主人公は家にMODで導入してしまったがために、弾薬プレス機がおいてあり様々な弾薬を持っている。
「そう言えば、これはどういうことに使えるんだっけ?」
「制御チップの事?」
休憩で川辺の畔で腰かける俺はpip-boyから核爆弾にくっついていた制御チップを取り出した。どういうわけか、制御チップをpip-boyに収納すると表示される、
〔pip-boyカスタマイズアイテムをゲットしました。〕
という画面。
一応、シャルのpip-boyに入れてみても同じ項目が出てきた。Itemの項目にはAidとして入っている。一応選択してみると・・・・
〔pip-boyMODを付けます。二度と外すことが出来ません。よろしいですか?〕
何だこれ?つーか、pip-boyMODて何ぞや?
仕方ないのでpip-boyのhelpを見てみた。
『pip-boyMODとは、核戦争後のサバイバルで回収した高性能な制御チップや軍事用の管理ソフトをpip-boyにインストールできます。それによって、貨物キャパシティの拡張、レーダーの高性能化、アンテナの強化、護身用電撃武器などが使用可能となります。最大まで貨物キャパシティを引き上げることで車両の収納も可能となり得ます。』
マジかよ!
つーか、これをゲーム中に導入すればいいのに。
内容的には回収したテクノロジーを組み込んでpip-boyを拡張していくので良いのだろう。一応、性能と名称はこんな感じである。
・HydraⅤ(ハイドラ5)(type)軍用制御チップ
(Effect)演算処理up
WG100増加
レーダー索敵範囲拡大
(説明)超高高度爆撃投下型核弾頭に使用される起爆制御チップ。複雑な軍用アルゴリズムを採用し、中国軍のハッキングをブロックできる。
〔pip-boyMODを付けます。二度と外すことが出来ません。よろしいですか?〕
→〔yes〕 〔no〕
〔インストール中です・・・・しばらくお待ちください〕
「pip-boyって改造出来たんだね。知らなかった」
俺がそう言うと、驚いたように目を見開いた。
「知らなかったの?」
「え?」
何故か俺以外は皆知っていました。理系のバカヤロー!!
※※※※※※※※※※※※※※※
MODをインストールして性能が格段に上がった後、俺とシャルは歩いてスーパー・ウルトラ・マーケットに到着した。
「敵の姿は確認できず・・・・。それにしても、あれはないな。」
俺は双眼鏡で店の入り口を見る。シャルに渡すと、俺と同様な反応を見せた。
「何が面白いの?」
ごもっともである。まるで人形のようにさらされた死体。天井から針で串刺しにしてペイントスプレーで色んな模様を書いている。レイダーが着ているような防具を着て、首を落とされて宙吊りになっているのを見ると、仲間内で「私刑」にしたようだ。
因みに俺達は川辺の近くで匍匐の状態で店を監視している。ここならば、敵がいてもすぐ逃げられるし、仮に川の獰猛な生物であるミレ・ルークがいたとしても走れば逃げられるだろう。それに、pip-boyにはレーダーがついているから、近づけばすぐにわかる。
「とてもじゃないが、何か食料はあるのか?」
「ないよ。薬もない」
「モイラに嘘の報告をするのも気が引ける。だからと言って入るのはちょっと抵抗ある。・・・・・そう言えば、シャルのSkillやSPECIALって見ていないよな」
いざ、戦うと思ってみれば、シャルの特性を理解していないとダメではないか。
「ならユウキのも見せて」
俺はシャルの肩に触れるぐらい近くに寄ると、シャルのpip-boyを覗く。
4:Strength(筋力)
8:Perception(五感)
4:Endurance(耐久力)
7:Charisma(カリスマ性)
10:Intelligence(頭脳)
6:Agility(俊敏性)
8:Luck(運)
60:Barter(商い)
15:Big guns(重火器)
60:Energy weapons(レーザー武器)
25:Explosives(爆発物)
80:Lockpick(鍵開け)
99:Medicine(医療)
20:Melee Weapons(接近戦武器)
20:Repair(修理)
99:Science(科学)
10:Small guns(小火器)
80:Sneaking(隠密)
40:Speech(会話能力)
40:Unarmed(素手攻撃)
意外にも俺と比べて運がいいし、頭も2つも違う。まあ、理系だから?それに医者だからか医療の面も発達しているし、科学などにも長けている。科学がいいのか、光学兵器の取り扱いにも慣れている。これなら武器もそれなりのが期待できる。
「シャル、レーザーピストルを渡しておく。あと、プラズマ手榴弾とステルスボーイも」
シャルに武器とステルスボーイを渡す。因みにステルスボーイは家のバンカーに置いてあった。ついでに、シャルはコンバットアーマー、俺は改良型vaultアーマーである。装備を確認し終わると、一度、匍匐から腰を屈めた状態で店のすぐ近くまで接近する。店の窓は割れたり、焦げていたりと荒れ放題。外から中を見ることは出来ないが、中から外を見ることは出来ないだろう。
「シャル、合図をしたらステルスボーイを点けるんだ。そしたら、俺のあとに続いて来てくれ。いい?」
「うん、大丈夫」
シャルは小さく頷くと、持っていたレーザーピストルの動作確認を行う。俺は持っていたアサルトライフルのコッキングレバーを引いて、弾倉から次弾を銃身に装填する。そして、先端に付けられたサイレンサーを緩まないように締める。
そしてホルスターに収まった消音器付き10mmピストルを引き抜いてスライドを引いて同じように次弾を装填した。
「よし、じゃあ行こう」
ステルスボーイを起動させ、俺達はスーパー・ウルトラ・マーケットに入っていった。
最初に入った印象は薄暗い、カビ臭いという物だった。一応、入り口からの日光が反射して見渡せるが、目が慣れていなければよく見えない。
俺は腰を屈め、シャルを連れて入って直ぐのカウンターに侵入する。
「シャル、そこの冷蔵庫から食糧を」
「うん」
シャルが食糧を回収している間、俺は近くにあった弾薬箱からエナジーセルを一掴みと5.56mmライフル弾、マガジン一個分を回収した。
「お、ウィスキーみっけ。これも持ってこ」
背嚢の中に品質の良さそうなウィスキーの瓶を放り込む。一応、布にくるまれて置いてあったから、誰かが残しておいたのだろう。
「棚にスペアパーツあるけど、持ってく?」
「必要になるかもしれないから、手当たり次第に持っていこう。」
シャルにそう言うと、冷蔵庫の近くにあった棚のスチールボックスに入っている廃棄部品やワンダーグルー、洗剤など使えそうなものをpip-boyに仕舞っていっている俺はアサルトライフルを構えて周囲を警戒するが、あまりレイダーは寄ってこない。意外と、ステルスボーイなくても行けそうじゃん。俺はバッテリー消費を抑えるため、シャルにステルスボーイの電源を切るよう言い、自分もステルスボーイの電源を切った。
すると、シャルは全て回収し終わったらしく、親指を立てた。次の食糧保管場所を探すため、中腰になって扉を開く。周囲にはレイダーの姿がなく、直進すれば、従業員の詰所らしき場所にたどり着くだろう。アサルトライフルを構えながら、足音をたてずにゆっくりと詰所に向かう。
「ぎゃははは!!それでその奴隷商人はどうなった?」
「俺達が飯食ってるところ見てションベン漏らしてやがんの!」
「それ本当に奴隷商人か?」
「知らねぇよ、ジェットでぶっ飛んで辺り構わず殺しまくってたんだからよぉ」
詰所ではレイダーが談笑しているらしく、レイダーの馬鹿げた笑いが響き渡っていた。ちょうど品物の棚が切れる所にレイダーが背中を向けて談笑を聞いているらしく、こちらに無警戒だった。
「シャル、援護頼む」
俺はそう言うと、腰のガンベルトに付けられたコンバットナイフを抜くと、静かにレイダーに忍び寄る。
すぐに、レイダーの口を押さえてこちらに引きずり込むと、首筋にコンバットナイフを挿し込み、床を赤く染めた。
「むぐ!!ん!!・・・・・」
最初は抵抗していたが、直ぐに頸動脈を斬っていたため、直ぐに抵抗しなくなり、動きが止まった。抵抗しなくなったところで体を引きずって、持ち物を物色できるよう後退する。
「アサルトライフルにグレネード?以外と物持ちいいな。お前」
死んだレイダーに話しかけるが、当然返事はしない。アサルトライフルはぼろぼろかと思ったが、一通り手入れは行き届いていて、レイダーが持つには相応しくない。どっかの傭兵から奪い取ったのだろう。
「ジェットか、・・・・一応持っとこう」
「だめ、絶対」
「使わないよ、・・・・それってこの世界でも標語に?」
この世界?と首を傾げるシャル。まあ分からなくてもいい。レイダーの私物をpip-boyに突っ込むと、改めて詰め所を見る。レイダーが3人ばかり、そして隣の部屋の薬局には4人のレイダーがいた。数では負けているが、奇襲攻撃によって此方が優位に立てるだろう。
「シャル、プラズマグレネードを使って。俺は閃光手榴弾を使うから耳を塞いでおいてくれ。」
ベストに引っかけていた閃光手榴弾を手に取ると、ピンを引いて安全レバーを押さえたままにした。そして・・・・
「今だ!」
シャルと同時に投げ、プラズマグレネードはちょうど従業員の詰め所へ。そして閃光手榴弾は薬局のカウンターの中に転がり落ちた。
まず最初に閃光手榴弾が起爆し、強烈な閃光と共に鼓膜を揺さぶるような轟音が周囲を響かせる。そしてプラズマグレネードはグリーンの光を放ちながら、大爆発を起こし、レイダーの数名を液体に変えていった。
「move!」
そう叫び、閃光手榴弾を投げた所へ制圧射撃を加える。その銃撃の中で視覚と聴覚を奪われたレイダーは遮蔽物に隠れることも出来ずに蜂の巣にされる。その間にシャルは詰め所に飛び込んで、クリアリングを行った。
「く、くそ!」
爆風を受けながらも生き延びていたレイダーは持っていた中国軍ピストルを構えて撃とうとするが、シャルの持つレーザーピストルの赤いレーザーが眉間に命中し絶命した。
「薬局の鍵を見つけた!」
「よし、そっちに行って・・・ってトイレから来やがった!!」
詰め所に行こうとした瞬間、トイレから出てきた数名のレイダーがこちらに向けて銃撃を加えてきた。おれはその時通路にいたため、まるでカウンターにダイブするように詰め所に入った。
「あっぶね!シャル、これを投げろ!」
シャルに手榴弾を手渡すと、彼女はピンを抜いてレイダーに投げつける。手榴弾はレイダーのいる丁度真上で起爆し、レイダーは破片をもろに頭に受けた。
「よし、シャル。俺はこの通路からって・・・うわ!」
俺はアサルトライフルを構えながら、薬局へと通じる従業員通路の扉を開けた。だが、その扉の向こうには、バットやアックスを構えたレイダーの姿があった。目をあわせて互いに驚くが、先に動いたのは俺の方だ。
俺は勢いよく扉を閉めて、そのまま倒れ、足で開かないように固定する。そしてアサルトライフルを扉に向けて引き金を引き続けた。扉の向こうにいたレイダーはひとたまりもなく、扉の向こうの見えない敵から銃弾の嵐が降り注ぐ。
さらに仕上げと言わんばかりに、腰に引っかけていた手榴弾を通路に投げ込んだ。狭い通路で手榴弾を爆発させた場合、逃げ場もなく一瞬で破片の雨にさらされる。銃撃で運良く生き残っていても、手榴弾でその命は費えてしまった。
「やっぱ、俺って運悪い。シャル、そっちはどうだ?」
「いま、三人目を仕留めた」
「よし、一気に畳み掛けるぞ」
そこからは掃討戦に移行していた。貧弱な装備とジャンキーの組み合わせは悪く、それに相対して最良の装備に最良の能力をあわせ持った俺とシャルはこの時無敵に近い。多分、対する敵が傭兵やスーパーミュータントなる巨人ならば、少し状況が違っていただろう。だが、戦闘は既に此方が優勢だ。
「望みが絶たれた!!」
「逃げろぉ!!」
叫び声を上げて逃げるレイダー。その背中に鉛弾を浴びせる俺達。非道かも知れんが、見逃した相手が明日俺たちを傷つける場合もある。悪は成敗しなくてはならないのだ。
「た、助けてくれ・・・・グヘッ!!!」
俺は助けを乞う女レイダーに10mmピストルを向けて引き金を引いた。
「ユウキ、助けを求めていたんじゃないの?」
後ろにいたシャルは俺の行った行為を見て怪訝な顔をした。
「シャル、彼らはレイダーだ。無法者で快楽を求めて殺人を屁とも思わない奴らだ。そんな彼らに同情は必要ない」
「だからって・・・!」
シャルは俺に悲しそうな目を向けた。
「ああ、戦意のない者を撃ち殺す何てどうかしていると思っているね。俺だってこんなことしたくはないさ。でも、ここには警察も裁判所もない。法律だってここには存在しないんだ。彼らをどうやって裁くんだ?天にお願いをするのか?ここで彼らを裁けるのは俺達だけ。それに、彼らを逃がしたままにしておいたらどうなると思う。また、罪のない人間を殺すんだぞ。自らの快楽のためにだ。だったら、俺達がケリをつけなければならない」
俺はそう言って今まで生きていたレイダーの持ち物を探る。
「ほら、ジェットにサイコ。全て麻薬の類いさ。薬物汚染は神経洗浄で綺麗になくなるんだよな?」
「ええ・・・・」
「だが、彼らは治療よりも快楽を選んだ。それだけさ。シャルが無抵抗なレイダーを殺したくないならそれでもいい。だが、奴等はそれに漬け込んで他の人間を殺すというのを忘れるな」
「・・・・・」
シャルは顔を俯かせ黙ってしまった。
この世界は非情である。法もなければ正義もない。それがウェイストランドだ。シャルはまだvaultが抜けきれていない。戦闘に関しては結構いい動きをしていたが、まだ逃げる奴等を撃ち殺すにはためらいがあった。
だが、慣れなければならない。そうでなければ、奴等に飲まれ、命を絶つことになるかもしれない。
俺は俯くシャルの肩を優しく叩くと、声を掛けた。
「さっさと終わらせよう。彼らの死体から使えそうなものを取って薬局に行ってみよう。何か在るかもしれないし。」
「・・・・・・うん」
シャルはまだ考えているものの、死体から武器や弾薬を回収し始めた。俺はさっきいた詰め所と薬局のカウンターを漁る。そうしたら、アサルトライフル2挺に中国軍ピストル一丁、手榴弾にボトルキャップ地雷を回収した。
「お、“ゴミの街の馬鹿な商人の話”じゃん。一応持っていこう」
“ゴミの街の馬鹿な商人の話”は主にBarter(商い)のskillを上げるのに重宝するものである。
そう言えば、十歳の誕生日にアマタがくれたんだっけか。一応、勉強にはなったけど・・・。シャルにグロックナッグを何であげたんだ?やっぱり父親の望みかね?
俺は父から聞かされたジェームズの世紀末伝説を思い出す。所謂、オープニングで「イワッシャー!」ていう声で、ジェームズが「ワタタタタタタ!!!・・・・・お前はもう死んでいる」とレイダーに言って、「ひでぇぶぅ!!」と叫んで爆発したのは、記憶に鮮明に残っていた。
もしかしたら、シャルにもそう言う遺伝子があるのかもしれない。
「・・・何を考えているの?」
「シャル、俺はお前をエスパーだと思うんだけど、合ってるよな?」
「さあ?」
「はぐらかした!?」
シャルのエスパー疑惑はともかくとして、俺達は薬局の奥にある備品倉庫に到着した。
「シャル、開けてくれ」
「あかないよ」
「え?」
見てみるとピッキングをした後があり、鍵穴が見事にぶっ壊れていた。
「あらら。じゃああれを使うから、さっきのソード・オフ貸して」
俺はシャルに言うと、シャルはpip-boyからストックと銃身を切り詰めた水平二連散弾銃であるソード・オフ・ショットガンを取り出して俺に渡してきた。それに俺は青い12ゲージのシェルを二発取り出して装填した。
「ユウキ、それは?」
「ん?これはスラグだよ」
「スラグ?」
所謂、一粒弾と呼ばれる大口径ライフル並みのショットガンの弾である。ショットガンには幾つか弾の種類があるものの、部屋に突入する際、扉を破壊するために使用されるのだ。fallout3では登場してはいないものの、fallout:newvegasでは登場していた。
「じゃあ、扉をぶっ壊すから離れて」
ソード・オフ・ショットガンを蝶番に向けて放ち、もう一ヶ所にある蝶番にも一発放った。
「おりゃ!」
アサルトライフルに持ち変えて、足でドアをおもいっきり蹴飛ばす。経年劣化していたためか、直ぐにドアは壊れ、床に伏した。
「シャル、使えそうな薬品を集めてくれ」
「うん、じゃああの棚を探ってみる」
俺は入って左側を担当する。幾つもの棚が置いてあり、そこにはスチールのボックスや店の備品など数多くのものが置いてある。
「センターモジュール見っけ。・・・・pip-boyには付けられないか」
地雷の制御装置としても使えるが、pip-boyのmodには使えなかったようだ。他にも廃棄部品や洗濯用の洗剤など数多くの物を収集する。
ゲームをやっていると、必要ないものはそのまま棄てておいていたが、それらが生活に必要な物だと分かると、そうそう荷物を減らすために捨てるのは惜しいと思ってしまう。洗剤なら、服を洗濯する上で必要で、鉛筆やクリップボードも必要なのだ。
弾薬等は5.56mm徹甲弾が15発、10mmが30発程度集まった。そして、
「これって何?」
「ヌカ・コーラ クワンタムじゃねーか。」
ヌカ・コーラ クワンタムは核戦争当日に新発売された希少価値の高い清涼飲料水である。しかし、これにはストロンチウム放射能同位体が入っており、体内で被爆してしまう。外観は青白く光るヌカ・コーラのボトルだが、ギルダーシェイドのある男の報告では「尿が青く光り、三日発光し続けた」そうだ。因みに製造する前のモニターでは10人以上も放射線障害で亡くなっている曰く付き。しかも、ギルダーシェイドに住むある女性はこれを兵器化できるとか・・・・。
「飲めるの?」
「飲んだら、逝けるよ?」
「・・・・止めとく」
だが、売れば以外と儲かるし、兵器化できるので一応pip-boyにしまう。一通り収集し終わった時、天井に設置されたオンボロスピーカーから音が出始めた。
〔ガ~~ピ~~~!!!おい!帰ったぞ・・・・・、〕
スピーカーから流れてきたのはレイダーの声だった。薬局の奥にある倉庫に入ると、ゲームではいつもレイダーが登場する。今も絶好のタイミングであった。
「シャル、プロテクトロンを起動させて防犯モードを起動させるんだ。ソフトはいつの使っている?」
シャルは近くにあるパソコンに張り付き、いじり始める。シャルはカタカタとキーボードを打つと、プロテクトロンのソフトが何時なのかが表示された。
「ソフトは2076年12月更新よ」
「なら、中国軍侵攻対応プログラムが書き込まれている筈だ。それを有効にして、ターゲティングパラメーターで俺達を味方にするんだ」
プロテクトロンには中国軍が侵攻してきた時に備えてそう言った攻撃モードが付けられている。76年には敵国として認識されていたので、そう言ったモードがあるのは仕方がないことだ。他にも治安維持モードや警備モードが存在し、ソフトウェアごとに行う仕事も違う。ロボットなどが店番など商品売買を行う場合は物品取引売買モードをインストールしなければならないが、ここは旧ワシントンD.Cである。欲しいソフトがあれば、本社に突撃して探してくれば良いだけの話である。
シャルはコンソールでコマンドを打ち込み・・・・・いや何をやっているのか分からないので割愛しよう。だが、シャルが打っている間、レイダーが接近し始めていた。
俺はアサルトライフルのサイレンサーを取り外し、弾倉をチェックする。弾倉の残りはバンカーに残っていた数万発の内の500発をpip-boyに入れていたので困ることはない。
倉庫から出て、カウンターに予備の弾倉を幾つか置いて、近づいてくるレイダーに照準を合わせて引き金を引いた。
装填されていた5.56mmホローポイント弾はレイダーの顔に命中し、後頭部が破裂するかのように脳漿を飛び散らせた。
「新鮮な肉だぁ!!」
仲間が悲惨な状態で殺されたのにも関わらず、中国軍将校の剣を振り回してこちらに走る。
ミニガンがあれば其処ら中を蜂の巣にして、突撃してくるレイダーを肉片に出来るのだが、精神上宜しくないし、取り回しも悪いため持ってきていない。
親指でアサルトライフルのセレクターをセミオートからフルオートに直すと、引き金を引いて、殲滅していく。だが、隠れているレイダーを見ても残り10人前後。遮蔽物に身を隠して、見る限り骨が折れそうだと、首をポキポキと鳴らした。
「ユウキ、出来たよ」
シャルは中腰で薬局のカウンターに腰を下ろす。
「どうだった?」
「見れば分かる」とまるで某マッドな科学者っぽく怪しげな笑みを浮かべた。シャルってそんな顔出来たの?
すると、油を差していないような変な機械音と共にそのプロテクトロンは歩いてきた。
「合衆国に栄光あれぇぇ!!!!」
あれ、Mr.ガッツィーじゃね?
※※※※※※※※※※※※※※※
「ハッハッハ、祖国アメリカに敵なぁぁぁし!!逃げるがいい中国兵め!」
「望みが・・・あぁ!!!・・・・」
声だけ聞けば、Mr.ガッツィーと戯れるレイダーと思う筈だ。しかし・・・・。
「何で、プロテクトロンがMr.ガッツィーの声なんだよぉ!!」
最後に生き残ったレイダーはそれを叫んで息絶えたのであった。
・・・・・・・・で、その後。
「errorが発生しました。errorが発生しました。errorが・・・・ぴゅ~・・・」
と煙を吹いて動かなくなるプロテクトロン。ボディーには無数の弾痕があり、よくレイダーを最後の一人まで殲滅することができたと感心してしまった。
「で、結局なにをしたんだ?シャルは?」
「・・・・・てへ☆」
「可愛く誤魔化すなよ!どうやったら、プロテクトロンをMr.ガッツィーにしたんだよ!ありゃどう見ても二足歩行だぞ!どうやったらタコ兵士になれるんだ?!」
「・・・・可愛いって認めてくれた(ポッ)」
「そんなんで照れんな!」
最初、何かのバグだと疑ったよ。でも話を聞いてみるとそうでもないらしい。
予め、中国軍侵攻迎撃プログラムがプロテクトロンにインストールされていたらしい。元々、Mr.ガッツィーの声や疑似人格は前線の兵士の戦意高揚と敵兵士の士気低下を狙ったもので、プログラムはそれをそのままコピーして作られたのである。もっとも、プロテクトロンには疑似人格などはないので、録音テープを流すだけなのだが。
「つまりは、元々くっついてたわけで、他の治安維持プロトコルを使えば普通の自衛攻撃しか出来ないわけだ」
「そう、元々、中国軍迎撃プロトコルはMr.ガッツィーを元に作られたから、敵を殲滅するまで戦うように機能を解放しているの」
治安維持プロトコルもあったものの、戦前書かれた合衆国陸軍の火炎放射器で作る20のレシピに中国軍迎撃プロトコルがあったから俺はそれをシャルに設定するよう頼んだ。もし、ゲームと同じように使えば、直ぐにレイダーに殺られて、あんな善戦しないで廃品となっていたはずである。
「シャルがいてくれて助かったよ」
俺はベンチに座ると、横に設置された自販機のコーラを取った。栓を抜いて温くなったヌカ・コーラを飲む。その横にシャルは座り、俺の肩に頭を乗せてきた。
何か、戦前・・・いや前世のリア充みたいだ。そう言えば、前世じゃあ彼女いない歴=年齢だったから、こう言うときどうすればいいか分からぬ。あ、でもvaultの映画で擦り寄ってきた彼女の肩を持って抱き寄せるなんてあったな。
そう言う思いで俺はシャルの肩に手を置いた。
「・・・!」
少し身体をびくつかせるが、直ぐに身体を寄せてくる。うわ、やっべリアル充実してるじゃん。そう言えば、ギャルゲーのようにヒロインは幼馴染みだし、シャルも幼馴染みである。ヤバい!超緊張してきた!!
リア充経験なんて無いに等しい俺は心臓がマシンガンのように鼓動し、緊張のあまり背中に汗が流れる。だが、そんな状態でも俺はシャルのそばにいたい。ずっとこのままでもいいと思ったのだ。
しかし、そういう時間は長くは続かないものなのである。
「新鮮な肉だぁ!!」
「うわぁぁぁ!!助けてぇ!!」
空気ぶち壊しじゃねえか!おい!
「助けてぇ!」
レイダーは包丁を持って、12歳前後の少年を追いかけ回していた。
俺はベンチから立ち上がると、近くにあったレンガを掴み叫んだ。
「おいぃ!このクソレイダー!こいつを喰らいやがれぇ!!」
ふりかぶって投げたレンガは放射線状に飛んでいき、丁度レイダーの顔面に命中した。
「ブゥヘラァ!!」
鼻が折れ、前歯が折れて顔面崩壊したレイダーを踏みつける。
「てめぇ、こら!せっかく我が世の春を満喫していたのにぶち壊しやがって!ポトマック流域に足にコンクリートくっつけて沈めるぞ!それか、ミレ・ルークの餌にするか?ああ?」
俺の数少ない運のうちに発生したイベントをこんな野郎がぶち壊しやがったのだ。それなりの処罰を与えなければなるまい。
「ありがとうございます。お陰で・・・」
「てめえもだ!何、親から離れてンだよ!ここはレイダーの住みかだろうが!少しは頭使って危険なこと位わかるだろ!」
「ご、ごめんなさい!」
誰だかは知らないが、貴様のせいでこうなったのだ。お前にも償わせて貰おうか。
「ユウキ、落ち着いて・・・・えっと、君の名前は?」
俺に相対してシャルは中腰になって少年の目線で話す。Peckで“child at heart”でも持っているのだろう。まるで、近所の優しいお姉さんっぽい雰囲気を出していた。
「ブライアン・・・ブライアン・ウィルクスって言います」
嘘だろ・・・・
俺は彼の顔を見て小さく呟いた。
いきなり、those!のクエスト始まり始まり!!
意外にも初回プレイの時、グレイディッチから走ってくる少年を見てびっくりした方もいるはず。そのあと、蟻退治することになるとは露とも知らずに。
今作ではブライアン君が大活躍?