はぐれ一誠の非日常   作:ミスター超合金

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オーフィス可愛い(五巻開始)


Assault.
life.18 密約


 とある場所にて四大神話の会談は開始された。各神話の代表であるメンバーが円卓を囲み、厳格な神の顔を築き上げ、纏められた書類に目を通していた。

 

 集まった名目は先程行われた三大勢力会談によって締結された例の協定についての意見交換であるが、本当の目的はテロリスト集団″禍の団(カオス・ブリゲード)″への対応の件だ。

 書類を読む早さからも、全員がある程度の事態を認知していることが分かる。

 

 ならば、と集まった四大神話の一角を担う″日本神話″の天照大神が席を立ち上がり、円卓の中央に魔法陣を築き上げた。最高神が描く日本文字が空を舞い、瞬く間に映像を映し出した。

 映っているのは前述した″禍の団″襲撃の様子であり、時間停止が行われた後の一部始終がはっきりと捉えられていた。

 

 中でも神々が目を見張った存在はやはり一誠であった。多方面にも名前を知られているグレイフィアを圧倒した時には度肝を抜かれてしまった。それも当然。グレイフィアは魔王クラスと謳われる女性悪魔だ。その魔力量は現魔王にも劣らない。

 それが軽く捻られ、挙げ句にサーゼクスの攻撃を片手で受け止めて見せたのである。両者共に手加減をしているとはいえど、驚くなと言う方が無理だ。

 事実、他の神々。帝釈天やハーデス、オーディン。上から数えた方が遥かに早い実力を持っている三人はごくりと喉を鳴らしながら、赤色の暴力を目に刻み付けていた。

 

「……今代の赤龍帝、兵藤一誠か。これ程の成長とは思わなんだ。あれで″SSS級はぐれ悪魔(最重要討伐対象)″とは、質の悪い冗談にしか聞こえぬわ」

「HAHAHA……!! 俺も報告を受けた時には部下の精神を疑ったぜ。だが、これを見れば納得だな」

 

 自身の持つ知識と照らし合わせながら呟くオーディンに続いて、帝釈天も珍しく驚いて見せた。その後で全員が、悪魔よりも先に彼を見つけられなかった不幸を嘆いた。ハーデスや天照大神も罰の悪そうな顔で、問題の少年を見ている。

 

 特に悪魔の横槍が無ければ一誠を見つける確率が最も高かったであろう天照大神は、何時もの明るさが完全に消え去り酷く落ち込んでいた。

 だが何時までも悲しむ訳にも行かず、顔を挙げて三人に意見を投じた。

 

「さて、諸君。″禍の団″は三大勢力の被害者で構成された集団だという事は既に知っていると思うのじゃ。その上で聞こう──潰すのか?」

 

 辺りが静まり返った。それは四人全員が、兵藤一誠という存在を自陣に引き込もうと画策しているからであった。あれだけの力を示して見せた人材を放っておく道理など無い。何よりも彼は、あのオーフィスと仲良さそうに行動を共にしている。

 つまり上手く立ち回れば、彼だけでなくオーフィスという最強の切り札もくっついてくるのだ。彼等四人にとっては何がなんでも、どんな代償を払おうと欲しい人材。

 相手のそれを察し、暫くは睨み合いが続いた。そしてこのままでは進行しないと判断したハーデスが全員の意見を代弁した。

 

「……ファファファ。どうやら全員の意見は一致しているな。どうだろうか。その″禍の団″とやらに、秘密裏に支援を行っては……」

 

 その言葉に護衛として背後で待機していた死神や、他の護衛達は驚愕した。一神話の主神格がテロリストの支援を提案したのである。本来ならば止めるべき意見ではあるが、他の代表は真剣に悩んでいた。

 支援を行い、そのまま″禍の団″が魔王や首脳陣を殺してくれればこれ程嬉しい事は無い。三大勢力には自分達の信者を根こそぎ奪られたという恨みがあるのだから。

 よって一誠達が連中を殺せば、その恨みの一部は晴れる訳だ。

 

 ハーデスの言葉に三大勢力の被害者である天照大神は力強く頷いた。信者を奪われ力が弱まっている時に勝手に侵入し、あまつさえ領土を主張した冥界にはどれ程煮え湯を飲まされただろうか。

 気付いた時には遅く、勢力の弱まった日本神話は泣く泣く黙認するしか無かったのである。

 

 その結果が人間の拉致、″はぐれ悪魔″の事件。今まで我慢をしてきたが、こうなっては流石に見て見ぬふりなど出来はしない。そう彼女は決意した。

 彼女が同意すると帝釈天とオーディンも肯定を口にする。

 

「俺達も支援に同意するZE。あくまで極秘にだけどな」

「三大勢力が滅びるのであれば協力は惜しまぬ。テロリストという肩書きが少々邪魔ではあるが、我々が手を打てば良いだろう」

 

 日頃から三大勢力を良く思っていない残る二人が同意した事により、″禍の団″への援助は確定した。長い歴史の中でも異例の決定ではあるが、四人の決意は揺るがなかった。

 神としての計算が重なった上での決定。兵藤一誠を巡っての決定だ。

 勿論、彼以外も魅力的ではある。英雄の末裔にしてあの″黄昏の聖槍″の所有者、白龍皇の宿主であるルシファーの血縁者等、彼に並ぶ実力を持つ者も多い。

 しかし成長速度をも考慮するのであれば、やはり兵藤一誠以外に居ないだろう。

 

 ″禍の団″への支援。

 名だたる四神話の意見はかくして此処に統一された。陰謀と策略を含めて。

 

 ──life.18 密約──

 


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