はぐれ一誠の非日常   作:ミスター超合金

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オーフィス可愛い(尊死)


life.33 フリード・セルゼン

 ──life.33 フリード・セルゼン──

 

「お久し振りっすねぇ! 身体は元気でやんすか?」

「まあ、な。匙のラインもオーフィスに解呪して貰ったし。それにしても、まさかお前と会うとは思わなかった」

「俺だって予想してなかったんすわ。腐れアザゼルにリストラされて行く宛も無く死にかけてたら、昔の同僚に拾われるなんてさぁ!!」

 

 初めて出会った時と全く変わらない、ふざけた口調でフリード・セルゼンは話した。簀巻きにされて少しは大人しくするかと思ったが平常運転を貫くらしい。

 一誠は彼を拾ってきたジークに視線を向けた。フリードの話によれば昔の同僚という事だが、果たして彼らはどのような関係性なのだろう。

 ジークは迷った素振りを見せたが、やがてポツポツと話を始めた。

 

 明かされたのは、天使陣営の闇の一端だった。

 

 聖剣計画。かつて教会で行われた非人道的な実験の一つであり、身寄りの無い孤児達を集め、聖剣に適応した戦士を造り出す為の狂った計画だ。

 子供達の身体能力を薬物で底上げし、人間が本能として持つ禁忌を消し去り、結果として死すらも恐れない戦士は誕生した。問題はその先、聖剣が扱えるかどうかだった。

 

 実は集められた孤児達の中に聖剣を扱える者は誰一人存在しなかったのだ。

 

 聖剣を扱うには、″因子″というものが必要になるらしい。それは人間ならば誰しも宿っている代物だが内包量には個人差があり、″因子″の数を表す値が高くなければ聖剣を扱えない。

 

 ならば逆転の発想だ。

 ″因子″の値が低いのであれば、他から移植してしまえば良い。

 

 それがエクスカリバー強奪事件の首謀者が一人、バルパー・ガリレイの企てた狂気の計画だった。

 

 ある冬の日に、バルパーは部隊に命じ作戦を決行した。施設に毒ガスを散布し、″因子″を抜き終えた子供達を口封じに抹殺しようとしたのだ。

 換気扇を止められた施設は巨大な密閉空間であり、少年少女は逃げる事すら叶わない。防護服を着込んだ神父が闊歩する床には、苦しみ抜いた子供達が塵のように転がされていた。

 

 運良く施設から逃げ出せた彼らは、施設ごと焼却される仲間達を眺める事しか出来なかった。

 

「その後で僕はデュリオに拾われ、フリードは堕天使に身を寄せた。昔の仲間を見捨てる事もできなくてね」

「なるほどな、そんな過去があったのか。……古傷を抉る真似をしてしまった。すまない」

 

 話を聞いただけの一誠でさえ、腸が煮え繰り返っているのだ。実際に関わった彼等の胸中は穏やかでは無いだろう。

 今は二人きりにして思い出話だけでも、と彼らは部屋を後にした。

 

 面識があるからなのか、一誠はフリードには死んで欲しくなかった。あの男は当分死にそうにないが、仮にジークの元仲間である彼に何かあれば寝覚めが悪い。

 最悪自分の部下として貰い受けるか。

 一誠はそう考えながら食堂へ足を進めようとして、今度は黒歌と鉢合わせした。

 

「あ、赤龍帝。丁度良かったにゃ!」

「丁度……?」

 

 彼女の言葉が気にかかる。自分に用事でもあるのだろうか。その時、黒歌の背中から白色の髪が見えた。その少女の顔を忘れる訳が無い。

 小猫か、と一誠は呼んだ。ピクッと白髪が揺れたが、ゆっくりと少女は姉の隣に並んだ。

 

 塔城小猫。リアス・グレモリーの″戦車″にして黒歌の妹。前回の若手悪魔パーティー襲撃の目的の一つだ。

 

 雑談の内に、表向きには拉致された事になっている少女は実は望んで″禍の団″に身を寄せたことを一誠は知った。どうやら彼女は、一誠が″はぐれ悪魔″に認定された事を疑問に思い独自に調査していたらしい。

 だから予想していたより説得はスムーズに進んだ、と黒歌は得意気に胸を張る。

 姉の巨乳を羨望の眼で睨みながらも、小猫は一誠を見た。

 

 以前とは比べ物にならない強者。それが第一印象だ。顔も達観したような表情をしており、氷のような冷たさがある。

 もう記憶の中にある兵藤一誠は死んだ。そう思うしか無かった。やや戸惑いながらも相手は一応の上司に当たる為、頭を下げる。

 

「今日からヴァーリチームに配属されました、白音です。宜しくお願いします」

 

 白音。一度捨てた名前だが、新しい人生を始めるには良いだろう。リアスに貰った名前は使わないと決めた。世間的には誘拐された存在だが、黒歌によるとヴァーリチームに預けられた、謂わば食客のような扱いらしい。

 それでも何時までも食客に甘んじるのも迷惑なだけなので、こうして姉と同じチームに所属した。裏方なのでバレる恐れは無いという事だ。

 

「そうか。まあ、派閥は違えど、協力して任務に出向くこともあるだろう。そのときは頼むぞ、白音」

「……はい!!」

 

 彼女は華やかな笑みと共に、新たな一歩を踏み出した。

 


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