fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

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遅くなりました。

加筆→修正→時間と気力・体力無いからから投稿後回し→加筆・・・

を繰り返し遅くなりました。そして、サブタイが良いの思いつかないww

ちょっと微妙にR-15指定の描写入ります。初っ端です(笑)







第六章 Finding the Garden of Eden
三十四話 休息と使命と追跡と


 

そこは最近になって使用可能になったシャワー室だった。元々、国防総省の職員の娯楽のためにスポーツジムが備わっており、付属している設備であった。大戦争と経年劣化によって大部分が崩壊していたため、それをBrotherfoot of steelが修復して、お湯まで出せるようになったのは兵士の生活環境が劇的に変わったと言えよう。

 

個室であるそこは10人ほどが使用可能であり、スクライヴが作った石けんやシャンプーが置かれている。年がら年中武器について研究するのもいいのだが、スクライヴの中にも生活に即した研究を行っている者もいる。

 

修理された換気ファンが回るものの、ボイラーの湯気が相まってシャワー室は湯気に包まれて視界が悪い。しかし、シャワーが早々出来ないウェイストランド人に取ってみれば、それは幻想的空間に他ならない。出てくるお湯は若干放射能に汚染されている物の、汚れた水よりも比較的被曝量は押さえられていた。

 

 

 

シャワー室の個室には一人の少女の姿があった。少女という呼び方は彼女の年齢から行って相応しくない。しかし、その容姿をみれば間違えてもおかしくない。以前はショートボブで短くしていた髪は肩胛骨まで伸び、ダークブラウンの髪はシャワーの温水で艶やかに光る。項から背中のライン、太ももに至るまでほどよく引き締まった身体は女性なら喉から手が出るほど欲しく、男性なら生唾を飲み込むだろう。ウェイストランドの標準的な身長より少し小さい小柄な背丈であるものの、彼女の胸にある豊満な双丘は張りがあった。汗ばんだ身体をシャワーで流し、近くにあった石けんを身体洗い用の荒布にまぶして身体を洗い始める。

 

手から二の腕、鎖骨にかけて良くこすり、双丘は谷間や下の垢が残りそうなところを重点的に擦る。突起については敏感なところであるため優しく擦り、次第に腹部から太ももを擦る。

 

「ユウキ、見るなら手伝ってくれる?」

 

「うーん、触るなと言われてるのにか」

 

そんな艶めかしい彼女を俺は劣情を押さえながら見守っている。こんなお預けを食らっているのは彼女が「全て洗ってから」と言っているからに過ぎない。律儀に俺はそれを忠実に守っているなんてなんて紳士(?)だろうか。

 

「仕方ないな」

 

彼女から石けんをまぶした布を受け取り、彼女の背中を擦っていく。布越しではあるものの、彼女の皮膚や骨格を感じて我慢の限界に差し掛かる。

 

「ユウキ、鼻息荒い・・・。」

 

「あのな、こんな仕打ちされて耐えられるわけないじゃん」

 

彼女の手を掴み、顔を壁に向けていたシャルをこちらに向けさせて彼女の唇を奪った。柔らかい唇と何気に乗り気なシャルは互いの舌を絡め合わせた。

 

「・・・んっ・・・ぷはっ、このシャワー室は女性だけなんだから。」

 

「誘ったのシャルじゃん。旅ばっかで一緒にいることが少ないし、寝る場所だってみんなと同じだからって・・ん」

 

続きの言葉を紡ごうとした矢先、彼女は両腕を俺の首に絡ませ、唇を奪って舌を進入させる。舌を絡ませ、口から漏れ出た唾液が互いのあごから首へと垂れていく。彼女の柔肌は病みつきになるぐらい柔らかく、それでいてシルクのように滑らかだ。もっと柔肌を触っていたい、感じていたいと身体をくっつけていると、壁へと押しつけていた。しかし、どちらが積極的かというと追い詰められているかのようにも見えるシャルであった。

 

「・・・・はぁ・・・・、ユウキ・・・・・」

 

 

耳元で囁くシャルの声は脳を麻痺させ、本能に従わせるような魔法が掛かった言葉であった。このあと俺とシャルがどうなったのか言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

アウトキャストが完全に殲滅されたのは、休戦終了後の二時間後だった。エンクレイヴは慈悲のつもりか最初に降伏勧告を行った。「捕虜の安全は保証する」などであった。しかし、アウトキャストは頑なに勧告を拒否した。脱走兵がいてもいいはずであったが、この時既に俺たち偵察隊と共に否定的なアウトキャストの兵士達と技術者、負傷者は戦闘地域から遠ざかっていた。最終的に攻撃が開始されたのは午前8時。ヘリ5機によるバンカーバスター爆弾による爆撃。そして、重迫撃砲による砲撃。それらの攻撃によって完全にフェアファクス市内は破壊され、地下施設も破壊された。生存者はエンクレイヴの調べによると10も満たなかった。その内の5人は残りわずかの命であり、残り何名かは救護所にて自殺していた。

 

のこったアウトキャストと俺たちはまるで退却する兵の如く、陰残な雰囲気を残しながらBOS司令部のある旧国防総省へと向かった。遠回りする必要もなく、エンクレイヴが行ったレイダー掃討作戦は終わりを迎え、我々が通る頃にはレイダーの死体を焼く黒煙が空を支配していた。通りで見かけたエンクレイヴの兵士も交渉したヘクストン少佐の連絡が行き届いているのか、道を空けてくれた。なんの攻撃も受けずに国防総省に辿り着いた俺たちはまず負傷者の引き取りとアウトキャストの彼らの処置をどうするのか、エルダー・リオンズとクロス、そして俺の三名で話し合った。リオンズという最高指揮官の命令に背いて離反し、アウトキャストという組織を作り、あまつさえ貴重な物資と人員の殆どを失ったのだから。罪は重いだろうと。しかし、それはリオンズの行動によって。そして、BOS本部との軋轢が生んだ結果だとして、アウトキャストに属していた彼らを裁かない方針を定めた。そして、リオンズが演説することが決まった。

 

BOSの指導者として、そしてウェイストランドを救済する組織の長としての声明。それはGNRの放送局と軍用周波数を使用して放送された。それはアウトキャストとリオンズ傘下の隊員の軋轢を生まないようにするための措置であり、同時にエンクレイヴを牽制する演説であった。

 

内容としては、キャピタル・ウェイストランド自体がBOS組織内における政治的な敗北によって遣わされた任務であり、名誉ある任務である出征は左遷であったこと。それを語らなかったリオンズ自身にアウトキャストという組織を作った責任があるということ。最後に、キャピタル・ウェイストランドの守護者としてスーパーミュータントを駆逐して、ウェイストランドの平和を守り、悪を制するといったものだった。

 

これにより、アウトキャストに対する反感は収まった。少なからず軋轢はあるものの、GNRのスリードッグの放送や各指揮官の通達、配慮によって最小限になった。そして悪を制するという内容。これはウェイストランドを害する者を排除するという意志が込められている。これはエンクレイヴに対しての者で、両方が正義だと主張しても信じるのはウェイストランド人。現在どちらが貢献しているか考えれば、BOSに違いない。とすれば、悪になるのはエンクレイヴである。今のエンクレイヴは新興勢力としてウェイストランド人が見定めを行っている段階だ。今のところ、目立った動きも残虐的行動も報告されていない。しかし、選民思想があることは事実であり、それが露呈すれば悪と見なされるだろう。

 

 

 

汗や泡を洗い流した俺とシャルはタオルで身体を拭いて、パワーアーマーを着込む。女性用シャワー室から隠密スキルをフル活用して出てきた俺はシャルと共に割り当てられた中庭の宿舎へと移動する。階段を上がり、中庭に出ると訓練兵が鍛錬をする場所に辿り着いた。

 

「ナイト・ユウキ、スクライヴ・ロスチャイルドが呼んでいる。至急ラボへお越し下さい」

 

 

宿舎に戻ろうとする俺たちを伝令の兵が止めた。俺はシャルに先に行くよう言って、俺はその伝令兵に追いていくことにした。ペンタゴンの建物の中へと入り、往来する兵士達をかき分けてラボに通じる道を歩き、階段を下りてラボの扉を開けた。

 

中央のリバティー・プライムの様子を横目で見つつ、BOSに技術的な支援をするDr.リーに手を振ったりもして、自分を呼んだスクライヴ・ロスチャイルドの元へ向かった。

 

「久しぶりだね、ナイト・ユウキ君。どうだ、休息はとれたか?」

 

スクライヴが良く着るローブを纏い、バーコードな髪型のスクライヴ・ロスチャイルドはクリップボードに記されたグラフを見るのを止めて、俺に向き直った。

 

「自分が行く前にはシャワー室は無かったので驚いてますよ。前は川の水を使って身体を拭いていたので」

 

国防総省には核戦争に備えて様々な設備がある。会議室はもちろんのこと、各方面軍の事務室やアメリカ全土に渡っての資料があり、統括する司令室も存在する。現在BOSが使用する施設はまだ3割にも満たない。その殆どが200年という歳月を経て風化し倒壊しているためだ。崩壊した設備を修復して使えるようにすることが出来たのは、日々の生活の向上を図るスクライヴのお陰だろう。彼らは塵に埋もれたここを使えるようになるまで整備し直している。そして国防総省の秘密についても探っている。

 

国防総省の地下には無稼働状態の核融合炉や秘密工場、アメリカ五軍を指揮下においた最終戦争を指揮する、壁一面を画面にした統合作戦司令室なるものも存在すると言われる。戦争が終わった今でもそこに入れるものはいない。戦争終結後、ラボより下の地下施設は中国軍侵攻のためロックダウン(無期限閉鎖)がなされているため、数十年スクライヴが解除コードを探しているが見あたらない。もし、開けることが出来れば、軌道上の軍事衛星を操作して、旧軍の秘密基地にアクセスすることが出来るだろう。しかし、今でもそれが出来ないところをみるにあたり、それが出来るのは当分先だろう。もしかしたら、一生ないかもしれない。200年前のアメリカ軍が使っていた軍事暗号は難しく、それは重要度が増す施設であれば、それは増していく。国防総省という国防の中枢なら尚更で、過去の遺物を研究するBOSのスクライヴの技術ではどうすることも出来ないのだ。

 

ロスチャイルドは俺を手招きすると、ラボ一角にあるキャピタル・ウェイストランドの全貌を地図にした所へ案内される。そこには、衛星からの撮影を元に作成された現在の地図であり、DC都市部の道路には一部×印や赤くラインが引かれている。そこはスーパーミュータントの生息地帯であることを示しているようだ。

 

「一応、現在の指揮官であるスターパラディン・クロスから連絡があるだろうが、詳細を伝えねばなるまい」

 

近くにあった椅子に座るよう、彼は言うので俺は座り、とある書類を渡される。そこにはBOS偵察員が書いたと思われる詳細な報告書だった。現在ある衛星施設や軍事施設、商業施設。そしてワシントンに点在するVaultの位置まで記録されていた。

 

「以前、エルダーの命令で今も稼働するVault施設の位置とその施設を調べるよう命令が下った。スーパーミュータント駆逐のための活動以外にも、技術復興としての任務もあるからな。我々はその偵察に加えて近年発見したvault-tec本社を調査して内部状況や施設の目的など多くの情報を入手した。」

 

彼は隅の書類棚から多くの書類を俺の目の前に積み上げる。そこにはいくらか年月が経たため、劣化しているのも見受けられる。そこには各施設に対する報告書があったが、中にはページ数が三枚しかないものもあった。

 

「ロスチャイルドさん、これは?」

 

「ああ、確か入ろうとしたら、デスクロウに襲われて一個分隊が壊滅した奴だな。生き残った一人は報告書が書けるような状況ではないから、うわごとから推測して書いた」

 

「はぁ・・・」

 

なんというか、この報告書見て分かった。再確認だけどウェイストランドって怖い。普通に人が死ぬ環境ってどう考えてもやばいわ。エンクレイヴが直そうとしているのは分かる気がするよ。

 

そして、俺はその中でも一つの書類に目がとまった。そこには「vault87偵察報告」と題されたファイルが置いてあり、俺はそれを手に取った。

 

「今日伝えるのはそのvaultに関してだ」

 

ロスチャイルドはそのファイルを俺の手から取ると、あるページを開いておれに見せた。

 

「浄化プロジェクトに必要なのは、GECKと呼ばれるテラフォーミング装置であり、今では失われたテクノロジーだ。浄化施設がエンクレイヴに渡った今、彼らよりも先にこのGECKを回収することがBOSの急務だ。君の任務はVault87からGECKを回収して持ち帰ることだ。」

 

俺は報告書にあったvault-tec社のロゴと社外秘と書かれたGECKの詳細な説明とその配送先が記されていた。しかし、最初これを見たときに読んだ文章を思い出してページをめくる。最初のエントランスの位置は高濃度の放射能に汚染され、さらにスーパーミュータントが多く生息すると書いてあった。

 

「ロスチャイルド、どうやって侵入しろと?おれにグ―ルにでもなれっていうんですか?」

 

おれがそういうと、待ってましたとばかりにロスチャイルドはにんまりと笑う。

 

「いやいや、vault87はそこの書類に書いてあるかと思うが、ちゃんとした密閉型シェルターじゃないんだ。近くの洞窟とvaultが通じているようだ。Vault-tecから持ってきた書類にも書いてあるだろう」

 

分厚い資料を全て読むのは、速読が出来る人ならともかくとして、最近では文字を読むよりも敵の動きを読んで、引き金を引くことが多い。そんなことだからか俺は文字を読むスピードは遅く、そこまで読むことは出来ない。仕方ないので、目次を見ながらその資料のページまで捲った。

 

「vault87に通じるランプライト洞窟は戦前観光地として使われていた。しかし、現在では我々のような大人が入れない子供だけの集落が形成されている。核の直撃でグールになる危険性のエントランスから入るか、それともランプライト洞窟から入るかは君に任せよう」

 

「わかりました。どのくらいの規模で向かえば良いでしょうか?補給所に弾薬の申請も・・」

 

と言葉を紡ごうとするが、ロスチャイルドはそれを遮った。

 

「いや、弾薬の申請はする。しかし、BOSとして行って貰うわけにはいかない」

 

「え、どういう事ですか?」

 

俺は驚き、ロスチャイルドに尋ねる。

 

「エンクレイヴと我々BOSの関係は緊迫した状況にある。エルダーの演説のお陰で緊迫した状況になっているため、下手にBOSがエンクレイヴと接触しないようにしなければならない。」

 

「つまり、俺はBOSとしてではなく、武器商人としてBOSの支援無しでこれをやり遂げろと?」

 

「支援はする。しかし、この緊迫した状況下でBOSの直接的な関与が認められれば事だ。君は偵察部隊から外してシャルロット嬢と共に向かわなければならない」

 

つまり、エルダーの演説によって士気が向上したが、まだエンクレイヴと戦う段階ではないらしい。そのため、今はエンクレイヴとの関係は悪化させるわけはいかない。だが、GECKの確保がある以上、BOSとしても動かなければいかなくなり、俺やシャルを使って行かせる腹づもりらしい。しかし、BOSの兵士を変装させればそれでいいのではないかと聞くが、ロスチャイルドは首を横に振る。

 

「BOSの標準装備はパワーアーマーの他にも、戦闘用インプラントを手術で取り付けている。カリフォルニアから来た兵士達の全てがインプラントを使用しているし、医療センターでも、ここで入隊した兵士にインプラントを施している。」

 

身体の骨をアダマンチウムの骨に変えることやサイボーグなどに換えることなど、インプラントという戦前の肉体改造手術は今でも行われている。BOSでは全ての兵士がこれをやっており、肉体増強や視力倍増などを行っており、それらの体内に埋め込む物には全てシリアルナンバーやBOSのロゴが記されている。それは身元の分からない死体を割り出すために控えられており、そのシリアルナンバーから身元が特定できる。もし、BOSの兵士がエンクレイヴに攻撃を行い、それで戦死して死体がエンクレイヴに渡ったら。検死によって所属が明らかにされてしまう。

 

この広いウェイストランドでそれができるのか怪しいものだが、どちらにしてもリスクは侵せない。ロスチャイルドはそれを説明すると、あるものを書き始める。

 

「これをラボの最下層にいる武器管理責任者のナイト・キャプテン・ダーガに見せなさい。彼女は新参者には手厳しいから、少ない量の弾薬しか配給してくれないはずだ。そうだとしたら、これを」

 

それは、最優先で物資を提供するよう書かれた命令書だった。しかも、エルダーのサインまで書かれている。これを持っていけば、パワーアーマーも状態の良い物を支給してくれるはずだ。

 

「BOSや私が君にすることはこれ位しかない。すまないと思っている。だが、君ならやり遂げられると信じている。」

 

ロスチャイルドは言い、他の仕事が山ほどあるとこの場を後にした。おれはその事を伝えるべく席を立ち上がり、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・ということだ。BOSとしてではなく、Vault87に赴くことになる」

 

俺はロスチャイルドと別れてから、皆が中庭の宿舎に来るのを待ち、スターパラディン・クロスの説明の後に続くようにしてから補足説明を行う。それを聞いた皆は殆どが、BOSとして参加出来ないことに疑問を抱いた。しかし、任務と情勢の悪化を鑑みれば妥当な采配だと納得するほか無かった。

 

「私や他の部下は行くことが出来ない。本当にすまない・・」

 

クロスは頭を下げる。彼女は力になれないことを悔やんでいた。俺はそれを宥め、世話になったBOSの兵士に今までありがとうと感謝の言葉を残す。

 

「ユウキ、俺たちはどうなる?」

 

そう言ったのは、浄化プロジェクト発足以降、付いてきてくれたウェインだった。

 

「これからVault87へ向かう。正直、かなり険しい道のりだと思う。ウェインを雇う財布の余裕は今ない。」

 

ウェインは傭兵だった。彼はキャップがなければ戦えない。そして俺の財布には食糧を道中買えるようにするために少し残しておかなければならないため、出費は避けねばならない。彼は中堅のベテラン傭兵。支払うお金は多い。

 

「そうか・・・だが・・・」

 

ウェインは考えていると思う。今度の旅は傭兵と雇い主の関係を越えたものであると言うことに。そして、契約金が支払えないと言うこともある。彼は決めかねていた。

 

「でも、ことが終わって浄化プロジェクトが再開すれば何万ガロンもの浄化された水が手に入る。無理にとは言わないし、それはまだ可能性の範囲内だ。俺としては一緒に付いてきて欲しい」

 

 

俺はそう言って彼の顔を見る。すると、考え終わったようで伏せていた顔を俺に向けた。その表情はいつになく喜んだ表情だ。

 

「良いだろう。その代わり、良い報酬を期待するぞ」

 

ウェインは俺の肩を叩き、煙草を吸うと言って外へ出る。ウェインの他にBOSの要塞でぶらぶらしていた傭兵数人いたが、彼等は契約金が出ないため、辞めることになった。おれは、これまでありがとうと言うと、彼等は「お人好しすぎる」と苦笑しながら、握手する。

 

 

 

これで面子は揃った。

 

傭兵で人の良いウェインにミュータント並みの生命力を持つドックミート、魔改造を施したRL-3軍曹、幼馴染みであり恋人のシャル。本当なら、もう一人いたら良かったと思う。彼女が居ないのは幾ばくか悲しいが仕方がない。

 

 

「準備はいいな?」

 

「ワン!」

 

「準備完了です!司令官殿!」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「うん、行けるよ!」

 

 

俺達は旅立った。一匹は主のために。一機は司令官のために、一人は友のために、そしてもう一人は亡き父のために。

 

ゲームとは違うこの世界。この後の展開は、俺はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

(こちらWhisky2-1、巡回を完了した。これよりRTB(基地へ帰還)。)

 

 

 

 

 

ガンシップ型のベルチバードは周囲の航空警戒の任務を終了し、基地へと帰還する。ヘリの巡回した地域はエンクレイヴが平定したインディペンデンス砦とフェアファクス市街だ。

 

 

フェアファクスは戦後、建物は破壊されても幾つかはまだ現存していて、レイダーの根城になっていた。しかし、最近になってBOSの分派のアウトキャストがレイダーを掃討し、フェアファクスを完全に手中に納めた。しかし、エンクレイヴに対して攻撃を仕掛けたため、アウトキャストは報復攻撃を受けた。

 

町の殆んどが瓦礫と化し、数百年立った建造物は脆く壊れやすかった。アウトキャストはヘリや装甲車などの強力な兵器群に圧倒され、地下に戦力を集めたゲリラ戦を展開。しかし、結果は推して知るべし。

 

インディペンデンス砦とフェアファクスの市街の至るところには大穴が開けられ、バンカーバスターと呼ばれる地下壕破壊爆弾によってクレーターが作られていた。軍事上の三割が全滅と定義されるが、実際はアウトキャストの9割の兵員が戦死していた。数値から見れば文字通りの全滅だろう。爆撃後に生き残った兵士は最後の突撃を行い、玉砕した。

 

未だに生存する残党兵を掃討しなければならないため、付近にはエンクレイヴの兵士や装甲車、さらにはエンクレイヴ・アイポットなどが使用された。

 

そのエンクレイヴの前哨基地には駐機されたベルチバードや装甲車が鎮座していた。奥には黒塗りのコマンドテントがあり、奥には「接近禁止」と書かれた札を吊るした怪しいテントがあった。入り口には歩哨が二名配置され、警備をしている。

 

そこへ、士官がそのテントへ歩いてくる。兵士はその姿に気付いて敬礼した。

 

「スタウベルグ中尉」

 

「捕虜の様子は?」

 

彼女は返礼として敬礼し、下ろすと敬礼していた兵士も下ろす。捕虜とはつまり、エンクレイヴの爆撃から生き残った兵士の事だろう。

 

「一応中佐に報告しましたが、負傷兵や戦闘に参加できない技術スタッフと数名の兵士はBOSの部隊と共に旧国防総省へと避難したとの事。その兵士の中に手配中の人物がいたと証言しました」

 

兵士はそのレポートをスタウベルグに見せる。彼女はページを捲り、文字を読み表情はゆっくりと柔らかい物へと変化する。

 

「そうか、やつはここに居たみたいだな」

 

兵士達はスタウベルグの顔を見てヘルメット越しではあるが、驚いた表情を見せる。

 

その表情は泣いているようで笑っている。まるで、生き別れの兄弟か恋人を探しているかのようだったからだ。

 

「捕虜はある程度の食料と武器を渡して解放しろ」

 

「え、良いのですか?!」

 

彼女の言った言葉に彼等は驚いた。何せ、エンクレイヴに仇なす敵であるのだから当然である。本来なら銃殺刑が普通の処置。それなのに、捕虜に食糧をやり、武器を与えるのは驚くべき事である。

 

「せっかくあの爆撃から生き延びたんだ。その捕虜も我々エンクレイヴの恐ろしさが身に染みて分かっただろう。我々の事を流布するなら、そのまま生きて帰させるのが一番いい」

 

スタウベルグは踵を返し、駐機していたベルチバードに出発する用意をしろと手で合図をし、ベルチバードのメインローターが回転する。

 

「司令部に国防総省から出ていくBOSの小隊を衛星から追尾しろと伝えろ。Vault87に向かいそうな部隊をマークして足取りを探れ」

 

ヘリの近くにいた下士官は命令を聞き、すぐに命令を遂行しに移る。ヘリは下士官とスタウベルグを収容すると、メインローターの回転数を増やし、離陸する。地上から飛び立ったベルチバードはエンクレイヴの総司令部「レイヴンロック」へと向かった。

 

 

 

 

 




ちょっと無線のところでルビ振ってみました。変なところあれば修正します。


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