fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

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四月・五月は忙しすぎる。カリキュラムの編成や変な講師の授業を受けないよう変えたり、新しく設立したサークルの運営で忙しいwww

昨日は深夜までこれを書いてたら三万五千字を越えたため二つに分割して投稿します。




三十一話 故郷へ (上)

ウェイストランドを照らし続けていた太陽は落ちて、星空が覆うようになる頃。風上に位置するジャンクヤードの管理小屋では作戦会議を行っていた。外にはバラモンと若いイニシエイトが歩哨を行う。その間、中では地図をテーブルに広げて会議を行った。

 

メンバーは俺とウェイン、スターパラディン・クロス、シャルにパラディン・デントと言う30過ぎの兵士が古びた椅子に座って今後のことを話し合っていた。

 

「直接、インディペンデンス砦に行くものと思っていたけどな。」

 

ウェインはスチール製の容器に入ったウィスキーをちびちびと飲む。これが終わったら夕食を食べて寝るつもりであるので、誰も咎めることはない。

 

「まあ、一応占領されているメガトンの偵察もしなければならなかったし。それに、最短距離で行くこともできないからな」

 

俺はウェインにそう返した。

 

本来ならばそのままアウトキャストの司令部のあるインディペンデンス軍事基地まで図書館を通ってヌカコーラプラント。そしてアンデールを横目に見つつ、フェアファクスを通って基地まで行くつもりであった。しかし、レッドレーサー工場からヌカコーラプラントに掛けてはレイダーのテリトリーが最も多く、更にエンクレイヴの掃討作戦が開始されたらしい。BOSの偵察員はエンクレイヴの航空部隊と随伴歩兵を連れた装甲車を確認している。そのため、他のルートを選ばざる負えなくなった。所々検問もあるため、無駄な警戒や戦闘を避けるため、エンクレイヴとは距離を置かなければならない。それは現在のBOSの方針だった。

 

グレイディッチ付近も既にエンクレイヴの部隊が駐屯している情報もあったため、川沿いを行く道は不可能となった。なので一度川を渡ってエンクレイヴの哨戒部隊に発見されないよう、DC都市部の川沿いのルートを進み、大きくそれてしまった。一度ベセスダの旧市街の近くを通る時、そのままメガトンに行って野営するのもあったのだが、エンクレイヴがメガトンを占領している事があるため、危険だった。

 

「アウトキャストはどうなってる?」

 

「無線の交信を聞けば分かるかも知れないけど、かなり苦戦しているようね。フェアファクスで市街戦を展開中よ。インディペンデンス軍事基地の建物は崩落したらしいけど地下部分はなんとかなってるようね。」

 

クロスはバラモンジャーキーを噛みながら言う。BOSの偵察もアウトキャストの戦闘を見たわけではないため、情報が錯綜していた。アウトキャストが壊滅した知らせはBOSの偵察員ではなく、商人の話からもたらされた情報であったため、信頼性は低い。

 

「元々、BOSのベテランが離反してあの組織を作ったからな。エンクレイヴの爆撃だけじゃ、死にゃしないだろ」

 

パラディン・デントは侮蔑も込めているのか、腕を組みながら嫌そうな顔をする。リオンズ傘下のBOS兵士はリオンズの行ったことにかなり賛同している。本来のBOSの教義に不満を抱えている兵士も少なくない。彼らからすれば、指揮官に対する裏切り行為にしか見えないはずだ。

 

「スターパラディン・クロス。どうします?」

 

偵察隊の指揮官はクロスである。そのため彼女の命令には従わねばならない。

 

「朝一番に出発してメガトン近くのスプリングベールに向かう。そこからメガトンを偵察する。偵察後は南下してインディペンデンス軍事基地へと向かう。何か質問は?」

 

ハキハキと命令するクロスはまさに軍の指揮官だろう。一応、主目標はアウトキャストの偵察だが、ほかの地域の偵察行動も認められているし、奨励すらされている。大きくそれてメガトンの状況を確認すれば、注意されるどころか感謝されるだろう。

大抵の場合、軍の作戦会議ではあまりしつもんはないのだが、意外にも質問の手が上がった。

 

「えっと、質問というか・・・いいですか?」

 

軍の作戦会議とは似つかしくない透き通ったシャルの声はウェインの笑いのツボをつつく。小さく笑うウェインをパラディン・デントは睨むがクロスはシャルの姿に苦笑を漏らす。

 

「いいよ、言ってみなさい。シャルロット」

 

「さっきpip-boyの無線をイジっていたんですけど、こんなものを聞いてしまって」

 

シャルはpip-boyの音声再生をオンにする。それは慣れ親しんだvault101の緊急信号だった。発信主は俺とシャルの脱出を手助けした幼馴染のアマタだった。それは俺とシャルに宛てた無線信号で、vault101の内部で紛争状態になっているらしい。依然はラジオ信号として発信していたらしいが、ここ一週間は流していないらしい。

 

「スターパラディン・クロス。Vault101へも偵察させて下さい。」

 

俺はクロスに言う。彼女は俺の故郷の危機であることはさっきの信号でわかったはずだ。しかし、彼女は渋い顔をする。

 

「メガトン近くにはエンクレイヴの部隊もある。指名手配されている君達をあまり行かせたくはない。だが、行きたいというのなら・・・・」

 

「私はいいです。Vaultを捨ててきた身ですし・・・」

 

「シャル・・・・!」

 

おれはシャルの言葉に驚きを隠せなかった。彼女も俺と同じようにvaultで育った人間だ。彼女からしても第二の故郷だろう。俺の素振りを見た彼女はすこし視線を落としながら口を開く。

 

「アマタやフレディ、ユウキのお父さんはいい人だよ。でも、vaultには帰りたくない」

 

シャルの心情はもっともだった。シャルのvault生活は良いとは言えなかった。ジェームズと共に外からきた所為か、ずっと代々vaultに住んでいた人から見れば異質な存在。影から疎まれてきた彼女にvaultを助ける必要はない。彼女に優しくした人物も何人かいただろう。だが、それ以上に彼女のvaultに対する想いは悪かった。

 

「自分はまだ父と兄がいます。なので、様子だけでもいいんで見に行かせてください」

 

シャルとは違って俺はそこまで疎まれなかった。勿論、母親が外から来た事も起因して一部からは変な目線を受けたことがある。でも、父親がセキュリティーだったためかもしれない。

 

「明日はスプリングベールに向かう。歩哨は二時間交代だ。今日はゆっくり休んでくれ」

 

会議は終了し、英気を養うべく夕食作りとなった。

 

多くは保存食とかで凝った食事は出来る訳はない。しかしながら、今日は新作にチャレンジしてみようと思った。

 

「で?今日は何を作るんだい?ユウキ総料理長」

 

ウェインはふざけた様子でウィスキーを煽りながら聞いてきた。総料理長と言うのはジェファーソン記念館で付けられたあだ名というのだろうか。たまに料理を作り、みんなに振舞っていたためにこんな名前が付けられた。

 

リベットシティーで仕入れた残りの材料とBOSから支給された食料もある。それに、リベットシティーで買ったあるものをまだ食べていなかった。

 

「バラモンチーズフォンデュ」

 

本格的なものではないが、まず野菜や肉など炒めておき、チーズを付けて食べたら美味しそうなものを準備しておく。そのあと、大きめの鍋にバラモンの牛乳を発酵させて作ったバラモンチーズにワインを少量入れつつ溶かしていく。トロトロになったところに、リベットシティーで少し高値に取引される生成プラントの野菜を付けて食べる。ちょっとした贅沢である。

 

放置されていたマグカップに残ったワインを注いで飲む。程よい酸味が口に残り、二百年もののワインだと思うとこれが本来の味なのかと疑ってしまう。

 

チーズフォンデュを食べたメンバーは旨いと言って食べ始めた。

 

「ユウキはこれを何処で思い付いたんだ?」

 

小分けにされたチーズを野菜に絡ませながら食べるクロスは訊いてきた。

 

「メガトンにゴッブっていうグールがいるんですが、ソイツの住んでいた所に元3つ星レストランのコックが居たらしいです。料理を教えて貰い、おれもゴッブから色々教えて貰いました。」

 

「ほう、他にもあるのか?」

 

「レシピは幾つかありますけど・・・・、そのゴッブ曰く“メガトンにレストラン開くから、飲食関係の業者に公開禁止!”と念を圧されましてね」

 

ゴッブの住んでいたアンダーワールドは戦前の人物が何人か住んでいる。その街の平均年齢は100を越える過疎地域もビックリな町である。そんな理由から高い技術を持つ人が多く、街が存続している原因でもあった。

 

なんやかんやで料理を食べて皆は満足した。食後は食器などを片付けた後、ちびちびと酒を飲んで多くの者が寝てしまう。バラモンで運んでいた寝袋を広げて寝るものや、放置されていた毛布にくるまるなど様々だ。

 

俺はウェインから無断で拝借したウィスキーの入った容器から少し飲み、横になる。保温性の高いバラモン毛布を広げてくるまって寝ようとした時、頬を赤くしたシャルがやって来た。

 

「シャル、どうした?」

 

「えっと、歩哨してるウェインに夜食を渡してきた。一緒に寝てもいい?」

 

「ああ、いいよ」

 

俺はパワーアーマーを脱いでいて、お互いカーゴパンツとTシャツになっているため、腕等が密着する。バラモン毛布を被ると、ぬくぬくとした暖かみがあった。右腕を枕にして、シャルの頭はちょうど俺の胸辺りにやって来る。昔なら此処等で心臓がバクバクいっていたが、今はそれほどでもない。

 

「ユウキ、あんまり料理されると傷付く」

 

「ごめん、でもつい作りたくなっちゃって」

 

俺がそう言うと、「デリカシーが無いんだから」と顔を胸に擦り付ける。それは彼女の横で寝ているドックミートのような仕草だった。すると、ふとシャルの頭が上がる。

 

「ユウキ、ごめんね」

 

「ん?何が?」

 

「Vaultに帰りたくないなんて言って」

 

シャルにはVaultで良い思いではあまり無いだろう。子供の教育機関であるVaultスクールでも彼女は浮いた存在だった。子供は自分とは違う存在を忌み嫌うことがあり、大人になってもそれは変わらない。俺は前世でもそう言う事が嫌いだった。彼女に何かする輩にはキツい一発をお見舞いしたし、父親の権力を乱用させた事もある。だが、俺だって所詮は子供である。十倍返しになって跳ね返ってきたことがある。喧嘩に強くなかった俺をシャルの父、ジェームズが抗う術を授けてもくれた。それでも、俺が見ていないところでシャルは嫌がらせを受けていた。彼女の意思は納得できるものだ。

 

「いや、良いんだよ。クロスと一緒に居てくれ。あの人は俺の母親の戦友だって言ってたから、叔母さんみたいな感じかな」

 

「叔母か、鋼鉄の兄弟だから叔母であり姉であり・・・・どこの大統領?」

 

そんなことを言うもんだからシャルは笑い、腕を俺の首に絡ませる。女性を主張する豊かな双丘が俺に触れる。

 

「ユウキは居なくならないよね?」

 

顔が近づき、唇が触れそうな距離でシャルは聞いてきた。青い瞳は俺をじっと見据え、俺のダークブラウンな瞳は彼女の目を見続けた。俺は答えを言おうとしたが、行動に移した方が良いだろうと頭を傾ける。

 

ただでさえ、唇が近いため俺の唇はシャルの唇に触れる。柔らかい感触がし、彼女の髪の匂いが鼻腔を刺激する。シャルは最初驚くような素振りをしていたが、「よくもやったな」いったような感じで唇を貪るようにして唇に吸い付く。

 

「ユウキ・・・・、答え聞いてない」

 

「ん?言ってなかったっけ?」

 

はぐらかそうとする俺に対してシャルは頬を紅く染めながら膨れっ面をしている。俺はそんなシャルを可愛らしく思い、彼女を抱き締めた。

 

「居なくならないよ。大丈夫だから」

 

背中を撫でて、彼女の息が胸に当たる。安心したのか、彼女の口数は少なくなって夢の世界に旅立って行った。そんな彼女のサラサラとした髪を撫でながら目を閉じる。

 

次第に意識は遠のいて、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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灼熱の太陽がウェイストランドを煌々と照らし、荒野に住む生物を蝕んでいく。干からびた大地は嘗ての豊かな大地とは程遠い。僅かに生き残る生物はその日の糧を奪い合っていた。

 

その大地にかつてこの大陸を支配していた組織の車両が走っていく。それはエンクレイヴの徽章と黒い塗装が施された「APC(兵員輸送車)」と呼ばれる鋼鉄の車はスプリングベールの幹線道路を走り、vault101の入口近くに停止する。

 

「全員下車!」

 

指揮官の声で降りてきたのは、パワーアーマーを装備したエンクレイヴの兵士達だった。エンクレイヴが独自に発達させた漆黒のエンクレイヴパワーアーマーMk.2を装備し、何人かはエネルギー兵器の攻撃力を増強するテスラ装置なるものを取り付けていた。

 

「重火器兵展開!急げ!」

 

最後に降りてきたのは、ほかの兵士とは違った装備の兵士が降りてきた。黒の塗装がしてあるのは同じであったが、デザインは全く異なっていた。Mk.2パワーアーマーとは違い、装甲が厚く、重火器用のバックパックの取り付けが容易なように凸凹がない。ヘルメットも他のと比べると、特異な形をしていた。

 

「ヘルファイアパワーアーマーだっけか?最新型を投入してきやがったな」

 

俺は双眼鏡でその兵士を確認する。重火器を主に使用する兵士が装備するアダムス空軍基地で製造されたパワーアーマーだった。従来のパワーアーマーと違い、重装甲なのが特徴的である。大口径ライフル弾など貫通せず、徹甲弾も跳ね返す。破壊できる術はミニニュークか対戦車ミサイル位だろう。

 

ヘビーインシネレーターと呼ばれる火炎放射器と言うよりも「投射器」に近く、遠距離の敵に対して火炎弾を放ち、放物線を描いて命中させる重火器を兵士は装備していた。

 

「見つかったら、バーベキューにされちまうな」

 

横にいたウェインはそれを聞いてスナイパーライフルを脇に置く。どのみち、ここで必要になるのはライフルではなくバズーカなどの重火器だ。

 

エンクレイヴはVaultのエントランス前の道に検問を敷いており、モールラット一匹通さないような状況だ。メガトンも同様に、正面の門の前には簡易型のヘリポートまで作られている。そこで、何人かのウェイストランド人らしい人物がヘリに積み荷を載せる手伝いをしている。日雇いで手伝わされているのに違いない。

 

偵察のために登っていた民家の屋根から降りると、周囲を警戒しながらスプリングベールに設置したキャンプに撤収する。スプリングベールの西側はこの前までレイダーの領域だったのだが、エンクレイヴの掃討作戦の影響で全滅している。そのため、スプリングベール小学校は200年の歳月を経て瓦礫の山になっている。誰も居なくなったその場所は、隠れるのには絶好の場所だった。

 

もし、見つかった場合に備えて数少ない徹甲弾を装填したアサルトライフルを携えて銃口に消音器を取り付ける。

 

「ユウキ、援護する。」

 

「ああ、後ろは任せた」

 

 

音をださないようパワーアーマーを地面に擦らないよう慎重に行動する。どうせなら、静穏性の高い中国軍ステルスアーマーを装備すれば良かったと思ったが、それはメガトンの倉庫に眠っているため、今回は違うもので代用しなければならないだろう。哨戒ヘリに悟られないよう、廃墟の影に隠れながらスプリングベール小学校を目指す。歩兵がパトロールをしていないため、そこまで警戒する必要もないのだが、用心に越したこともない。

 

慎重に小学校へと戻ると、Vaultから出てきた時のスプリングベール小学校の様子を思い出した。スプリングベール小学校は核攻撃に遭ってから二百年姿を保ち続けていた頑丈な建物は地下一階から二階まであり、レイダーの根城になっていた。今はエンクレイヴの攻撃によって二階と一階は瓦礫の山になっていて、辛うじて地上に露出する地下一階ロッカー室等はまだ残っていた。そこでテントを張って仮夜営地にしていた。昼夜問わず、歩哨を置いて警戒している。エンクレイヴがBOSとは敵対しないが、現場レベルでなら、攻撃してくる可能性もあるため油断は禁物であった。

 

偵察を終えて偽装用のゴミ箱をずらして小学校の内部へと入る。これまで使っていたテントを張り直し、二階の残った踊り場は監視所として使っており、ロッカーの所はバラモンの居場所となっている。一度、指揮官用のテントに入りクロスへ報告する。

 

「報告!Vault101の周辺はエンクレイヴの検問所が設置してありました。敵の規模は一個分隊。また、最新型のパワーアーマーを確認。重火器を想定した重装甲のパワーアーマーと思われます。敵の量は想定内です。予定通りに1850時、潜入は可能です。」

 

「一個分隊を相手にだぞ?隠密にVaultに侵入できるか?」

 

クロスは怪訝な顔付きで首を傾げた。

 

「一個分隊なら大丈夫です。それにパワーアーマー装着している場合は索敵能力が低いですので、素早く動けば潜入は可能です。」

 

俺の言葉に納得したらしく、クロスは壊れていなかったテーブルに置かれたインスタントコーヒーを出した。熱湯が入ったポットからお湯を注いでマグカップを満たし、ティースプーンでかき混ぜる。

 

「ユウキ、そこの箱を開けてみろ」

 

クロスは指揮官用天幕の隅に置いてあったメタルボックスを指差した。俺はそれに近付き、ゆっくりとそれを開ける。

 

「えっ、これって」

 

「色が違うが、性能は折り紙つきだ」

 

それは米軍が偵察や潜入作戦用に作ったリコンアーマーだったが、所々改修が加えられていた。リコンアーマーの欠点である軽装甲から、コンバットアーマーのプレートが胸部に付けられ、幾つかのマガジンポーチが腰に付いていた。色も黒く塗られており、潜入には持ってこいの装備品だ。

 

「昔、BOSが製作したリコンアーマーの改良型だ。対人作戦なら効力を発揮するだろうが、これまでの敵はミュータントだったからお蔵入りしていた。使えるとあってはそれも本望だろうさ」

 

「ありがとうございます、スターパラディ・・」

 

言い終わる前にクロスは俺の頭を荒々しく撫でる。

 

「今はいい。敬語の時は形式的にしなくてはならんが、こんな時は名前で呼んで構わない」

 

クロスはまるで犬と戯れるように頭を撫でる。それは「よーしよしよしよし!」と動物好きなオジサンを思い出しかねない。

 

Vaultの時は叔母という人物はいなかった。義理の母は叔母と呼べと言っていたが、あまり良い性格とは言えない。クロスのような人物は俺にとっては新鮮な存在だった。俺は少しの間話したあとクロスと別れて、空きのテントの中に入る。そこは俺とシャルのテントである。シャルはメガトンに入った行商人の話を聞くべく、小学校の外に出ていた。

 

パワーアーマーを脱ぎ、クロスから貰ったリコンアーマーを着始める。コンバットアーマーと違い、全身に密着した繊維が擦れないような構造になっていた。それを一度着て、ホルスターと防弾プレートがアーマーにしっかりと取り付けられているかチェックする。

 

持っていくものはステルスボーイや消音器を取り付けた10mmピストル等の隠密性の高いものにする。そして、

 

「これも持っていくか」

 

 

それはキャピタル・ウェイストランドでは見掛けることはない5.7×28mmを発射するP90だ。

 

それは専用のドットサイトではなく、ホロサイトが装着されている。P90はケブラー繊維のボディーアーマーを貫通するために作られた火器で、貫通能力は非常に高い。それに、徹甲弾を装填してあり、追加装甲がなされたパワーアーマーでも貫通が可能である。

 

しかし、それは最終手段である。それはジェファーソン記念館でウェインが持ってきた物で、弾薬も心許ない。もし戦闘になっても、使いきらないように注意しなければならないだろう。それに消音器もないため、本当に重要な時にしか使えない。

 

最後にBOSで貰った使いかけの黒のドーランを顔に塗る。肌の色が見えないように顔の殆んどを塗りたくる。リコンアーマーヘルメットはなく、耳を覆い隠さないため、耳まで塗る。これで骸骨を書いたバラクラバがあれば良かったのだが、そんな上手くいくことは

ない。pip-boyから18時になる事を知らせ、俺はテントの外を出る。肌寒い風が吹き、ウェイストランドに夜がやって来たことを知らせた。いつも、夜は夜襲や奇襲などがあるため煩わしさを感じていた。しかし、潜入や奇襲をする側からすれば、こんなにも頼もしい仲間はいないだろう。

 

周辺を警戒する歩哨のイニシエイトと出会い、軽く別れの挨拶をした後。音を立てないようVaultに向けて歩き出した。既にVaultを飛び出して半年以上の月日が流れていた。ここに戻ってくるまでの間、様々な事が起こった。メガトンに店を構えて、ブライアンを弟子にした。そしてシャルと共にジェームズを見つけ出し、浄化プロジェクトを再開させた。そこまでは順調だった。しかし、エンクレイヴの攻撃とジェームズの死。

 

ふと見ると、スプリングベールに来たときに最初に目についた核燃料チャージャーのあるロケットの形をしたスタンドがあった。廃屋の間を通り抜ければ、我が故郷Vault101のエントランスがある。

 

『何でこんな重いの着たんだろ?』

 

『カッコいいから?』

 

Vaultから出てきた後の会話を思い出す。あの頃はウェイストランドがどんなものか全く分からなかった。

 

 

エンジンの駆動音が常闇に満たされたこの場所に響き渡り、とっさにホルスターからサイレンサー付き10mmピストルを構える。Vaultの正面に停車していた装甲車両は化石燃料を燃やしながら、サーチライトを周囲に照らしながら道路をゆっくりと移動する。素早くピストルのスライドを引いて、こっちに来ないようにと祈る。

 

装甲車はスプリングベールに入ることなく、そのままメガトンの方へと行ってしまった。

 

緊張のため激しく鼓動する心臓を抑えるようにゆっくりと深呼吸を行う。背中や頬には汗が滲み、腰につけていた水筒を手に取り水を飲む。

 

「無線で誰かがサポートしてくれればいいのにな」

 

無限バンダナもあれば心強いのにと言い加えて、一人笑いする。この世界でそのネタを知っているのは俺一人ぐらいだ。メガネを掛けたロボットアニメオタクも飛び級した中国の諺を度々言う女の子もこの世界で言っても分かってくれるやつは一人もいない。

 

彼もこんな気持ちだったのだろうかと思いを馳せるが、蛇以外あまり思い出せなかった。一人で戦うのはこんなに心細く、寂しいものであったとは知らなかった。時間が経つごとに高まる不安をどうやったら止められるのだろうか。よく、個人プレイのスポーツは自分自身との戦いという。それは、自分しか頼ることが出来ないからだろう。学校にいるシャルの顔やモイラに保護されたブライアンの顔を思い浮かべる。おれが死んだらどんなに悲しむか。ならば絶対に死んではいけない。

 

守るべきもののために戦うという意思。それは逆境な状況を覆す力となる。いかなる困難な状況ではそれが力となるはずだ。

 

色々なことに思いを馳せ、ガソリンスタンドを過ぎて坂道を匍匐で進み、エンクレイヴの検問所に到着した。

 

「Vaultのあの女見たか?あのvaultスーツの尻のラインがやばかったな」

 

「たしか監督官の娘だっけ?俺はあんまりな~」

 

『keep out』とつくられた車止めの奥には、真新しい核稼働の軍用トラックと装甲車が三

輌が停車しており、軍用ボックスの上に座るエンクレイヴの兵士が二人話をしていた。

 

「さっきの技術佐官は何しに来たんだ?Vaultの技術なんてたかがしれてるのに。特殊な研究していたのか?」

 

「閉鎖されたコミュニティで、絶対的な監督官の能力を評価する実験だったらしいぜ。そこまで貴重なテクノロジーはないはずだが・・・・例のあれかな」

 

ヘルメットを脱いでいる彼らはウェイストランド人とは違い、非常に丁寧な英語を使っていた。一般兵まで教育が行き届いていることはこの荒廃した世界ではとても凄いことだろう。文明のレベルが低下して、ウェイストランド人の二人に一人は字が読めない。エンクレイヴはその点優れている。

 

 

「ジェファーソン記念館攻撃作戦で部隊が損害を受けたの覚えているか?」

 

「ああ、ヘリが何機か落とされたって聞いたけど。敵はVaultに?」

 

「記念館を警備していた責任者が半年以上前にVaultを飛び出したらしい。技術将校は何かあると踏んでここに来ているようだ。」

 

「へぇ~、そんな奴がな」

 

「ほとんどの武器や兵器は彼が所有している物だったらしい。Vaultに住んでいた者がどうやってそんな物を持っていたか調査しているそうだ」

 

メガトンにはかなりの物資が置いてある。それが接収されたのは痛手だったが、Vaultにまで手に出すとは思わなかった。アダマや父さん、そして兄貴の安否を考えながら、這いつくばりつつも軍用トラックの下に潜り込んだ。

 

「Vaultにも警察機構やライオットシールドもあるなんてな」

 

「そりゃ、監督官の権力強化のためだろ。住民を力で押さえつけるためにしか思えないな」

 

エンクレイヴの兵士が話に気が取られているうちに、腰に取り付けたバックパックからC4爆薬を取り出して、動力部分に取り付けた。そして、隣の装甲車にも同じ物を取り付ける。慎重に匍匐で進み、Vaultエントランスの扉を見つけた。それは出てきたとき良く見ていなかったが、蹴り壊せそうな古い木を使った扉だった。それは検問から丸見えだったため、何とかして気を引くような物を作らなければならない。

 

手元にあった石を掴むと投げてさっきまでいた窪みへと投げ入れた。案の定、石は物音を立てて、エンクレイヴの兵士は警戒した。

 

「物音がしたぞ」

 

「誰かいるのか?」

 

彼らの視線は音を立てた石へと向き、その隙に車の下から身体を出し、急いでエントランスに入る。古い扉を開けて中に入ると、エントランスから流れるvaultの匂いが漂ってくる。

 

匂いとは人間にとって些細な物であるが、匂いを感じ取ることによってその場の記憶を思い出すことが出来る。例えば消毒液の匂いなら小学校の保健室や病院、微かにカビの匂いがする所なら体育館のマットが保管されている体育倉庫なんていうものを連想させる。花の香りは花畑を、シャンプーの香りなら好きだった幼馴染みを連想させるかも知れない。だがウェイストランドに出てきてから、嗅いだことのない匂いが鼻腔を刺激する。Vaultの人口太陽では作り出せない暖かみのある空気やおいしい香りのするバラモンステーキ。そして硝煙や死臭。血なまぐさい匂いやレイダーの獣臭い匂い。強烈かつ刺激的な嗅覚になれた俺は、あの優しい匂いに包まれたVaultの匂いを求めていたのかも知れない。

 

しかし、匂いは普通しないはずだった。Vaultの隔壁は空気を漏らさないように密閉構造となっているはずである。それは、核戦争の死の灰や放射能を施設に入れないようになっているはずなのだが、vaultからの空気が流れていると言うことはハッチが開かれている事を差していた。

 

Vaultの扉から話し声が聞こえ、すぐさま扉のコンソールの影に隠れた。脳裏にvaultから去るときに別れを告げたアマタの顔を思い出す。彼女の顔はその日に起きた出来事で憔悴しきっていたが、別れの際は目から涙を流していた。彼女から助けを求めているのは、重要な出来事があったということだ。

 

ホルスターからサイレンサー付きの10mmピストルを抜き取って構えた。

 

「かみさん元気にしてるか?」

 

「まあな。弟を失ったから、一時期は取り乱していたけど今は大丈夫だ」

 

その声は同僚だったオフィサー・タッカーとオフィサー・リアンだった。少しだけ覗いてみると、vaultスーツに見たこともないアーマーを装備していた。例えるなら何処のジャガーノートだろうか。

 

腕や足にプロテクターをはめて、首もとをガードするプロテクターと目元しか見えないフルフェイス型のヘルメット。それだけで、どこかのゲームに出てきそうである。

 

おれがそんなことを考えている内に二人は話を進めていく。

 

「あのときはどうなるかと思ったよ」

 

「ああ、ラッドローチが大量発生するなんてな。やっぱ、ジョナスか?」

 

 

ふと、ジョナスの顔を思い出す。彼は俺が生まれたときに助産した人物だ。人の良く、ジェームズの手伝いをしていた。シャルとは付き合いもよかった。ジェームズがvaultを出るときに彼が手伝ったが、ラッドローチを放ったという濡れ衣を着せられ、ハノン警備長に撃ち殺されたのだ。するとオフィサー・リアンはそれを否定した。

 

「おいおい、エンクレイヴの奴らから聞いてなかったのか?あの封鎖されたハッチは経年劣化によるもので、単なる事故だったらしいじゃないか。ジェームズ親子が脱出したのもタイミングが重なった偶然だろう」

 

確かに、ジョナスがそんなことをするとは思えない。オフィサー・タッカーはため息をついた。

 

「なあ、エンクレイヴの奴ら。本当に信用できるのか?」

 

「どうした、いきなり」

 

オフィサー・リアンは扉が開いているため、大きな声で話さないよう求めたが、タッカーは嫌そうにした。

 

「良いじゃないか。言動からしても将校は高圧的だし、外の野蛮なウェイストランド人がどうとかって奴らの差別意識は尋常じゃないぜ」

 

「と言うお前だって、ジェームズ親子が来たときは毛嫌いしてたじゃないか」

 

「エンクレイヴの奴らは俺よりも毛嫌いしてただろ」

 

「そうか?普通の兵士もいたけどな」

 

二人は巡回の合間だったらしく、ハッチの開く音と同時に足音が響いて足音は遠退いていった。

 

気配が無くなった事を確認すると、入り口からするりと屈んで入り、向こう側の扉から見えないよう遮蔽物に身を隠す。

 

「あの向こうは見通しが良すぎる。行ったら蜂の巣だな」

 

もし、警備が周囲に居た場合はすぐさま発見される。Vaultの入り口から真っ直ぐ行けば、そこは入ったものを出迎える広場になっていた。二階から見渡せるそこは狙撃ポイントのひとつである。もしも、そこに機関銃を持つ警備が居れば、俺を見つけた途端蜂の巣にするだろう。何せ、黒のリコンアーマーにサイレンサー付き10mmピストルなのだ。俺でも問答無用で引き金を引くだろう。

 

「どっかに迂回できる道は・・・」

 

おれは考える。周囲を見渡してとある打開策を思い付く。

 

「まあ、これしかないか」

 

正直なところ、あまり良い作戦とは言いがたい。だが正面から行くよりはずっと良い。俺は重い足取りでその作戦に取りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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長い間歴代監督官が使用する執務机で書類に私の名前を書き記す。その書類はVaultに必要な合成食物生成機の稼働報告や廃棄する機械等が記載されていた。

 

二百年という物は三世代から四世代、もしくは五世代にわたる。機械も彼らと生活を共にすることによって経年劣化して壊れていく。多くはそれに抗うことは出来ない。壊れたものは出来る限り修理していかなければならない。壊れてしまえば、解体して使える部品は保管する。または工房で似たような部品を製造しなければならない。

 

長きに渡って使われ続けた監督官の机は丁寧に使っても、無数の傷が残る。書類にサインを終えると、書類を待つセキュリティーにサインを書いた書類を渡した。

 

「これを工房にお願い。それと、厨房から何か差し入れを外のエンクレイヴの人にお願い。疲れているでしょうし」

 

「了解です、監督官」

 

セキュリティはそう言うと、書類を脇に挟んで部屋を出ていく。私は一息着こうと、テーブルのコーヒーに手を出すが、扉がノックされる。飲んでから返事をしようと思ったが、間を入れずにノックをしてきたので、ため息をついて返事をした。

 

「ええ、どうぞ」

 

若干苛立ちの混ざっていた声を出した私は視線を扉に向けた。出てきたのは若いエンクレイヴの将校だった。佐官用のコートを着た彼は見た目からすれば良い顔立ちなのだが、掛けている眼鏡で台無しだった。例えてしまえば、何処のマッドサイエンティストの眼鏡なのだろうと。

 

「スタッカート少佐、どうされました?」

 

その少佐はエンクレイヴの技術局にいた技術将校と名乗っていた。彼はう~んと唸りながら、私の方へと近づいていった。

 

「君の知り合いのユウキ・ゴメスという人物の部屋を見たいのだが?」

 

「・・・ええ、構いませんよ」

 

ユウキ・ゴメス。元Vaultセキュリティの一人で重火器の取り扱いに長けた友人だった。友人以上かもしれない。彼に助けられた事は多くあり、何れは警備長になる彼は私の仕事を手伝ってくれると胸を踊らせていた。

 

だけど、ジェームズさんによるここからの脱出と同時に起きたラッドローチの襲来でVaultは混乱に包まれた。ジェームズの娘である、シャルロットもラッドローチを解放した実行犯として追われ、最後はユウキと共にVaultから脱出することになった。私が思い描いていた未来は立ち消え、私もシャルを手伝ったために監督官補佐から外された。

 

その後、Vaultは内乱が起きて、監督官率いる保守派とVaultを外へ解放しようとする解放派に別れて争いの限りを尽くした。元より監督官の絶対的な力によって抑圧していた均衡が混乱によって一気に崩れ去り、住民の不満が爆発したのだ。

 

そんなこともあり、何時もなら必要なくなった品々は売り出されたりするものの、混乱の最中だったために彼が出てってそのままになっている。

 

「これが鍵ですが、中の物を持っていくなら。申し出てください。」

 

「コンピューターデータのコピー位なら良いだろう」

 

「構いませんが、あまり荒らさないでください。オフィサー・ゴメスが管理していますから」

 

彼が居なくなってから数日後、数名の住人が彼の部屋に侵入しようとしたらしく、近くにいたオフィサー・ゴメスが取り押さえた。彼らの言い分としては持ち主が居なくなったのだから、Vault住民が貰っても良いじゃないかと。このVaultでは、死んだ住民の物品は遺族に受け継がれる。大抵は配給券などと交換するのが普通だが、ジェームズ達が去った部屋の物品は騒動が終わった後に荒らされた。同じく、出ていったユウキも同じように荒らしても良いのだろうと思ったようだ。だがオフィサー・ゴメスは受け入れる筈もなく、彼の部屋を守るためにアサルトライフルまで持ち出す始末だった。

 

 

しかし、彼がそれを持ち出した理由は単に息子の持ち物を守りたいのではなかった。既にVaultの治安は悪くなっていて盗みを働く者もいる。更には暴力事件や殺人未遂まで。セキュリティーの数も少なく、元セキュリティーの家に盗みに入るのは、無政府状態を意味している。それを防ぐため、彼は銃を取った。

 

 

内乱も佳境を迎え、保守派の重武装なセキュリティーと若者の多い解放派がぶつかり合おうとするとき、突如Vaultの隔壁扉が開いた。そこにはエンクレイヴと自称するアメリカ合衆国政府と名乗る兵士達だった。そして、彼らの指揮官はこう告げた『助けに来た』と。

 

 

内乱はエンクレイヴの登場により沈静化した。解放派の私達はエンクレイヴという組織を最初は怪しんだものの、直ぐに誤解は解けた。礼儀正しく、昔の映画に出てくるような兵士達。浄化チップを修理し、負傷した人物を軍医が治療していく。瞬く間に治安は良くなった。そして、監督官である父は私に監督官を譲った。Vaultの未来を危うくさせた責任を取り、辞任。私に監督官の職を譲ると部屋に籠ってしまった。治安を悪化させ、Vaultを二つに引き裂いてしまった事もある。私は父の後を引き継ぐと、Vaultを元に戻すよう尽力した。

 

 

「物は幾つか持って行くが返すつもりさ。それと、後で秘書官が来ると思う。重要な書類だからしっかりと目を通しておいてくれ」

 

スタッカート少佐は微笑むと、軽い足取りでスタスタと出ていった。彼は将校と言うよりも、技術者に近いのではと思ってしまう。彼のような人物は一人知っている。彼もセキュリティーという職に付いていながら、色々な技術を収得していた。

 

彼はここにはいない。

 

ふと、私は依然皆で取った写真を思い出した。それは確かメタルボックスに入っていて、私は席を立ってすぐ近くの配電盤の下に置いたメタルボックスを開けた。

 

そこには思い出の品々が収まっていた。Vaultスクールの成績表や雑誌、そして幾つもの写真だった。その中でも一番のお気に入りだったのが、G.O.A.Tを終えて学校を卒業した時の写真だった。

 

そこにはまだ若い私と友人達の姿があった。私はテスト前にブッチ達に絡まれていた。今は解放派の一員として頑張ってくれた節があるけれど、あの時は嫌いだった。そこにユウキとシャルロットが通りかかり助けてくれた。私はその嬉しさにユウキに抱き付いていた。今思えば、赤面ものだけれど、あの時の事は忘れたことはない。

 

どの程度、経ったのか。私は他の写真を見ようと手を伸ばすと、後ろから機械音が響く。それはチェーンやギアが動く音で私は突然の事で驚いた。

 

「え、一体・・・・・!」

 

後ろにあった監督官の机は変形していく。机全体が動き、下からは

地下に通じる階段が見えた。

 

それは父に教えられていたVaultのエントランスに繋がる入口だった。

 

しかし、それが稼働するところを私は見たことがない。まさかと思い、私はじっと待った。ゆっくりと現れた黒い人影。それはVaultではお目にかかれない軍用の偵察アーマーに身を包んだ人物だった。私はその人を知っていた。

 

 

「ユウキ・・・!」

 


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