はぐれ一誠の非日常   作:ミスター超合金

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オーフィス可愛い(時系列は現在へ)


life.45 包囲網

 帰還したジークフリートの話を聞いた一誠達は驚愕していた。特に両親を誘拐された一誠は、能面のような表情でただ立ち尽くしている。

 どうすれば二人を救出出来るのか。彼には解らなかった。そんな時、北欧勢力から一通の手紙が送られてきた。

 

「これは、オーディン直筆の手紙か……?」

「何と書いてある?」

 

 曹操の問いを無視して手紙を読み進めていく。暫くして読み終えた一誠の顔には少なからぬ戸惑いがあった。

 だが両親を救うには手紙に従うしか方法が無い。彼にとっては大博打だ。

 瞑目し、それから眼を見開く。

 

「二人の居場所が分からない以上は従う他無いか」

 

 一誠達も両親救出の為に動き始めた。こうして遂に、リアスとディオドラのレーティングゲームの開催日を迎えた。

 

 

 設けられた控え室にはリアス、朱乃、木場、ゼノヴィア、そして長い不調から立ち直ったアーシアが居た。兵藤一誠の母親誘拐事件が起きた日から、彼女は元気を取り戻した。ただアザゼルやリアスが幾ら訊ねても理由は決して語らないが。

 アザゼルは深い溜め息をつく。アーシアの件も気になるが、今はディオドラとのゲームが大事だ。

 

「……分かっているな、リアス。お前はもう後が無い。これで勝たなきゃ不味い」

「ええ、アザゼル。ディオドラが来たあの日から、私は″王″として必死に考えたわ。その結果はゲームで証明して見せる」

「やれやれ、ようやく吹っ切れたか」

 

 リアスの顔が輝いて見える。勝たなければならない、と本気になった表情だ。勢揃いした眷属達を見渡すと各々が戦意に満ちた顔をしていた。

 前回の雪辱を果たさんとしているのだ。主として彼女はますます気合いを入れた。

 

「いくわよ、私の可愛い下僕達! この戦い、勝利で飾って見せましょう!!」

『はいッ!!』

 

 フィールドに転移されるリアス達。その姿が完全に消え去ったのを確認してから、アザゼルは通信魔法陣を起動した。

 四分割されたモニターにオーディン、帝釈天、ハーデス、天照大神が同じく映されていた。全員が神らしい緊張感のある顔だ。

 

「リアス達が行ったぜ。それにしても、あの話は本当なんだよな?」

『無論じゃ。故にアザゼル坊にも話をした』

『ファファファ、オーディンから聞かされた時には驚いた。まさかコウモリがそこまで愚かとは』

「良く言うぜ、内心笑ってる癖によ」

 

 悪態をつきながら、アザゼルは苦虫を何匹も噛み潰したような表情となった。あの時、サーゼクスをもっと問い詰めていればと後悔しているのだ。

 少なくともオーディン達より早く事情を知っていれば、或いは別の手段もあった筈だと。思わず俯く彼に帝釈天が告げた。

 

『HAHAHA! どうしたよ、アザゼル。まさか今さら悔いてるとか、そんな馬鹿なことは無いよな? 俺だって別に勢力維持が悪いとは言わない。ただ、三大勢力はやり過ぎたんだ』

 

 怒気を含んだ言葉に、天照大神も続ける。

 

『三大勢力、特に悪魔は土足で日本に踏み込み、誘拐のオンパレード。傘下である京の妖怪衆からも同胞が浚われていると訴えが来ておる。温厚な儂も流石に我慢の限界じゃ』

『馬鹿な奴らだったと諦めるんじゃな、アザゼル坊。同盟を解消するなら早めにせねばならんのう? ……もしくは手遅れかもしれんが』

 

 モニター越しにオーディンは笑う。彼の左目に収まる義眼は妖しい輝きを放っていた。

 

 ──life.45 包囲網──

 

 バトルフィールドに転移したリアス達は周囲を見渡した。そこはタイル張りの広場だった。目の前には古代ローマを思わせる神殿が悠然と構えている。

 妙な事にアナウンスは何時まで経っても流れない。違和感を感じたゼノヴィアが首を傾げた。

 

「どうしてアナウンスが無いんだ?」

 

 まさか運営側でトラブルがあったのか。リアスは眷属に待機を命じて、先ずは神殿に近付く。此方から動いてみれば、或いは何らかのアクションがあるかもしれない。そう思っての行動だ。

 その直後、前方に二つの魔法陣が現れた。ゲームが始まらないことに慌てたディオドラが来たのかと予想した彼女の表情は、直後に驚愕に染まる。

 

「これは、()()()()()()()()()()()()!?」

 

 翡翠色の術式に描かれている紋章は、アスタロトでは無かったのだ。様子を見ていた眷属達も戦闘態勢に入る。魔法陣から姿を現したのは二人の少女だった。警戒を隠さないまま、リアスは二人に訊ねた。

 

「二人はどうして此処に来たのかしら?」

『……』

 

 少女達は口を閉じたまま、何も喋らない。苛ついた彼女が更に言葉を紡ごうとした瞬間、陰謀は動き始めた。異変を示す声は眷属達より更に後方から発せられた。何事かと後ろを振り向き、そこでリアスは怒声を放った。

 

 アーシアを捕らえるディオドラの姿があったからだ。

 

「やあ、リアス・グレモリー。アーシア嬢は頂くよ」

「アーシアを放しなさい! これはルール違反よ!!」

「……来なよ、神殿の奥に。一番奥で僕は待っているからさ」

 

 そう呟くなり、ディオドラとアーシアは消えた。

 

 赤き龍の降臨は、すぐ近くまで迫っていた。

 


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