fallout とある一人の転生者   作:文月蛇

18 / 50
やっとのことメインクエストの開始です。長かったな~・・・。そして、この前見たところ、お気に入り件数が500件を超えていました・・・!昔と比べたら進歩したんだな-と思います。

では、お楽しみ下さい。


第三章 Looking for father
十七話 Following in His Footsteps


「疲れた・・・・」

 

ショットグラスに注いだウィスキーを飲み、スツールに座ったまま倒れる俺。それをみたゴブは笑って、ショットグラスにウィスキーのストレートを注いだ。

 

「ゴブ、ここの皆は水割りしないのか?」

 

「んなことするわけないだろ。本来の味が分からんだろうに」

 

とゴブは言う。こんなのガバガバ飲んだら、確実にアル中だよ。と俺は思いつつ、盛られたポテトチップスを頬張った。

 

アウトキャストのインディペンデンス砦から出てきて、メガトンに帰ってきたのは、すっかり夜が更けた20時過ぎ。武器屋の武器保管庫には、修理依頼が出された多くの武器と、前金として支払われたキャップを満杯にしたスチールケースがあった。俺は目から血を流すように、夜食とメンタスを噛み締めつつ、武器を分解して清掃し、劣化した部品を取り替えた。何度かレイダーを返り討ちにしたため、武器はたんまりとあったので、使えそうな部品を取り出して、修理に用いたりした。それは朝の9時まで続けてやっとの事で寝ることが出来た。しかし、正午ぐらいにはその倍以上の武器が修理に出され、俺は幾つかの行程を省くことを強いられた。

 

これは俺の憶測なのだが、一日目に修理に出された物が二日目に持ち主の所へ戻ったとしよう。それは、修理前に比べて性能が上がりまくっていた。そう言う話を聞いて、自身の武器を俺の所に持ってくる。それは鼠算的に増えていく。所謂、チェーンメール見たいに二人から四人、四人から八人見たいな感じに。値段的に少し高めではあるものの、値段相応の修理をしている店は繁盛し、店長である俺はとんでもなく疲れるのである。

 

「ゴブ、知っているかい。西海岸には戦前の武器を製造するメーカーがあって、とても性能が良いらしいぜ」

 

「ああ、聞いたことあるな。向こうから商人が流れてくることもあるけど、大抵、道中にレイダーに襲われるなりして死ぬけどな」

 

西海岸が中部から来た商人にはこの東海岸は少々危険すぎる。戦前は首都圏として栄えた東海岸は西海岸よりも荒廃している。中国軍がワシントンを主目標にしていたせいであろう。レイダーが略奪した武器は西海岸のNCR工廠で作られたり、民間のガンランナーと呼ばれるガンスミス集団が作っている物もあり、流れに流れて俺達に来ることもあった。最近、9mmピストルがモイラの店頭におかれたけど、誰も買うことがなかった。あまり、流通していない武器を買っても修理は出来ないし、弾薬も調達しにくいためだ。

 

俺は溜め息を着くと、これからのことを考える。

 

これからどうするかね~。ブライアンは手先が起用なので、12歳にしてアサルトライフルを分解できるし、シャルからは科学のお勉強をしてもらっている。そろそろ、武器の修理を手伝わせるのも良いだろうし、営業トークもやってもらわなければならないだろう。一応、武器の売買は軍曹がやってくれているので安心だが、ブライアンも出来るならやって欲しい。

 

シャルとは結婚してメガトンで暮らそうかと思っている。やがては子供も出来るだろうし、やがては武器屋を家業としていく筈だ。だが、問題なのはジェームズが何処にいるかということだろう。vault101から出てきて色んな事が沢山あったが、シャルはジェームズの事を諦めてはいない。実際、シャルは俺に相談しないで、リベットシティで情報を集めようと考えているらしいが、机にD.C.都市部の地図を広げているお陰で考えが分かっていた。

 

さてどうしたもんか・・・。

 

ショットグラスの入ったウィスキーを傾けつつ、生前の記憶を遡る。人間の記憶と言うものはいい加減な物でどうでもいいことを覚えていて、物事の核心はすぐに忘れてしまう。例えるならば、ジェームズが何処にいるのかであるが・・・。

 

「あ~、ジェームズのおっさんは何処に行ったんだよ!」

 

「ん?ジェームズ?・・・お前さんの言っているのはvault101に入ったジェームズの事を言っているのか?」

 

俺の叫びを聞いたのか、店の店主であるモリアティはジェームズの事を知っているかのような口ぶりで訊いてきた。

 

「そうだけど・・・・ジェームズが何処に行ったか知っているのか?」

 

「ああ、知っているさ。それにしても、ジェームズの娘の・・・えっと、シャルロットだっけか。元気にしているかい?」

 

「前に店に来てたじゃないですか?忘れました?」

 

「あのべっぴんが!?・・・は~、あんな赤ん坊があんな風に変わるとは驚きだよ。」

 

モリアティは驚きつつも、親指と人差し指を擦る。つまり・・・

 

「“情報”には金が要るってことですか?」

 

「まあな、対価なくして情報はあげられねぇな。」

 

「44口径マグナムを修理したのに?」

 

「あれは商売だろ?貸しで修理した訳じゃない。そうだな~・・・100キャップでどうだ?なんなら、借金取り立てをしてくれたらチャラにしてやってもいいが」

 

「そんなパシりはしたくない。でも・・・百キャップか」

 

今は財布がかなり潤っているので100キャップの出費はそこまで痛くない。だが、記憶があればそんな出費をしなくて良いのだから、自身の記憶に腹が立った。

 

「さあ、どうする?明日には倍額になるかも知れないぜぇ・・・」

 

金を支払うか、自力で探すか・・・。二者択一・・・。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

「じゃあ、ブライアン。少しの間旅に出るからしっかり仕事をするように。」

 

「うん、お兄・・・じゃなかった師匠」

 

「ユウキ、いいじゃない。お兄ちゃんって呼ばれても」

 

vault101アーマードスーツに身を包んだシャルは俺に言う。だが、やはり「お兄ちゃん」と呼ばれるのは抵抗がある。ブライアンが妹キャラなら良かったのに・・・。

 

「ユウキ、また何か変なこと考えたでしょ」

 

「い、いいや」

 

「ブライアンが女の子であればよかったなんて思ったわよね」

 

「いいや、いいやそんなことは・・・」

 

「おまけに妹のようだったらどんなにいいか・・・とか?・・・・」

 

「分かった、ウェイストランドの女性がなんで強いか分かった。だから、勘弁してくだしゃい!!」

 

最早、ウェイストランドの女性は勘が鋭く、男の考えを読んでしまうんだろう。それが、ウェイストランドに人類が生き残った由縁だろう。それはともかくとして、俺とシャルは遂にジェームズの居所を掴んだ。“G.N.R.ビルプラザ”戦前にはD.C.周辺でラジオ放送を行っていたし、現在でもthreedogが放送を続けている。俺とシャルは荷物をまとめて行く準備を始めた。店の事は軍曹とブライアンに任せることにした。武器の売買は軍曹が取り纏め、ブライアンは銃の修理にまだ時間が掛かるため、一日に三件限定にした。修理スキルは俺の方が上であるものの、ブライアンは時間を掛ければ掛けるほど、よい仕上がりとなる。たまにウェインやビルに世話をお願いしておけば何とかなる。

 

俺は自宅武器庫からアサルトライフルにピカディニー規格の20mmレイルを取り付けたタイプを持っていくことに決めて、5.56mm徹甲弾400発と通常弾の5.56mmを2600発、10mmホローポイント弾45発、破片と発煙、閃光手榴弾を各5つづつ持っていくことに。食糧品も5日分携帯していくことに決めて、pip-boyの中にしまった。以前は背嚢を背負っていったが、都市部では足枷になるだろうし、なるべく装備を減らして、pip-boyに納めようと話が纏まった。

 

その他、暗視ゴーグルやガスマスクなどの装備を入れて準備は整った。

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「行ってらっしゃい!シャルお姉ちゃん、ユウキお兄さん」

 

「・・・やっぱり変えたい・・」

 

「いいじゃない。それで・・・」

 

シャルに言われるがやっぱりお兄さんと言われるとくすぐったい。物理的ではないにしろ、何かがアレルギー反応を起こしている。そんな感じだ。

 

トレーダーの帽子を深く被ると、俺とシャルは歩き始めた。一応、アサルトライフルは構えたままだが、警戒するに越したことはない。一度、ウルトラ・スーパー・マーケットの方向に歩いて川を渡ってファラガット西メトロ駅に行かなければならないが・・・。

 

「ニンゲンダ!コロセ!!」

 

「望みが絶たれた!」

 

まあ、ファラガット西メトロ駅の近くにはレイダーのたまり場があり、その川を挟んだ対岸にはミニガンとミサイルランチャーを持つスーパーミュータントの戦闘であった。レイダーが劣勢であるが、スーパーミュータントもかなりの苦戦を強いられている。

 

川を近くの橋から渡った俺達だが、思わぬ障害にぶち当たった。

 

「シャル、ステルスボーイを起動させろ。これじゃ、いつまでたってもここに釘付けだ」

 

「分かった。ちょっと待って」

 

そう言って、おれとシャルはステルスボーイを取り出して、スイッチを入れる。ヴォン!という音を出して、見えなくなる。使いすぎれば精神障害になるが、そこまで頻繁に使ってないので大丈夫だろう。一応、お互い見えないため、シャルの手をつかんでメトロの中へ入った。シャッターを開けると、カビ臭いが俺達を迎え入れる。銃声と爆発音がここまで聞こえる辺り、まだレイダーは死んでいない。

 

「シャル、前進するぞ」

 

アサルトライフルのレールに取り付けたフラッシュライトを点灯させて、ホームへ続く通路を歩いていく。しかし、経年劣化か大戦の影響か、瓦礫で埋まっていた。

 

「他にルートは?」

 

「ユウキ、こっちなら通れるよ」

 

シャルが指差したのは、駅員の詰め所だった。シャルが扉を開き、銃を向けて警戒しながら中に入った。この前廃棄部品で作ったハンドグリップを握り締めて、狙いを安定させながら進んでいく。

 

「トイレ、クリア!」

 

「こっちも大丈夫」

 

一つづつ部屋をクリアリングして、安全を確認する。トレーダーの帽子の唾を持ち上げる。変電室と書かれた部屋へと続く扉を開けると、シャルを先頭にして歩む。すると、通路の向こう側から変な音が聞こえ、シャルが進むのを止めさせた。

 

「何?」

 

「シッ!向こうに何かいる。多分、フェラルだ」

 

アサルトライフルにサプレッサー取り付け、忍び足で通路を歩き、ゆっくりと扉を開く。扉を開けた先は階段があり、何かを咀嚼するような音が部屋中に響き渡っている。

 

俺はハンドサインで上を指差し、ライフルを上に向けるよう指示する。足音を立てないように、慎重に階段を登りアサルトライフルのセレクターをセミオートからフルオートにする。

 

階段を上りきると、ガスの漏れるような音が聞こえ、通路の奥にあるフェンスの向こう側にはフェラルグールなどがモールラットに集っていた。こちらには気付いておらず、目の前の食事に掛かりっきりだ。手元にある手榴弾を投げようかと思い至ったものの、戦前のメトロは壊れやすいため、そう簡単に爆発させられない。何かないかと考えたものの、閃光手榴弾が適切だろうと踏んだ。何故なら、手榴弾と違って爆発はしないため、メトロを傷付けない。ガスを引火させる火元は閃光手榴弾のマグネシウム反応でどうにかなるだろう。

 

ガンベルトにあるグレネードポーチから閃光手榴弾を取り出して、ピンを抜くと、フェンス目掛けて投げて階段を一目散に掛け降りた。フェラルは音に反応して俺に振り向きフェンスを越えようと網に指をかませた瞬間だった。10万カンデラ以上にもわたる閃光とジェットエンジンにも匹敵する轟音で辺りに響かせ、ガスがそれに引火した。フェンス一帯に充満していたガスは一瞬にしてフェラルを焦がした。

 

「ふう~・・・危なかった。」

 

俺はシャルにバンダナで鼻と口を覆うよう指示し、バラクラバを被る。帽子さえなければ、何処かの特殊部隊員だろうが、ウェイストランドで見た目を気にする人間はごく僅かだろう。階段を登り、周囲を見ると、肉片や焦げたフェンスがあり、落盤の危険はない。安全を確認した俺は、シャルを呼んで、フェンスを通り抜けて変電室からフレンドシップハイツの駅に続く扉に来た。

 

「シャル、行く前に一つ重要なことを言い忘れた」

 

「何?」

 

「躊躇わずに撃て。スーパーミュータントもいるが、必ず殺すんだ」

スーパーミュータントは何処からともなく現れた。キャピタルウェイストランドでも上位を占める化け物だろう。人語を話すが、凶暴で普通の銃弾では貫通しない肉体を持つ。奴等の身体を傷つけられるのは重火器や徹甲弾位だろう。

 

しかも、都市部には様々な勢力が凌ぎを削り、年中銃声が絶えない。正直、言って俺はシャルを都市部には連れていきたくなかった。これまででも、シャルは抵抗しないレイダーを撃ち殺すのに気が引けた筈だ。躊躇わないようにしなければ、都市部に入っても死体となるのが関の山だ。いくら俺でもそれは無理だ。

 

だが、シャルは当然と言うような顔で俺を見る。

 

「分かってる。もう、躊躇わない」

 

決心したのか、銃のグリップを強く握りしめているのが分かった。前回のアウトキャストの一件でシャルは大幅な成長を遂げていた。

 

「よし、ここからフレンドシップハイツ駅に入る。傭兵の話によれば、レイダーが出没する地域だ。慎重にいくぞ」

 

「うん」

 

俺はアサルトライフルのマガジンをもう一本用意して、ダクトテープで二本を巻き付ける。少し、重くなるが気にしない。照準装置にはこの前、取り付けたM4A1のACOGサイトを取り付ける。

 

シャルに合図して開けて貰うと、おれは銃を扉の向こうにある線路に向けた。地下鉄の線路は戦前から供給されている電力で非常灯が点灯している。ほんのうっすらではあるものの、暗視ゴーグルを着けなくてもいい。シャルに屈むよう指示して慎重にホームの方へ歩く。すると、横転した車両の上にレイダーが周囲を警戒している。

 

「敵発見、俺が撃つ」

 

かがんだ状態から匍匐の状態にして、照準を安定させる。サイレンサーを確認して、セレクターをセミに直した。

 

「スー、ハー・・・」

 

息を整え、筋肉の動きが止まる一瞬を狙い、引き金を引いた。発射された銃弾はレイダーの右目に直撃し、眼球を一瞬にして破裂させ、脳髄に到達してかき混ぜた。弾は貫通して被っていたサイコチックな帽子を貫通してコンクリートにぶつかった。

 

「ん?何だ今の音は?」

 

仲間のレイダーが音で気づいたのか、数人のレイダーが動かなくなったエスカレーターを下ってホームに降りてきた。

 

「おい、クリーヴが倒れている・・・がっ!」

 

フルオートにしたアサルトライフルの5.56mm弾とレーザーがレイダーに襲いかかり、一瞬にしてレイダー達の体は引き裂かれた。24発撃ちきる頃には動くものは誰も残ってはいなかった。使えそうな弾薬と武器を回収し、アサルトライフルを構えつつエスカレーターを昇る。落ちてあった救急箱や弾薬箱を物色して、フレンドシップハイツの駅を出ようと改札へと歩く。

 

「お、ヌカ・コーラ発見!持っていこ!」

 

「pip-boyに入りきらないよ」

 

「大丈夫、何とか減らすさ」

 

俺はレイダーが持っていた10mmピストルを分解して使えないパーツを廃棄部品にして、残りをスペアパーツで管理する。それを幾つか繰り返せばコーラ3本分の空きを作ることができた。だが、pip-boyには冷えたヌカ・コーラが幾つか入っているし、家にもまだストックがあるため無理に回収しなくてもいいのだが、生前からの癖ゆえに、ヌカ・コーラ自販機の中のコーラを全てとっておかないと気が済まなかった。

 

コーラを仕舞った後に、封鎖されたシャッターを開いて外へと続く階段を踏みしめて地上に上がった。

 

核戦争によって倒壊したビル群、幹線道路は崩壊し、陸の孤島と化した都市部。遠くから響き渡る銃声と爆音を聞いて、メトロの壁に背中を着ける。小さな磨かれたアルミ板を少しだけ塀から出して外を確認してから、銃を構えながら外に出る。

 

「シャル、援護頼む」

 

メトロから出ると骨組みと少しの柱が残る建物に近づき、横転している車に伏せる。シャルもそれに続いて俺の背後に来る。倒壊した建物を尻目に、迂回して通路を歩こうとした。

 

「ダレダ!ニンゲンカ!」

 

「くそ!奴等だ!」

 

片言の英語を喋るスーパーミュータントの声を聞いて、アサルトライフルを向ける。緑色の肌に2m程はあろうかという体躯。継ぎ接ぎのアーマーを身につけた化け物がそこにいた。

 

「死ネ!ニンゲン!」

 

奴等はボルトアクションライフルを構えると俺に撃ってきた。シャルと俺は手持ちの武器で応戦するが、胴体に命中しても動きは止まらない。

 

「シャル!頭だ!頭を狙え」

 

空になった弾倉を抜いて、徹甲弾が入った弾倉をアサルトライフルに装填する。

 

「食らえ!化け物が」

 

フルオートで発射された5.56mm徹甲弾はスーパーミュータントの頭を吹き飛ばし、胴体を肉の塊に変えた。すると、レーザーがもう一体のスーパーミュータントの頭部を破壊してしまう。

 

「シャル、よくやった!」

 

「え?私撃ってないよ?」

 

見ると、マイクロ・フュージョン・セルを装填していた。弾切れで撃てる筈などない。さっき見たレーザーの向きから見てもシャルが撃ったのでは無いのだろう。レーザーが飛んできた方向に目を向けてみると、T-45dパワーアーマーを着たBrotherhoot Of Steelがレーザーライフルを持ちこちらに向けていた。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「こんなところで一体何をしているの?ここはスーパーミュータントの根城よ。早く引き返して」

 

ブロンドの髪を後ろでポニーテールにして結び、パワーアーマーを着てレーザーライフルを持つ彼女はエルダー・リオンズの娘であるサラ・リオンズだ。パワーアーマーの肩にはリオンズ傘下の特殊部隊である“リオンズ・プライド”のマークが付いていた。

 

俺はここに来た説明をしようとしたが、その前にシャルが口を開いた。

 

「私の父がG.N.R.ビルプラザに来ている筈なんです。行っても良いですか?」

 

「いいえ、駄目よ。私達の部隊はここでミュータントを掃討しているけど、道中襲われるかもしれないわ」

 

「(guns75%)我々も加勢します。」

 

「(成功)ミュータントの数も多いし、入隊は大歓迎よ。でも、父親を探すのでしょうから、ビルプラザまで戦ってもらうわよ」

 

俺達の装備を見れば、そこら辺のウェイストランド人じゃないことは分かる筈だ。サラは笑みを浮かべると、奥の通路に案内する。そこには数人のパワーアーマーを来た兵士が通りの側からビルにいるミュータントの動きを見ていた。

 

「センチネル・リオンズ。彼らは?」

 

「さっきミュータントに襲われてたの。ビルプラザまで一緒に来ることになったわ」

 

「ようこそ」

 

「足手まといにならないでよ」

 

とサラは言うが、俺は笑みを浮かべて返した。

 

「ならないですよ。」

 

アサルトライフルのコッキングレバーを引いて次弾を機構に装填すると、セレクターをフルオートにして準備は整った。サラはそれを見届け、命令を下す。

 

「ジェニングスとウィーバーは先に前進、あとはそれに続いて、MOVE!」

 

サラの号令の元、パワーアーマーの兵士達が一斉に飛び出す。スーパーミュータントはそれに気付いて射撃を加えるが、後方に待機していた兵士達のレーザーによって灰になる。建物の中から奇形の形のケンタウルスが出てきて兵士の腕に長い舌で掴むが、兵士の胸に装着していたコンバットナイフが引き抜かれ、頭と思われる箇所に刺される。鮮血がパワーアーマーに飛び散るが、兵士は見向きもしないで、アサルトライフルを片手で乱射する。

 

「窓に一人!」

 

俺は叫び、アサルトライフルの引き金を絞る。スーパーミュータントの頭部に穴が開いて絶命する。

 

「good job!良い腕してるじゃねーか」

 

「どうも」

 

パワーアーマーを来ている兵士に誉められ、少し上機嫌になった俺はその兵士の後ろに立ってクリアニングを行う。

 

戦場で立ち回りが一番難しいのが、やはり市街戦である。ジャングル戦のように死角があり、人工的に作られたが故に隠れるところが多く、死角も多い。そのため、建物を制圧するクリアニングがとても面倒なのだ。近くにいる仲間を信頼し、息を合わせないと死角を無くすことは出来ない。

 

「上にミュータント!」

 

「Cover!」

 

「Grenade!」

 

上にいたミュータントを蹴散らし、通路に出てきたミュータントから身を隠して、兵士は持っていた破片手榴弾を投げ込んだ。ミュータントは全身に鉄の破片を喰らったが、片目が潰れた位で戦闘に支障はないようだった。

 

「痛イ!ナニスンダ!!」

 

スーパーミュータントは釘を打ち込んだネイルボードを片手に近くにいる兵士を殴った。バキッ!という音と共に兵士はコンクリートに叩き付けられ、意識を失う。それを見たサラは持っていたレーザーライフルを向けてミュータントの頭部に放つ。炭のように黒く染まり、倒れるミュータント。サラは倒れた兵士に駆け寄った。

 

「カール!衛生兵!」

 

サラは叫ぶが、この部隊には衛生兵はいなかった。その声に気付いたシャルは怪我した兵士に駆け寄ると、ヘルメットを脱がせて怪我の具合を確認する。

 

「脳震盪起こしている。もしかしたら、脳内出血を起こしているわ」

 

「助かる?」

 

サラは聞くが、シャルは厳しそうな顔でサラの顔を見る。

 

「手術して血を止めないと。早くビルの中へ」

 

俺は一旦、先頭から離脱しシャルの元に駆け寄った。すると、倒れた兵士の鼻から血が出ており、事態は深刻そうだ。

 

「頭以外は動かしてもいいか?」

 

「見る限り大丈夫。一度、ヘルメットを被せて連れていこう。」

 

俺はパワーアーマーの胸にある掴みを掴んで引きずる。本当なら背負っていきたいところだが、パワーアーマーもなく、生身の人間ならその重さには耐えられない。引きずるようにして兵士を運ぶ。他の兵士は戦闘中であるため、負傷者の手助けは出来なかった。

 

「こっちだ!もうすぐ駐屯地だ」

 

兵士の掛け声で最後の力を振り絞り、兵士を引っ張る。ズルズルという音が響くが問題はなかった。障害となるスーパーミュータントは掃討されていて歩く道にはミュータントの死体だけが残された。

 

「やっとたどり着いた・・・」

 

メトロの入り口と一体化した中央広場だった。戦前なら、そこでは多くの人がいたのだろう。しかし、今ではスーパーミュータントの死体と戦闘で戦死した兵士の遺体が転がっていた。焦燥たる有り様で、激戦を戦い抜いたらしい兵士は階段にもたれ掛かり、ヘルメットを脱いで一服していた。

 

「急いで担架を!早く医者を呼んで!」

 

その戦いの後の静けさを吹き飛ばすようなサラの声に休憩していた兵士達が動く。建物の中から担架を担ぐ兵士が走りこちらにやって来る。

 

「医者は?」

 

「さっきの戦いで流れ弾に当たって戦死しました。ここには衛生兵が数名しかいません」

 

それをサラは聞き、悔しそうに唇を噛む。だが、横にいたシャルは声をかける。

 

「私は医者です。中に案内してください!」

 

「本当?」

 

サラは疑いの目を向けるが、俺はそれを遮った。

 

「奴はvault101の名外科医だ。出来ないことなんてない」

 

それは嘘だった。人間なら誰だって失敗するし、無理なことだってある。だが、この場合目の前にいる人物を落ち着かせなければならない。

 

「そうね、頼んだわよ」

 

「うん、じゃあこの建物で一番清潔な所に彼を連れてって!それと清潔な水を沸かしてこの道具を煮沸消毒しておいて。それと・・・」

 

矢継ぎ早に飛ばす指示に近くにいた衛生兵は困惑する。俺は建物に運ばれる兵士とシャルを見つつ、俺は階段に腰掛けた。pip-boyから冷えたヌカ・コーラを出して、栓を抜いてゆっくりと飲む。炭酸の刺激が喉を通り、フレーバーな香りが口に広がる。

 

「ふぅ~・・・」

 

アサルトライフルを立て掛けて、サラの率いる部隊を横目で見ながら溜め息をついた。サラの率いる部隊は道路に放置された二台のバスの向こう側に行こうとしているらしく、俺は遠目で見守った。

 

ん?これってたしか・・・・。

 

 

前世の記憶が蘇りそうな感じがして、頭を押さえて思い出そうとするが思い出せない。悩んでいると、獣のような叫び声を聞いて、俺は階段から立ち上がる。

 

「ヤバい!そこから離れろ!!」

 

いきなり俺が叫び声を上げて驚く兵士達。獣のような叫び声と共に物が壊れるような音とバスが煙をあげていた。

 

「ベヒモスだ!!」

 

俺が叫んだのとほぼ同時だった。バスの核エンジンが爆発し、周囲に破片を撒き散らし、パワーアーマーを来ていた兵士に襲いかかる。バスの近くにいた兵士は爆風で飛ばされ、ビルに作られた遮蔽物に高速でぶつかった。

 

バスが燃える煙からは6mはあろうかという大きさの緑色の化け物が姿を顕す。ウェイストランド人からはスーパーミュータント・ベヒモスと呼ばれる、ウェイストランドの破壊神だった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「待避!!全員待避!!」

 

展開していた熟練兵は叫び、銃をひっ掴み後方に退却する。勇みよい新兵はアサルトライフルの引き金を引いてベヒモス目掛けて攻撃を加えるが、痛がるそぶりすら見せなかった。ベヒモスは爆発しなかった廃車を片手で掴むと、まるで軽々と兵士達に投げる。パワーアーマー着ていた兵士は避けることも出来ず、吹き飛ばされた。

 

「クソ!・・・50口径を使え!!」

 

部隊長らしき兵士はビルのベランダにいる兵士に叫ぶ。すると、ベランダから使い古した50口径重機関銃が姿を表した。50口径弾にベルトを取り付けた弾薬箱を機関銃に取り付け、機構に引っ掻けてレバーを引く。そして、大きな発砲音と共に巨大な弾丸がベヒモスに命中する。肉を抉り、骨を絶つ光景であったが、ベヒモスはその弾丸の嵐を物ともしなかった。

 

「何で効かないんだ!!」

 

スーパーミュータントでさえ肉片にすることが可能だった重機関銃でも、ベヒモスを倒せることは出来ない。ベヒモスは叫び、手元の巨大なハンマーをベランダ目掛けて投げる。ブーメランのようにハンマーは飛び、銃座にいた兵士は機関銃共々圧死する。俺は悪態をついて何かないかと探す。

 

確か、ここには大きな重火器が置かれている筈なのに・・・。

 

俺はビルの土嚢に身を隠しつつも、周囲に使えそうなものがないか探す。すると、B.O.Sの兵士の死体の側に普通はない兵器を見つけることが出来た。

 

「あれしかないか・・・・」

 

放射線量や建物の倒壊を気にする余力はない。チマチマと計算をしていれば、ベヒモスの胃の中に収まるだろう。ベヒモスが銃撃を繰り返す兵士を喰おうとする近くで、ベヒモスに対抗出来うる武器の元へ走る。

 

元々、そこまで距離は無いものの、戦場にいて絶体絶命だったためか時間が遅くなっているように思えた。怒号と悲鳴、そして銃声と唸りを聞いて、死体の元に急ぐ。その兵士は俺達が来る前に戦死していたらしく。ヘルメットの一部が陥没していた。兵士の腕から兵器を取り、必要最低限の動作を見る。家にあったのだが、実際に使ったことはない。

 

しかし、やらなければならなかった。

 

ミサイルランチャーよりも重い、それを肩に乗せて照準をベヒモスに合わせる。安全装置を解除して、ベヒモスの胴体に狙いを定めた。すると、先程まで銃撃を繰り返していた兵士を食ったのか、此方に興味を持ったようだ。限りなく醜い顔を俺に見せて、獣のような眼差しを俺に向けてきた。

 

「喰らいやがれ!!」

 

発射ボタンを押し、ベヒモスに放たれたミニ・ニュークと呼ばれる超小型核弾頭。弾頭の中心にあるプルトニウムに核分裂反応を起こさせるために、周囲に作られた爆薬が起爆して小規模の爆発がベヒモスに襲いかかる。小さいと言えど、数千度の熱線を放射する核爆弾である。失明するほどの光線が辺りを照らし、ベヒモスの上半身は蒸発する。爆発音と同じ音量の叫び声を放ち、ベヒモスは燃え盛るバスの中へと倒れた。

 

爆発する寸前に遮蔽物に身を隠していた俺は立ち上がり、ベヒモスの方に目を向ける。pip-boyに搭載されたガイガーカウンターがカリカリ鳴り響き、それでも俺はベヒモスの所へ歩み寄る。肉の焦げた臭いと共に筋肉がピクピクと動いている。それは人間で言う死後痙攣と言う奴であろうか。

 

「ふぅ~・・・終わった」

 

pip-boyから冷えたヌカ・コーラを取り出して栓を抜いた。さっきも飲んでいたが、爆風で飛ばされてしまってここにはない。だが、戦いが終わった後のヌカ・コーラの味は最高だ。

 

「敵を倒した後のヌカ・コーラの匂いは最高だ」

 

まるで、ベトナム戦争を題材にした映画で出てくるヘリ騎兵隊のキルゴア中佐のセリフであり、ここにnew vegasのハットさえあればと、俺はこの時のことを思い出して毎回思うのだった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

「クソ!心室徐細動機を持ってこい!」

 

「輸血パックを早く!」

 

ビルプラザの中は野戦病院そのものだった。あちこちで呻き声が響き渡り、血の臭いと消毒液の臭いがしている。硝煙漂う戦場ではなくても、ここは兵士達の命を分ける最前線であった。

 

「そこの人、そこのガーゼを!」

 

俺は呼ばれたことに気が付き、アサルトライフルを壁に立て掛けて医療台に置かれた止血帯を渡す。

 

「そこの鉗子を取って。それと、足元にある血漿をそこの兵士のと交換して」

 

ウェイストランドの手術服に大きなマスクをしたアフリカ系の衛生兵は指示をして、俺は鉗子を渡して足元の箱から血漿を取り出す。ウィスキーの瓶を再利用したような大きさに黄色がかった液体が入っていて、医療ポールに引っ掻け、手術用ホースと針を付けたものを兵士の左腕の静脈に突き刺した。兵士の横には小型のバイタルサインがあり、血圧が正常に戻りつつあることを教えた。

 

「ありがとう、お陰で助かった」

 

声からして女性らしく、俺は聞かなければならないことを聞いた。

 

「俺と一緒にいたvaultスーツを着た女の子知りません?」

 

「え、そう言えば、向こうの臨時手術室で手術していると思うが。かなり掛かるそうだ」

 

見ると、『会議室』の字を上塗りで「手術室」と書かれ、向こうから聞こえてくるのはシャルの声と衛生兵の声。今入ってみても、俺は邪魔者だろう。なら、先に俺が用事を済ませておくのも良い筈だ。

 

「じゃあ、threedogは?彼に聞きたいことがあるんだが?」

 

「彼はそこの階段を上がって中央の通路を歩いて扉がある。その向こう側に放送室があってそこに行けば会える筈だ」

 

「ありがとう。助かったよ」

 

俺はお礼をして階段に向かおうとするが、呼び止められる。

 

「ちょっと待って。お前はvault101から来たのか?」

 

「あ、ああ」

 

「ナイト・リディアだ。ウェイストランドの有名人に会えるなんて」

リディアは握手を求め、俺も握手する。だが、おれがいつ有名人になったんだ?

 

「ユウキ・ゴメスだ。俺が有名人だって?嘘だろ?」

 

「Threedogの放送聞いてないのか?偉いべた褒めようだ。まあ、あの放送のお陰で私達は戦っていけるんだけどな」

 

ベヒモスも倒したことだし、英雄だな。というリディアであったが、まさかthreedog・・・・。貴様という奴は!

 

「ちょっと、マスゴミを掃除しなければな。ハハハ!」

 

「え、マスゴミって、ちょっと」

 

少しふざけた事言ったがやるつもりは(多分)ない。マスゴミとも言えど、これ以上俺を有名人にさせるつもりはないだろう。リディアとは、別れて階段を登って放送室に赴く。戦前の建物で痛んでいるとは言えど、ここはまだ使えるようであった。

 

扉を開けると、陽気な曲とthreedogの声が聞こえてきた。

 

「threedogだ。D.C.のバンカーからお届けするよ!今日はスーパーミュータントの攻撃に遇っちまった!なんとか、brotherhoot of steelの兵士達が撃退したが、被害は甚大だ。俺はパワーアーマーを着られないし、無力だ。だが、俺にはこの声がある!だから、この声でウェイストランド中の皆を元気にしないとな!そうそう、今日のスーパーミュータントをやっつけたのはvault101のあいつら。しかも男の方だ!凄いよな!ヌカランチャーでズドン!ドカーン!101のあいつに感謝の言葉を送りたい。ありがとう。それと、もう一人のあの子。今、即席で作った手術室でB.O.S.の兵士を手術している。頑張ってくれ!ウェイストランドの皆!彼女の応援よろしく頼む。じゃあ、ここで一曲だ!」

 

俺は中に入ると待ち構えていたようにヘッドラップにサングラスを掛けた男が突っ立っている。彼がウェイストランドのDJ、スリードッグだ。

 

「いや~、情報屋からは写真を貰ってなかったからどんな奴か分からないが、やっぱり皆共通だな」

 

「共通って?」

 

「なまっちょろい」

 

「すいませんね!第一印象悪くて!!」

 

人間は第一印象が悪ければ、悪いほど人間関係は難しくなる。俺の場合、戦前の時なら普通の青年だろうが、ウェイストランドなら弱そうなガキしか見えない。俺は半ば自暴自棄な感じで答えると、巷の気前のいいおっさんのような笑顔でスリードッグは俺の肩を叩いた。

 

「ハッハッハ、お前さんはまだ良い方だ。俺は生まれたときから病弱でただ口が達者なだけの男なのさ。」

 

「そんな、俺はvault101だと変人扱いでしたよ。必要の無い知識ばっかり身に付けているし・・・、まあ出てきてから、その知識を有効活用してますけど」

 

そんな世間話を少ししつつ、部屋の隅にある椅子に座り、テーブルにあった水を薦められて、俺はありがたく頂いた。

 

「よっこいしょ・・・。と、もしかして君達はジェームズを探しに?」

 

「ええ、そうです。教えていただければ・・・・」

 

「頼みを聞いてくれれば」

 

俺はそれを聞いて口をつぐむ。世の中、無償で貰えるものなど無いのだ。それは戦前の世界でも通じること。たった一つの情報でさえ、金が必要なのだ。

 

「無償って訳にはいかないんですね?」

 

「ウェイストランドは救済を求めている。頼みたいのはな・・・」

 

と話し始めるスリードッグ。後に俺はスーパーミュータントの巣窟であるモール地区に赴くのだが、俺は事が終わってスリードッグを殴ろうとしたのはまた別の話である。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「バイタルは正常、麻酔も準備万端です」

 

「ではこれより、急性硬膜外出血における血液の抽出に移ります。メス」

 

隣にいる衛生兵は慣れていない手つきで私にメスを渡す。間違えれば、私の手を怪我させそうな勢いだ。

 

G.N.R.ビルプラザの中にある会議室の一室を改造し、即席の手術室に作り上げた。本来なら、vaultの中にある滅菌室で手術を行いたいが、それも出来ない。服だって戦前の手術衣を戦死した医者から貰い受けただけだし、手の消毒も戦前の消毒液で綺麗にしただけだ。

 

悩んでも始まらないと思った私はペンでなぞらえた所をメスで斬る。横にいる衛生兵に鉗子を取って貰い、傷口を開かせた。

 

「これより、頭蓋骨に穴を開ける。ドリル。」

 

頭蓋骨を見たのはいつぶりだろう?戦闘以外で、医療目的で見たのはvaultで脳腫瘍が出来た老人を手術した時だっけ?あの時は頭蓋骨の脳の部分を全て外して腫瘍を取り除いた。だけど、老人は歳の為か手術に耐えられずに亡くなった。家族は私を責めなかったが、私は自分を責めてしまった。自分の部屋で嘆いていたのを励ましてくれたのは他でもないユウキだ。あの時も親友として接していたけど、ユウキには悪いことをしてしまった。

 

「シャル先生?ドリルです。」

 

ふと、昔のことを思い出していて、目の前に出されたドリルの事を見ていなかった。

 

「大丈夫、患者の頭を押さえて」

 

ボタンを押してドリルを回す。ギュィィィンという音が聞こえ、動いている事を知らせた。ドリルを骨に当てると、ボタンを押して頭蓋骨を掘削する。脳溢血の場所は事前に戦前の技術である透視技術で分かっている。脳を傷つけないように慎重に掘削をする。すると、手応えがなくなり、ドリルをとめて衛生兵に頭蓋骨の粉を取るよう指示する。そして、垂れそうになる汗を拭き取って貰い脳内部を確認した。脳膜を切り、中を見てみると血が凝固している。

 

「じゃあ、さっき作ったものを貸して」

 

持ってきたのは、注射器に手術用のチューブを取り付けたもので、チューブの端を溜まっている血に近付けて注射器で吸い始める。チューブから吸い出された血は注射器に入り、見るからに泥々とした固形物が見えた。

 

vaultを飛び出して1ヶ月ちょっと。ユウキにはいつも助けてばっかり。お父さんを探すという目的のためにここまで来たけど、ユウキを危険な目に遇わせるのは正直辛い。出来ることならこんな事を辞めてユウキと平和に暮らしたかった。でも、何でお父さんはvaultを去ったの?それだけが疑問に思う。

 

「血を摘出、血圧は安定しているわね。頭蓋骨はこのまま開けたままにしておくわ」

 

「骨の代わりに何か入れなくても?」

 

「金属片を入れてみてもいいけど、そこから菌が繁殖するわ。まず脳膜を縫合してから皮膚を縫い合わせる。針を」

 

ここでお父さん探しを辞めたらユウキはどうおもうだろう。正直、私の父は生きていると思えない。生きていたとしても、私の事を捨てたんじゃないかと、どうしても思ってしまう。ユウキは否定したとしても、私を置いていったのは私を捨てたからじゃないかと時々思う。お父さんがなぜ出ていったのか知るために命を犠牲にする必要はあるのだろうか。

 

「縫合完了、スティムパックを」

 

これが終わったらユウキと一緒にthreedogからお父さんの事を聞いてみよう。そして、お父さんの元に行くか行かないかを決めなければならない。

 

私はそう思い、次の患者の手術の準備を始めた。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「・・・・もう絶対、メトロとか地下鉄には入らない!」

 

「地上でミュータントとやりあうよりまだましだろう?」

 

俺はモール地区のメトロの入り口近くで壊れていないベンチに腰かけて溜め息を吐いた。そして、ぐったりとした俺に言ってきたのは、G.N.R.ビルプラザで出会った衛生兵のナイト・リディアであった。彼女はパワーアーマーに赤十字マークが書かれた木箱を背嚢にくくりつけていた。

 

「パワーアーマーってすげぇ・・・・、俺も使いこなせればな」

背嚢にくくりつけられている木箱の量からして普通の人間なら背負うこととは出来ない。出来ても、スーパーミュータントぐらいなものだろう。

 

「ただ着るだけじゃ効果は発揮しないさ。コツがいるんだ、コツがね」

 

とT49dパワーアーマーを着るリディアは持っていたアサルトライフルを見た後、俺の改造したアサルトライフルを見た。

 

「あなたのアサルトライフルって凄いこと成ってるけど、いいなぁ」

 

「じゃあ、400キャップね」

 

「高っ!」

 

「そりゃそうだろう。最高の状態で改造を施されているんだ。そのぐらい金を取らないとね」

 

製品化するのなら、メガトンの入植者達を雇って製造業に従事させた方が良いだろう。工場を作り、雇用を大きくすればメガトンは拡張される筈だ。今は400キャップとバカ高いが、工場を作り、低コストに成功すれば、もっと安くなるだろう。だが、アサルトライフルの製造はまだ先の話である。

 

メトロの出口を見ると、長年放置されてボロボロになったエスカレーターがあり、そこを登れば、モール地区。D.C都市部でも有数の戦闘区域である。そこには独立記念碑が聳え、近くには博物館や議事堂がある。俺がここに来たのは、threedogから頼まれた仕事をするためである。その内容とは、記念碑を改造した通信施設を復旧することだった。一ヶ月前にスーパーミュータントの一大攻勢があり、流れ弾が塔の一番上にあるパラボラアンテナに命中した。それによって、キャピタル・ウェイストランド全域でthreedogの声が聞きづらく成ってしまったそうだ。そのため、threedogは歴史博物館に展示されている実物の月着陸船からパラボラアンテナを取ってきてくれと依頼された。そのパラボラアンテナを独立記念碑の上に取り付ければ完璧らしい。

 

そして、ビルプラザで出会った衛生兵のリディアであったが、モール地区の兵士に補給物資を届けるため、同行してくれた。だが、道中、行く先々はフェラルグールの群れ。多分、pip-boyに入れていた弾薬3000発無かったら、俺は今頃フェラルグールの餌になっていた。だが・・・・。

 

「ほら、早くぞ!」

 

目の前にいる兵士の弾帯は一発も減っておらず、見るとアサルトライフルには米軍が使用していた銃剣が取り付けられている。銃剣からはフェラルグールの血と思われる液体がベットリと付着していた。

 

「銃剣で戦えるなんてやっぱB.O.S.は化けもんだ」

 

「え、お前がフェラル全部撃ってくれたから撃たなくて済んだんだ。まあ、経費に煩いんだよ隊長は」

 

つまり俺は一人でフェラルを掃除して彼女は銃剣で幾つか倒してだけであった。俺はさっきよりも深く溜め息をつくと、やつれ気味にエスカレーターを上がる。

 

「それでも凄いと思うよ、あんたはあのフェラルの群れを殆んど撃退したんだ。大した腕だ」

 

「おいおい。そんなおだてると、木ならぬ記念碑に昇るぞ」

 

「本当のこと言っているんだが。まあ、ここから500m先に駐屯地があるからそこで弾の補給を受けて」

 

勿論有料だけどね、と付け足すリディア。有料という言葉が恨めしく思うが、弾薬が残り1000発ほど。何処かで補給すれば何とかなるだろう。

 

エスカレーターを登りきると、見えてきたのはアメリカの中枢に位置し、栄華を誇るアメリカ合衆国の独立記念碑があるモール地区だった。リンカーンの銅像が眠る所から独立記念碑、議事堂にいたる道。かつては世界の覇権を握っていたアメリカであったが、現在は面影だけを残すのみとなっていた。200年の歳月を経て劣化したビル群、大戦争後に中国軍との戦闘に備えて使われていた塹壕はスーパーミュータントとB.O.S.との戦いに利用されていた。

 

「こっち、ついてきて」

 

リディアは屈み、俺も姿勢を低くしてライフルを構えて進む。スーパーミュータントの罵声や銃声、爆発音が聞こえるが、焦らず慎重にリディアの後ろをついていく。すると、独立記念碑の周りには、コンクリートの壁が作られ、小さな駐屯地と化していた。

 

「何処の部隊所属だ?」

 

駐屯地にいる兵士がリディアに問いかける。

 

「G.N.R.ビルプラザの分遣隊」

 

「んで、そっちは?」

 

兵士は俺を指差す。

 

「アンテナの修理に来た技術者。一度技術博物館で資材を調達しなきゃいけないみたいだけど」

 

「おいおい、彼処はスーパーミュータントの巣窟だぞ。行かない方が身のためだ」

 

嘘だろう・・。

 

俺は頭を片手で押さえる。忘れていた。あそこには2mの体躯でどう猛なミュータント共が大量にいるのだ。しかし、どっちみち“行かない”という選択肢は残されていない。俺は駐屯地にいくつかの予備部品やいらない武器、食料等を置くとアーマー類を外してvaultスーツになる。そしてpip-boyから潜入用に持ってきていたあるものを取り出した。

 

「あんた、それって!!!!」

 

リディアはそれを見て唖然とする。俺は不気味な笑みを浮かべてその服を広げた。

 

「中国軍の黒鬼ステルスアーマー・・・・だ!!」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

潜入作戦。英語で言えば、スニーキングミッションだろう。それが認知されるのは冷戦から。それまでにも枢軸国の基地を破壊工作するコマンド部隊がいた。しかし、潜入と呼ばれる特殊な作戦が数多く展開されるのは冷戦だ。大国同士が戦争をすれば、どちらも壊滅的な被害を受けるのは分かりきっている。第二次大戦のような総力戦体制は自国の経済を衰退させるものだからだ。さらに、核ミサイルが開発されれば、大きな軍事行動は控える。戦争が勃発すれば、互いの持つ優秀な大量破壊兵器を使用するから、冷戦時代には“CIA”や“GRU”、“MI6”などが諜報活動を駆使した。その中でも敵地にある軍事施設を叩く作戦があった。

 

誰にも見つからずに、目標を破壊して帰還する。某裸蛇のアクションゲームも潜入ミッションだろう。

 

俺は中国の特殊部隊が使用していたステルスアーマーを着る。それを見ていたリディアは信じられないような目付きで俺を見た。ゲームではアラスカ奪還作戦のシュミレーションをクリアすることによって某所の基地倉庫の扉が開き、ロカクされたアーマーがある。何故、それを持っているのかと言うと、自分の家に保管されていたからである。

 

「まさか現存しているものを持っているなんて・・・」

 

「200年前に破壊された中国軍の戦車にあったんだ。まだ光学迷彩も使えるぜ」

 

嘘八百を言ってスイッチを入れると、ステルスボーイと同じ音を出して俺は見えなくなる。完全な透明とはいかないが、光の屈折を変えて見えなくしているのである。

 

アメリカ軍は中国軍のステルスアーマーに対抗して様々な兵器を運用する。あまり使用されているのは見掛けないが、リコンアーマーも中国軍のステルスアーマーに似せて作られた。しかし、肝心の光学迷彩は使えない。しかし、思わぬ発明によって光学迷彩が生まれた。ステルスボーイである。しかし、中国のステルスアーマーよりも性能は悪かった。極悪と言ってもいい。

 

何故ならステルスボーイには人間の精神を乱す特殊な放射線を使用者に照射する。最初は何にもない。ただ神経質になったり、ただ不安に駆られることもある。しかし、長期使用だとガランと変わる。鬱病や統合失調症、精神的な病を患う。その点、中国のステルスアーマーは搭載されるバッテリーで稼働し、長期に渡って運用しても使用者の精神を壊すことはない。ステルスボーイを使用したアメリカ特殊部隊の中に精神異常の兵士が多数出たが、陸軍省は「過度のストレス」を原因とした。原因を知っていても「勝利のための必要な犠牲」とするだろう。

 

一度ステルスアーマーの電源を落とすと、ガンベルトを取り付ける。そしてpip-boyから黒のリコン・ベストを取りだした。Eagle RRV(ローデリアン・リコン・ベスト)と呼ばれるもので、偵察兵用に軽量化が図られたベストである。MODで増やした物だが、ステルスアーマーと合わせると、何処かのサイボーグ忍者である。それに弾倉を幾つか収め、アサルトライフルのサイレンサーをキツく締めた。

 

「これで日本刀があればいいんだが」

 

「日本刀?・・・・昔スターパラディンクロスの戦友に使っていた人がいたらしいな」

 

・・・・あ、それ俺の母親じゃん。

 

「どんな人だった?」

 

「スーパーミュータントを一刀両断したり、射撃の腕がぴか一だったり、えっと最後に確認されたのはvault101の近くだったらしいけど・・・名前は・・・・」

 

「椿・・・階級はナイトだった」

 

「そう・・・て、なんであんた知ってる?」

 

これは言ってもいいのだろうか?「俺の母親だ」なんて言ってもな・・・。

 

なんかマザコンみたいで嫌だ。

 

「か、風の噂で」

 

リディアの疑う目線をよそに俺は駐屯地の中から銃窓に視線を動かす。すると、ミュータントが此方に来ているのがわかった。

 

「十二時方向にミュータント!」

 

「!!」

 

俺は持っていたアサルトライフルでミュータントの頭を狙い引き金を引いた。放たれた徹甲弾は硬いミュータントの皮膚を貫通し、脳を破壊する。仲間が倒れたことに怒ったミュータントは雄叫びを上げてボルトアクションを俺の方向に乱射し始めた。

 

「後ろから回って駐屯地を出て。今ならミュータントを引き付けられる。早く行け!」

 

リディアは俺の背中を叩く。俺はそれを聞いて急いで駐屯地の中を突き抜け、後ろの入り口から外に出た。そこからステルスアーマーの電源を入れて見えなくなると、腰を屈めて走るように足を動かす。

 

「ニンゲンメ!シネ!」

 

ミニガンが駐屯地の防護壁を削り、怒号と叫び声がここまで響く。すると、一人のB.O.S.兵士がミサイルランチャーを構えてスーパーミュータントに発射する。ミサイルは燃料を燃やし、スーパーミュータントの腹に命中する。弾頭の接触起爆剤が爆発してスーパーミュータントの上半身をゴッソリと奪う。

 

「死ぬなよ・・・!」

 

俺は駐屯地にいる名の知らない兵士達に心の中で応援すると、技術博物館までの道程を走った。何体かのミュータントを始末していくと、技術博物館が見えてきた。ボロボロになった広告を見てみると、新しく展示された月探査機の広告のようだ。俺は身長に中に入って銃を向けつつ歩く。

 

「ソレハ俺ノダ!返セ!」

 

「ウルサイ、死ネ!オマエ」

 

どうやら喧嘩(というか殺し合い)を始めたらしく、俺は腰を屈めて階段を昇る。入って中央には木造のレシプロ飛行機が置いてあった。もしかしたら、つかえるんじゃ?と思うが馬鹿馬鹿しいので辞めておこう。命が幾つあっても足りない。

 

階段を上り角を曲がり、そこにはなんとvault体験コーナーと掛かれた看板が見えた。

 

「戦前にvaultがやってたものか・・・・」

 

中はvaultを模して作られてはいるものの、年月が経過していて、vault101の面影はみられる程度にしか残っていない。塗装が禿げて、足元も埃っぽい。光学迷彩を節電の為に切り、腰を屈めて内部に入る。すると、内部のセンサーが起動し、通路の電気が点灯する。

 

『ようこそ、vault体験エリアへ。首都圏には幾つものvaultを建設中です。核戦争を凌ぐため、vaultに入りましょう』

 

収録されたナレーションの男の声が通路に響き、俺はスーパーミュータントが来ることを考えて小走りで通路を走る。

 

『vaultではリサイクルエリアがあり、合成食物を生成するプラントや動植物を育成するプラントも存在します。』

 

『子供もしっかりとした教育を受けられ、最高水準の学習システムを作っています。更に、ゲームコーナーにはアクティビジョン提供の各種ゲームなどを取り扱っています』

 

『シェルターに入っても最高の生活水準を保ち続けます。娯楽施設には世界各国から取り揃えた映画を収集しており、・・・』

 

通路を通る度に男のナレーターの声が響き、耳を手で押さえたくなる。俺はvaultの未練がまだ残っている。何度も帰りたいと思ったことはあるし、vaultに居たときの夢だって見ることもある。だが、起きたときには汚い金属の天井を見る。これは何をしようとも変わらない。

 

『ご来場ありがとうございます、vault-tecをこれからもよろしく・・・』

 

そう言おうとしたアトラクションスピーカーだったが、俺が持っていたアサルトライフルを機器にぶち当てて煙を吹かせ沈黙する。ミュータントの姿が見えないことを確認すると、扉を開けて博物館の奥へと踏み入れた。「宇宙開発、技術コーナー」と書かれた所に出ると近くにあったあるものが目に入る。

 

『これは米軍が開発した試作軍事輸送機の模型です。XVB02“ベルチバード”は垂直離着陸が可能な航空機で、装甲を施した機体は極めて耐久性が高く、多彩な攻撃兵器や防御手段をを搭載することが可能です。過去に開発された同種の航空機としてはもっとも進化したもので、陸軍省は2085年までに実戦配備を予定しています。』

 

ティルトウイングが折れたその模型はまるで持って行けと言っているようにも見えた。いや、ただ俺が欲しいだけだろうと思う。

 

pip-boyの中に入れて「壊れたベルチバードの模型」と表示されるのを確認して階段を下る。ここはさっきよりも瓦礫が多く、通路は塞がっている。そしてスーパーミュータントの足跡が響いていて、俺はアサルトライフルのグリップを掴みながら、腰を屈めて進む。

 

「ニンゲン食イタイ」

 

「外デ食ッテ行ケ」

 

足跡が此方に接近し、俺はスーパーミュータントが来ることを予見してライフルを向ける。ドス!ドス!という足音を響かせて此方にやって来た。緑色の肌に2mはあろうかという体躯。凶悪な顔で通路を歩くが、怪訝そうな表情で鼻を動かす。

 

「ニンゲン臭イ・・・」

 

臭覚もパワーアップしてんのかよ!!

 

焦った俺はダブルタップでライフルの引き金を引いてミュータントの頭を粉砕する。消音器を取り付けても巨体が倒れれば、それなりの音がする。倒れた音を気が付いて、ミュータントが此方に迫っていた。

 

「ナンダ!ドウシタ?」

 

来ようとするミュータントの後目にゆっくりと階段の方へ歩く。すると、月に行ってきたロケットを見つつ螺旋階段を警戒しつつ降りる。異変に気付いたミュータントを殺しても良いが、この際都合がいい。異変があり、そこに注意を向ければアンテナを回収しやすくなる。異変に駆けつけるミュータントに見つからないように、急いで月着陸船まで行く。

 

「あれか・・・」

 

スーパーミュータントと同じぐらいの大きさのパラボラアンテナ。そしてその倍近い月着陸船。これを取り付けるのだから、広範囲な放送も可能になる。

 

光学迷彩のスイッチを入れつつも、アンテナを工具で取り外して床に置く。置くときも余計な音を立てないように慎重に置くと、腕に取り付けたpip-boyを覗き、質量計算を行って、pip-boyの四次元空間に入るかどうかチェックする。どうやら総重量だけで40wgあり、一応入るだろう。機械を操作してpip-boyに入れると、俺は来た道を引き返した。

 

入った道を同じようにたどり、スーパーミュータントに悟られないよう闇に隠れつつも、出口を目指す。やはり日本刀を背中にあれば、確実にサイボOグ忍者だった。・・・・いや、待てよ。これをもしシャルに着せたらどうなるんだ?

 

あるプレイヤーは体の線が結構見えるとサイトに書いていた。そしてまたとあるプレイヤーは女主人公でやるとき必ずステルスアーマーを着せる。アングルを変えると、キャラクターのお尻が・・・・・・・・・。

 

いかんいかん。落ち着け俺!!

 

考えてはいけない!!心頭滅却!

 

俺は煩悩を消し去ろうと違うことを考えるが、シャルに着せたらどうなるのだろうという想像は消し去ることは叶わなかった。

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「リディア、スパナ取って・・・・・」

 

「はい。って大丈夫かお前」

 

パワーアーマーを着てないリディアは良く傭兵が好んで着るカーゴパンツと白のTシャツを着て、俺にスパナを渡す。俺は極力リディアの方向を見ないようにスパナを受け取った。

 

「そ、そうだ。・・・・訂正しよう。後の作業をやってくれるなら、メトロのグールを全部掃討する」

 

「無茶言うな」

 

リディアは呆れたようにため息をついて言う。俺はその反応にやけっぱちで答えた。

 

「ここよりメトロの方がまだマシだよ!!なんだよ、ここ!何で中国軍はここを壊さないわけ!ふざけんなよ中共め!チャン議長の髭を根こそぎ引きちぎるぞ」

 

「ここなかったら、放送できないだろ」

 

「GNRにあるだろ!」

 

「ないよ、全部吹っ飛んだ」

 

「くっそ!何で独立記念碑のてっぺんでアンテナつけなきゃならんわけ!ふざけるなぁ!!」

 

俺は涙目で叫び声をあげる。

 

そう、俺はここ独立記念碑に作られた放送設備を修理している。設置されたアンテナを付け替えて新しく持ってきたアンテナを取り付けるために。取り付けることには何ら問題はない。問題なのは、高さだ。そう、俺は高所恐怖症だった。

 

生前はそんなに高所は怖くない。だが、どうだろう。vaultの閉鎖空間で生活していれば、様々な弊害がある。俺は高いところがとんでもなく怖くなっていたのだ。更に一度、記念塔にある鉄塔によじ登って下を見る怖さはウェイストランド一の怖さだ。デスクローとどっちが怖いと言えば、俺にはどちらを取ればいいか分からない。

 

「ユウキ、早く終わらせろ。そろそろ飯の時間だ」

 

「もう勘弁してくれぇ!!」

 

スーパーミュータントは意外にも俺を撃たなかった。それは撃つに値しないのか、それとも哀れんでくれたのか誰にも分からない。

 

 

 

 

こちらはギャラクシー・ニュース・ラジオだ。今日もウェイストランドのニュースをお届けするよ。やっとアンテナが修理できた。多分、この放送を1ヶ月ぶりだと思う野郎もいるんじゃないかな、そうだろうとも。俺の声がなくて寂しかったって!嬉しいね。じゃあ、頑張らないとなぁ!そうそう、今回感謝しなきゃなんねぇのはあのvault101の奴ら。ああ、男の方だ。いやぁあいつは良くやってくれた。みんな、あいつを見掛けたら誉めちぎって誉めちぎって、なんか奢ってくれや。Threedogからの頼みだ。さて、音楽を流そう。・・・・そうそうこの前101のアイツが来たときに良いものをくれた。とある日本の歌手の歌らしいんだが、俺は知らない。だがさっき聞いたが良い曲だった。皆も聞いてくれ。マミ カワダ PSI missing。






確か、曲名なら大丈夫でしょう(汗

歌詞が入っていればやばいですが、歌手と題名を言うだけなら大丈夫なはずです。

ちなみに作者は感想をもらうと三倍のスピードでタイプします。まるで彗星のように・・。何かしらの反応をしてもらうと半狂乱で返事をおくります。ご感想お待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。