三大勢力会談、そして″駒王協定″の調印から一夜が過ぎ去った。各勢力の首脳陣は主要な神話、そして一般市民達に向けて協定調印を正式に発表。その過程である記者会見において、魔王サーゼクスはこう述べた。
「″
サーゼクスはいかにも被害者と言わんばかりの演技をテレビカメラの前で披露し、見事に民衆は乗ってしまった。結果的に″
しかも護衛達の遺族までテレビに出したのでより多くの同情と反感が集まり、今後暫くは熱が下がりそうに無い。
尤も、それはあくまで何も知らない民衆の話でありオーディンや帝釈天、ハーデス等の強大な神々は部下からの報告もあって三大勢力が情報操作を施したと既に理解していたし、″禍の団″が三大勢力の被害者達が集まった組織である事も掴んでいた。
「しかし、サーゼクスめ。よくもああまでペラペラと嘘をつけるものだ」
「あいつの嘘つき症は異常だからな。叩けば大量の埃が出ると思うが」
「間違いない」
″禍の団″本部の北部エリアに位置する実験室。主に英雄派が管理しているその部屋には、多種多様な機材が設置されている。
その中央に鎮座する巨大な培養カプセルの群れの前で、ヴァーリは英雄派のリーダーである曹操と雑談をしていた。
三大勢力会談の件はあらゆる勢力に加速度的に広まっていき今では知らないものは居ない。そんな訳で本部内でも団員達の話の種となっていた。二人の会話もそれである。
話は何時しか三大勢力への悪態に移り変わり、更に時間が経過した頃、曹操は思い出したようにポケットから数枚に纏められたレポートを取り出した。受け取ったヴァーリは疑問符を浮かべながらも捲っていく。
「……これは、カテレアが持ち帰ったと言う″堕天龍の閃光槍″か」
曹操は力強く頷いた。そして部屋の一角を指差す。ガラス張りの向こうに、コードに繋がれた″堕天龍の閃光槍″が一定のリズムで光を発しているのが見えた。輝く度に接続された機械が数値を示していた。
「今は解析途中だ。まぁ、ある程度は終わった。結論から言うと、あれは使い捨て″神器″だ。
ピクリ、とヴァーリの眉が微かに動いた。怪訝なワードを拾い、曹操にぶつける。
「龍王、だと?」
″黄金龍君″と言えば解るか?」
「そういえば……前にアザゼルに聞いたことがある」
ファーブニル。
五大龍王が一角、″黄金龍君″と謳われた金色に輝く北欧の
鋼にも勝る強靭な金鱗、何者にも等しく死と絶望を与える猛毒の吐息を駆使し北欧狭しと暴れ回ったらしい。
神話では魔帝剣グラムを携えた龍殺しの英雄ジークフリードとの決闘の末に殺されたとあるが実際は生き延びており、北欧の洞穴にて黄金を守る為にひっそりと今日まで暮らして来た。
しかし寝ている間にアザゼルの強襲を受け何も出来ずに封印されてしまい、
ヴァーリが事の顛末を聞かせると曹操は呆れ返っていた。
五大竜王を、しかも北欧神話由来のドラゴンを拉致するという愚行は、三大勢力と彼らの間の溝となりかねない。つまり自ら敵を作るに等しいのだから。
「俺は自室で寝る。何かあれば連絡を頼む」
「了解だ。ファーブニルに動きがあれば伝える」
「すまないな」
そうしてヴァーリは部屋から出ていった。名残を惜しむように″堕天龍の閃光槍″が紫に瞬いた。
──life.17 会談後──
その薄暗い会議室には四人が集まっていた。帝釈天、オーディン、ハーデス、そして天照大神。何れも劣らぬ強者ばかり。そして三大勢力に不満を持つ者達でもある。
「全員、揃ったようじゃな」
狐耳の生えた美女、天照大神が立ち上がった。そして予め用意された書類を手にしながら告げた。
「今回集まって貰ったのは他でも無い。今世界を騒がせている″禍の団″、そして三大勢力についてなのじゃ」
四つの勢力が動き出す日も近いだろう。急がなければ手遅れになるかもしれない。現段階では急げば急ぐ程結果は良好な物になると四人はおぼろ気に察していた。
神々の思惑が、一誠達を戦いに誘う。