はぐれ一誠の非日常   作:ミスター超合金

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オーフィス可愛い(今回は前編)


life.14 三大勢力会談

「これより三大勢力首脳会談を行う。ここにいる者達は、最重要機密事項である″神の不在″を認知していることを前提として話を進める」

 

 魔王サーゼクスの厳かな開催宣言により、三大勢力会談は幕を開けた。会場となった駒王学園には二重三重に人払いと防御を兼ねた術式が構築されており、其々の護衛も質・量共に半端では無い。

 キリスト教勢力はそれなりに大きな勢力なだけあって敵対者も多い。最悪の場合を想定してトップ陣、特に堕天使総督たるアザゼルは膨大な数を護衛に割いた。

 

 そんな中、先の一件に関わったとして出席を命じられたリアスは一人震えていた。彼女は会談途中で例の件を報告する役目がある。もしそこで粗相をしてしまえばグレモリーや悪魔全体の評価を落とす事になりかねない。とも考えれば緊張してしまうのは当然だった。

 リアスはチラリと同じく出席しているソーナを見た。ソーナも内心では緊張しているが、それを外面に出さないという点でリアスよりも優秀だ。

 

「──では、リアス。例のエクスカリバー強奪事件について話して貰おうかな」

「……はい、魔王サーゼクス様」

 

 彼女は立ち上がり、あの時自分が見聞きした事を包み隠さず語った。事前に纏めた通り接触から戦闘、顛末を話した。

 時折挟まれるソーナの補足説明もあって何とか上手く話す事が出来、サーゼクスは満足しながら頷いた。そして着席を促すと今度は彼の前に座っているアザゼルに顔を向けた。

 

「さて、この件について堕天使側の意見を聞きたい」

 

 アザゼルと呼ばれた、黒に一部金が混ざった髪色の男は欠伸をしながら話した。

 

「エクスカリバー強奪事件はコカビエルの独断専行だ。処理は″白龍皇″がおこなったよ。軍法会議で″地獄の最下層(コキュートス)″での永久冷凍に処したから、アイツは二度とシャバに出てこれない。その説明は、先日提出した報告書に全部書いてあっただろ?」

「貴方個人が我々と刃を交える可能性という話に関してはどうでしょうか。──ここ数十年、神器所有者をかき集めているアザゼル自身の意見が知りたいですね」

 

 天界の代表である金髪の美青年、ミカエルが透かさず睨み付けるがアザゼルは豪快に笑い飛ばした。

 

「別にお前らが思ってる物じゃ無い。神器研究の為さ。なんなら研究資料も送ってやるよ。……少なくとも俺は戦争なんざ金輪際しない。今の世界に満足してるんでな」

「本当か、アザゼル。もしも戦争を起こすつもりなら……」

「──俺の信用は最低かよ。神や先代魔王共よりはマシかと思ってたんだが、お前らも面倒だな。こそこそ研究するのも限界か……」

 

 そして、アザゼルは提案する。

 

「──三大勢力で和平を結ぼうぜ。お前らも元々そのつもりなんだろう?」

 

 リアスやソーナ、ライザー達は驚きを溢す。そんな次世代を他所に先駆者は次の段階を話していた。

 提案を受けたミカエルが瞑目する。しかしながら既に答えを導いていたらしく、眼を瞑ったのはほんの数秒にも満たない。

 

「私も悪魔政府と″神の子を見張る者(グリゴリ)″に和平を持ちかける予定でした。これ以上、三大勢力の争いを続けていても世界の害でしかないのです。神の子を見守り先導していくのが残された天使の使命なのだと、私達セラフは結論付けました」

 

 ミカエルの言葉を聞いていたサーゼクスとセラフォルーも互いに頷くと其々の意見を口にする。

 

「私達も和平を提案するつもりでした。種を存続させる為に悪魔は次に進まねばなりません」

「戦争は我らも望まない。二回目の戦争が勃発すれば悪魔は滅びる」

「そうだ。次の戦争をすれば、三大勢力は今度こそ滅びちまう。他神話や人間界にも悪影響を及ぼしてしまうだろう。″神の不在″は間違いなのか。神が死ねば俺達も死ぬのか。……いや、違った」

 

 ポツリと彼は呟いた。それはあまりに力不足でちっぽけな男の本音とも言えた。

 

「──神がいなくとも、世界は回るのさ」

 

 アザゼルは心底面白そうな笑みを浮かべながら、窓の外を見た。護衛達が所狭しと整列しているが、その隙間から僅かに星が伺える。そして何となく手を伸ばした。

 

 そして全ては停止した。

 

 ──life.14 三大勢力会談──

 

「……あら?」

 

 リアスは目覚めた。見れば各首脳達とサーゼクスの護衛として背後に控えているグレイフィア、自身の眷属である木場祐斗とゼノヴィア。それ以外が停止していた。DVDの一時停止のようにピタリと停まり微動だにしない。

 リアスは、ギャスパーの能力である事を瞬時に悟った。しかし、彼はまだ対人恐怖症を全く克服していないので部室に置いてきた筈なのだ。

 思考を続けていると、窓際に立っていたアザゼルが彼女に気付いた。

 

「おう。起きたか、リアス嬢」

「これは一体何事ですか!?」

「テロだよ。魔法使い連中が襲撃して来たんだよ」

 

 目視でざっと百は余裕で数えられる。死角や援軍を含めるとその数倍は予想範囲内だ。時間が停止して動けない護衛達を殺しながら魔法使い達は迫ってきていた。

 放たれている魔法の威力から察するに一人一人が上級悪魔クラスの実力を持つだろう。迂闊に飛び出しても袋叩きになってしまうだけだ。

 

「一応、私とミカエル、アザゼルで強固な防壁結界を展開しているからこの校舎に被害は無いだろう。ただ、結界がある限り私達は此処から動けない。──それにしてもこの状況、恐らく魔法や神器等でギャスパー君の″停止世界の邪眼″を強制的に″禁手(バランスブレイカー)″に至らせたのだろう」

「一時的にとはいえ、視界に映した物の内部にいる者にまで効果を及ぼすとは。あのハーフヴァンパイアの潜在能力だろうな。ま、俺達を止めるには出力が足りなかったようだがな。……ヴァーリ、外に出て敵の目を引き付けろ。白龍皇であるお前が出れば敵のリーダーが出てくるかもしれん」

「了解だ。──″禁手化(バランス・ブレイク)″」

『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!!』

 

 瞬時に純白の鎧を纏い、天空に駆けていくヴァーリ。その様子を見ながらアザゼルはリアスに銀色の腕輪を投げ渡した。

 

「おい、あのハーフヴァンパイアを助けに行くんだろう。なら、この腕輪をアイツに渡せ。神器の暴走を抑える物だ」

「解りました! お兄様、″キャスリング″でギャスパーを助けに行きます!!」

 

 キャスリング。″(キング)″と″戦車(ルーク)″の位置を入れ替える、チェスの技術の一つにして、″悪魔の駒″に搭載されたシステムの一つである。

 旧校舎の部室、丁度ギャスパーが留守番をしていた部屋に未使用の″戦車″の駒がある。リアスにとっては絶好の機会だ。

 

「確かに、それならば虚をつける。……グレイフィア」

「簡易術式しか展開出来ませんが、お嬢様ともう一方ならば可能です」

「なら、自分が行きます!」

 

 最初に名乗り出たのは、木場だった。

 

「君なら任せられる。……頼んだよ、二人とも」

 

 グレイフィアの助力により、リアスと木場は転移していった。その直後、床の中央が光り輝き、二つの転移魔法陣が描かれた。

 


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