はぐれ一誠の非日常   作:ミスター超合金

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オーフィス可愛い(オーフィスは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ)


life.66 不死鳥狩り①

 ──シトリー家次期当主と大犯罪者に隠された関係!?  

 ──本当に親友の愚行は止められなかったのか!! 無能姫との背後関係を徹底調査!!

 ──現魔王とも繋がりがあった!? 関係者の独占取材を公開!

 

「見ろよ、オーフィス。この新聞記事を」

「……悪魔の新聞?」

「そ。マスコミも世論も猫も杓子も、ソーナ・シトリーを揃って責め立ててるのさ」

 

 一面に大きく載せられた見出しは、どれもこれもソーナを責め立てる物ばかりだった。一誠の襲撃予告から一夜明けても冥界はこの話題で持ちきりで、「早急に調査する」と上層部も緊急コメントを発表する有り様だ。

 どうやら非難の矢面というのは幾らあっても困らないらしい、とは各報道をチェックした一誠の感想である。

 

 報道内容から察するに、上層部は彼女を切り捨てるようだった。ただでさえリアス関連で大騒ぎになったのに、これ以上の爆弾は抱えきれないのだろう。

 実に賢明な判断で、シトリー家にとっては最悪の状態だ。こうなってしまえば最後、事態の沈静化などできやしない。

 

「シトリー領の住民は避難を開始したとさ。俺が名指しで予告したことで、今までより更に過激な襲撃になるんじゃないかと恐れてるらしい。ヒーロー扱いしたりテロリスト呼ばわりしたり、大変だねぇ」

「……どうする? また魔力砲?」

「まさか。別に大虐殺が俺の本懐じゃない。本質的にはもっと別のベクトルで、根本的な目標だよ」

「……ふーん?」

 

 オーフィスは昨日の放送後から頬を膨らませたままで、言葉だけ交わして頭はプイッとあらぬ方向を見ている。他の女の話をしたから不機嫌のようだった。

 尤も、そう言いながら結局は一誠の膝の上に座っているのだが。別に本気で嫌いになったとかでは無いらしい。

 

「ほら、そんな顔をするなって。本当に可愛いな、オーフィスは」

「……駄目。誤魔化されない」

「強情だなぁ」

 

 ふぅ、と溜め息を吐いてベッドに寝転がる一誠。当然その上に座っていたオーフィスも巻き込まれる形で同じように転がった。最近は襲撃や作戦の準備で忙しい日々が続いて眠れなかったのか、横になって直ぐに一誠はイビキをかき始める。

 一方の彼女も流されるままに眼を瞑った。″無限″たるオーフィスには睡眠など必要なく、静寂を重要視する性格からも本来なら彼の腕を退けて立ち去っている筈だった。

 

 そうしないのはオーフィス自身もまた一誠に依存しているからだろう。

 

『随分と、変わったな』

「……ドライグ」

『別に今の相棒だけに限った話じゃない。付け加えるなら、相棒を止める選択も権利も俺には無い』

 

 オーフィスは少し首を傾げた。確かに最近の一誠は変なのだが、前よりも更に構ってくれるようになったし別に良いのでは、と思う。キスだってハグだって彼の方からしてくれるし、その先だって何度も体験した。

 だから彼女も以前に増して一誠にベッタリくっついているのだが、ドライグや周囲から見ればそれは異様な光景だった。

 

『静寂に拘っていた頃は気にも止めなかっただろうよ……問おう、オーフィス。今、お前の心臓は高鳴っているか?』

「……ん。ドキドキしてる」

 

 胸に手を当てると、確かに心臓は普段より早く動いている。前から同じ現象は確認されていた。一誠の側に居る時だけ心臓がドキドキと音を立てるのだ。

 

『それは好意という感情だ』

「……感情?」

『そうだ。お前は感情を宿したんだよ、オーフィス』

 

 ──life.66 不死鳥狩り①──

 

「おいっす、一誠の旦那! 今朝のニュース見たぜ……っと、ボスは寝てるんですかい」

「静かにしろよ、フリード。何の用だ?」

 

 一誠が目を覚ました時、オーフィスは腕の中ですぅすぅと寝息を立てていた。無理に起こすような真似はしたくないし、かと言って置いていくこともできず、お姫様を抱えるようにして食堂までの道を歩いていたのだ。

 途中でフリードと合流して、彼らは通路を進む。旧魔王派がいなくなった分、施設は何処か殺風景な雰囲気が漂う。

 

「いや、次の襲撃には是非とも俺ちゃんも参加させて欲しいなー、なんて! あ、デートと洒落込むなら別に……」

「飯を食ったら支度だけ整えろ。だが俺とフリードは別行動だ。お前は指示があるまで待機しとけ」

「……へぇ。それじゃあ、大将は何処に仕掛けるのさ」

「分かっている癖に」

 

 一誠もニヤリと笑って返す。だが彼の今までの手口と冥界の現状を考えてみれば、自ずと選択肢は限られてくるのだ。

 

 標的は合計四つ。

 政府上層部はパニック状態に陥っているが時期尚早。タイミングと切り崩す方法は山程にある。よって除外。

 魔王サーゼクスは重傷を負って入院中。病院内なら自慢の魔力も振るえないだろうし勝機はある。だが迂闊に攻めると深手を与えられかねないし、何より彼への復讐はまだまだ足りない。よって除外。

 リアス・グレモリーは謹慎中の身で狙いやすいが、今は報道関係に詰め寄られていて、邪魔者が多すぎる。そして殺すには早すぎる。よって除外。

 

 残された標的はただ一つ。

 

「不死鳥狩りの時間だ。しくじるなよ、フリード」

「アイアイサー!」

 


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