ。彼の服装はアメリカの囚人らしく、オレンジ色の繋ぎに番号が印刷された囚人服だ。俺も見てみると、同じオレンジ色の囚人服で、更には同じ番号だった。彼は俺に小さいメモを渡す。其処には・・・

 

<ロッカーに入っている士官服を着て、行政区画まで来い A >

 

一体どういう事だと目の前にいる男に問いただしたかったが、彼の雰囲気は何も聞くなと言わんばかりの雰囲気を出していた。

 

俺はロッカーを開けると、ハンガーに掛けられた大尉の階級章が付けてあるエンクレイヴ士官服が置いてあり、それを手に取った。他にもガンベルトとプラズマピストルが置いてあったが、マガジンケースの中は空だった。流石に弾は入れていない。しかし、足首に付ける小型のホルスターには、34口径ピストルがあり、弾倉には5発の弾とサイレンサーが装着されていた。隠密仕様に改造されているらしく、通常のシルバーメッキの34口径ピストルではなく、ブラックに塗装されていた。ネームプレートには「Cap. Jhon Munemori」と刻まれている。日系とヒスパニックのハーフなので、日本人の名でも十分大丈夫なはず。口で「ジョン・ムネモリ大尉」と三度口にして急いでオレンジ色の繋ぎに手をかける。

 

 

囚人服を脱いで、急いでエンクレイヴの服へ着替えていく。ふと、ロッカーの扉に嵌めてあった鏡を見た。鏡には旅の汚れで黒くなっていた顔ではなく、さっき風呂でも浴びてきたかのような姿をした俺が映っていた。髭も剃られ、所々切り傷があった顔には傷がない。目を負傷したときに出来た大きな傷跡は残っているが、それ以外の細かいものは綺麗になっていた。更には、長旅の汗や体臭はない。

 

もしかすれば、エンクレイヴのバンカーに入るとき防疫措置として勝手に身体を綺麗にされたのかもしれない。

 

ウェイストランドは戦前とは違って、荒廃して所々死が潜んでいる。疫病や害虫、数え上げればきりがない。エンクレイヴもウェイストランドで伝染するウィルスや病原体を持ち込ませないようにしているのだろう。

 

直ぐに身支度を済ませて士官服の帽子を被った。準備が整い、扉の前に立つと自動で扉が開いた。

 

 

 

通りに誰もいないことを確認し、牢屋を出ると後ろから誰かの足音がした。とっさにホルスターから銃を抜こうとするが、今は軍服を着ているからバレることもないだろう。変な動きをしない限り大丈夫な筈だ。

 

「何をやっている?」

 

そこには、エンクレイヴ士官の服を着た将校が俺を見つけ、怪訝そうな顔で近づいてきた。彼の襟元の階級章は中尉。ネームプレートにはウィリアムス中尉と刻まれていた。服装上、俺の士官服の階級は大尉だから、彼から見れば俺は上官だった。すると、彼も俺の階級章を見たのか、身体が硬直し、すぐに俺へ敬礼する。

 

「し、失礼しました。こ、ここら辺で油を売ってる下士官かと思い・・・」

 

「いや、構わん。まじめに取り組んでいてなによりだ」

 

返礼をしてその場を立ち去る。格好良く敬礼してその場を治めたものの、内心冷や汗がだらだら出ていて、心臓はミニガンの様に早く脈動していた。挙動不審に思われないようにその場を後にして、生前のゲームの記憶を思い出そうとしながら、留置場区画から出ようと歩き出す。

 

「えっと、ここはどう行ってたか。どっかに階段とか合った気がするけど」

 

士官が基地内できょろきょろしてるのは不審がられて非情に不味いが、見なければ分からない。しばらく歩いていくと、基地内の地図が映された立体映像があるフロアに到着した。

 

レイヴンロックは元々、ワシントンD.C.から退避するために政府要人や軍の高級幕僚を避難するために建設された大規模軍事シェルターだ。国防総省の地下にある地下施設やシャイアンマウンテンにある北米の防空司令部がある通称「NORAD」など、それらと同規模である。

 

 

その二つは現行の使われている核シェルターだったが、レイヴンロックは最終戦争寸前に完成した次世代の核シェルターだ。

 

最終戦争直前、エンクレイヴは事前のシュミレーションで中国との核戦争によって気候変動が発生し、一般的に交付されているマニュアルや予測は殆んど役に立たないことを理解していた。国民に知らせれば、大パニックとなってしまうことは必須だろう。

 

エンクレイヴはそのシュミレーションを元に地下シェルターで気候が安定する時期まで生存可能にするための施設を建設した。Vault-tec の作る悪魔の実験のための核シェルターではない。純粋に核の冬を乗り越えられ、更には付近に部隊を展開できるよう、自給自足が完全に可能な施設が建設させられた。それが、レイヴンロックだった。地下に作られた巨大な兵器工廠や食料生産プラント、それらの巨大施設を管理し、首都の膨大なデータ保管が可能なZAXシリーズが設置し、本格稼働が為される筈だった。

 

しかし、最終戦争には政府要人はそこに入ることはなく、規程のマニュアルに従ってシャイアンマウンテンやポセイドンオイルの海上油田へと退避した。単にマニュアル作成前であったこともあり、更にはレイヴンロックがワシントンDC近郊であるため、中国軍の攻撃にさらされる危険性があった。エンクレイヴは最終戦争終結後、生存した米軍部隊を終結させてエンクレイヴへ再編成された。

 

レイヴンロックの敷地面積は20ヘクタール。東京ドーム4個が余裕で入る大きさであり、各種生産プラントが置かれ、そこからでも政府中枢として動けるよう、各行政まで区画が作られていた。あまりにも巨大なため、輸送車両が基地内を往き来し、モノレールが基地の人員を乗せて動いている。

 

構造上、地下都市が形成されていると言っても良い。ガンダムのジャブローをコンパクトに纏めたと表現しても良いだろう。

 

言わば、アメリカ合衆国の政府中枢をレイヴンロックに詰め込んだと言っても良い。西海岸に首脳陣がいたため政府中枢はポセイドンオイル基地だったが、東海岸であればレイヴンロックが政府中枢になったに違いない。

 

その巨大な基地に俺は驚きを隠せなかった。今見ているレイヴンロックの様子は、記憶とはまったくもって掛け離れていたからだ。pip-boyを覗き込み、立体映像の地図データを取り入れようとしたが、周囲の兵士の視線を察知した。

 

そう言えば、エンクレイヴの兵士はpip-boyを装着しない。だからと言って外すわけにもいかないので、データを収集し終わると、直ぐに袖で隠し、急いでその場を立ち去る。警備兵pip-boyの存在を知っていれば脱走したとバレるかもしれないが、さっさと行政区画へと移動しなければならない。

 

pip-boyを操作し、行政区画への道程をナビゲートする。拘置所を出て、憲兵詰所を抜ける。そしたら近くのモノレール駅からモノレールに乗って、行政区画へと行く。地図を見ると行政区画は巨大だが、流石に向こうから気づいてくれる筈だ。

 

「落ち着け・・・バレることはないさ」

 

まるで映画の「大脱走」。ドイツ国防軍の軍服を調達して収容所から抜け出して越境する登場人物のようだ。幸い、ここはアメリカで言葉が通じることだろう。

 

拘置所を出ると、外は地下であるにも関わらず街灯が無いのに明るく感じられた。空はなく、コンクリートと配線が確認できた。

 

所々、パワーアーマーを着た兵士が警戒しているものの、軍用犬を使用しているようには見えなかった。焦らないよう慎重に人目を避けながらpip-boyを覗いて、近くにある憲兵詰所の近くにあったモノレール駅を目指した。道にはウェイストランドでよく見るような打ち捨てられた軍用トラックがとても良い状態で停められ、他にも緑色に塗装されたセダンも確認できた。

 

エンクレイヴのテクノロジーはウェイストランド随一。いや、アメリカ一と言っても良い。正直、この設備を破壊するのは惜しい。

 

やがて、歩いていると憲兵詰所が見えてきた。道路の向かい側にはモノレール駅が確認できた。

 

輸送トラックが通っていないことを確認すると、道路を渡りきり、モノレール駅へと足を運ぶ。駅は二階にあり、階段を登って扉を開けた。すると、駅には数名のエンクレイヴの兵士が椅子に座って談笑していたり、ヌカ・コーラを飲んでいる姿があった。

 

直接の部下ではないため敬礼をすることはなく、士官が入ってきたため声を抑えていた。

 

エンクレイヴ兵士の下士官や兵の服装は士官が着用する衣服と少し異なり、色は同じであるが、学ランのような形であった。

 

元々、学ランは軍服のデザインであり、とある大学の学ランはそのまま軍人になれるよう、装飾を外せば軍服になれるものも多い。また、今の女子高生が着るセーラー服も海軍兵士の軍服であった。元々、学校の教員は戦前、軍事教練を施されていたことにも起因する。

 

俺はそんな下士官や兵の服装をちらりと見て、さっさと改札まで赴いた。ポケットに入っていたカードキーをかざして改札を通りすぎ、モノレールに乗り込んだ。

 

モノレールはニューベガスにあった物と似ているが、車窓はしっかりと嵌められており、ウェイストランドで放置され、スカベンジングの材料である列車とは偉い違いだった。

 

モノレールに乗り込み、座席に座ると警笛を鳴らしながらゆっくりと出発した。車内にいるのは俺と技術者らしき繋ぎを着た技術兵。がらがらの車内を歩いて、近場の座席に座ってモノレールの行き先を見る。

 

[食料生産プラント方面行き]

 

近くにはモノレールの路線図があり、行政区画には一度軍司令部の駅から乗り換えなければならない。

 

ウェイストランドとVaultしか知らなかった場合、モノレールで行政区画へと行くなんてとてもじゃないが出来はしない。あれを書いた人物はもしも、途中で迷子になったらどうするのだろうか。前世の記憶があるから行けるのだけれども、普通にウェイストランド人として生きていたら、改札すら通れるか疑問だ。

 

呼吸を整え、身体を落ち着かせる。モノレールは兵器工廠西口に到着し、扉が開くと同時に繋ぎを着た技術兵が数名の乗車してきた。ツールボックスなどを抱えた作業服姿の兵士達を見ると、5人の内4人が女性だった。一人の中年下士官に4人の若い女性技術兵が話し込んでる様はハーレムと差し支えないだろう。

 

風紀的に良くないような気もするが、ふと見ると、周囲の座席に座る男の技術兵数名は目を細めたり、呆れた顔で彼らを見ている。独り身からしてみれば、それは羨ましく、嫉妬の対象だった。すると、隣の車両から移動してきたのか、「MP」の腕章を付けている軍曹が通り過ぎ、怪訝そうな顔でそれを見やる。どうやら、MPもそれを止めないようだ。4人の女性を侍らせるあの男はちょっとエンクレイヴ軍の風紀としてどうなんだ?と疑問を抱かせるものの、諦めた俺は次の停車駅である「司令部」に降り立った。

 

(一番ホームに行政区画方面行き、まもなく発車いたします)

 

アナウンスが周囲に鳴り響き、早歩きで向かい側に位置するホームへと移動した。扉が閉まる前に車内へと入ると、そこには軍服以外にもスーツなどの服を着た文官らしき人がほぼ満席の状態だった。中にはスーツを着た女性の姿もあり、モノレールの座席は全て埋まっていた。

 

(発車いたします。お掴まり下さい)

 

警笛がなり、スムーズに動き出し扉の近くの壁際に寄りかかった。

 

(この電車は行政区画方面行き。0900より大統領府より大統領の演説があります。その時間帯は運行を一時運休します。ご利用予定の要員は地上の交通車両か担当官へ具申するように)

 

普通であれば、車内に流れるお知らせはお客様から始まるが、全てが官営であるため、身内。敬語などはあまり気にする必要もなくなる。九時から何やら有るようだが、pip-boyを見る限り、あと一時間半を切っていた。

 

ふと見ると、扉の上には液晶テレビのような画面が取り付けられていた。すると、そこに映されたのはスーツ姿の男が原稿を読み上げるニュース番組だった。外のウェイストランドでは食うか食われるかの生活を送っているのに対し、エンクレイヴは戦前の技術をそのまま維持していた。

 

(第七管区、通称メガトンでは連日住民が抗議活動を行っています。司法省が布告した「武装解除令」に対して、自称保安官のルーカス・シムズ(47)を中心に抗議活動が繰り広げられています)

 

字幕で流されたそれらを読み、ニュースキャスターの場面からメガトンの様子が流された。

 

メガトンの様子は俺が知っているものと異なっていた。中心地にあり、街の名前の由来となったメガトン級の核爆弾は撤去されて、代わりに区役所と書かれた看板があるエンクレイヴの施設が見えた。周囲には給水車やヘリポートなどが設置されている他、住民の衣服や表情が大分変わっている。

 

前まで入植者達はボロ布のような服装で一日の糧を得るために日雇いの辛い仕事に手を出していた。メガトン未公認の出店で何の肉かわからないものに手を出して食中毒で死んだりした。道の隅に倒れた死体はその内の日雇い労働者が引きずって外へと捨てていく。人口は減るだろうが、それ以上に中に来るものもいる。表情には陰りがあり、笑うことはない。

 

だが、今はどうだろう。エンクレイヴが支援したお陰か、真っ白なTシャツを着て入植者の誰しもが表情が柔らかい。

 

このままゲームのようにB.O.S.の一人としてエンクレイヴを倒す方がいいのだろうか。エンクレイヴはゲームのような選民思想にまみれた極悪組織ではない。少しはあるものの、彼らの中にも善人はいる。やっていることは強引だが、人々を支援している。ウェイストランドにとってどれが一番幸せだろう?

 

 

 

 

ふと視線を周囲に向けると、先ほどよりも文官が目立ち、ビジネスバックのようなものを抱えていたりしており、前世で見た通勤途中のサラリーマンのようだった。幾つかの駅に止まり、さらに多くのスーツを着た文官や軍服をきた軍人が乗車し、行政区画に付くまでに車内は満員となった。

 

男の文官はすぐ近く、目と鼻の先に近づいており、内心肝を冷やしながらその場を凌ごうとする。

 

ふと、何かの視線を感じ、その場所へ視線を向けた。そこにはちょっと目付きのキツいスーツを着た女性が俺のことを見ているではないか。眼鏡を掛け、インテリ系の雰囲気を醸し出しながらも、女性の魅力を失わず、ウェイストランドのような野性的なものはない。黒髪をボブカットにしている彼女は中々魅力的。

 

だが、それでもエンクレイヴの文官である。俺が軍の者ではないと分かれば、近くのMP を呼ばれかねない。

 

睨む彼女がいつ声を挙げるか分からず、焦りを募らせていたが、幸運にも目的地はすぐそこに迫っていた。

 

[次は行政区画。左のドアが開きます、ご注意ください]

 

そのアナウンスに助けられ、少し息を吐いて精神を落ち着かせる。そしてモノレールは行政区画へと到着した。扉が開き、それと同時にモノレールを降りて改札を目指す。スーツを着た文官や軍服を着る将校。人の流れに乗りながら改札に向かおうとした時だった。ふと、右腕が掴まれたのだ。

 

掴んだ主は先ほど俺にガン飛ばしていたキャリアウーマンの眼鏡の女性。

 

 

これは、あれかもしれない。

 

オワタ・・・・

 

「やっと見つけたわよ・・・」

 

執念の末に真犯人を見つけたとでも言うような表情。もしかして、俺を掴まえたら懸賞金が出るとか?

 

横から青いエンクレイヴの軍服を着た駅員が鬼の形相で近づいてくる。もしかしてあれなのだろうか?

 

「この人痴漢です!」

 

ゲームの世界に転生して、初めて痴漢冤罪で捕まった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと思い出したのが、falloutと同じく核戦争後の世界を描いているゲームだった。それはアメリカとの核戦争で廃墟と化したモスクワ。そこのモスクワメトロの地下で生活する主人公など生き残った彼らは、核戦争などで変異したミュータントや得体の知れない怪物に怯えながらも懸命に生きていた。しかし、ロシア民族主義と国粋主義を中心に置いたファシストや共産主義者などメトロでは壮絶な殺し合いが行われていた。

 

掴まったのはモノレールだったが、モスクワメトロから痴漢冤罪などで捕まった人は核戦争後どうなったのかふと考えてしまった。

 

今居る駅員のオフィスはそのメトロの世界に似すぎていた。エンクレイヴの施設と言えど、既に建設してから200年の歳月が経っている。無論、所々劣化して居てても可笑しくはない。それに、建設当時は世界的に核戦争のカウントダウンが始まっていた。世界中で不安と焦りが蔓延している時に何百年も経っても使えるバンカーが必要であるだろうかと疑問視する者も少なくなかったはずだ。レイヴンロックの内部は確かに素晴らしい設備ではあるが、完全に補修が出来ているわけではない。施設が巨大であり、全てが補修できていないのが現状だ。

 

駅員のオフィスは、外と違って少し古ぼけた物となっている。エンクレイヴのバンカーとは違って、まだメトロの駅事務所に似ている。唯一違う所はウェイストランドと違って荒れていない点であろうか。

 

古ぼけた机と右手にはめられた手錠は机の足に繋がっており、簡単には外せそうにない。もし、俺が偽将校だとばれたらやばい。左手で何か無いか探し、机の上や引き出しを開けて確認する。すると、机の中にはエナジーセルが一つとヘアピンがあった。プラズマピストルは駅員に没収されたが、足首にあった34口径は無事だった。銃で手錠の鎖部分を破壊しても構わないのだが、それだと手錠は付いたままなので見た目的に良くないのだ。ヘアピンを折り曲げ、使いやすいようにおると手錠の鍵穴へと差し込む。ロックピックはあんまり得意じゃないが、それなりには可能だ。メガトンの武器庫は流石に無理だが、そこら辺の金庫の鍵なら楽勝だ。最近は有っても、ショットガンで破壊したりしていたからか煩わしく思ってしまうが。

 

とっかかりを感じ、優しく慎重にまわすとカチャリと機構が音を立てた。手錠はゆるまり音を立てないようにそっと床に置いた。

 

34口径ピストルを抜き取ると、腰を低くして事務所の扉を開けた。ゆっくり開けて廊下を確認すると、廊下の中心にあるこの扉と左右にある扉は開いておらず全くの無人だった。多分、右の扉は出口と書かれているから、たぶんそちらに行けば外へ出られるだろう。

 

扉を開け、猫背のような姿勢で中腰になりながら銃を構えて右奥のドアへと接近する。外は改札に通じているらしく、ドアを開けようと手を出したときだった。

 

 

扉はいきなり開かれ、思い切り突き飛ばされた。腕を掴んだその手は反応できない俺を押して壁に床にたたきつけると、俺の上腕で首を絞めた。

 

振りほどこうとしても離すことが出来ず、気道が確保できるぎりぎりのところで食い止めた。そんな事をしたのは誰だろうか。

 

デジャビュとも言えるその光景に相手はやはりあの女だった。

 

「ユウキ、少しは上達したんじゃないか?」

 

被っていた軍帽は脱ぎ捨てられ、セミロングの茶色の髪は俺の鼻先をくすぐり、甘い香りが刺激する。アリシアはvault87で会ったときよりも生き生きとしていた。

 

悪戯っぽい笑みを浮かべた彼女は俺の腕から力を抜いた。

 

「アリシア、一体何をしているんだ?」

 

「お前を迎えに来た。手紙は読んだんだろう?」

 

アリシアは「よくここまでこれたな」と不思議そうに俺を見る。前世の記憶が無ければ来ることは出来なかっただろう。エンクレイヴはかなり無茶をするものだ。

 

「本当なら、もっと遅くに迎えに行くはずだったんだが、手違いがあってな。手紙にしてもすぐに私が拘置所で合流するはずだった。手紙もプランBということになっている。成功する可能性はかなり低いが」

 

つまりプランBは自力でここまで来いと言うことか。何と言うか、転生者ではなかったらどうするつもりだったのだろう?

 

「その時は留置所に戻されるから、プランAだな。私が迎えに行くだけだ。だが、銃を構えれば射殺だろうけど」

 

「しかし、行政区画で痴漢に間違われるとは参ったな。手を出したわけではないだろう?」

 

アリシアは笑いながら、俺を指差し始めた。

 

「俺だってまさか痴漢に間違われるとは思わんし、第一顔が似てるからって手錠で机に繋ぎ止められる身にもなって欲しいね」

 

そんな俺の恨めしいセリフにアリシアは更に笑う。あれは流石に肝が冷えたが、バレなかったのは幸運だろう。

 

 

すると、アリシアは俺の顔を見る。彼女の顔はふざけたような笑みから真剣なものへと変わった。

 

 

 

「さて、ユウキ。お前はエンクレイヴをどう思う?」

 

 

「唐突だな、戦争を引き起こし、大地を焦土に変えたエンクレイヴの先祖は腹が立つ。それに、それを引き継いだ高慢な奴等もね」

 

「確かに、エンクレイヴの組織の質は良くない。過去も今も変わっていない。それに浄化プロジェクトの一件はやりすぎだ。それにメガトンや他の集落にしてもそうだ。ウェイストランド人は野蛮だとか言っている奴等も結構いる。だが、エンクレイヴの技術力や国力はどうだ?キャピタル、いやアメリカ全土で一番の技術力と科学力を保持しているだろう。NCRやBOS、北の連邦と比べれば分かる筈だ」

 

「それを差し引いたとしてもエンクレイヴの組織の本質はどうなんだ。いくら技術力や国力があるとは言えど、その国民が選民思想に染まって、ウェイストランド人を野蛮と言う。言うだけじゃなく、虐殺行為もあったんじゃないか?」

 

人は相手に対して恨めしく、又は見下してしまえば言葉を使い、攻撃する。そして直接痛め付けるようにすらなる。それは有史以前から行われている他者廃絶の歴史だ。奴隷としてこき使い、または民族根絶、民族浄化のなの元に虐殺を行う。政策によって迫害したものもあれば、宗教によって行われた。

 

エンクレイヴの政策は穏健的なものかもしれない。だが、根底にある選民思想や差別意識はやがてウェイストランドに危害を加えるだろう。

 

「ああ、情報統制で情報が伝わらないようにしているが、ある一部隊が集落を皆殺しにした所もあった。命令違反として裁かれたが、軽いものだ。昔なら厳罰で銃殺が妥当な筈だろう。お前の言う通り、

選民思想はかなり根付いている」

 

「だったら・・・・」

 

おれは続けて言おうと彼女の目を見るが、彼女の目はその事を苦慮していると言うよりも何かの決心をしたような強い意志が感じられた。

 

「だから、内部からそれを治さなければならない。私は昔、家族が居たが、皆死んでしまった・・・」

 

一瞬、アリシアは昔を思い出したのか、表情が硬化するものの、直ぐに元に戻る。

 

「恨んだ時もある。何故、上に従わないのか。今のままでもいいじゃないかって。だけどそれは問題を先伸ばしにするだけ。悪いことに目を瞑ってもそれは改善しない。寧ろ悪くなる一方」

 

アリシアは一息置いて、俺の顔を見て口を開く。

 

「最初は逃げ出そうと思ってた。別れてから、あの時の事を後悔したさ。逃げ出してもどうにもならないことを考えて、プラズマピストルの銃口を頭に向けたこともある。だけど、ユウキやシャルロット、ジェームズ達と一緒に居たときが一番良かった。・・・・・一度犯した過ちはもう取り戻せない。だから私はそれを償おうと思う。」

 

 

アリシアは視線を落とし、ペタンと床に尻を着けて座る。胡座ではなく、両足を左右に伸ばすような座りかただ。

 

「ユウキ、私が謝っても許してもらえないのは分かってる。シャルロットも多分、口すら利いてくれないだろうけど・・・・・すまなかった・・・」

 

微かに嗚咽と床には溢れ落ちる水滴が水溜まりとなっていく。俺は彼女の頭を撫でて、背中をさすった。

 

 

 

アリシアは浄化プロジェクトに対して行ったエンクレイヴのあの行動を歓迎した訳じゃない。むしろ、忌々しく思っただろう。だが、彼女はエンクレイヴを知っていた。稼働する航空兵力や装甲車両、高性能なパワーアーマーに鍛え上げられた装甲兵の軍団。科学力は戦前以上のものを保有する彼らと戦えば死ぬことは目に見えている。アリシアは俺がエンクレイヴに属すればと思っただろうに違いない。多少強引にでも取り込めればいいと思ったかもしれない。家族を謀殺された彼女はエンクレイヴとは忠誠の対象ではなく、食い扶持としか考えていない。彼女の選択は間違っていたわけではない。ただ、方法が悪かった。悪すぎたのだ。

 

「アリシア、お前を許すよ。だから、もう泣かないでくれ」

 

俺は泣き崩れるアリシアを立たせた。嗚咽して、背中を撫でるなど落ち着かせる。落ち着いたのか、ゆっくり立ち上がると、息を整えた彼女は再度決心したように俺の目の前に立った。

 

 

 

「だから私は決めた。父の意思を継ぐ。エンクレイヴを脱するのではなく、中を変えていこうと思う。一緒に来てくれないか、ユウキ」

 

俺はアリシアの言ったことに驚くことはなかった。故郷のVault101で出会ったロイド・スタッカート技術中佐が言っていたように、エンクレイヴは一枚岩ではなく、東海岸に元からいた将校達と西から逃げてきた者達とで衝突している。クーデターが起きるのも時間の問題だっただろう。アリシアがそれを手伝うのは必然だったかもしれない。俺はどうするべきか、それは決まっている。

 

 

 

「いいよ、アリシアを信じよう」

 

 

「ありがとう!!」

 

 

 

俺がそう言うと、アリシアは俺を抱き締める。「べ、別にあんたの為に助けるんじゃないからね!」と俺の僅かなツンデレが叫ぶが、口には出さない。

 

シャルが見れば浮気現場なんだろうな〜と考えた。

 

 

アリシアは暫く俺に抱きついていたが、俺が時間は?と訊いたお陰で正気を取り戻す。まあ、正気と言うよりも彼女のデレが出ただけで正気なのだろうけど。

 

何時もなら俺を弄ぶような言動の彼女だ。デレが出たことを恥じたのか、頬を朱色に変えて恥ずかしそうにモジモジとした後、くるりと俺を背に「時間がない、急ごう」と気を取り直す。しかし、さっきのあれを見せた彼女は何処と無く落ち着きがなかった。

 

俺は何処へ向かい、誰に会うのか訊きたくなった。

 

「なあ、アリシア。俺は何処に向かうんだ?」

 

「貴方に会いたいと、議会の面々に命令されてね」

 

議会?と俺は疑問符を頭に浮かべるかのように、アリシアに尋ねた。

 

「議会はエンクレイヴには無いからな。所謂、戦前の民主主義を渇望する反政府組織と覚えておいておけばいいさ」

 

エンクレイヴは大戦争前に発布した非常事態宣言によって議会は一時機能を停止している。政府機能はすべて最終戦争で破壊されたが、アメリカ合衆国政府の公布された非常事態宣言の元にエンクレイヴは大統領を中心とする独裁政治が行われていた。

 

「成る程ね、打倒するのは大統領府か。親玉はエデン大統領とオータム大佐かな?」

 

「まさか、そんなわけないだろ?」

 

アリシアはバカを言うなと、俺の顔を見る。一瞬、もしかしたらアリシアは大統領府に所属する二重スパイかと疑うが、彼女に大統領に忠誠を誓う理由が理解できない。すると、彼女は笑いながら口を開いた。

 

「大統領府は打倒するさ。だが、オータム大佐を倒してどうするんだ?彼は議会の立役者なのに」

 

おれは耳を疑った。もし、それが本当なら驚くべきことだ。

 

「え、どういうことだ?」

 

 

 

「ああ、オータム大佐は議会の議長だ」

 

 

 




予想ですと、あと二・三話で本編は終了します。多分、番外編でDLCを入れるかもしれませんが、まだ考え中です。

そう言えばとうとうfallout4が出るようですね。
エンジンが違うのかなと思いましたが、ゲームシステムは同じにして欲しいですね。

誤字脱字ありましたらよろしくおねがいします。


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