はぐれ一誠の非日常   作:ミスター超合金

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オーフィス可愛い(病気)




life.37 失望

 夏休みが終わり、学校が始まる日。多くの学生は楽しかった日々を懐かしみながら、或いは手付かずの課題を嘆きながら学園へと向かう。その中には()変態人組の松田と元浜の姿もあった。

 

 一誠が事故死した。

 

 その報を聞いた二人は、あまりの衝撃に思考が停止したと言う。彼らにとって一誠は小学校からの親友だったのだから当然だ。

 別れすら言えず、突然消え去った事実に涙するしか無かった。

 

『俺達は三人揃って変態三人組だ。お前が死んじまったら名乗れないだろ……ッ!』

 

 通夜の時、松田は叫んだ。参列したクラスメイト達も何も言えずに俯く。彼の下品な言動には困り果てていたし、迷惑していたがいざいなくなると無性に寂しい。

 その日から松田と元浜は人が変わったかのように大人しくなり、騒動も無くなった。しかしそれが決して望んで得た平穏で無い事はクラスの誰もが知っていた。

 

 閑静な住宅街を二人は歩く。以前なら一誠が学園のアイドルであるリアスやアーシアと共に登校してきた事に嫌みを言っていたし、ドロップキックもかましていた。

 彼が通っていた通学路に、一誠はもう歩いていない。

 

「そう言えば、グレモリーさんも元気無いよな」

 

 元浜が呟く。

 

「イッセーはオカルト研究部に所属していたからな。部長のグレモリーさんも思うところがあるんだろ。それに理由は分からないけど、小猫ちゃんにアーシアちゃん。後は一年のヴラディくんだっけ? 三人も休学中だ」

「木場も大怪我したらしいぜ。ゼノヴィアさんも心無しやつれてるし、立て続けだよ」

「多分、尾を引いてるんだと俺は思う」

 

 互いにそれ以上は何も言わない。程なくして学園に到着し、二人はまたも無言のまま教室に向かった。

 

 ──life.37 失望──

 

 今日は最初の登校日の為、集会だけで授業が終わる。リアス達オカ研メンバーは既に部室に集まっていた。部の顧問を務めるアザゼルが少し遅れて合流する。

 

「すまん、会議で遅くなった」

「構わないわ、アザゼル。それで連絡とは何かしら?」

「悪い連絡とかじゃない。一つはお前らも知っているだろう、新しい教師についてだ」

 

 その言葉に、リアスは集会で行われた新任教師の挨拶を思い出す。

 

 ──今日から二年の数学を担当します、ガブリエルです。どうぞ宜しくお願いします!

 

「天使ともあろう者が胸元の開いたスーツで大丈夫なのかしら。クラス男子生徒なんか興奮の嵐よ?」

「それはアイツに聞いてくれ。何故か、めちゃくちゃ張り切ってたんだから。職員室も興奮の嵐だったよ……」

 

 恐らくは同盟の地である駒王学園に人材を派遣する事で、より結束を固めようという天界の思惑なのだろう。それはリアスでも理解出来るし、文句を言うつもりも無い。そのトップが直接来るとは予想外だが。

 元同僚であるアザゼルも、彼女の突拍子もない行動には疲れていたようで態とらしく頭を抱えている。

 

 因みにわざわざ出向いてきた理由を訊ねたところ、ガブリエル曰く、ある者を近くで観察したいからとの事らしい。

 

「……頭が痛くなってきたわ。それで、他の連絡は何なの?」

 

 あー、と彼は口をつぐんだ。言いにくそうに頬を掻く。

 

「次のゲーム、対戦相手が決まったぜ」

「もう!?」

 

 リアスは思わず叫んだ。ソーナとのゲームから一週間程が経過したばかりである。若手悪魔六名で行うと聞いていたが、連戦とは聞いていなかったのだ。彼女の反応にアザゼルは呆れを隠せなかった。

 

「お前とソーナが戦っている間に、他の奴等もゲームを行った。その結果、サイラオーグがゼファードルを。ディオドラがシーグヴァイラを其々仕留めた。サイラオーグは金星、ディオドラは大金星だ。──ソーナは勝って当然の結果という事で評価は伸びてない」

 

 順位をつけるなら、上からサイラオーグ、ディオドラ、ソーナ。以下はシーグヴァイラ、ゼファードル。そしてリアスと続く。

 

 最下位だ。ライザー戦の教訓も特訓の成果も活かせず、結局は今回も敗北してしまった。あの時から何が変わった。どう強くなった。

 これでは退化だ。

 一誠を失い、アーシアとギャスパーが立ち上がれなくなり、そして小猫さえも失った。これを退化と言わずして何と言うのか。

 

「最下位、ね……」

「そう落ち込むな。この次に勝利すれば良い」

 

 彼はケラケラと笑うも、リアスはそんな気にはならなかった。勝たなければならないのは理解している。だが勝てないのだ。どう逆立ちしても若手最強のサイラオーグには敵わないし、シーグヴァイラやディオドラにも勝てはしない。

 あのゼファードルと引き分けに持ち込めるかどうかのレベルだ。

 

 リアスはこれ以上無いまでに自信を失っていた。

 

「そうは言うけど、勝てないのよ。誰にも……」

「そーかい。だったらお前は誰にも絶対勝てねぇよ」

 

 アザゼルは諦めたようにそう断言した。もう彼女には、才女と讃えられた頃の面影は見られない。

 

「ま、一応ゲームの相手だけは教えてやるよ。次の相手は────」

 

 直後、床に魔法陣が光り輝く。それはアスタロトの紋章。

 

「久し振りです、リアスさん。挨拶に来ました」

 

 妖艶な美少年、ディオドラ・アスタロトが立っていた。

 


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