fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

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まずはお詫び!
七月末に投稿しようとしていた矢先、大学の試験が重なったため急遽八月に延期しました。その後、夏休みはバイトがあったり、サークルでなんか色々あったり、サバゲーしたりとENJOYしました。
・・・・要するにPCに向かおうとする気力・・・意欲がなかったんです。

申し訳ないです・・・・。

九月末には必ず投稿するのでよろしくお願いしますWWW

※前の話の流れを若干変えました。以前、九月前に話を見ていた方は前の話をご覧ください


十九話 ジェファーソン記念館

 

 

 

 

「ん・・・・?」

 

知らない天井だ。

 

テンプレ的な落ちを期待しているかもしれないが、本当に知らない天井を見ているのだから仕方がない。材質は金属であり、所々補強されている。そして、隣の部屋から響いてくる人の声や子供の笑い声が聞こえることから、場所は極端に限られる。

 

「すーっ・・・すーっ・・・」

 

誰かの寝息が聞こえ、首を捻ってその方向を見た。そこにはベットの隅に上半身を乗せたシャルの姿があった。ダークブラウンの髪が顔にかかっているのをどかし、ウェイストランドの基準では考えられないような容姿を堪能する。ふと、俺は起きる前に何をしていたのかを考え、医務室での乱闘を思い出した。

 

 

 

 

 

「あ、ってことは俺は助かったのか・・・・」

 

傭兵の軍隊格闘術に負けて、あと一歩で殺されるところだった。俺は多分、首を絞められて気絶させられたにちがいない。で、俺は何処かの部屋で介抱されたわけか。

 

俺はベットから出ると、変な体勢で寝ているシャルを所謂お姫様抱っこを行ってベットに寝かす。「ユウキ・・・むにゃむにゃ・・」と寝言をいうシャルに少しばかり驚いたが、直ぐに可愛く思えた。布団を掛けてやり、起こさないようにその場を離れた。そこは事件現場とはそう遠くないアッパーデッキの廊下で、突き当たりには黄色いテープで封鎖されていた。

 

「あら、起きたのね?」

 

声を描けてきたのは、戦前のワンピースを着た女性だった。ウェイストランドでも片手に収まるような美人と言っても良いだろう。彼女は買い出しにでも行っていたのか、手にはバケットと幾つかの食べ物が入っていた。持っているものや着ている物と言い、空母の中でなければ戦前からタイムスリップしてきたと言っても信じてしまう。

 

「えっと、貴女は・・・」

 

「まだ自己紹介はまだだったわね。私はヴェラ・ウェザリー。ブライアン・ウィルクスの叔母よ」

 

リベットシティでウェザリーホテルを経営する女主人だ。リベットシティじゃ、一二を争う美人だ。確か、父親が兄にあたるのではないだろうか。

 

「そうでしたか、自分はユウキ・ゴメス。メガトンで武器販売と製造を担っています。」

 

「あら、ガンスミスなのね。そう言えば、フラックと話していたけどそう言うことだったのね」

 

どうやら、俺とフラックの開発談話はかなり噂に成っているらしく、噂に敏感なヴェラの耳には既に情報が入っていた。その中では俺とフラックがトンでも武器を発明して、リベットシティを吹っ飛ばすというトンでもない噂もあったが、尤も達が悪いのがフラックがパラダイズフォールズに武器を売っているという情報だった。

 

「そんな噂話が?」

 

「ええ、前はそれほどでもなかったんだけど。貴方みたいな人が来てからはね?」

 

「どういうことです?」

 

俺は首を傾げた。

 

「貴方がパラダイズフォールズから来た武器商人だと言い触らしているのが居るようね。私はそれを否定して噂を流しているんだけど。一度、噂が出れば一週間は定着するわ。多分、市議会公認の武器販売業者はあの二人だけだから、他の商人が流したに違いないと思っているわ」

 

商売とは信用によって成り立つ。それは命を預ける武器を売るとなっては尚更だ。例えばウォール街の証券マンだと、ありもしない噂を流して、売りを促して、ライバル社を潰すと言うこともある。そうなれば何十億ドルの損失もあるかもしれないが、今ある問題もそれと似たような物だ。そして、それが潔白を証明しずらいものであると、損失は増大していく。

 

「でも、どうして庇ってくれるんですか?」

 

「どうしてって、それは甥を世話してくれているでしょ。そんな人が奴隷商人に武器を供給しないわよ。それに私の勘も貴方は悪人じゃないって分かるもの」

 

「勘ですか・・・。」

 

勘と言う不確かな物だけど、信じてくれているのはとても嬉しかった。

 

「そうだ。ブライアンにこれを渡しておいて」

 

そう渡してきたのは、スコープが外された44口径マグナムだった。キャピタルウェイストランドで普及しているタイプのようなシルバーモデルではなく、黒くペイントされた物だ。それを俺に渡すとヴェラは後ろのキッチンで作り置かれていたリスシチューをよそった。

 

「それは兄が使うはずだった銃よ。余り使う機会もないだろうから、ブライアンに渡して。」

 

「ええ、分かりました。」

 

俺はそれをpip-boyに仕舞うと、ヴェラからリスシチューを貰ってシャルが借りてくれた部屋へと帰った。

 

 

それから俺とシャルは少し遅い朝食を食べた。こうやら、クリニックのあと、俺は気を失ったまま夜を明けてしまったらしく、シャルは最悪の事態に備えて夜通しで備えていたらしい。それは脳溢血とかの脳外科系の外傷を想定していたらしく、俺はそれにならなくて本当によかったと思った。夜通しで俺を見守っていてくれたシャルは体力的に限界らしく、朝食を食べた後、また寝に入ってしまった。俺はまた布団を掛けると一度マーケットへと足を向けた。フラックと少し話さなければならないからだ。

 

マーケットに入ると、最初来たときと比べて人気が少ない。まあ、まだ午前中なので人が少ないのは当然だ。フラック&シュアプネルの店舗を見ると、シュアプネルが店番をしていた。

 

「誰かと思えば・・・・。フラックはここにはいない。他を当たんな」

 

「何をやるのか聞かないんですか?」

 

俺はフラックとシュアプネルの二人は仲がいいと思っていた。もしかしたら、既に聞いているかもしれないと思いもしたが、多分違うだろう。

 

「いや、興味はない。俺は会計専門で武器開発っていう金を溝に捨てるようなことは願い下げなだけだ。俺は再三辞めろと言っているんだがな、お前さんが来たお陰で奴のやる気が再燃したわけだ」

 

「(speech75%)いずれ生産しないと、石斧と弓で戦いますよ。それに俺とフラックのやることは必ず成功します。ですが、成功するためにはあんたの力が必要なんですよ」

 

「俺の力が?」

 

シュアプネルは首を傾げた。ゲームの時から俺は余り彼の事が好きではない。だけど、好き嫌いをしていたらなにも始まらない。

 

「ええ、フラックからは会計の達人で、不正収益を直ぐに見つけて問いただすと聞きました。あんたならコストを出来るだけ減らしていくことが出来る筈です。」

 

シュアプネルはそれを聞いて腕組みをして考える。問題なのは生産拠点と販売ルートの確保だが、キャピタルで影響力のあるキャラバンと取引できれば何とかなる。すると、シュアプネルは何を決心したのか、近くにあったキャビネットからウィスキーとショットグラスを取り出した。

 

「な、何をしているんです?」

 

「何、祝酒って奴だ。お前も飲め」

 

「ってことは・・・」

 

「お前の事は怪しいと思っていたが、やっぱり変な野郎だ。だが、この話は乗った」

 

二つのグラスにウィスキーを注ぎ、片方を俺に渡す。

 

「俺の酒は飲めないか?」

 

「いいや、飲むに決まってる」

 

喉に焼けるようなアルコールの匂い。こうして俺はリベットシティにおける武器関係産業に成功した。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

「え、もう一回言ってください」

 

ホテルに無事戻った俺はシャルとの食事を邪魔した警備兵の話をもう一度訊いた。

 

「クリニックで暴れたあの女が脱走したようだ。この空母の中に居るのかもしれないが、注意してくれ」

 

どうやら、リベットシティの警備状況は酷い有り様らしい。話によると、重犯罪者を入れておく独房の扉が開き、警備をしていた兵士は銃を奪われ死亡。依然、行方が分からない。独房などがある営倉エリアは厳重な警備体制だったはずだが、それが突破されたとなると、リベットシティの警備は腑抜け揃いか犯人が凄腕なのか。それか両方なのかもしれない。

 

報告をしてきた警備兵は用事を済ませると、急いで部屋を出ていった。独房を脱走するなんて早々無いことだろう。通路を出てみると二人一組の警備兵が部屋を一つづつ調べている。練度は低いと言えば低いが、警察機構としては機能している。だが、俺達は当事者で、相手のネジが外れている場合、俺たちの命は危うい。ネジがない時点で独房の脱出は難しいが、稀になくても出来るヤバい野郎は存在するだろう。

 

「ジェファーソン記念館に急ごう」

 

シャルは荷物を纏め、俺も急いで荷物を纏めに掛かる。補給物資は昨日買ったので装備品は大丈夫だった。ただ・・・

 

「ジェファーソン記念館はミュータントの巣窟なんだよな~・・大丈夫かな?」

 

「大丈夫でしょ。行こう」

 

シャルはVaultアーマードスーツにハークネスから貰ったA3-21プラズマライフル。俺はVault改良アーマーにアサルトライフルR.I.S.改造仕様とスナイパーライフル。

 

部屋を出て、ヴェラに鍵を返してホテルを後にする。捜索中の警備兵が俺達の装備を見て、目を見開いていたが気にしない。マーケットに一度行き、フラック達にお別れを言うと、「死ぬんじゃないぞ」とエールを送られた。餞別として幾つかの弾薬とヌカランチャーの弾頭を2つ貰った。何に使うと戸惑ったが、仕方なくpip-boyに納めた。

 

ゲイリーズ・ギャレーで少しだけ食糧を買い、リベットシティを出た。水蜜扉を開けて、リベットシティの橋をわたり終えようとする時、ふとシャルの足が止まる。

 

「どうした?」

 

「なんか懐かしいような感じがする」

 

「ん?赤ん坊の時に連れてこられたんじゃないか?」

 

俺がそんな事を言うと、シャルは首をふる。

 

「違うの、そうじゃなくて。こっちの外の方が懐かしいと思えちゃった」

 

荒んだウェイストランドの空気。1分に一回、市街地に居れば聞こえる銃声。リベットシティでは鉄の壁がいつもあり、考えてみればVaultと似たような感じだったが、入った瞬間息苦しさを覚えた。何て狭いところに住んでいるんだと。

 

「ああ、まだ2日3日しか経ってないけどな」

 

俺はそう言って再び歩み始める。Vaultに出てからどの位経ったのか。いずれにせよ、今まで生き残れていると言うことは、このウェイストランドの環境に適応していると言うことだ。これまで生き残り、シャルと苦楽を共にしてきた。そして、ウェイストランドの生活の楽しさを知ってしまった。

 

楽しさとはその名の通り、この世界で生き残ると言うことが楽しい。生死を掛けて、都市や地下鉄を探索したり、レイダーやミュータントとの銃撃戦。戦いは常にアドレナリンを分泌させ、生き残ることに達成感を抱く。それはスカベンジャーのように冒険そのものが楽しくなっていた。すでにそれは病気の類い、Vaultで異端者扱いとなっていた原因はそれだからだろう。既に皆気付いていたんだ、外は普通じゃないって。

 

リベットシティはキャピタル・ウェイストランドで人類最後の砦と言っても良い。だが、旧世界に染まったその場所は、俺にとって窮屈の何者でもない。

 

 

瓦礫の山と化した道路を歩き、例の女傭兵を助けた場所を横切って目的地を目指した。

 

 

「あれがジェファーソン記念館か。」

 

アメリカ第三代大統領トーマス・ジェファーソンを記念して作られた施設。ワシントンD.C.で就任演説を始めて行った一人で、アメリカの歴史の中で偉大な人物の中の一人と言われるほどである。2060年代に大改修が行われ、外からだと大統領の銅像が見えないが、中には様々な展示物がある。しかし、それは殆んど無いだろうと思った。

 

幾つかのパイプラインがジェファーソン記念館にあり、最近になって作られた金属製の橋。そして放棄された陣地。元々、パトロンであったのはBrotherfoot of steelであったため、スーパーミュータントから守るための施設もあった。

 

「ヤバイな、プルート4体にマスター3体・・・加えてケンタウロスか。詰んだね」

 

ジェファーソン記念館に近いコンクリートブロックからスナイパーライフルのスコープを覗く。レイダーなら後ろから接近して首をかっ切れば全員殺せる自信はある。だが、スーパーミュータントとなると、話は別だ。まず、ナイフが使えないし、銃弾も徹甲弾しか効き目がない。それ以前の問題で、徹甲弾の弾数が欠乏状態なのも理由の一つとしてある。だから・・・・・詰んだのである。

 

「どうにか出来ない?」

 

「どうにかって・・・・どうやるんだよ?」

 

pip-boyに入った武器を見ても、打開策は見つからない。力任せに突撃してもゲームのように勝つことはない。やっても、ミュータントの晩飯になるかならないか。そして、中国軍ステルスアーマーを使って後ろから撃っても無理だ。

 

「今さら戻るわけにも・・・・・あ!」

 

俺は良い方法を思い付き、声を挙げる。だが、この作戦は以外と難しい。

 

「どうしたの?」

 

「仕方ない。いっちょやるしかないか。」

 

シャルは頭に?を浮かべそうな表情をする。しかし、俺がその方法をシャルに伝えると、当然の如く怒ったのであった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「おい、ステファン。奴はまだ来ねぇのかよ」

 

「五月蝿いぞ、エド。そこで待っていろよ」

 

俺は中華アサルトライフルを肩に掛けて、右手の双眼鏡で周囲を見渡す。カモは見当たらず、此方にくる様子もない。

 

エドは持っていた愛用のコンバットショットガンを弄くりまわし、隣の無口なバーノンは中国軍将校が使用する剣を磨いている。

 

つい最近になってタロンの傭兵共がメトロの中に入ってきたので、カモの死体を餌に食わせていたフェラルを解き放ち、タロンに一泡吹かせた。フェラルごときでタロンの傭兵は死ぬことはないが、注意を削ぐことには成功した。ボルトアクションライフルや中国軍ピストルを撃ち、瞬く間に奴等は死んだ。フェラルは一匹も生き残っちゃいなかったが、タロンの持つ高性能な武器だけは手に入れられた。

 

そして、ここに入ろうとする商人を狙おうとしているが、早々こっちに来ることはない。

 

「あーヤりてぇーなー」

 

「エド、お前フィナを盾にして殺しただろ。自業自得だ」

 

「アイツが勝手にサイコヤってたから、偶然盾になっただけだ」

 

この前のタロンとの戦いで何人か死んだ。他にもメトロには仲間がいるが、尻軽で顔もいい奴はそうそういない。そんな奴がタイミング悪くサイコをやってるなんて俺も気が付かなかった。

 

無性に誰かを殺したくなってきた。

 

すると、リベットシティーの方向にある瓦礫の方向に光るものを見つけた。それは太陽光がスコープに反射したものだった。7.62mmの重い発砲音が響き渡り、俺の中華ライフルに穴が空いた。

 

「あっ!」

 

俺の頭を外したのか、声を挙げる狙撃手。俺の耳はそいつの声をはっきりと捉えていた。女だ。

 

「エド!バーノン!上物だぁ!!」

 

俺は腰に付けていた警棒を伸ばし、襲いかかる。女は形の良い尻を俺達に向け、誘っているように走る。顔も体もいい、使い古したのを奴隷商人に売ることはあったが売るに惜しい。

 

女はホルスターにあった10mmピストルを此方に向けて数発放つ。だが、走りながらの射撃は早々当たるわけもなく、女を捕まえようと手を伸ばす。だが、女は俺達よりも足が早く、ミュータントが根城としていたバリケードへ入っていった。

 

「おいおい、ステファン。中に入るのかよ・・・・。俺は嫌だぞここに入るのは」

 

「何を言いやがると思えば・・・腰抜けが!」

 

俺はビビっているエドを罵倒する。ミュータントのいないバリケードなど、ただのごみに過ぎない。生臭く汚いスプラッター屋敷なだけで、そこには主は居ないのだ。

 

「エドが先頭だ。入るぞ!」

 

ぶっ壊れた中華ライフルがないのは心もとないが、女一人位なら警棒一本で十分だ。

 

中は瓦礫で作られた砦といっても言い場所だ。血生臭い臭いと共に、二体のスーパーミュータントの死体。だが、女は何処へ消えたのか何処にも見つからない。

 

「ん?何処に消えた?!」

 

辺りを見渡すが、何もない。瓦礫と肉が詰められたゴアバック、幾つかの弾薬箱と救急箱だけだ。

 

待てよ、何であの女は不利と知っていて撃ったんだ?それに目の前にリベットシティがあるのに何故入らなかった?それに、こんなところに逃げ込めば、追い詰められるのは分かっていただろうに。

 

ふと不安が頭を過る。その不安は的中し、つるんでいた仲間の叫び声が響き渡る。

 

「逃げろぉ!ミュータントの攻撃だぁ!!」

 

ショットガンの銃声が響き渡り、断続的にアサルトライフルの銃声が響く。

 

逃げないと!だが、何処に逃げれば幾つかのいい?

 

俺は慌てて何処かに通路がないか探す。だが、さっき砦に入ってきたところしか道はない。ふと、ミュータントの手元にあるものが目に止まった。そこには昔の兵隊が使っていた小型核弾頭が転がっていた。

 

「これを使えば・・・っ!」

 

使おうと手を延ばしたとき、巻き付けられたセンターモジュールと爆薬が目についた。信号受信待機中なのか、豆電球がチカチカと動いていた。

 

「畜生ぉぉ!!」

 

 

 

 

ちょうど叫んだその時、地上に太陽が生まれた。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

「爆破ぁ!」

俺は叫び、手元の起爆装置の起爆スイッチを押した。

 

体の奥にまで来る爆発の振動に鳥肌が立ち、爆風で周囲に散乱していたゴミが散乱する。ミニ・ニュークの起爆は直接目で見ることは小型であっても、視力が低下する恐れがあるため、爆心地はあえてみない。爆発に巻き込まれないように、廃車の影に隠れて居たため助かった。

 

「ユウキ、苦しい・・・」

 

「すまんすまん・・」

 

俺はステルス迷彩で透明になっていたシャルの上に被さっていた。何処からか見れば、襲っている様にしか見えないが、爆発に巻き込まれないようにしたのだから仕方ない。

 

砦は見事なまでに吹っ飛び、レイダーとスーパーミュータントもろとも吹き飛ばした。銃弾を弾く強靭な肉体を持つスーパーミュータントであっても、核爆発と飛来した瓦礫でボロボロだった。レイダーが居たのは驚きだったが、この際何でも良かった。

 

ジェファーソン記念館のミュータントを減らすために、傭兵の女を助けた砦まで誘き寄せる。だが、腐ってもスーパーミュータント。何もない所によっては来ないし、餌となる囮も必要だった。まず、シャルがレイダーを呼び寄せて砦に誘導する。そして俺はスーパーミュータントを誘き寄せるため、銃を撃ち、こちらの存在を知らせた。自分達を撃ったのはレイダーだと勘違いして襲いかかれば、計画通りだった。リベットシティで貰ったミニ・ニュークの信管を衝撃信管から無線式に取り替えて、爆発しなかった時に備えて300g程度のC4を仕掛けて置けば、見事な小型爆弾に早変わりした。

 

最後にジェファーソン記念館にいる残りのスーパーミュータントにこれを食らわせるだけだ。

 

「シャル、それを!」

 

シャルが渡してきたのは、ヌカランチャー。超小型核弾頭を発射するための発射装置だ。それの飛距離と角度を計算するため、シャルにクリップボードを渡す。ヌカランチャーを地面に垂直に立てると、そこの部分にある出っ張りに迫撃砲の底皿を置く。そして、グリップの窪みにメモリの付いた足を付けて、迫撃砲にした。

 

「こんな使い方あるのね」

 

「放射線状に飛ぶ武器ならこうやった方がいいんだ」

 

1950年代はトンでもない時代だと言われている。例えば核動力の戦車(ソ連製)やTNT換算で1トン級の小型核砲弾を発射する砲台(アメリカ製)などだ。その中でも一人で操作が可能な小型核ロケットを発射するデイビークロケットなどがある。目の前にあるヌカランチャーもその類い。ヌカランチャーは砲弾を緩やかにカーブして飛ぶので榴弾という扱いである。使い方によれば、元の開発プロジェクトで核迫撃砲として運用される筈だったが、運搬しにくくさと敵の攻撃による誤爆という問題もあり、迫撃砲から兵士が背負う兵器に変化した。それでも、砲弾の重さを考えれば、普通の迫撃砲より射程距離は短い。だから、運用方法としては迫撃砲としても使用できる。

 

「角度を+10、この方向なら大丈夫。」

 

「本当なら、何発か打ち込んでから修正を加えたいところだが、仕方がない。」

 

ミニ・ニュークの安全装置を外し、発射装置に装填する。ミニ・ニューク自体は推進装置を持たず、ヌカランチャー自体にカタパルトがあるので、そこから発射される。

 

「発射準備よし、発射!」

 

引き金を引くと、カタパルトが動き、ミニ・ニュークが打ち出される。シャルによって導き出されたミニ・ニュークの軌道はそのままジェファーソン記念館の入り口近くに命中する。内蔵された爆薬が爆発し、中心にあったプルトニウム235が衝撃で核分裂を起こす。莫大なエネルギーが放射され、近くにいたスーパーミュータントは吹き飛ばされる。放射能に耐性を持つ彼らでも爆発の威力によって即死である。核爆発には抗えなかった。

 

「よし!やったぞ!」

 

シャルと俺はハイタッチをする。爆風に飛ばされたミュータントも居るだろうが、手負い。簡単に片付けられる相手だ。

 

Rad-Xを数錠飲み、持っていたアサルトライフルを持って警戒しつつ、ジェファーソン記念館へ向かう。

 

カリカリカリ・・・

 

ガイガーカウンターの音がpip-boyから聞こえ、少しだけ冷や汗を欠いたが、そのまま前進する。

 

「俺が扉を開く。後衛は任せた」

 

「うん」

 

片手でアサルトライフルを持ち、もう片手でドアノブを持つ。慎重に扉を開けて銃口を通路に向けた。ミュータントの姿は見えず、ゆっくりとジェファーソン記念館に入った。

 

いつもと変わらず、埃とかび臭い臭いが立ち込めていた。展示物は取り外され、必要のない通路の端に山積みにされていた。少し通路を進んでいくと、『この先ギフトショップ』と戦前に設置された標識を見て、右に曲がろうとする。

 

「ハラガヘッタ」

 

「肉ガクイタイ」

 

扉の向こう側にはスーパーミュータントが屯っていた。数は二体。真っ向から向かえば死ぬことは目に見える。

 

「シャル、そこのパソコンから天井のタレットを操作しろ」

 

アサルトライフルに数少ない残りの徹甲弾を装填し、銃口をミュータントの頭に合わせた。

 

「今だ、やれ」

 

200年前に製造され、中国軍侵略対策のために設置されたタレットは近くにいたミュータントに対し、攻撃を加えた。アサルトライフルと同じ5.56mmの弾が発射され、スーパーミュータントの胴体に命中する。しかし、スーパーミュータントの強靭な皮膚を貫通することは出来ない。

 

「コロシテヤル!」

 

タレットにボルトアクションライフルで攻撃を加えるが、ある程度装甲で覆われたタレットを破壊することは出来ない。注意が引かれている瞬間、扉を開き、スーパーミュータント二体の頭部に赤のドットをあわせて引き金を引いた。

 

アサルトライフルに装填された徹甲弾は強靭な皮膚を貫通すると、スーパーミュータントの頭蓋骨に到達し、脳髄を掻き分ける。いくら丈夫なスーパーミュータントでも神経の終着地点、全身をコントロールする脳髄を破壊されては生命維持もままならない。ライフルの引き金を引いたまま、ミュータントはズシンと大きな音を出して倒れた。

 

「Clear、タレットをスタンバイ状態にして進もう」

 

ボルトアクションライフルの弾を抜いて、奥の管理室の机の下にそれを置くと、アサルトライフルを構え直し、「VR見学室」と掛かれた扉を開いた。

 

ゴウン!ゴウン!ゴウン!・・・・

 

機械と機械の接触音が見学室に響き渡り、何なのだろうと覗き見ると、階段が金属製の物へと変わっており、その下には水が張ってある。幾十ものパイプが中央のジェファーソン像を包む機械へと集中していた。

 

すると、そこへ緑の肌のスーパーミュータントが現れる。

 

「ミナゴロシダァァ!!」

 

実験エリアを徘徊していたスーパーミュータントマスターは中華アサルトライフルを構え、此方目掛けて撃ちまくる。弾はレイダーよりも正確な射撃で隠れていた柱を抉る。

 

「弾が切れるのを待て!」

 

レーザーライフルを撃とうとしていたシャルを止めて、弾が切れるのを待つ。スーパーミュータントは人間よりも知能が低い。アサルトライフルの弾の数を把握してないため、躊躇わず乱射する傾向がある。弾切れになった瞬間を見計らって、俺とシャルは姿を表す。

 

「今だ、制圧射撃!」

 

アサルトライフルの引き金を引き絞り、数発づつ発射する。徹甲弾はスーパーミュータントの胴体に当たるが、致命傷にはならない。シャルはレーザーライフルをミュータントの頭部目掛けて発射した。三本の光線がミュータントの頭蓋骨などに命中する。強靭な皮膚を焦がし、表面を薄くすると、さらに第二射が命中する。薄くなった皮膚を貫通し、脳髄に光線が到達する。光線に触れた脳組織は沸騰し、細胞は壊死する。スーパーミュータントは呻き声を挙げながら、その場に崩れ落ちた。

 

「Clear!中に入ろう」

 

一応、見掛けた敵を倒しただけであって、機械の影に何かいるかもしれない。銃を斜めに傾けながら、階段を登り、ホロテープが幾つか転がっていた。

 

「ん?これって録音機材のホロテープだな。シャル、これを持っていこう」

 

「うん、他の資料はどうする?」

 

「古いのは持っていかなくて良いだろう。むしろ、このホロテープ見てみろよ」

 

「“2277,12,March”私達が出ていってから一週間後?」

 

俺達が出ていったのは、2277年3月5日。その七日後にジェームズはここに来たようだ。しかし、ここに俺達が来て既に5ヶ月も経っていた。

 

シャルは不安そうな表情を浮かべる。5ヶ月も経過し、普通なら絶望視しても可笑しくない。俺はシャルの肩を叩く。

 

「大丈夫だって、ジェームズのおじさんがそう簡単に死ぬわけないだろう?」

 

「うん・・・・」

 

「多分、下の階にも研究施設があるだろうからそこ行くぞ。そこなら他の手掛かりも見つかるだろう」

 

アサルトライフルの弾倉を変えて、下の階へ行くべく実験室から出る。シャルはまだ気分が晴れないようだが、そのまま連れていくしかない。レールにフラッシュライトを取り付けて、辺りを照らし周囲を探索する。地下の居住区や濾過水槽がある階に降りる扉まで行くと、一度装備していた武器を点検する。

 

「室内なら、近接戦闘メインだからショットガンを使え。」

 

俺はpip-boyに入っていた閃光手榴弾を取り出して、腰のベルトにぶら下げる。気休めである10mmピストルを点検して扉に銃を向ける。

 

「開けるよ」

 

シャルは扉を開け、俺は中へ踏み入れた。

 

上の階層と違い、そこは薄暗く湿気が酷かった。ムッとする室温と湿度に顔をしかめ、ベタつく服に風を送るべく、襟を掴み風を送る。

 

「ミュータント二体、フェンスの所だ」

 

姿勢を低くし、アサルトライフルのサイトをミュータントの頭に合わせた。これまでは順調にやっているが、ミュータント二体が持っている物はボルトアクションライフルと木の板に釘を打ち付けたネールボードだ。銃撃戦ならいざ知らず、ミュータントとの格闘戦闘は死んだも同然だ。

 

「シャルはライフルの方を頼む。俺は棍棒持ちを殺る」

 

シャルに合図を出し、同時に放たれた弾丸と散弾はミュータントの頭部に命中する。俺の放った銃弾によって一方のミュータントは絶命するが、片方のミュータントは頭を抑えてうめき声を上げる。とどめの一撃と言わんばかりの一斉射撃により、ミュータントの頭部は木っ端みじんに吹き飛んだ。

 

「ごめん」

 

「気にすんな。・・・あ、そういやスラッグに変更してなかったな。マガジンをスラッグに切り替えろ」

 

12ゲージのショットシェルをサボスラッグである12ゲージスラッグ弾に変えていく。スラッグ弾は散弾では殺せないような熊などの大型動物に使われる大口径ライフルと同じようなものだ。大抵は部屋の突入でヒンジを破壊するときに用いられる。欠点は遠距離の攻撃に向いていないことだが、流石にスラッグで貫通しないスーパーミュータントはいないだろう。

 

「スーパーミュータントって大したことないのかもしれんな」

 

さっきのヌカランチャーを使った攻撃にしたって簡単に勝てたんじゃないだろうか?

 

スーパーミュータントはウェイストランド人からして、厄介者のイメージだ。人外の力で襲い掛かり、人を八つ裂きにする。しかし、ゲームでは雑兵程度。現実でもそうなのかもしれない。または俺が規格外なのか。

 

口を歪ませ、不敵に笑みを浮かべる。これからは真っ向から攻撃を仕掛けても大丈夫なはず。

 

そう思い、通路を進もうとした。

 

だが、進むことはできなかった。2mを越す緑の巨体がスレッジ・ハンマーを構えていたからだ。

 

「ユウキ!逃げて!」

 

シャルの声に我に返った俺はアサルトライフルを腰だめにして引き金を引いた。フルオートで撃ち出された徹甲弾はミュータントを貫こうと、銃口から飛び出す。しかし、ミュータントが身に付けていた物に弾かれてしまう。

 

「何でパワーアーマーの装甲を!」

 

それはT45dパワーアーマーの胸部の装甲をそのままひっぺがし、ミュータントは胸に装着していた。B.O.S.のマークがあることから、兵士を殺して奪ったのだろう。ゲームではミュータントの装備は統一されているが、ここではそうじゃない。上半身に何も身に付けていない場合もあるし、ゴミ箱の蓋やレザーアーマーの切れはしなど様々だ。今回当たったのは、運悪く重武装のミュータントだった。

 

「シネ!人間!」

 

スーパーミュータントはスレッジ・ハンマーを俺に横から叩きつけた。後ろに下がろうとするが、一歩遅くハンマーはアサルトライフルに直撃する。200年前に作られてもまだ正常に機能するライフルは衝撃で変型し、薬莢が圧縮されて暴発する。銃弾はコンクリートの壁に穴を開けて役目を終えた。

 

避けようとして後退り、姿勢を崩した俺はホルスターから10mmピストルを構え、引き金を引いた。対人用として生産されたそれはスーパーミュータントの皮膚を貫通しない。それでも痛覚は存在し、命中した腹を押さえて顔を歪ませる。

 

「痛イ!ヨクモ!」

 

怒りに駈られ、ハンマーを持ち上げる。その場から逃げようと立ち上がろうとするが、思うように体が動かない。

 

「シャル、逃げろ!」

 

ここは俺が囮になって逃げるしかない。腰のガンベルトのポーチから黒い丸い物体を取り出す。距離が離れれば殺傷能力が低下するが、この距離からなら大丈夫だろう。

 

だが、シャルは持っていたコンバットショットガンをミュータントに向けて放った。しかし、装填されたスラグはミュータントの皮膚を貫通しなかった。

 

「ウガァァァァ!!」

 

スーパーミュータントはスレッジハンマーを降りおろす。死を覚悟し、目を瞑って腕で頭を隠す。スレッジハンマーだから頭を腕で覆っても逃れはしないだろうが、咄嗟の行動だった。

 

しかし、死ぬであろう瞬間は訪れない。そっと目を開けて見てみると、口を開いた状態でスレッジハンマーを振り上げた状態のミュータントがそのまま固まっていた。何が起こったのかと姿勢を起こすと、ミュータントの口からはどす黒い血が流れだしていき、そのまま後ろに倒れていく。俺はシャルが仕留めたのかと後ろを向いたが、目を真っ赤にして涙を流すシャルがいた。これではラッドローチすら殺せない。・・・じゃあ、誰が?

 

通路から足音がするが、その足音は軽い。通路の暗闇からはレザーアーマーに改造されたスナイパーライフルを持った人物が現れた。

 

「ああ、また会ったな」

 

その人物はミュータントから救い出し、リベットシティで暴走した女傭兵だった。

 

 





遂に明かされる浄化プロジェクト!ジェームズの目的とは?
そして、現れる謎の美女!彼女は一体何者なのか?

fallout3とある一人の転生者・・・・次話へ続く! 

by threedog





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