オーバーロード ~もう一人の支配者~   作:大正浪漫

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うわぁぁぁぁ~ん! オーバーロードの書籍がどこにも売ってなーい!

どうも大正浪漫と申します。アニメなどを見てモロにオーバーロードに、はまったものの肝心の書籍が手に入らず本屋をめぐる日々を過ごしております。

なるべくわかりやすいように書いていくつもりではありますが中にはアニメや原作を知らないとわかりにくいところもあるかもしれません。
どうか温かい目で見ていただき、少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
m--m


プロローグ

 超弩級大作DMMORPG『ユグドラシル』。2126年に日本のメーカーが専用コンソールと共に満を持して発売した体感型MMOである。

 

 専用コンソールを通して五感に刺激を与えることにより仮想世界内にまるで自身が現実にいるように遊べるゲーム性に加え、とてつもないデーター量による多種多様な種族に職業、魔法に技、自身の外装や武具の外見などの他にも様々なことを詳細に設定・創造できる圧倒的なクリエイト性などから大爆発的ヒットを叩き出した怪物タイトルである。

 

 『強さがすべてでない、DMMO』開発元メーカのこの有名な発言の通り、戦闘だけでなく、自分だけのオンリーワンな外装や武具を創るために資源探しに明け暮れたり、広大な世界に未知の発見を求め冒険者のように探検したりと――――、その他にも千差万別プレイヤーの数だけ楽しみ方があるまさに『無限の楽しみを追及できるDMMO』その代表格と呼べるのがこの『ユグドラシル』なのであった。

 

 しかし、そんな世界中に一大ムーブメントを巻き起こした『ユグドラシル』も2138年の今、あとわずかでその12年にも渡る歴史に幕を降ろそうとしていた。その理由として運営メーカの業績の不振、他社による新たな大人気オンラインゲームの登場などそれ以外にも様々あるがこれ以上この話題について話しても意味はないのでやめておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わって『ユグドラシル』内でも凶悪すぎる難易度で知られる有名なダンジョン・ナザリック地下大墳墓、第9階層――――

 それまでのまさにダンジョンと呼ぶにふさわしい墳墓内の他の階層の風景とは一変し、天井には無数にかけられ光を放つシャンデリア、部屋の一つ一つに王侯貴族が生活するような調度品が置かれ、大理石のような輝きを放つ床など、まるで白亜の城を彷彿とさせる光景が広がるそんな第9階層のとある一室――――

 黒曜石でできた巨大な円卓に、42人分の豪華な席が備え付けられている。しかしそんな42ある席のほとんどは空席であり、今この時に席に座っている影はたった2つだけであった。

 

 

 そのうちの席の1つに座っているのは、金と紫で緑取りされた豪奢な漆黒のローブを纏った人物である。

 とはいえ普通の人間なのではない。死体を彷彿とさせる骸骨のような姿に空っぽな眼窟の中には赤黒い光が揺らめいているあきらかに人間ではない者がそこにいた。

 

 死の支配者〈オーバーロード〉アンデッド種族の魔法使い、リッチの最高峰こそがこの者の正体である。

 

 しかし、それだけではない。このオーバーロードこそナザリック地下大墳墓を居城とする『ユグドラシル』上、最高峰とも呼ばれる異形種限定ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』のトップ、ギルドマスターなのでもあった。

 

 

 そしてもう1つの席に座るのは、どこか和を感じさせる真紅の甲冑に、ギルドの紋様が刻まれた鉢金(はちがね)を頭に着けているパッと見、人間にも見えそうな者がそこにいた。

 だが当然この者も人間ではない。わかりやすくその違いに気づけるのは頭にある、それは……角である。翡翠色の眼に整った顔立ちとここまででは人間に近いかもしれないが、その黒髪の間からは片方は途中で折れてしまっているが立派な二本の金色の角が生えていた。

 

 百鬼王〈ディアブルロード〉数多く存在する鬼種族の中でも頂点といっても過言でない力を持つこの者こそがもう1つの席に座る正体であった。

 

 

 そんなトンデモな存在な2人のうち、片方のオーバーロードがゆっくりと声を発した。

 

 「……結局、最後までここに残ったのは私たち2人だけでしたねクレナイさん」

 「そうですねモモンガさん。せっかく来てくださったヘロヘロさんやほかの皆さんも都合とかでもう落ちちゃいましたからね……。でも、最後に少しでも皆さんと話せて嬉しかったです」

 「たしかにその通りですね。あの……クレナイさん、本当に今までありがとうございました!」

 「ぇっ!? きゅ、急にどうしたんですかモモンガさん!? あ、頭を上げてください!」

 

 モモンガと呼ばれるオーバーロードの突然の感謝の言葉とその姿勢に、クレナイと呼ばれるディアブルロードが慌てながらその姿勢をやめてもらえるように席を勢いよく立ちながら声を挙げていた。

 

 「いえ、本当に……ギルドの皆さんがだんだんと辞めていく中でもクレナイさんはずっとギルドに残ってくれていて私を助けてくださいました。それがどんなに心強くて嬉しかったことか……。正直、クレナイさんが最後までいてくれたからこそ私も最後までギルドマスターとしてやり抜けたと思ってます」

 「そんな……それをいうんでしたらお礼をいうのは自分の方ですモモンガさん。この『ユグドラシル』で自分はいろんなことを学ばせていただきました。そしてそれはモモンガさんがこの『アインズ・ウール・ゴウン』という居場所をどんなことがあっても護り続けてくださったおかげです……本当に、本当にありがとうございます!」

 

 やがて気づいた時には2人のやりとりは完全に長きに渡りこの『アインズ・ウール・ゴウン』を共に支えてきたお互いへの感謝へと変わっていた。

 

 今はもう2人しかこの場に残っていない残骸のようなギルドであるが、輝いていた時代もたしかにあったのだ。

 

 ギルドみんなで目的の物を作り上げるために協力して冒険を繰り返した日々。

 大型アップデートでは、有給を取ったり、家族サービスを切り捨てたりなどいろんなことをして新要素を徹夜あたり前でみんなで探したりもした。

 1日まるまるおしゃべりで終わったり時もあった。

 敵対ギルドの本拠地を攻め落としたこともあった。

 最強クラスのボスモンスターに壊滅しかけたときがあった。

 いくつもの未知を発見した。

 『ユグドラシル』最高の栄誉である「ワールドチャンピオン」を決める栄えある決勝の舞台をたっち・みーVSクレナイとまさかの同じギルメン同士が争うという最高に燃える快挙を成し遂げたりもした。

 

 そんなほかにも様々なことがあったギルドも、今やもう2人を残すのみであった。

 

 そして今――――、『ユグドラシル』のサービス終了にともない最後に顔を出してくれたヘロヘロさん含め6人の方との最後の別れを終え今この時にへと至るというわけである。

 

 「クレナイさんありがとうございます……。さて、残りあと15分切ったことですしお互いに感謝はこのあたりにしときましょうか」

 「それもそうですね。あ、あの……モモンガさん! 最後に1つだけわがままをいってもいいですか?」

 「はい、なんでしょうクレナイさん? 私にできることでしたらなんでもおっしゃってください!」

 「ありがとうございます。実は……誠に勝手なお願いだということは重々承知してるのですが、自分の最後はここではなくシャルティアを目に焼き付けながらむかえたいのですがどうか許可いただけないでしょうか? 本当に最後の最後だというのに私情全開でお恥ずかしい限りなのですが」

 「あはは、なにかと思えばそんなことですか。はい、全然かまいませんよ! もう私は十分にクレナイに助けていただきましたから……どうぞ最後はクレナイさんの悔いがないように過ごしてください!」

 「モモンガさん……ありがとう、ありがとうございます!」

 「いえいえ、そんなことないですよ。そういえばクレナイさんシャルティアのこと誰よりも気に入ってましたもんね。それこそ、あの6ギルド連合とかの大軍がナザリックに攻め込んできた時に結局皆さんが止める中、強行して単身シャルティアの元に急行した程ですもんね~。しかも……クレナイさん奥の手であるはずの第2形態も迷いなく使う程に」

 「うっ……あの時は本当にすいませんでした。頭では第8階層で侵入者たちをみなさんと一緒に迎撃するとわかってたはずなのですが、シャルティアがどこの馬の骨ともしれない奴らに傷つけられてくのをみてるうちに自分でも知らないうちに頭に血が上ってしまってあのような暴挙に……しかも、皆さんの反対まで押し切って出たくせに結局、自分もシャルティアと一緒に敗れ皆さんにご迷惑をかけてしまいましたし。いや、本当にお恥ずかしいかぎりです」

 「いやいや1500人近くを相手にクレナイさん大健闘したじゃないですか。お1人で侵入者を100人以上間違いなく殺ってましたかねアレ。あれには私含めて皆驚きましたし、ペロロンチーノさんなんかは『これが……愛の力か』なんてまでいってましたからね」

 「すいませんモモンガさん、謝ります謝りますからもうこれ以上は勘弁してください」

 「ははは――――とまあ、最後の無駄口はこの辺りにしときましてコホン……クレナイさん本当に今までありがとうございました。またどこかでお会いできることを祈ってます」

 「モモンガさん……はい、こちらこそ今までありがとうございました! またどこかでお会いできるのを楽しみにしてます」

 

 こうしてお互いへの感謝を済まし、最後の雑談を終えたモモンガとクレナイは最後の最後に改めてお互いに感謝しながら硬い握手を交わし別れを済ましたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓、第2階層。

 モモンガと最後の別れを終えたクレナイは今、1つの扉の前に立っていた。

 ナザリック第1~3階層「墳墓」の守護を任されている階層守護者の私室前。それが今まさにクレナイの目の前に存在する扉の正体であった。

 

 「ふぅ~、よ、よし! 入るぞ」と扉の前で深く深呼吸してからクレナイは扉を開き中へとその足を進めた。

 

 そこには、少女らしい部屋が広がっていた。可愛らしい机にイス、天蓋付きのセミダブルベッドに、クリーム色の壁などとこの部屋の主にとてもよく似合うであろう内装であった。

 

 「シャルティア……」

 

 無意識のうちに声が出たクレナイの視線の先には、1人の少女の姿があった。

 

 

 白蝋染みた美しい肌を身に包んだボールガウンやフィンガーレスグローブで無駄に露出せず、長い銀の髪に真紅の瞳を持った非常に端正な面立ちをしている外見年齢14、5歳前後くらいの少女と女性の境界染みた不完全な完全性を放っていた。

 

 シャルティア・ブラッドフォールン。それが彼女の正式な名前である。かつて『アインズ・ウール・ゴウン』にいた「エロゲーイズマイライフ」を公言していたエロゲーをこよなく愛する男、ペロロンチーノがその趣向をふんだんに詰め込み制作したNPC……それこそが彼女の正体である。

 だが、そんな趣味全開で作られたキャラと侮るなかれ。その能力は真祖〈トュルー・ヴァンパイア〉に加え高水準かつバランスのとれた能力値、ステータス異常無効など様々な特殊能力を持ち、このナザリック大地下墳墓の第1~第3階層とかなりの広範囲の守護を任された階層守護者というここナザリックに存在する多くのNPCたちの最上位に近い位置にいるという凄まじい存在なのであった。

 

 「今までありがとうシャルティア。お前という存在があったからこそ自分はここまでやってこれたんだと思う……」

 

 そんなNPCであるシャルテアに対しクレナイは静かにしかしこれでもかという程の感謝の気持ちを込めながら最後の別れを告げていた。

 なぜそこまで?と思う人もいるかもしれない。だがクレナイにとって彼女はそうするだけの恩や思い出が数えきれないくらい詰まっていた。

 

 現実でいろんなことがあり人間不信気味な時期があった頃、「おんなじ鬼系統の異形種のコイツと一緒なら少しは気が楽になるんじゃないか?」と仲間たちの優しい気遣いに助けられたこともあった。

 ペロロンチーノさんと三日三晩シャルティアについて熱く語り合ったりして、あまりの長さにその姉である、ぶくぶく茶釜さんに仲良く説教をくらったりもした。

 シャルティアに最高の装備を作るためひたすら素材集めに奮闘した。

 ギルドの危機だというのにシャルティアを救うために単身、1000を超える大軍に突撃をかますという大馬鹿をやらかしたこともあった。

 

 これ以外にも当然まだまだあるのだが、これでわずかでもクレナイにとってシャルティアという存在がいかに特別かをわかってもたえたのなら幸いである。

 

 「――――っと、本当にもう最後になるんだな……」

 

 自身が過去を懐かしんでる間にそこそこ時間が経過していたようでこの思い出が詰まった『ユグドラシル』のサーバー停止までもう残り1分を切っていることにクレナイは気づいた。

 

 23:59:35、36、37……

 

 いろんな思いを抱きながらクレナイもそれに合わせて数えだす。

 

 23:59:48、49、50……

 

 ――――本当にありがとうシャルティア……またいつかどこかで

 

 最後の最後クレナイは心の中で感謝しつつ、両腕でシャルティアを優しく抱き留めながら目を閉じた。

 

 そして最後の時を待つ。とても、とても大切な世界の終わりを――――

 すべてが終わ――――

 

 0:00:00……1、2、3

 

 

 

 「……あれ?」

 

 クレナイは目を開ける。

 そこは見慣れている自分の部屋ではなく、変わらずユグドラシル内のシャルティアの部屋の中であった。

 

 「……これは?」

 

 おかしい。本来ならばサーバーダウンによって強制ログアウトされているはずだ。

 見間違いしていたのかと思い時計を再確認する。

 

 0:01:12

 

 やはり見間違いではなかった。時計は完全に0時を過ぎている。

 とするならば今も変わらないこの世界はいったい……? クレナイは困惑しながらも必死に頭を回転させる。

 

 「ひょっとして、サーバーダウンが延期になった?」

 

 1番に考えられる要因が浮かんだ。

 なにかしらがあり、それによってサーバーのダウンが延期されているのだ。もし考えどおりだとしたらマズイ。もしかしたらGMがなにかしらを言っている可能性がある。クレナイは慌てながら今まで切っていた通話回線をオンにしようと片手をあげようとし手が止まった。

 システムコマンドが一切でないのである。

 

 「あ、あれ……?」

 

 しかし、それだけではなかった。本来なら浮かんでいるはずのシステム一覧も出ていないことに加えて、慌てて試そうとしたシャウト、GMコール、システム強制終了入力。それらすべて感触がなかったのである。

 あきらかに異常事態であった。

 

 「なにが……いったいなにが起こった!」

 

 クレナイの戸惑いの叫びが室内に響きながら消えていく。本来ならばこの響きだけで終わるはずであった。そう、先ほどまでであったならば――――。

 

 「ク、クククククク、クレナイ様!? い、い、いったい、いかがなされたのでありんすか!?」

 「なっ――――!?」

 

 聞いたことのない女性の声。しかもそれはクレナイのすぐ傍から聞こえてきたではないか。恐る恐る顔を下げるとそこには――――ややその頬を赤く染めつつも心配そうな表情でこちらの様子を伺うシャルティアの姿があった。

 

 そんなありえないはずのことにクレナイは言葉をなくすのだった。




モモンガさんごめんなさい。スタッフのくだりはスルーさせていただきましたw

初っ端からフラグを立て始めさせていただきました。主人公の武器や能力などもだんだんとあきらかになっていく予定です。

そしてプロローグからの我らがシャルティアの登場! これからもバンバン出てくる予定です!

最後にここまでお読みいただきまして誠にありがとうございました。また次回も見ていただけたらとても嬉しいです。m--m

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