はぐれ一誠の非日常   作:ミスター超合金

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オーフィス可愛い(無敵)


life.31 変化

 回想を終え、膝上のオーフィスの頭を撫でる一誠。その様子をヴァーリはぼんやりと眺める。

 

 ″無限の龍神″オーフィス。

 ″赤龍帝″兵藤一誠。

 

 二人を排除しようと企む者は決して少なくないだろう。悪魔上層部は勿論の事ながら、彼等と同盟を結んでいる天界や″神の子を見張る者″も何らかの動きを見せてくる可能性が高い。また四神話とて腹の中で何を考えているのか未知数だ。

 

「……北欧はどうするんだろうな」

 

 北欧神話。″禍の団″に物資を援助している四神話の一角でありながら、悪魔勢力とも通じている勢力だ。若手悪魔パーティーにも主神オーディン直々に代表として来賓した事で、冥界もしくは三大勢力と同盟を結ぶのではと噂されている。

 オーディンは果たして何を考えているのだろうか。予想はある程度つくがあの老獪な神の事だ。常に警戒をして、それでも足りないレベルと言えた。

 

 考えてみれば、自分達は今ギリギリの綱を渡っている。幾ら名のある四神話がバックにあるにしても、どんな事情があれ″禍の団″は残忍なテロリスト集団だと世間に認知されている。

 例え真実が違えど、大義名分は三大勢力にある訳だ。最終的には多くの勢力が彼等に賛同の声を示すかもしれない。

 

「──らしくないな。そんな顔は」

 

 一誠の言葉に、ヴァーリは我に返る。何を弱気になっているのか。攻めてくれば圧倒的な力で潰せば良いだけの話だろう。それが二天龍(ドラゴン)の戦いというものだ。

 呼応するかのように背中が蒼白く発光し、龍を模した魔法陣が描かれた。冷静で落ち着きのある声が場に響く。

 

 ″白い龍の皇帝(バニシング・ドラゴン)″、アルビオンだ。

 

『落ち着いたか、ヴァーリ』

「我ながら情けない。向かってくるのなら遠慮無く殺せば良いだけ。何を恐れる事がある」

『その殺意、その闘気。それでこそ我が相棒だ』

 

 成長を見守る父親の様にアルビオンは満足気に語りかけた。

 その時、一誠の左手が翠に輝きアルビオンと酷似した魔法陣が出現した。

 

『アルビオン。お前も随分丸くなったな』

 

 積年のライバルの言葉に、特に感情を現さず淡々と答える。

 

『昔の俺ならば罵詈雑言の百や二百は並び立てただろう。だが今は互いにこんな状況だ』

『それに無限の龍神がこの様子だ。戦う気も起きんさ』

 

 二体の龍は、未だ夢の中を泳いでいるオーフィスを眺めていた。身体は封印されてしまっているが、外の様子は魔法陣を介して自分の頭の中に映し出される。大画面に幼女の寝顔を映されれば興も削がれるというもの。

 

 そして今代の所有者の行く末をもう暫く見ていたいという点も事実だった。

 赤と白。

 長い歴史の中で初めて力に呑まれなかった二人。運命に抗っている二人が何処まで耐え切れるのか、興味があった。

 そう自分に言い訳した。素直では無かった。

 

『赤と白が共に戦っている。これもまた運命か』

『時代かもしれんな。……また会おう』

 

 やがて会話は終了し、後には静けさが残った。オーフィスの髪を手に流していく音が僅かに聞こえる。 

 ヴァーリは眼を瞑った。もしかしたら弱気になっていたのでは無いのかもしれない。少し、この時間が気に入っているからではないか。心の中でそんな予想を立ててみた。

 

 一誠がやって来てから、″禍の団″は変化した。ピリピリとして疑心暗鬼に陥っていた各派閥は少しずつ他と触れ合うようになった。

 特訓を繰り返して得た赤い力に魅せられ、自分の力を思い知らされた。それでも強くなろうとあがく。

 

「良いな……こういう組織」 

「組織がどうした?」

 

 急に聞こえる、覚えのある声。入口方向を見てみれば曹操とゲオルク、ジークフリートが立っていた。

 

 ──life.31 変化──

 

 呟きを聞かれていた事に苛立ちつつも、三人が担当していた任務の内容と結果を訊ねる。派閥が根本的に違うヴァーリは会議の予定等は頭に叩き込んでいるが、英雄派の任務まで把握していない。成功したのか笑みを浮かべながら曹操は言葉を返した。

 

「今回も教会の実験施設を潰してやった。被験者の子供達は全員保護したよ」

 

 得意気に胸を張る彼を見ながら、ヴァーリは心の中で付け足した。

 一番変化した人物は間違いなく曹操だ。以前はがむしゃらに英雄を目指していた男が、一誠に感化されてか神器を宿した子供達の保護活動を行うようになった。他のメンバーも一緒になってだ。

 

「変わったよな、曹操」

 

 一誠の言葉にヴァーリ達は深く頷いた。そうして頷いていたがふと思い出したかのように、ゲオルクは魔法陣を床に展開した。彼が得意とする拘束術式だ。

 紫の光と共に吐き出された人影は一誠とヴァーリ、両方とも面識のある男だった。

 

「帰還している途中に、コイツが倒れているのをジークフリートが見つけてな。昔の仲間だと言うから取り敢えず縛って連れてきたんだが……」

 

 鎖で何重にも拘束されたその男は不敵に笑う。獲物を見つけたからだ。

 

「やぁやぁやぁ! これはこれは噂の赤龍帝ではあーりませんかぁ! おひさっすねぇ! 素晴らしい再会劇にぃ、私はドキがムネムネしまくってますぜぇ!」

 


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