fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

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一応、最後まで結末は決まっていますが、今考えただけでもすごい終わり方になりそうです(笑)




二十三話 国立図書館

 

 

 

「ライナーとベルクマンは上の窓から見張っていろ。所詮、奴等はレイダーだ。手加減するな」

 

 

「Yes,sir.」

 

 

「第一分隊は前進してレイダーを掃討する。第二分隊はスクライブを守るように」

 

 

Brotherfoot of steelの戦闘指揮官であるパラディンは小隊のナイトとイニシエイトに命令をする。彼らが着るT45dパワーアーマーの肩には鋼鉄の歯車に剣を添えたマークがあった。命令された兵士達はテキパキと武器を調整し、戦場に行く準備をしだす。手には品質のよいアサルトライフルやコンバットショットガン、中にはモスバーグのポンプアクションショットガンや伸縮銃床に切り詰めた銃身のアサルトライフルCQB仕様を持っている兵士すらいる。それは、俺が売り込んだ兵器であった。

 

「君が来てくれて助かったわ。この頃、補給が無くて困ってたの」

 

スクライブ・ヤーリングと名乗ったローブを着た彼女は俺の腕の傷口を見ている。

 

シャルは清潔そうな部屋に移動してアリシアの手術をしている。手間の掛かる手術らしく、難航しているらしい。そのため、一応処置が出来る彼女が俺の傷口を見ているのだ。

 

「まあ、あんまり儲けになんのかな~・・・」

 

車が攻撃され、助けを呼ぶためにジェームズはBOSに反感を食うことを躊躇わず、図書館に踏み入れた。そこまでは良かったものの、入った途端、拘束。レイダーと勘違いしたようだが、浄化プロジェクトの責任者と知られて立場が一気に悪化する。20年前と言えど、分裂の起きた原因でもあるそれの責任者であることは古参のスクライブやパラディン、入ったばかりのイニシエイトでさえ不快に思わせた。ジェームズは俺が武器商人であることを知らせた。補給の目処のたたない彼らは考える。ここで見殺しにした後で残した物資を使えば良いのではないかと。それを予見したジェームズはとびきりのカードを切った。俺の母親、ナイト・ツバキの事である。結論から言えば、俺はBOSに入れる資格がある。それを伝えたのだ。

 

BOSは戦闘に特化した集団ではあるものの、食料生産や武器の新規製造などにはNCRなどの国家に遅れを取っている。それらは商人を通じて買ったり、生前の軍用糧食で賄う他ない。商人をこちら側に入れることはBOSの優先事項である。しかし、小規模な商人は当てにならず、カンタベリーコモンズ等の大規模な商社では足元を見られる。よって新興勢力で尚且つ信用できる人材が必要であった。しかし、BOSは元々閉鎖的な武装集団であり、レーザーライフルとパワーアーマーという姿は商人を入れる障害となっていた。スリードッグが友好的な放送によってイメージ改善が図られるが、しばしばoutcastの行動によって阻害される。その為、BOSに血縁的に関わりのある俺を引き入れれば、様々な事が可能になると踏んだようだ。

 

「これからBOSと取引出来るのだから、かなりの儲けになるんじゃない?」

 

「じゃあ、助けた代わりに割安で提供しろって言われるとね~」

 

スクライブ・ヤーリングはそこの所、抜け目のない人物である。俺達を助けて場所を作ってやったのだから武器を格安で提供しろと言ってきたのだ。それに応じなければ、図書館の外にほっぽり出される。言葉の裏には「応じなければ身ぐるみ剥がす」という意志が見え隠れしていたので頭を縦にするしか方法無かった。つーか、BOSがこんなことやっていいのかよ・・・。

 

「補給が先週から来ないのよ。普通ならそこに弾薬箱が積み上げられていたけど、困ったものよ」

 

ヤーリングは溜め息を吐き、ピンセットを銃創に差し込んだ。

 

「~~~~~!!」

 

「あともうちょいだから!」

 

傷口にピンセットを突っ込むのは辛い。殺菌消毒したピンセットであるものの、グリグリとねじ込まれるのは激痛だ。モルパインは節約のためにこの程度は打たなくても良いとヤーリングは言ったのだから、彼女の性格はあまりよくない・・・絶対良くない!

 

「よし!取れた!」

 

金属製の皿にはライフル弾の破片と思われる弾が転がる。

 

「痛てぇ~・・・」

 

「男の子でしょ。少しは我慢」

 

スティムパックを患部に射す。スティムパックに入っていたナノマシンによって血小板や皮膚そのものが形作られる。熱を帯びていた銃創は薄くアザのような色となった。

 

「それにしてもスティムパックってすげー」

 

医者要らずになるくらいの性能に俺は毎度の事ながら感心する。

 

「でも、私が感心するのはあの車よ」

 

「あれですか?」

 

ヤーリングは頷く。スティムパックよりも稼働する自動車なんて早々お目に掛からない。スティムパックの製造は今のところ出来てはいないが、西海岸では似たような効能を持つ物を掛け合わせてスティムパックを作っているようだ。BOSも医療分野も開拓はしているが、やはり軍事に優先順位が傾いている。自動車は軍事に深く結び付きやすいのでヤーリングがそこに食いつくのは仕方がない。

 

「あれは何処で手に入れたの?」

 

「自動車修理工場ですけど。あれは何て言うか、修理工達の力を合わせて作った物と言って良いのかな?」

 

「誰かに作って貰ったの?」

 

俺はあのピックアップトラックについて説明した。工場に訪れたスカベンジャー達が長年修理し、俺が最後に放置されていたエンジン駆動を直して動くようにしてしまった。俺の力で全てを築き上げたとは言えない。これを作り掛けた人達は死んだり、何処かに居るのかもしれないが、もし会えるとしたら会ってみたいと思った。

 

「へぇ・・・あれは修理可能?」

 

「いや、無理でしょ。実際エンジンが無傷で残ってたことが奇跡だし。キーを回した途端にメルトダウンなんて嫌だ」

 

2060年代、ガソリンが地上から殆んど無くなり核動力の自動車が発売された。値段は張るものの、人々はそれらを新たなる足として活用した。その核動力エンジンを作るには幾つもの障害があった。核分裂反応を出来るだけ押さえる必要があるし、一般人が使えるように簡略化、自動化が為される必要があった。自動車事故を起こした場合、それらは放射能を垂れ流す恐れもあるため防御するための策が必要となる。燃料棒が露出しないようにする技術など様々な技術が施され、また容器が破損したり歪みが生じた場合は稼働しないように安全装置が組み込まれるなど様々な防護策が施された。だから、今回トラックに積んでいたエンジンはオシャカ。無理してメルトダウン何て御免だ。

 

だが、トラックに積んでいるようなエンジンが何処かにあるとは思えない。そして、代替エンジンとなる物は思い付かない。

 

すると、ヤーリングはあることを疑問に思ったのか口を開く。

 

「なら、動力を変えればいいじゃない」

 

それは何処かの王女が庶民に対して「パンが無ければケーキを」と言うような荒唐無稽な台詞だった。

 

「んな動力を変えるったって・・・。元々こいつは電気駆動だからガスタービンにしてみても一から作り直す必要がある。そしたら何年掛かることか。」

 

「これを使ってみたら?」

 

ふとヤーリングは腰のポーチから手榴弾大の大きさの物を投げ渡す。手のひらに収まるそれはレーザーライフルやプラズマライフルに使われるマイクロフュージョンセルだった。中身は水素を使用する核融合バッテリーで、高出力なレーザーライフルにはうってつけの燃料電池だ。少々弄ることで手榴弾を作ることが可能だが、作るには金額的に余裕がないと作る事は不可能だ。

 

「そうか、核融合セルなら下手に巨大な核分裂エンジンを積まなくても良いわけか・・・・。レーザーライフルの機関部分を改造して動力にしてしまえば何とかなるけど、俺にそのスキルはない」

 

一応言えば俺の能力は銃器の取り扱いに長けているし、整備や改造もドンとこい。だが、光学兵器になると話は別だ。整備は出来るものの、改造や一部品を取り出して他の物に作り替えるのは無理なのだ。

 

「シャルに・・・いや、アイツは医療専門だから無理か・・・」

 

車が攻撃を受けてから全ては決まっていた。もう、風を切る感覚や荒野を爆走することは出来ないのだ。だが、目の前にいるヤーリングが厭らしく笑みを浮かべていた。

 

「そんな簡単に諦めるんだ。私と取引しない?」

 

「取引?どんな取引だ?」

 

そう言うと、ヤーリングは笑みを更に浮かべる。彼女の目に宿っているのは歓喜とは呼べない、凄腕の商人の目であろうか、それとも獲物を見つけた野獣の目だろうか。俺は彼女の真意に気付かず、そのまま彼女の話を聞くことになったのだった。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

「・・・・で、どうしてこうなった・・?」

 

俺はそう呟いた。そこは図書館のエントランスフロアから少し離れた通路。そこにはT49dパワーアーマーを着たBOS兵士が突入の合図を待つ。指揮官の持つ武器が不調らしく、一度エントランスに戻っているため、兵士達は待ちぼうけを食らっていた。

 

俺は何時も着ていたVault重装アーマーは着ていない。先の戦闘でかなり被弾し、ボロボロになったためだ。一応、MODであった濃紺のCIRASベストをVaultスーツの上から身に纏い、プロテクターにSCAR-Hを持っている。室内戦闘であるためショットガンを使いたいところだが、余っている弾薬を先に使った方が良いだろうとショットガンは諦めたのだ。

 

「仕方がない。スクライブ・ヤーリングは左遷された悲しいお方。戦闘車両を作ろうとして左遷されたからな」

 

「戦闘車両をか?」

 

しかし、不思議なことではない。かのNewvegasのNCRでさえ輸送用に軍用トラックを使用している。ゲーム中には走行するのは見なかったが、補給線には多くのトラックが活用されているのだ。西海岸のBOSも幾つか車両を所有しているらしいが、東海岸では全くない。その何もない地域に車両を走らせれば、かなりの軍事的優位を保てるのだ。ヤーリングの気持ちや考えは理解できる。

 

「まあ、生産ラインを作るにはあと30年掛かるらしい。今のBOSには人員も資材もキャップも足りないからな。ヤーリングは諦めずに放棄された軍用車両を使おうとしたが、修理にしたって金が掛かる。ヤーリングは司令部と揉めて左遷だ」

 

そうBOSの内情を詳しく語る隣にいたアフリカ系のBOS隊員は持っていた綺麗な水を一口飲んだ。

 

「なんでそんな情報を教えてくれるんだ?」

 

「だってお前もBOSになれるんだろ?仲間とは親しくしなくちゃな。俺はナイト・ジャクソン、ヨロシクな」

 

ジャクソンはパワーアーマーの手で握手を求める。俺はそれに応じ、握手をした。

 

「ユウキ・ゴメスだ。母親がナイトだからって強制じゃないんだろ?」

 

「まあ、強制じゃないし辞めることも出来る。だけどお前はBOSの状況を知っているだろ?」

 

ジャクソンは坊主頭の頭をポリポリと掻く。

 

BOSは人員の不足、弾薬や武器、装備の何もかもが不足している。唯一、T49dパワーアーマーが腐るほどあったために着る分は不足しないが、熟練な隊員がOutcastに渡ってから慢性的な人手不足に悩まされている。また、閉鎖的な組織故に新規の入隊は行っていない。今のリオンズ傘下のBOSは人員不足を補うために新規入隊を行っているが、それ則ち練度が低下することとなる。来年かそれとも一週間後か分からないが、BOSは崩壊するかもしれない危機に瀕していた。

 

「だけど、新興したBOSと繋がりのある武器商人を擁してもあんまり変わらん気もしないではないが」

 

「そんな考えは駄目だ。“塵と積もれば山となる”。日々蓄積された物が今後の人類に良い影響になるかも知れないんだから」

 

ジャクソンは持っていたパワーアーマーヘルメットを被り、内蔵されたHUDの調整を行う。持っていたレーザーライフルにセルを装填し、チャージ音が響いた。

 

「と言うか、ジャクソンは幾つだよ」

 

「ん?今年で18だ」

 

「げっ!」

 

俺の身長はウェイストランドでは一般的な背丈である。筋肉質であるかと言えば必要最低限の物があると言えよう。だが、ジャクソンは黒色人種なのか、背丈もウェイストランドでは高い部類に入り、体格はパワーアーマーが着られるギリギリの体格であり、筋肉質であることが分かる。そんな彼が俺よりも年下であったのだ。

 

「ハッハッハ、そうさ俺は黄色人種~。体格に敵うわけないしな~・・・」

 

「だ、大丈夫かユウキ・・・」

 

何でショックを受けているのか良く分からないジャクソンは慰め方に困る。ウェイストランドではそんなこと気にする余裕はないのだから。

 

そんな会話をしていると、一人のパラディンが通路に入ってきた。彼はこの分隊の指揮官であるが、装備していたレーザーライフルが不調で、俺が売ったモスバーグ590を使っていた。

 

「attention!(傾注)」

 

一人のナイトが言い、雑談をしていた兵士は直ぐ様静かになった。

 

「皆、済まない。これより掃討作戦を開始する。相手はレイダーだが舐めて掛かるな。薬で痛覚が麻痺しているからな、頭を狙え。間違ってもパワーアーマーの装甲を過信するんじゃないぞ。ダニエルと私、後の5名は中央口から蔵書エリアに侵入する。ロジャーとジャクソンの班は二階の踊り場から入れ。敵の注意を引き付ける間に踊り場の敵を殲滅しろ。それと、技術者として助けた武器商人を連れていく。連携を密に保て」

 

交換条件として出されたのは「技術者として戦闘に加われ」という彼女の提案だった。この図書館には蔵書のデータを丸々納めたパソコンがある。そのデータのコピーが欲しいのだ。問題なのは置いてある場所がレイダーのテリトリーであること。データデバイスを持っているのはスクライブ位な物でナイトやパラディンには任せられない。なら、スクライブと似たようなデバイスを持つ俺に白羽の矢がたった。

 

パラディンは中央口から入るため、急いで通路の近くで突入体制を取って周囲も戦闘準備を整える。ナイト・ロジャーと呼ばれた兵士は残りの兵士と俺を引き連れ階段を上がって突入準備を取った。

 

「ダニエル、スタンを!」

 

パラディンはダニエルと呼んだ兵士から手榴弾を受けとる。それは、敵の聴覚と視覚を奪う閃光手榴弾だった。

 

パラディンは扉を開けると、ピンを抜いてレイダーのいる場所へ投げ入れた。レイダーは扉から投げられた手榴弾に気付くものの、大して警戒はしなかった。どうせ、薬がキレて幻覚が見え始めたのだろうと。だが、投げられたのはピンの抜かれた閃光手榴弾。それは爆発し、100万カンデラ以上の閃光と200デシベルもの爆音が響き渡る。レイダーはそれに聴覚と視覚を一時的に奪われ、その隙にBOSの兵士達が突入し、ふらつくレイダーやパニックを起こす奴等に鉛玉を喰らわせていく。

 

「俺達も行くぞ!」

 

ナイト・ロジャーは持っていたアサルトライフルCQB仕様を片手にボロボロになっていた木製の扉を蹴破った。200年の歳月を経ていた扉はいとも簡単に破壊され、破片が周囲に散乱する。パワーアーマーを装備していた兵士達は踊り場に突入すると、洗練された動きでレイダーを掃討していく。

 

「12時方向に、レイダー3!」

 

「ラジャー!」

 

「リロード!」

 

「カバーする!」

 

互いに声を掛け合いつつ、システマチックに戦闘を行う彼らは殺人兵器と呼んでも過言ではない。SCARのマグファイアを下ろし、ホロサイトの倍率を上げて引き金を引く。発射された308口径弾はレイダーの頭に命中し、周囲に脳奬を撒き散らす。

 

「Good kill!」

 

近くにいた兵士は叫び、付近にいたレイダーに散弾を食らわせる。既にここにいるレイダーの大半は死ぬか息絶え絶えで床に倒れているかのどちらか。レイダーの一人が一階で10mmマシンガンを無茶苦茶に乱射するが、一階の兵士と踊り場にいた兵士達からの集中攻撃で倒れ、戦闘は終了する。

 

「踊り場クリア!」

 

「一階もクリアだ!これより隣のフロアを制圧する。二手に別れるそっちは二階の通路から移動しろ。ロジャーは班を指揮するんだ」

 

「了解、じゃあ行くぞ」

 

階段を見つけ、互いの死角を埋めながらクリアリングを行う。

 

「ユウキ、中々上手いじゃない」

 

「これでもセキュリティー崩れ。これ位こなせないとな」

 

とは言うものの、こんな集団の近接戦闘の経験はないし、一回だけVault時代に父と何人かの隊員で突入訓練をしたことがあるだけだ。Vaultのデータバンクに入っていた「警察育成訓練過程」のホロテープを参考にしてやったが、直ぐに監督官に止められた。治安もそんなに悪くないのに犯人が銃を持ったことを想定して訓練しても、市民が銃を持つことはないと断言して辞めさせられたのだ。あの頃を思えば、なまっちょろい訓練だったと思う。

 

ギリギリ、クリアリングに付いていき、階段を登ろうとした時、先頭の兵士の足が止まる。右腕の拳が握られ、“待機”の合図が送られる。

 

「地雷だ。ケルヴィン、解除しろ」

 

ケルヴィンと呼ばれた兵士は素早く地雷に手を伸ばし、解除ボタンを押す。地雷は踏んで爆発するタイプではなく、遅延式近接センサー型地雷だったため、解除の手順を間違えなければ簡単に解除が可能なのだ。

 

ベアトラップも見つけ、周囲に転がっていたブリキ缶で反応させて無力化していく。ブーケ型のグレネードトラップもあったので、それも慎重に解除していく。

 

「レイダーがここまで仕掛けるとはな。油断するなよ」

 

ナイト・ロジャーがそう言うと、ケルヴィンを先頭に進ませると階段が終わり左には通路が見えた。

 

「自分が廊下を・・・・ってわ!」

 

裏声とおぼしき高い声が廊下と階段に響く。見てみると、廊下の奥から野球ボール射出機が設置され、ケルヴィンのヘルメットに野球ボールが命中する。

 

「ケルヴィン!たかが硬式野球の玉だろ!機械に銃弾撃ち込めば壊れる!」

 

「ですけど!あ、視界が!」

 

ケルヴィンは銃を構えようにも野球の玉に遮られ、銃本体に命中して射線が安定しない。しかも、視界が何らかの理由で見えずらくなれば戦闘に支障する。そしてパワーアーマーに当たって階段にまで玉が飛んでくる始末だった。

 

「くそ、全隊集中攻撃!目標、野球ボール発射機」

 

ジャクソンやロジャーの二人は階段から出て身をさらし、持っていたライフルを発射機に向けて引き金を引いた。本来ならそれはバッティングセンターにでも納入されていただろうが、あろうことか図書館の通路に設置されて完全武装の兵士達を困らせているのだから、戦前これを組み立てた人達は驚くに違いない。火を吹き、機械は動きを止めてロジャーは射撃中止を命令する。

 

「ケルヴィン、大丈夫か?」

 

「身体に不調はありません。しかし、視界に歪みが生じています。多分、外側のレンズが割れているかと」

 

パワーアーマーのヘルメットは外側からはどうも視界が悪いように思えるが、実際のところ内部の視界はそれほど狭いわけではない。重機関銃の攻撃の中でも立っていられる能力はあるが、視界を遮れば攻撃能力は下がってしまう。それに、200年も経った現在では説明書通りの能力は発揮できないだろう。

 

「ケルヴィンは道を辿ってエントランスで休んでいろ」

 

「後で修理するから。」

 

「頼むな」

 

ケルヴィンはアサルトライフルを肩に掛けて階段を下っていく。残るは指揮をとるナイト・ロジャーとジャクソン。そして数名のイニシエイトと俺だ。先頭をジャクソンと俺にして進む。通路を道なりに進むと、壊れたトイレからジェットをキメたレイダーが姿を現した。

 

「コンタクト!」

 

俺は叫ぶと、ホロサイトの点をレイダーの身体に合わせて引き金を引いた。308口径弾が発射され、レイダーの左胸を貫いた。ライフル弾は威力が強く、その強力な運動量でレイダーは吹き飛ばされる。

 

「兄弟のために!」

 

ナイト・ロジャーが叫び、通路に飛び出すレイダーを撃ち抜いていく。レイダーが籠っている部屋の壁に張り付き、腰に付けている閃光手榴弾に手を掛ける。

 

「野郎共、あのブリキの張りぼてを片付けろ!」

 

「誰がぁ張りぼてだ!このヤク中共が!」

 

何が堪に障ったのか、ナイト・ロジャーは青筋を立てているように怒鳴り声を挙げる。それに返答するかのように銃撃が壁に命中する。

 

「ユウキ、フラッシュバンを!」

 

「ラジャー!レイダー共、BOSからのプレゼントだ!」

 

ピンを引き抜き、ドアへと投げ入れる。閃光手榴弾はバリケードの机にぶつかりバウンドし、空中で炸裂した一時的でも失明し、三半規管が狂いパニックを起こす。直後にパワーアーマーを着た彼らがアサルトライフルを撃ち、レイダーを殺していく。

 

「クリア!・・・おっと。」

 

ジャクソンは部屋の安全を確認するが、机の下で踞る女レイダーを見つけ銃を構える。

 

「助けてくれよ、あたいは死にたくない!」

 

薄汚れたレイダーアーマーにヤク中で顔色が悪いソフトモヒカンの赤い髪の女は手を合わせて懇願する。

 

ジャクソンは無言のまま銃を構えていた。

 

「あたいは無理やり奴等に・・・。だから見逃してくれよぉ!」

 

目から涙を流して懇願する彼女はジャクソンに抱きつかんばかりのように、ジャクソンに泣きつく。

 

「じゃあ、貴様に殺された人間が同じように言っても・・・・お前はそいつを助けるのか?」

 

「・・・!」

 

レイダーは目を見開く。ジャクソンは直ぐ様レーザーライフルを放ち、レイダーの眉間に赤い光線が突き刺さった。

 

「普通なら“シネェ!”とか言って襲いかかるレイダーをジャクソンが撃つんだけど」

 

「バカ、そんな悠長な事したら怪我するわ」

 

ジャクソンは女レイダーの手のひらに納められた破片手榴弾を拾い上げる。ロジャーはヘルメットの中で口笛を吹き、俺はジャクソンが若いが、この中で一番勘が鋭いことが分かった。

 

「所謂、カミカゼ・チャージって奴か?」

 

「レイダーは人のために特攻しない。神風特攻隊は家族や国を守るために散ったんだ。あれはただの道連れって奴だよ」

 

俺はそう言い、まだ息があるレイダーの頭に引き金を引いて絶命させる。

 

「ここはクリアだ。次へ移動する、ジャクソンが先頭だ。・・・イニシエイトは怪我無いな?」

 

「イニシエイト・スコット、異常無しです」

 

「右に同じです」

 

ヘルメットで見えないが、二人のイニシエイトは無事だと言っている。ロジャーは二人を確かめると、指示を飛ばして次のエリアに移動する。

 

 

「シャルは大丈夫かな?」

 

彼処にはスクライブや護衛の兵士が付いている。負傷はしているものの、ジェームズのおっさんも居るし何とかなる。問題は重傷を負ったアリシアだろう。今のままでは、護衛の仕事は無理だし、リベットシティーに預けることはこの前の事件でそれも無理だ。

 

「帰ったら全員で相談するか・・・」

 

と俺は結論を後回しにしてジャクソン達と次のエリアへと向かった。

 

 

 




次の話は近日中に公開予定。

明日か明後日には投稿できればいいかな?

次の話はいろいろと伏線(謎)を残しつつも、笑いネタを入れた。(笑えるかな?)

そして、BOS兵士達の悩みをお読みください(笑)

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